Journal of the Japan Petroleum Institute
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47 巻, 3 号
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総合論文
  • 持田 勲, 崔 基赫
    2004 年47 巻3 号 p. 145-163
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    超低硫黄分のガソリンや軽油の生産プロセス開発の基盤を提供するために,石油製品および中間精製留分の水素化脱硫を紹介した。水素化処理における石油製品中の分子種基質の反応性・選択性・阻害性について特に議論した。触媒開発のために活性種・担体および担持法について最近の進展をまとめた。触媒構造の詳細については議論しなかったが,水素化脱硫の機構および阻害性と関連する触媒機能について総説した。触媒劣化および反応器設計についても簡潔に紹介した。深度脱硫達成のための新しいアプローチを提案した。
  • Maria Carmen Román-Martínez, Dego Cazorla-Amorós, ...
    2004 年47 巻3 号 p. 164-178
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    市販の活性炭および20 v/v% 過酸化水素水で酸化処理した活性炭を担体に用い,白金とスズを逐次的にまたは同時に担持することにより,カーボン担持PtSn触媒を調製した。触媒のキャラクタリゼーションをTPD,TPR,水素吸着,XPS,XAFSを用いて行った。また,触媒活性を評価するために,構造非敏感反応であるシクロヘキサンの脱水素,構造敏感反応であるシクロペンタンの水素化分解,およびカルボンの水素化を行った。カルボンの水素化では,カルボン分子内に水素化が可能な一つのC=Oと二つのC=C結合を有することから,触媒による選択性への影響を調べた。本研究の目的は,触媒の調製法や担体の性質と,触媒の特徴や触媒活性との関係を見い出すことである。担体の酸化処理により,カーボン担体の多孔度は変化し,反応物が活性点へ到達し易くなった。カルボンの水素化では,スズを加えることにより不飽和アルコールへの選択性が増加した。このことは,スズが白金粒子を覆うためであると推定した。また,担体の電子的特性により,あるいは担体が担持金属の特異な構造を形成することにより,カーボン担体自身も選択性に影響を及ぼすと考えた。
  • 木村 孝夫, 清水 俊夫, 今井 哲也
    2004 年47 巻3 号 p. 179-189
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    ペンタン異性化反応において,硫酸根処理ジルコニア(SO42-/ZrO2)触媒は高い異性化能を持つものの短時間に劣化する。本研究では異性化活性の安定化を目的に,白金を担持したPt/SO42-/ZrO2触媒を調製し,硫酸根処理条件,白金の役割および反応機構等について考察した。その結果,少量の白金担持により触媒上のコーク生成が大幅に低減し,ペンタン異性化反応においても極めて安定な触媒活性を示した。また,異性化活性は焼成温度および硫酸根処理剤に依存した。このPtの役割は,触媒酸点上で生成したコーク前駆体を水素化により脱離促進しているほか,オレフィンを経由する二元機能反応における脱水素および水素化反応に寄与しているものと考察した。
    Pt/SO42-/ZrO2触媒は,ライトナフサ異性化において従来工業的に用いられていたゼオライト系触媒よりも高い低温活性を示し,塩素化アルミナ系触媒と比較して原料油の水分および硫黄分ヘの耐性が優れていることが分かった。また,本開発触媒を用いた商業運転では,これまでのゼオライト系触媒よりも反応温度が大幅に低下し,生成油のリサーチ法オクタン価(RON)は81と3ポイント増加する良好な結果が得られた。
一般論文
  • 高橋 武重, 甲斐 敬美
    2004 年47 巻3 号 p. 190-196
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    調製ゲルにヒ素あるいはリンのような5価イオンを添加して調製した高シリカZSM-5およびこれを貴金属で修飾した触媒を用いて,シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位反応を行い,触媒の活性劣化に及ぼす希釈ガスおよび希釈溶媒の影響について検討した。希釈ガスとして二酸化炭素を用い,希釈溶媒としてメタノールを使用すると,貴金属修飾ZSM-5の触媒寿命が未修飾触媒の場合よりも著しく向上した。さらに,希釈ガスとして微量の酸素を含むヘリウムを用いて転位反応を行うと,貴金属修飾触媒の寿命が長くなった。この系に対しても,希釈溶媒として触媒寿命に最良の効果を与えるものはメタノールであった。シクロヘキサノンオキシム濃度を増加させると触媒寿命が短くなることから,メタノールは酸点に吸着したε-カプロラクタムのオリゴマーを脱離・除去するのに寄与していると考えられた。
    これらの結果から,反応雰囲気を調整することにより,固定層反応器による気相系ベックマン転位反応用触媒の寿命の延長が可能となることが分かった。
  • 羽田 政明, 森田 智子, 長尾 幸徳, 金田一 嘉昭, 浜田 秀昭
    2004 年47 巻3 号 p. 197-204
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    Ga2O3-Al2O3のプロピレンによるNO選択還元反応は水蒸気の共存により抑制されたが,In2O3-Ga2O3-Al2O3では大きく促進された。FT-IRによる表面吸着種の観察から,水蒸気非共存下において,NO3,acetate,formate,ニトリル(-CN),イソシアナート(-NCO),アミノ(-NH)の生成が認められた。ニトロ化合物の吸着およびNO3とプロピレンの反応により生成する吸着種の挙動観察から,NO酸化を経て生成したNO3とプロピレンの反応により生成した有機ニトロ中間体が-NCOへと分解され,-NCOの加水分解により生成した-NH化合物とNOxとの反応によりN2へ還元される反応機構を推定した。水蒸気の共存により,Ga2O3-Al2O3,In2O3-Ga2O3-Al2O3ともに反応初期の中間体であるNO3の生成が抑制されたが,In2O3-Ga2O3-Al2O3では-NCOの生成・分解が促進された。これが水蒸気による異なる触媒特性の要因と推察した。
  • 水谷 洋, 出井 一夫, 藤川 貴志, 木下 陽介, 持田 勲
    2004 年47 巻3 号 p. 205-213
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    残油の水素化処理では,物性が異なる触媒を数種類組み合わせた触媒システムを使用している。本研究では,平均細孔径の異なる3種の触媒組合せ順序に着目して検討を行った結果,細孔径が大きい順に組み合わせると,脱硫(HDS)および脱金属(HDM)活性が向上した。特に,中段触媒が触媒システム全体の性能に及ぼす影響が大きい。触媒寿命については中段触媒の細孔容積が重要であった。
    一方,生成物の組成に関しては,触媒組合せ順序による顕著な差異は見られなかったが,アスファルテン分およびマルテン分の分子量分布に関しては顕著な違いが見られた。触媒システムの前段部から触媒の平均細孔径が大きい順に組み合わせることで,触媒の組合せ効果によりアスファルテンのような重質成分が効率的に分解した。また,中段触媒に平均細孔径が比較的小さい触媒を用いると,アスファルテン分の分解が抑制される一方で,マルテン分の分解が進行した。
    触媒の平均細孔径が大きい順に組み合わせた場合,生成油中のアスファルテン分およびマルテン分の相溶性は高くなり,スラッジ生成が抑制できた。生成したマルテンとアスファルテンからHildebrandの溶解度パラメーター(δ)を算出し,スラッジ生成を両者のパラメーターの差から推定できた。
ノート
  • 木村 孝夫, 大塩 敦保, 川上 敬士, 渡辺 克哉
    2004 年47 巻3 号 p. 214-217
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    現在,工業的に用いられているライトナフサ異性化触媒の一つである白金担持硫酸根ジルコニア(Pt/SO42−/ZrO2)触媒は,他の工業触媒と同様に原料油中の硫黄化合物により一時被毒されるため,原料油の水素化脱硫が不可欠である。
    本報告では,Pt/SO42−/ZrO2触媒への硫黄被毒影響を明確にするために,種々の原料ナフサおよび硫黄化合物の被毒影響を把握し,この硫黄被毒を回避する方法についてその可能性を検討した。本触媒の活性劣化に与える硫黄の種類の影響は,(n-C32S2 >> Et-S-Me >> i-C3SH > H2Sの順となり,硫化水素に対しては被毒影響が極めて少ないことが明らかになった。そこで,脱硫触媒と組み合わせた2塔反応方式を用いて高硫黄濃度の直留ナフサを異性化したところ,脱硫ナフサとほぼ同等の異性化活性と安定的な触媒寿命を示す結果が得られた。
技術報告
レター
  • 松井 高史, 原田 賢, 阪東 恭子, 鳥羽 誠, 葭村 雄二
    2004 年47 巻3 号 p. 222-223
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/02
    ジャーナル フリー
    細孔構造の異なるシリカおよびハイシリカ型超安定化Y型(USY)ゼオライトを担体に用いて,Pd,PtおよびPd-Pt触媒を調製し,各触媒の耐硫黄性とテトラリン水素化活性を調べた。触媒の耐硫黄性の測定にはCO吸着法を用い,硫化処理後に残存するメタリックサイトの残存率から耐硫黄性を評価した。4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(S = 300 ppm)存在下におけるテトラリンの水素化活性は,高圧固定床流通式反応装置を用いて評価した。平均細孔径3 nmの細孔を有するシリカを担体に用いた場合,平均細孔径10 nmの細孔を有するシリカに比べて,貴金属触媒の耐硫黄性および水素化活性ともに向上し,USYゼオライト(SiO2/Al2O3 = 390)担体に匹敵する高い値を示した。安価で汎用性が高く,固体酸性を有しないSiO2担体でも,高い耐硫黄性と水素化活性を有する貴金属触媒を調製でき,芳香族水素化用貴金属触媒の担体として利用できる可能性が示された。
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