本論文では新規の高活性脱硫触媒を開発するために, 脱硫反応のモデル反応であるチオフェンおよびベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に対する貴金属(NM)担持ゼオライトおよびその関連物質 (アルミナ層間架橋粘土化合物 (Al-PILCs) およびメソポーラスシリカ (MCM-41)) の触媒特性を検討した。
貴金属を担持したゼオライト, アルミナ層間架橋粘土化合物(Al-PILCs) およびメソポーラスシリカ (MCM-41) によるチオフェンの水素化脱硫反応では, Pt/HZSM-5, Rh/Al-PILM (モンモリロナイト), 硫化Rh/Al-PILH (ヘクトライト) およびPt/MCM-41触媒が高活性かつ安定性に優れた触媒特性を示した。また, これらの触媒の活性は市販のCoMo/Al
2O
3系脱硫触媒よりも高いものであった。
さらに, ベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に対して, Pt/HZSM-5, Pt/Al-PILHおよびPt/MCM-41はCoMo/Al
2O
3触媒よりも高活性であり, これらの触媒は石油中の分子サイズの大きな有機硫黄化合物の水素化脱硫に対して高い能力を有していることがわかった。したがって, ゼオライトおよび関連物質に担持した貴金属系触媒は石油の新しい脱硫触媒として大きな可能性を有しているものと考えられる。
一方, 水素化脱硫反応に対する貴金属担持ゼオライトおよび関連物質系触媒の高活性発現の原因は, これらの触媒は脱硫反応に対して二元機能触媒として作用するためであることが考えられた。すなわち, これらの触媒の貴金属は水素の活性化の活性点として作用し, スピルオーバー水素を生成する。一方, 担体の酸点はチオフェン類の活性化の活性点として作用し, 活性化したチオフェン類を生成する。貴金属上で生成したスピルオーバー水素は担体上を移動し, 酸点上で生成し活性化したチオフェン類を攻撃して水素化脱硫反応が進行する。したがって, より高活性な貴金属担持ゼオライトおよび関連物質系脱硫触媒を開発するためには, 触媒中の貴金属の水素活性化能と担体の酸性質の高度な調和が重要である。
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