Journal of the Japan Petroleum Institute
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49 巻, 2 号
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一般論文
  • 神田 康晴, 小林 隆夫, 上道 芳夫, 杉岡 正敏
    2006 年 49 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    貴金属担持シリカゲル(SiO2)およびアルミナ修飾シリカゲル(Al2O3-SiO2)のチオフェンの水素化脱硫反応に対する活性と触媒特性について検討した。Al2O3-SiO2は硝酸アルミニウム(Al(NO33・9H2O)水溶液を用いた含浸法により調製した。Pt/8 wt% Al2O3-SiO2触媒は種々の担持貴金属触媒において高い水素化脱硫活性を示し,この活性は市販のCoMo/Al2O3系脱硫触媒の活性を上回るものであった。また,担持貴金属触媒の耐硫黄性について検討した結果,SiO2にAl2O3修飾を施すことによって担持貴金属触媒の耐硫黄性は向上し,とくに担持Pt触媒において著しい耐硫黄性の向上が見られた。Pt/Al2O3-SiO2触媒はチオフェンの水素化脱硫反応において,生成した不飽和C4炭化水素に対して高い水素化能を有していた。触媒は2-プロパノールの脱水反応,クメンの分解反応,XRD,水素吸着およびFT-IRによりキャラクタリゼーションした。その結果,Pt/8 wt% Al2O3-SiO2の白金の分散度はPt/SiO2よりも著しく高く,その白金の粒子径は種々の担持貴金属触媒において最小となることが分かった。また,8 wt% Al2O3-SiO2はSiO2よりも高い酸性質を有していることが明らかとなった。さらに,8 wt% Al2O3-SiO2上にはBrönsted酸点が存在することが分かった。8 wt% Al2O3-SiO2担体に吸着させたチオフェンのFT-IRスペクトルより,チオフェン分子と8 wt% Al2O3-SiO2のBrönsted酸点との間には相互作用があることが明らかとなった。Pt/SiO2および8 wt% Al2O3-SiO2を用いた2層型触媒のHDS活性は,これらの触媒のHDS活性を合わせたものよりも高いことが分かった。これより,Pt/Al2O3-SiO2触媒におけるHDS反応にはスピルオーバー水素が関与していることが考えられる。Pt/Al2O3-SiO2触媒によるチオフェンの水素化脱硫反応では,Al2O3-SiO2上のBrönsted酸点およびPt粒子が活性点として作用することが明らかとなった。
  • 佐々木 厳, 森吉 昭博, 八谷 好高
    2006 年 49 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    ブリスタリング現象は,夏季の特に暑い時期に生じるアスファルト舗装の主要な損傷の一つである。この現象は,アスファルト混合物中の連続空隙を通して外部から浸入した雨水が原因であるとされてきた。しかしながら,アスファルト舗装の表層,特にブリスタリング等の損傷が生じる箇所周辺は不透水である。つまり,ブリスタリング現象を引き起こす滞留水の要因として,液体状態での水の浸透は考えにくい。著者らは,大気中の湿気が水蒸気として透過し結露することが舗装体内への水分浸入の鍵を握る現象であることを既報で指摘した。本研究では,アスファルト舗装混合物中の水分移動機構の検討として,水および湿潤空気の透過係数に注目することにより,ブリスタリング現象において鍵となる水分浸入の要因を実験検討した研究成果を報告する。
  • Zahra Jeirani, Ali Mohebbi
    2006 年 49 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    マッドケーキのろ過量ならびに浸透率は掘削流体の特性を評価するための重要なパラメーターである。過去十年の研究において,その評価手法としては種々の方法が提案されてきている。本報告においては,スタティックな泥水ろ過実験データを使用し,人工ニューラルネットワーク(ANN)手法に基づいた上記の二つの泥水特性(マッドケーキろ過量ならびに浸透率)の評価方法に関しその適用可能性を検討している。本手法においては,泥水ろ過実験データの75% がニューラルネットワーク学習に供され,残りの25% の実験データが同ネットワークのパフォーマンスチェックに利用された。その結果,高い精度で実験データを評価することが可能であることが判明した。さらに,実験データに基づいたGhorbaniの関係式により推定されたマッドケーキろ過量,浸透率値とも比較され,その整合性についても確認された。
  • Tran Mai Huong, 鈴木 綾乃, 水嶋 生智, 大北 博宣, 角田 範義
    2006 年 49 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    シリカ担持ケイモリブデン酸(SMA)触媒を用い,メタン部分酸化反応に高活性な条件下でエタン酸化反応を試みた。反応は,無触媒反応(熱反応)が共存する条件で行い,触媒の作用を調べた。
    反応中に水蒸気が存在しない場合や水蒸気量が少ない場合では,SMAは酸素によりα-MoO3へと変化した。この時,C2H6転化率は向上したが生成物はC2H4とCOであり,HCHOはほとんど生成しなかった。水蒸気が過剰になると,β-MoO3とSMAの存在により,HCHOが生成し選択性も向上した。これは,SMAの固体酸性によるC-C結合の切断が部分酸化反応を促進させたものと考えられる。さらに,C2H6と水蒸気が共存するときMoO2も生成したことから,格子酸素がエタンの活性化や酸化へ関与していると推定される。
  • 佐藤 光三, 藤田 圭吾
    2006 年 49 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    地下流体移動の検知を目的として,潮汐変形現象を利用したモニタリング手法を提案・検証する。固体地球は外力として天体の起潮力を受けて変形し,これはさらに,孔隙内流体圧力の周期的変動を引き起こす。この圧力変動は孔隙内流体飽和率の関数として与えられる孔弾性パラメーターχ に関連付けられるため,χ を流体移動モニタリングの指標として用いることが考えられる。
    長期トレンド圧力や測定誤差を含む実際の測定圧力データから地球潮汐に起因する圧力変動を抽出するために,三次スプライン補間と最小二乗法を用いたアルゴリズムについて検討した。数種類の数値実験を行った結果,適切な時間節点間隔を設定することによって,半日周潮ならびに日周潮に応じた圧力変動の抽出が可能であることが示された。
    開発した解析アルゴリズムを実際に観測された圧力データに適用し,抽出された半日周ならびに日周圧力変動が地球潮汐による体積膨張によって説明できることを確認した。χ の時系列変化から,置換流体の観測坑井への到達が検知され,地球潮汐に起因する圧力変動を利用した地下流体移動モニタリングの可能性が示された。
ノート
  • 黎 暁紅, 楊 佳〓, 劉 忠文, 朝見 賢二, 藤元 薫
    2006 年 49 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    パラジウム担持ゼオライト(Pd/Zeolite)触媒とPd/SiO2+USYよりなるハイブリッド触媒を用いてn -ヘプタンの水素化転換反応を行った。ゼオライト上の水素移動が生成物の選択性に大きく影響を及ぼした。Pd担持ZSM-5触媒上では水素化分解反応が主に進行したのに対し,Pd担持USYとPd担持β触媒上では異性化反応が主に進行した。生成物の中のイソブタンの定量により,n -ヘプタンの水素化分解では,分解したフラクションが異性化するのではなく,n -ヘプタンは異性化して分解することが分かった。Pd/SiO2とUSYとの物理混合よりなるハイブリッド触媒は,その構成成分単独では全く示さないにもかかわらず,優れた異性化,分解活性を示した。また,金属サイトと酸点との量のバランスにより触媒の活性および生成物の選択性を制御し得ることが明らかとなった。この一連の触媒上でのn -パラフィンの反応の挙動について,スピルオーバーの概念に基づく妥当な反応機構を提案した。
  • 佐藤 光三, 岩崎 大記
    2006 年 49 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    トレーサー試験を用いたフラクチャー型システムのキャラクタリゼーションにおいて,坑井配置がどのような影響を及ぼすかを考える。そのために,1000個のフラクチャー媒体確率実現を作成し,フラクチャーの向きに対して平行,対角,直交関係にある三種類の坑井配置についてトレーサー試験の数値実験を行った。実験結果に基づいて,フラクチャー代表値(フラクチャーの合計長さと幾何平均長さ)とトレーサーの流出濃度曲線の形状パラメーターとの相関を,ノンパラメトリック回帰手法によって求めた。平行ならびに直交坑井配置においては,この相関によって一定の精度をもったフラクチャー代表値評価が可能である。一方,対角坑井配置においては,フラクチャー代表値によって各フラクチャー媒体確率実現を区別することができず,結果として評価の精度は低くなる。フラクチャー型システムのキャラクタリゼーションを目的としたトレーサー試験においては,対角坑井配置を採るべきではない。
技術報告
  • 萩尾 広典, 深川 裕司
    2006 年 49 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    LPGは供給インフラが確立されているため,家庭用燃料電池の燃料として有望である。しかし,LPGの使用にあたっては,LPG使用量に応じて硫黄濃度が変化し,ボンベ終盤では100 wtppm程度の高い硫黄濃度となるため,比較的大きな脱硫装置が必要であり,脱硫技術の向上が課題であった。
    我々は,LPGボンベ交換作業に着目し,LPGボンベ交換時に脱硫剤を交換する方法について検討し,脱硫剤が廉価であれば,脱硫寿命が短期でも実用上の要求を満たすことがわかった。
    研究の結果,銅を担持させた活性炭が高い硫黄除去特性を持ち,小型の脱硫装置との組合せにより,供給するLPGの硫黄濃度を数wtppmレベルに維持できることがわかった。
    この脱硫装置の開発により,LPGを燃料とする家庭用燃料電池の普及が促進されることが期待される。
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