Journal of the Japan Petroleum Institute
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51 巻, 3 号
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総合論文
  • Chandrashekhar V. Rode
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 119-133
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    2-ブチン-1,4-ジオール水素化反応では,cis-2-ブテン-1,4-ジオールとブタンジオールが得られるが,並行反応や逐次的異性化反応により種々の化合物が副生する。工業的にはブテンジオールとブタンジオールの選択性を制御することが重要となる。この選択性制御においては,基質である2-ブチン-1,4-ジオールの活性点への吸着特性が重要となる。本総説では,担持パラジウムナノ粒子触媒,パラジウムコロイドそして担持白金触媒による2-ブチン-1,4-ジオールの水素化反応における添加物効果,触媒前処理効果,速度論的解析結果について示す。1% Pd/CaCO3触媒では反応系内にアンモニアを添加させることで,ブタンジオールの生成が抑えられcis-2-ブテン-1,4-ジオールの選択性が増大すること,ナノ構造を有するパラジウムコロイドおよび担持パラジウム触媒ではcis-2-ブテン-1,4-ジオールへの水素化活性が通常の含浸触媒と比べて10~40倍も向上することが分かった。また,白金触媒はパラジウム触媒よりも2-ブチン-1,4-ジオール水素化反応は低いが副反応が抑制されることが分かった。特に,塩基強度の大きなアルカリを添加した白金触媒においては,中間種の脱離が促進されcis-2-ブテン-1,4-ジオールの選択性が向上すること,連続水素化反応システムを用いて白金触媒により水素化反応を行うと,接触時間を変えることによりcis-2-ブテン-1,4-ジオールとブタンジオールの生成比を広い範囲で制御できることが分かった。
  • 若林 利明, 須田 聡
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 134-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    極微量潤滑油供給(minimal quantity lubrication)による,いわゆるMQL加工は切削油の供給量が毎時数十ml 程度と,通常毎時数万ml である従来の大量切削油供給の場合に比べて極めて少ない。このため切削油の使用量を大幅に削減でき,環境に優しい製造技術の代表的成功例として注目を集めている。本論文では,MQL加工に適する切削油剤として,酸化安定性や生分解性に優れ,良好な切削性能を示す合成ポリオールエステル油剤の適用が有効であることを報告する。特に,この油剤が高い切削性能を発揮するためには,切削部において非常に少ない量で効果的な潤滑剤として働く必要があり,エステルのトライボロジー作用が極めて重要な意味をもつ。そこで,雰囲気制御型切削試験機を用いて,MQL加工におけるエステルのトライボロジー作用と切削現象との関係を調べた。その結果,鋼の切削では,酸素との共存によってエステルの鋼新生面への吸着活性が向上し,これが潤滑効果をもつ吸着膜の効率的な形成に寄与して優れた切削性能を与えることがわかった。一方,鋼の場合とは異なり,アルミニウムの切削では酸素の存在が好ましくないという興味深い知見が得られた。
  • 岩本 伸司, 井上 正志
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 143-156
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    我々は無機材料原料の有機溶媒中での加熱処理(ソルボサーマル(ST)法)に関する研究を行っており,本方法で多様な無機材料が直接得られることを種々報告している。本稿では,最近の二つの研究,Ga2O3-Al2O3固溶体のST合成とそのメタン脱硝性能,シリカ修飾チタニアのST合成とその光触媒能に関し概説する。ガリウムアセチルアセトナートとアルミニウムトリイソプロポキシドのST反応では,スピネル型Ga2O3-Al2O3固溶体が得られ,これがメタンを還元剤とする選択的NO還元反応に高活性を示した。本反応ではCH4の活性化が律速過程であり,また第二近接がAl3+である4配位Ga3+が活性点であると考えられる。ジエチレントリアミン中でのST反応で得た触媒は特に高活性を示したが,これは触媒の表面酸点密度が低く,メタン燃焼が抑制されたためと考えられる。一方,チタンテトライソプロポキシドとオルソケイ酸エチルのST反応では,熱安定性に優れたアナタース型シリカ修飾チタニアが得られた。ST反応後,高温を維持して系内の気相成分を留去すると生成物をキセロゲルとして回収でき,これが高い光触媒活性を示した。さらに,これに窒素ドープした試料は可視光照射下でも高い活性を示した。
一般論文
  • 鎌田 博之, 居橋 渉, 村本 知哉, 水澤 実, 小川 直也, 山下 進, 鴻上 享一
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 157-164
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    押出成形法により調製したCu/ZnO/ZrO2とγ-Al2O3混合触媒上でのジメチルエーテル(DME)の水蒸気改質反応について検討を行った。触媒寿命に対する反応温度の影響について調べるとともに,改質反応前後の触媒をBET比表面積測定,細孔径分布測定,N2O吸着,粉末X線回折,SEM-EDXにより分析した。DME水蒸気改質反応は,押出成形法で調製したCu/ZnO/ZrO2とγ-Al2O3混合触媒上で良好に進行することが確認された。反応の主生成物はH2およびCO2であり,少量のCOおよびCH4の生成が確認された。測定されたDMEの転化率は,DMEとCH3OHの水和反応における平衡転化率よりも十分に高いため,触媒上で生成したCH3OHは速やかにH2およびCO2に改質されていると考えられる。また,Cu/ZnO触媒中に添加したZrO2は,Cuの分散を比較的安定化させ,成形した触媒の寿命を向上させているものと考えられる。触媒の寿命評価の結果,反応温度が高くなると,触媒の熱劣化が大きくなることが分かった。反応前後の触媒のキャラクタリゼーション結果から,Cu/ZnO/ZrO2中のCu分散度の低下が顕著であり,触媒の熱劣化の主要因であると考えられる。
  • Janchig Narangerel, 杉本 義一
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 165-173
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    オイルシェール,石炭,オイルサンドから得られる合成原油は,窒素,硫黄などのヘテロ元素を多く含み,クリーンな輸送用燃料に転換するには厳しい水素化処理条件が必要となる。本研究では,比較的温和な反応条件下での深度水素化を達成するため,CuCl2.2H2Oとの錯体形成による窒素化合物の分離処理と得られた脱窒素油の水素化処理を検討した。原料油としてシェールオイル,石炭液化油およびビチューメンの熱分解油の軽油留分を用いた。水素化処理実験は,小型オートクレーブを用い,水素初圧5 MPa,反応温度350℃,反応時間2~4 hで行った。
    合成原油中の塩基性および複素環式窒素化合物の多くは,CuCl2.2H2Oとの錯体形成により沈殿し,効率よく除去された。この窒素低減処理により,合成原油の水素化脱窒素速度が増大し,生成油中の窒素含量が大きく減少した。使用したCuCl2.2H2Oのほとんどは錯体のCH2Cl2溶液を水で洗浄することにより回収できることから,本分離処理は窒素を多く含む原料油の深度水素化処理の前処理法として有用であると考えられる。
  • 石原 篤, Franck Dumeignil, 青柳 貴子, 西川 恵美, 細見 正明, 銭 衛華, 加部 八恵子
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 3 号 p. 174-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,我々は水素化処理反応ではなく,バイオ脱窒素反応を検討した。すなわち,化石燃料の超深度脱窒素を行うことを目的として,カルバゾールを分解する微生物の探索を行った。六つの異なる土壌から採取した土を用いて,カルバゾールを窒素源として集積培養を行った。その中の一つの土壌から低濃度のカルバゾールを分解することができるNIY3株を単離することができた。
    NIY3株はコロニーが淡黄色,非運動性で細胞の大きさが約0.7×0.7~1.0 μmのグラム陰性桿菌である。16S rRNA塩基配列解析および相同性検索を行った結果,NIY3株はNovosphingobium 属に属し,Novosphingobium subarcticum と最も高い相同性(98.3%)を示した。Novosphingobium sp. NIY3株は100 ppmのカルバゾールを3日間で95%分解した。
ノート
  • 岡田 昌樹, 中根 偕夫, 原田 大輔, 重田 元, 古川 茂樹, 鈴木 庸一, 山口 達明, 尾上 薫
    原稿種別: ノート
    2008 年 51 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/01
    ジャーナル フリー
    放電プラズマ中での化学反応に対する音波の複合化効果を検討した。放電プラズマは局所的に高エネルギーを付与できることから,熱力学支配を受けない非定常反応場を容易に構築することができる。一方,放電空間は極めて限定的であり,反応は量的に制限される。本研究では,媒質粒子の荷電粒子化であるプラズマと媒質粒子の振動運動である音波を複合化することを考えた。音波未照射時に帯状であったストリーマ放電は音波の照射により扇型に拡張され,その拡張の程度は照射した音の強さに比例することが明らかとなった。そこで,音波の照射効果を二酸化炭素の直接分解反応により評価した。二酸化炭素の分解反応速度は音響管端における音圧とともに増加する傾向を示し,1.8 kPaの音波を照射した際の分解速度は未照射の約2倍に達した。この分解速度の増加は放電空間の拡張や荷電粒子の振動に起因した反応効率の向上によると推測される。この非接触での制御技術は新たなプラズマ反応場の構築につながると考えられる。
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