大気中に放出される塩素化合物は成層圏のオゾン層を破壊する原因となっている。塩素化合物の処理法として,酸化して環境に優しい化合物に変換する方法と水素化脱塩素して有用な化合物に変換する方法が主流となっている。
本論文では,触媒上での水素化脱塩素の反応機構を解明するため,ゼオライトおよび貴金属含有ゼオライト触媒上でのハロゲン化合物の挙動を分光学的手法(IR,NMRなど)により分析した。
NMRの検討から,反応温度の上昇に伴い,クロロフルオロカーボンのゼオライトに対する反応性が増すことがわかった。水素化脱塩素の反応性は,ゼオライトの種類やイオン交換されたカチオン種に依存した。気相のIR分析の結果,CCl
2F
2の水素化脱塩素では,HCl,CO
2およびCOCl
2が反応生成物として検出された。ホスゲン中間体の生成がゼオライト骨格を破壊する主因であると考えられる。
四塩化炭素の水素化脱塩素では,白金含有ゼオライト触媒はパラジウム含有ゼオライト触媒に比べて活性が高く,主生成物であるメタンおよび塩化水素以外にクロロホルムが中間体として生成していた。
種々の塩素含有化合物(フッ素を含むあるいは含まないC1,C2化合物)の異なる金属を含有する種々のタイプのゼオライトによる水素化脱塩素の活性,選択性についてまとめた。
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