Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
49 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総合論文
  • István Hannus, János Halász
    2006 年 49 巻 3 号 p. 105-113
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    大気中に放出される塩素化合物は成層圏のオゾン層を破壊する原因となっている。塩素化合物の処理法として,酸化して環境に優しい化合物に変換する方法と水素化脱塩素して有用な化合物に変換する方法が主流となっている。
    本論文では,触媒上での水素化脱塩素の反応機構を解明するため,ゼオライトおよび貴金属含有ゼオライト触媒上でのハロゲン化合物の挙動を分光学的手法(IR,NMRなど)により分析した。
    NMRの検討から,反応温度の上昇に伴い,クロロフルオロカーボンのゼオライトに対する反応性が増すことがわかった。水素化脱塩素の反応性は,ゼオライトの種類やイオン交換されたカチオン種に依存した。気相のIR分析の結果,CCl2F2の水素化脱塩素では,HCl,CO2およびCOCl2が反応生成物として検出された。ホスゲン中間体の生成がゼオライト骨格を破壊する主因であると考えられる。
    四塩化炭素の水素化脱塩素では,白金含有ゼオライト触媒はパラジウム含有ゼオライト触媒に比べて活性が高く,主生成物であるメタンおよび塩化水素以外にクロロホルムが中間体として生成していた。
    種々の塩素含有化合物(フッ素を含むあるいは含まないC1,C2化合物)の異なる金属を含有する種々のタイプのゼオライトによる水素化脱塩素の活性,選択性についてまとめた。
一般論文
  • 渕上 循, 石原 久也, 葭村 雄二
    2006 年 49 巻 3 号 p. 114-120
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    USY型ゼオライト担持Pt-Pd触媒を調製し,Pt-Pd粒子の分散度および水素化活性と脱硫活性に及ぼすUSY型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比および結晶粒子径の影響について調べた。USY型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が5~150の範囲で,SiO2/Al2O3モル比の増大に伴いPt-Pd粒子の分散性が向上し,テトラリン水素化活性および4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)の脱硫活性の向上も観測されたことから,Pt-Pd粒子の分散性が活性に影響を及ぼしている示唆を得た。また,結晶粒子径が約0.3 μmと3.0 μmのUSY型ゼオライトでは,Pt-Pd粒子の分散度の差は観測されなかったが,結晶粒子径の小さいUSY型ゼオライトが結晶粒子径の大きいUSY型ゼオライトに比べて高い水素化活性と脱硫活性を示すことが見出された。小結晶粒子径USY型ゼオライトは大結晶粒子径USY型ゼオライトに比べて外部表面積が大きいために,液相反応におけるゼオライト内部の利用度が高く,反応物の細孔内拡散が効果的に働いたことに起因すると推測される。
  • 勝山 和樹, 井上 健, 高橋 武重, 甲斐 敬美
    2006 年 49 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    ポリオレフィン(PP・PE等)樹脂の酸化防止効果を向上させる目的で,ビタミンE骨格をもつ2種類の化合物,S-13およびS-19を合成した。これをPPに対して0.005 wt%添加して,酸化防止効果をメルトインデックス(MI)およびイエローインデックス(YI)を用いて評価した。その結果,これらの酸化防止剤は単独でも効果があるが,既存のフェノール系およびリン系酸化防止剤と組み合わせることで相乗的な効果が得られることが分かった。過去の酸化防止作用についての知見等から,今回合成した酸化防止剤のラジカルとの反応速度が非常に大きいため,PPやPE内で生成した炭化水素ラジカルあるいはそのパーオキシラジカルと優先的に反応し,その後リン系あるいはフェノール系酸化防止剤により再生されることが,この相乗効果の原因であると考えられた。
  • 久保田 岳志, 大嶋 伸之, 中原 康行, 柳本 真希, 岡本 康昭
    2006 年 49 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    メタン芳香族化に活性なZSM-5担持モリブデン触媒について触媒反応試験およびMo K吸収端 EXAFS,アンモニア昇温脱離およびXPSによるキャラクタリゼーションを行った。Mo/ZSM-5触媒は5 wt%の担持量において最大のベンゼン生成活性を示した。触媒の活性はMo K吸収端EXAFSの解析結果より推定されるZSM-5担持炭化モリブデン粒子径と関係づけられた。また,触媒への第二成分の金属元素の添加によってベンゼン生成活性は向上しなかった。この結果は,添加した金属原子によるゼオライトのプロトンの競争的な消費のため,ZSM-5の酸点と活性種である炭化モリブデンの前駆体となるモリブデン酸化物粒子間の相互作用が減少し,その結果,炭化モリブデン粒子サイズの増大および酸点の減少が生じたためであると結論した。
  • 渡辺 圭太郎, 溝口 隆, 小堀 寿浩, 渡辺 幸一, 佐々木 健
    2006 年 49 巻 3 号 p. 134-139
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    製油所由来活性汚泥を製油所由来廃棄物を利用して減容化するための基礎知見を得るため,種々の薬剤の汚泥可溶化に及ぼす影響を検討した。廃ソーダや硫化ソーダは水酸化ナトリウムと同等の可溶化力を示した。約10~30分で30~34%の可溶化が達成され,都市下水活性汚泥より急速な可溶化が認められた。アミン類も少ないながら可溶化促進効果を示した。また,温度を上昇させ60℃にすると,廃ソーダや硫化ソーダによる10~30分の処理で45~50%の可溶化が達成された。製油所由来活性汚泥の可溶化が早い理由として,都市下水活性汚泥に比べ微生物相が単純で,細菌相が多いためと推定された。
  • 渡辺 圭太郎, 溝口 隆, 小堀 寿浩, 藤本 尚則, 佐々木 健
    2006 年 49 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    前報にて,製油所由来活性汚泥を製油所由来アルカリ廃棄物で減容化(可溶化)できることが認められたため,今回,高速撹拌による物理的処理を組み合わせて,可溶化処理の促進効果を検討した。
    その結果,市販高速ミキサーを用いて12,000 rpm(線速度15 m/s)で,0.05 mol/l のアルカリ条件で可溶化すると,30分で40%,1時間で50%と,高速撹拌処理を行わない場合に比べ,効果が1.3~1.4倍に増大した。温度を50℃に上昇させると,可溶化促進効果は1時間で55% にも達し,高速撹拌処理に温度を加えると,可溶化効果はより促進されることを認めた。
    さらに,1 m3のベンチスケール可溶化装置を試作し,実験室で得られた最適条件下,実際の廃ソーダを用いた可溶化処理を行ったところ,ほぼ同等の可溶化効果が達成され,簡易な高速撹拌とアルカリ廃棄物の組合せの実用性が確認された。
  • Wenhua Han, Peiwen Que
    2006 年 49 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    遺伝的アルゴリズムに焼きなまし法を組み入れ,初期において高く出現する突然変異率を徐々に低くしていく手法である遺伝的焼きなましアルゴリズム(GSAA)法は最適化手法の一つとしてよく知られており,さまざまな分野において応用されている。また,同手法は単なる遺伝的アルゴリズム手法よりもその精度は優れており,雑信号の多いデータから有用な信号のみを抽出する場合に強みを発揮するといわれている。本論文においては海底送油用パイプラインの瑕疵の検査法として広く利用されている手法である磁束漏洩非破壊検査法の信号処理へのGSAA法の適用性を実験結果に基づき検討した上で,精度よく種々の瑕疵パラメーターを再現することが可能であるとの結論を導き出している。
技術報告
  • 高橋 厚, 濱川 哲康, 藤谷 忠博
    2006 年 49 巻 3 号 p. 151-155
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    プロピレンオキシド合成触媒の迅速探索のための分析方法として,プロピレンの気相酸化反応における生成物の定量を,二つの検出器を備えた1台のガスクロマトグラフにより,プレカット法とカラムスイッチング法を組み合わせたシステムを用いることで迅速かつ簡便に行う方法を確立した。本方法により反応ガス中に含まれるC3含酸素化合物(プロピレンオキシド(PO),プロピオンアルデヒド,アセトン,アクロレイン)を始め,炭化水素(プロピレン,プロパン,エチレン,エタン),一酸化炭素,二酸化炭素,酸素を同時に30分以内で単離定量することができた。また,実際に種々の温度条件での触媒活性試験を行い,短時間で連続して分析を行うことができたことから,本方法がPO合成用触媒探索における触媒性能の迅速評価に有用であることが確かめられた。
feedback
Top