Journal of the Japan Petroleum Institute
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66 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総合論文
  • 志村 勝也
    原稿種別: 総合論文
    2023 年 66 巻 2 号 p. 31-39
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    本総合論文では半導体光触媒を用いた光触媒的メタン水蒸気改質ならびに担持コバルト触媒を用いたフィッシャー · トロプシュ合成に関する著者らのこれまでの研究成果を紹介する。メタンは石油代替資源として利用拡大が期待されるが,非常に安定な炭化水素であるため変換に高温を必要とする場合が多く,より温和な変換プロセスの開発が望まれている。著者らは光エネルギーと光触媒を用いた低温でのメタン変換を試み,白金添加ランタンドープタンタル酸ナトリウム等の半導体光触媒を用いると室温でメタンと水から効率的に水素が生成することを見出した。フィッシャー · トロプシュ合成触媒の開発では,担体の結晶相と細孔構造,プロモーターの種類と量,コバルト添加法を精密に制御することでコバルト金属ナノ粒子の分散性の向上と電子状態の最適化を同時に達成し,貴金属フリーで高活性を示す安価なコバルト触媒の開発に成功した。

  • 多田 昌平
    原稿種別: 総合論文
    2023 年 66 巻 2 号 p. 40-47
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    CO2水素化反応によるメタノール合成反応の代表的な触媒の一つにCu系触媒があるが,十分に性能が示されていないのが現状である。そこで本総説では,Cu系触媒の新たな開発指針を紹介する。それは,触媒前駆体中のCu配位構造に着目することで,触媒中の活性点構造を制御するものである。この指針を採用するためには,まず特異なCuクラスターを有するCuドープ金属酸化物を調製することが必須である。このCuドープにより,以下の三つのことが可能となる:(1)金属酸化物担体の結晶構造制御,(2)水素還元によるCuナノ粒子形成,(3)劣化触媒の再生。この指針に基づいて,著者らの研究グループは,CO2水素化反応によるメタノール合成反応に特化したCu/a-ZrO2a-=非晶質)とCu/MgAl2O4を開発するに至った。結晶構造制御およびCuナノ粒子形成は触媒活性を,再生能は耐久性を改善することにつながった。触媒前駆体中の活性金属種の配位構造に着目することで,触媒開発のみならず,活性金属種の特異な構造や挙動の発見につながると考える。

  • 福岡 淳, 小林 広和
    原稿種別: 総合論文
    2023 年 66 巻 2 号 p. 48-56
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    本総説では,植物や海洋由来の豊富なバイオマスであるセルロースやキチンを原料として,高付加価値物を合成するための不均一系触媒に関する我々の研究を解説した。セルロースの分解では,担持白金触媒がセルロースを加水分解水素化してソルビトールに変換することを見出した。その後,炭素担持白金が耐久性の高い二元機能触媒として働くことを見出し,担体が弱い固体酸として機能することを明らかにした。これが,セルロース加水分解用の弱酸点をもつ炭素触媒の開発につながった。セルロース加水分解では,結晶セルロースと炭素触媒を混合してボールミルによる前処理を行い,固体基質と固体触媒の物理的接触を増加させることが必須である。この方法により,セルロースからグルコースの高速かつ高選択的な合成が可能となった。活性-構造相関の検討から,セルロースが触媒上の芳香族表面にCH-π 結合を介して吸着し,弱酸点がセルロースのグリコシド結合を攻撃する反応機構を解明した。触媒性能の比較から,不均一系炭素触媒が酵素や均一系硫酸触媒よりも優れていることを示した。さらに,炭素触媒はバイオスティミュラントとして機能するセロオリゴ糖の合成にも有効である。我々はキチンの解重合についても検討を行い,メカノキャタリシスによる加水分解によりN-アセチルグルコサミン(NAG)やキチンオリゴ糖が高選択率で得られることを見出すとともに,NAGはさらに様々な有機窒素化合物に変換することが可能であることを示した。

一般論文
  • 稲垣 怜史, 前川 裕城, 大類 有基, 若月 陸人, 西 裕子, 日吉 範人, 窪田 好浩
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 2 号 p. 57-67
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    メチルシクロヘキサン(MCH)は液体有機水素キャリア(LOHC)として有望視されているが,MCHと沸点の近い五員環化合物に異性化することが避けられないため,MCHを反応させずに五員環化合物を選択的に変換することが求められている。Ir/SiO2触媒を用いることで,反応系内に過剰量のMCHが存在しても,メチルシクロペンタン(MCP)の選択的加水素分解を効率的に進行することを明らかにした。Ir/SiO2およびRh/SiO2触媒は,200 ℃でのMCPの加水素分解において高い転化率を示したのに対して,MCHはほぼ反応しなかった。一方,Pt/SiO2触媒は200 ℃でMCPとMCHのいずれもほとんど反応しなかった。Ir/SiO2およびRh/SiO2触媒でのMCPとMCHの反応性の違いは,MCPがMCHに比べて比較的高いひずみエネルギーと生成エンタルピーをもつためと考えられる。さらに,実際のLOHC系での不純物であるエチルシクロペンタンの加水素分解を実施したところ,Ir/SiO2触媒では過剰量のMCHの存在下であってもこの反応が優先的に進行することが分かった。

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