Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
53 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • Rich Threlkel, Chris Dillon, Udayshankar G. Singh, Michael Ziebarth
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 53 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    原油中の高沸点留分をより高価値の留出油にアップグレードするためのプロセスの選択肢について概観した。残油水素化脱硫(RDS)と残油流動接触分解(RFCC)の組合せにより,副製品の生成を最小限に抑えつつ輸送用燃料と化学原料の製造収率を最大化することが可能である。このプロセススキームでは,重質油中に含まれる残留炭素やニッケル・バナジウム等の不純物により,RDS触媒/RFCC触媒ともに厳しい環境にさらされることから,技術的な困難を伴う。本論文ではまず,Ni-Moを担持したRDS触媒をパイロット試験装置に適用し,重質の常圧残油(AR)を水素化処理した結果を示した。RDSパイロット試験装置で触媒の寿命試験を行い,製品サンプルを採取して蒸留し,分析を行った。RDS用の新たに開発した触媒を適用するとともに運転条件を変化させて,より重質で不純物の多い残油を処理できるようRDSの能力向上を図った。次に,このRDS製品を原料として,Advanced Cracking Evaluation(ACE)試験装置を用いてRFCC触媒の反応性を確認した。改良されたRFCC触媒は残油中の耐メタル性を向上させ,原料油の分解を促進させる。RDS触媒とRFCC触媒の組合せを最適に選択することにより,重質な残油から高価値の留出油を高収率で製造できることを示した。
一般論文
  • Mohammad Nurunnabi, 村田 和久, 岡部 清美, 花岡 寿明, 宮澤 朋久, 坂西 欣也
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    種々のルテニウム前駆体より含浸法で調製したRu/Mn/Al2O3およびRu/Al2O3触媒を用いて流通式撹拌反応装置にてFischer-Tropsch(FT)反応試験を行い,H2吸着量測定,TPR,XRD,TEMおよびXPSの各種キャラクタリゼーションを行った。Ru/Mn/Al2O3については,塩化ルテニウムより調製したRu(Cl)/Mn/Al2O3がアセチルアセトナトルテニウムおよびニトロシル硝酸ルテニウムより調製したRu(A)/Mn/Al2O3,Ru(N)/Mn/Al2O3よりも高い活性と安定性を示した。CO転化率はRu(Cl)/Mn/Al2O3≫Ru(A)/Mn/Al2O3>Ru(N)/Mn/Al2O3の順であり,この序列は同様に前駆体を変えたRu/Al2O3の場合のCO転化率の序列と一致した。キャラクタリゼーションの結果,ルテニウム粒子径および担体の細孔径が8 nmサイズであることが高いFT活性に寄与していることが示唆される。また,Ru(Cl)/Mn/Al2O3とRu(Cl)/Al2O3触媒を比較すると,Ru(Cl)/Mn/Al2O3が触媒劣化への高い耐性を示したのに対して,Ru(Cl)/Al2O3上では低い活性と急速な活性劣化が顕著に見られた。この結果から,塩化ルテニウムより塩素原子を奪う形で塩化マンガンが生じることにより,触媒表面上の金属ルテニウム活性種が増加し,触媒活性劣化が抑制されると考えられる。
  • 里川 重夫, 大貫 琢郎, 高廣 智基, 浦崎 浩平, 小島 紀徳
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    金属イオン交換Y型ゼオライトを用いて都市ガスに含まれる付臭剤成分であるターシャリーブタンチオール(TBT)の常温吸着除去を行った。乾燥ガス条件では市販のNa-Y型ゼオライトでも適度なTBT吸着容量を示すが,含水ガス条件では低下した。銀イオン交換Y型ゼオライトは含水ガス条件で銀の導入量に従いTBT吸着容量は増加するが,乾燥ガス条件では銀の導入量に従い低下した。硫化銀クラスタの生成が性能低下を引き起こしていると思われた。銅イオン交換Y型ゼオライトは含水ガス条件では銅の導入量に従いTBT吸着容量は増加し,乾燥ガス条件ではNa–Y型ゼオライトと同等のTBT吸着容量を示した。銅イオン交換Y型ゼオライトがいずれの条件でも適度な性能を示すことが分かった。使用後のサンプルを空気中で加熱処理すると再生できるが,銀イオン交換Y型ゼオライトより銅イオン交換Y型ゼオライトの方が性能低下割合は小さかった。
  • 阿部 幸太, 大嶋 正明, 黒川 秀樹, 三浦 弘
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    Fe–K系酸化物触媒とFe–Ce–K系酸化物触媒を用いてエチルベンゼン脱水素反応を行い,Ceの添加効果を調査した。CeはFeとの共沈により添加した。少量(原子比Ce/Fe=3.0×10−5)のCeの添加で活性は顕著に向上したが,添加量Ce/Fe=2.0×10−3を越えると活性にそれ以上の変化はみられなかった。調製した触媒の反応前後のBET比表面積を測定し,さらにSEM観察,XRDにより分析した。Ceの添加により比表面積は増加することが分かった。しかしCeを添加しても,表面積あたりのスチレン収率に変化は見られなかった。SEMにより反応前後の触媒の表面形態を観察したところ,反応前後ともにCe添加触媒の方が粒径の小さい粒子が分散していることが分かった。実験結果からCeの添加は結晶成長の抑制効果があり,比表面積の増加によりスチレン収率が向上することが示された。
  • 出口 清一, 柴田 直樹, 武市 敏典, 古川 ゆふ, 井須 紀文
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 53 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    光触媒水分解の促進には生成水素・酸素の再結合(逆反応)抑制が必須であり,これに生成酸素を消費する酸化犠牲剤の添加が有効とされる。本研究では,自然界の光合成を含めたカーボンニュートラルの観点から可食の糖類,さらに非食用の木酢液に加え,これの主成分である酢酸を酸化犠牲剤として選定した。光触媒としては電子バンド構造の特徴からTiO2が最有望であり,本研究では市販3種のTiO2にPtを担持し実験に供した。実験装置には,光触媒水分解水素生成の基礎特性ならびに最適条件の明示を目的としていることから,簡易バッチ反応器を用いた。その結果,0.10 wt%でPtを担持したP25にて,50 g/l グルコース水溶液から最速水素生成速度2.60 l/(m2・h)を得た。pH調整による若干の速度向上を確認したが,薬剤消費対効果の観点からpH無調整を優位とした。単糖(グルコース・フルクトース)と二糖(スクロース)の水溶液では大差ない高い水素生成速度が得られ,多糖のデンプンでは1/8にまで速度が低下したことから,高分子を酸化犠牲剤とするために単分子化・短分子化・吸着制御などが必要とされた。非食用の木酢液では非常に低い水素生成速度が得られ,他の天然非食用酸化犠牲剤探索が必須課題とされた。
ノート
  • 杉本 義一, Janchig Narangerel, 小澤 浩
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    シェールオイルおよびオイルサンドビチューメンの熱分解油中の中間留分(それぞれSO,OSと記す)をクリーンな輸送用燃料に転換するため,CuCl2・2H2Oによる脱窒素処理と市販NiMo/Al2O3による水素化処理について検討した。SOおよびOSの窒素含量はそれぞれ9900,1300 wtppmであったが,脱窒素処理により,それぞれ2700,700 wtppmに減少した。SOおよびOSの水素化脱窒素・脱硫反応は中東系直留軽油に比べて著しく遅く,350℃,LHSV 1 h−1の条件下においても10 wtppmレベルへの低減は困難であった。脱窒素処理により反応性は大きく向上し,脱窒素処理油のHDN反応速度は4.9~27倍,脱硫速度は2.8~5.4倍と著しく増加した。その結果,H2 8 MPa,LHSV 1 h−1,350℃の条件下において,脱窒素処理油の窒素含量は<1 wtppmに,また硫黄含量は<10 wtppmに低減した。
  • 岡部 清美, 村田 和久, 劉 彦勇
    原稿種別: ノート
    2010 年 53 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/01
    ジャーナル フリー
    アルコキシド法により調製したRu–SiO2で大細孔径シリカ表面を修飾することにより二元細孔構造を持つRu/SiO2触媒を調製し,Fischer-Tropsch(F-T)合成反応を行った。X線回折の線幅から見積もられるRu結晶子径はシリカの細孔径にあまり依存しなかったが,水素吸着量から推定されるRu粒子径は大細孔シリカの細孔径の増加に伴って増大した。このようにして調製した二元細孔構造触媒は,T=493~503 K,P=1 MPa,H2/CO=2/1,W/F=5 g-catal.h/molの反応条件下でのスラリー相F-T反応において,高価なアルコキシドの使用量を軽減した上で,高く安定した触媒活性を示した。触媒の細孔径の増大に伴って,メタン選択率が減少し,高級炭化水素への選択率が増加することが認められた。これら選択率の細孔径依存性は,細孔内におけるスラリー溶媒および反応生成物の拡散速度,ならびに触媒細孔径に依存するRu粒子径の違いによって説明された。
feedback
Top