Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
66 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
一般論文
  • 村上 高広
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 133-141
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    二塔式流動層ガス化炉は,一般的に1073~1173 Kで運転するが,将来的には973 K, 873 Kのようなより低温条件での運転も考えられるため,各温度条件のタールの挙動を明らかにすることが重要である。本研究では,実験室規模の流動層ガス化装置を使用して,873~1123 Kの広範な温度条件における褐炭ガス化によるガス化特性およびタール組成を明らかにした。結果として,ガス化温度が高くなるにつれて,得られるガス収率は増加する一方,タール濃度は減少した。また,ガスクロマトグラフ分析によるガス中のH2濃度から,ガス化温度におけるタール濃度をより短時間で予測できることが分かった。タール成分を広範な分子量において明らかにするため,ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)に加え電界脱離質量分析(FD-MS)を組み合わせて分析すると,1123 Kで得られた主なタール成分は,置換基のない多環芳香族炭化水素(PAHs)であり,24と26の分子量間隔でピークが観測された。タール成分はガス化温度の低下に伴い増加し,置換基を持たないPAHsやメチル基などの置換基を持つPAHsも含まれ,873 Kまで低下すると,含酸素化合物の生成も明らかとなった。これら成分は,24と26の分子量間隔に加え,14,16,50,76などの間隔のピークも観測された。さらに,873 Kではより多くのタール成分が生成したが,フリーボード温度を1123 Kにすると,その主成分は大幅に減少し,置換基のないPAHsが顕著になった。

  • 村田 聡, 中井 太一, 畠山 賢彦, 砂田 聡
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 142-148
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    軽油の酸化脱硫に関する知見を得ることを目的として,ベンゾチオフェンおよびジベンゾチオフェン誘導体を対象に分子軌道(MO)計算と酸化反応を行い,構造と反応性の相関について考察した。芳香環縮合度については,縮合度が高い基質ほど反応性が高い傾向が見られ,これは分子軌道計算の結果と一致している。一方,アルキル基の効果は基質により異なった。ベンゾチオフェン誘導体の2位のメチル基では反応性の向上が観測され,計算結果と一致している。一方,ジベンゾチオフェン誘導体の4位および6位のメチル基は反応条件や活性種の性質により結果が異なった。MO計算の結果からは基質の反応性が向上するという結果となった。これはメチル基の電子供与性に起因すると考えられる。一方,実際の酸化反応結果では,過カルボン酸やベンゼン環を有する有機過酸化物のようなかさ高い酸化剤を用いると基質転化率の低下につながった。これは,メチル基による立体障害により活性種のアプローチが阻害された結果と考えられる。

  • 馬 嘉敏, 清水 研一, 古川 森也
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 149-153
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    シリカ担持インジウム酸化物(In2O3/SiO2)およびCo修飾In2O3/SiO2(Co/In2O3/SiO2)を含浸法により調製し,貴金属代替触媒としてアセチレン部分水素化反応に用いた。In2O3/SiO2はアセチレンの部分水素化に活性を示したが,アセチレン転化率およびエチレン選択率ともに2時間以内に速やかに低下した。In2O3/SiO2を少量のCo(0.5 wt%)でさらに修飾すると,アセチレン転化率とエチレン選択率が高いレベル(約70 %)で維持され,触媒の安定性が向上することが判明した。Co/In2O3/SiO2触媒では,水素による前処理温度が触媒の安定性に強く影響することが示され,250 ℃で水素還元した触媒が最も高い安定性を示した。また,昇温還元法を用いた検討から,金属状態のCo種が触媒毒となる副生成物の生成を抑制し,触媒性能の安定性を向上させることが示唆された。

一般論文 –特集「長野大会」–
  • 水野 皓太, 田中 柊真, 橋本 忠範, 石原 篤
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 154-161
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,二層およびゲル骨格補強法(GSR)を用いたミクロ孔—小さなメソ孔—大きなメソ孔からなる三層の階層構造触媒を作製した。キュリー · ポイント · パイロライザー法を用いてこれら階層構造触媒による低密度ポリエチレン(LDPE)の接触分解特性を評価し,ゼオライトの種類の影響を検討した。リンゴ酸,TEOS,β-ゼオライトで作製した二層の階層構造触媒は転化率78 %を示し,類似のY-ゼオライトを用いた触媒より高い活性を示した。二層の階層構造触媒をGSR法により調製したシリカ中に分散させた三層の階層構造触媒では,低ゼオライト含有にもかかわらず転化率が維持された。ゼオライトのXRD積分強度と酸点量に対する転化率を相対活性として評価した結果,階層構造触媒では相対活性が高いことが分かった。

  • 髙村 陸, 友野 樹, 平原 実留, 荻原 仁志, 黒川 秀樹
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 162-170
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    石油に代わる化石資源として天然ガスが注目されている。天然ガスの主成分はメタンであるため,メタンを直接転換できる触媒プロセスの開発が求められている。本研究では,Pt/Al2O3触媒を用いたメタンの脱水素転換を検討した。比較的温和な反応温度(550〜600 ℃)でメタンからC2炭化水素と芳香族が生成することを見出した。低濃度のCH4を用いるとC2炭化水素と芳香族類は生成せず,コーク生成が優勢となった。この結果から,Pt表面に吸着したCHx種が結合してC2炭化水素等を生成するメカニズムを提案した。Pt/Al2O3触媒はコーク析出により失活したが,酸素処理でコークを除去することで,その触媒活性が回復することが判明した。

  • 本倉 健, 五味 杏介, 前田 恭吾, 坂井 俊一, 長谷川 慎吾, 田 旺帝, 眞中 雄一
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 171-179
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    シリカ表面にジアミン配位子をシランカップリング反応で修飾し,ここに2価の酢酸銅を導入して,シリカ固定化Cu(II)アセテート錯体を調製した。次に,元素分析と種々の分光学的手法を用いて構造解析を行った。Cu K-edge XAFS解析の結果,Cu錯体はジアミン配位子によってシリカ表面に固定されていることが明らかになった。シリカ表面に第三級アミノ基をCu錯体と共存させた触媒では,第三級アミノ基を持たない触媒と比較して,アニリンとフェニルホウ酸のChan–Evans–Lamカップリング反応に高い活性を示した。触媒の構造解析や反応実験の結果から反応機構を考察し,第三級アミンはCu(II)錯体とフェニルホウ酸とのトランスメタル化を促進し,Cu–Ph種の形成を促していると推定した。

  • 大山 順也, 平山 愛梨, 芳田 嘉志, 町田 正人, 加藤 和男, 西村 俊, 髙橋 啓介
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 5 号 p. 180-184
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    CuゼオライトはCH4の部分酸化反応触媒として機能する。これまでに筆者らは様々なCuゼオライトのCH4部分酸化反応に対する触媒活性を評価し,Cu-CHAとCu-MORが比較的高い性能を示すことを明らかにしてきた。さらに,Cu-CHAとCu-MORの酸化還元挙動をin situ Cu K-edge X線吸収微細構造(XAFS)分光法を用いて評価してきた。本研究では,CO2選択性が高かったCu-MFIについて,in situ XAFS分光法を用いて解析し,その酸化還元速度を評価した。Cu-MFIのデータとこれまでのCu-CHAとCu-MORのデータを合わせて,Cu2+/+の酸化還元速度とCH4酸化活性および部分酸化物選択性の関係について調べた。その結果,Cu2+からCuへの還元速度はCH4酸化活性と強い相関があることが確認できた。これは,CH4のC–H活性化の際にCu2+が還元されるためである。一方,Cu2+/+の酸化還元速度と部分酸化物選択性との間には相関は認められなかった。

ノート –特集「長野大会」–
  • 竹内 勝彦, 髙橋 慧, 石坂 悠介, 小泉 博基, 長江 春樹, 松本 和弘, 深谷 訓久, 桑原 純平, 神原 貴樹, 崔 準哲
    原稿種別: ノート
    2023 年 66 巻 5 号 p. 185-188
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    再生可能な試薬であるテトラメチルオルトシリケートを用いたCO2からの有機カルバメート合成の触媒となる亜鉛–フェナントロリン錯体について,フェナントロリン配位子上に置換基を導入し,反応性の向上と固定化用リンカーの導入可能位置を調査した。具体的には,電子供与基または電子求引基を有する種々のphen誘導体を配位子とするZn(OAc)2錯体,(X-phen)Zn(OAc)2を触媒として用いてフェニルカルバミン酸メチルの合成を検討し,その触媒活性を(phen)Zn(OAc)2と比較することで評価を行った。その結果,2,9位にアルキル基,4,7位にハロゲンが置換したX-phen配位子(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン,2,9-ジブチル-1,10-フェナントロリン,4,7-ジクロロ-1,10-フェナントロリン,4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン)を有する触媒は,(phen)Zn(OAc)2に比べて著しく効率が低いことが明らかとなった。一方,その他のX-phen(4,7-ジメトキシ-1,10-フェナントロリン,4,7-ジメチルアミノ-1,10-フェナントロリン,3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン,4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン,4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン,5-ニトロ-1,10-フェナントロリン)を用いた場合,phen配位子に導入された置換基が電子供与性か電子求引性かにかかわらず,(phen)Zn(OAc)2と大きく変わらない収率を示した。上記のカルバメート合成反応に影響を与えない置換位置や官能基の種類に関する情報は,phen配位子にリンカーを導入して触媒を固定化する際に有用であり,カルバメート合成の高効率化に寄与することが期待できる。

技術報告 –特集「長野大会」–
  • 内田 充, 秋本 淳, 中村 博幸, 野﨑 隆生
    原稿種別: 技術報告
    2023 年 66 巻 5 号 p. 189-193
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    産業プラント事業者では,事故事例やヒヤリハット報告等の膨大な量のテキスト情報の有効活用は,これまで主にベテラン従事者の知恵や経験に依存していた。ところが,経験豊富なベテラン従事者の高齢化や退職に伴い,その有効活用手法は産業プラント事業者の共通の課題となっている。この課題解決のため,AI技術を用いた解析方法である単語に基づいた解析方法(テキストマイニング+ベイジアンネットワーク),および技術資料に基づいた解析方法(オントロジー)を活用し,ユーザーの利用を想定した各解析方法のプロトタイプを作成した。今後は,作成したプロトタイプをクラウド上で活用するためのシステム化を行い,「安全情報DB」と「解析プログラム」を備えた「保安情報活用プラットフォーム」を構築する予定である。また,継続的に実運用できるシステムへ繋げていくため,システムを立ち上げた後の運営/管理の方法についての検討にも取り組んでいく。

feedback
Top