Journal of the Japan Petroleum Institute
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56 巻, 6 号
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総合論文
  • 笠井 秀明, Allan Abraham B. Padama, 西畑 保雄, 田中 裕久, 御立 千秋
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 6 号 p. 357-365
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    密度汎関数理論に基づく第一原理計算を援用し,銅ベース触媒における一酸化窒素の解離反応を調査した。銅終端されたCu2O(111)表面での一酸化窒素の解離はRh(111)表面での反応性に匹敵し,その遷移状態は両表面ともに気相状態よりエネルギー的に安定であった。これらの結果は,表面銅原子の電子状態や表面構造の変化に起因している。Cu2O(111)表面の銅原子の局所状態密度から,d軌道がフェルミ面近傍に移行しており,一酸化窒素の吸着および解離を容易化している。Cu(111)表面では,解離に大きな活性化障壁が伴い,一酸化窒素は脱離する傾向にある。また,酸素終端されたCu2O(111)表面への窒素原子と酸素原子の解離吸着は,表面下の酸素原子との反発によって不安定であることが分かった。本研究は,貴金属・有害物質を用いない機能性材料創成に向け,文部科学省による元素戦略プロジェクトと他研究グループとの連携を通じて行われた。
  • 後口 隆
    原稿種別: 総合論文
    2013 年 56 巻 6 号 p. 366-370
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    分子シミュレーション手法(密度汎関数法-DFTおよびハイブリッド大規模計算手法ONIOM)を用いた不均一固体酸触媒上に存在する酸点の挙動に関する検討を行った。硫酸処理したZrO2において発現する強い酸性質は,表面に共吸着したSO3とH2Oからなる局所構造に起因する可能性を見出した。MFI型ゼオライト中に導入されたTi原子近傍の局所構造および各Tサイトにおける相対的安定性について,すべてのTサイトを含む大きなクラスターモデルを用いて検討した。ベータ(BEA)型ゼオライト上のプロトン酸点近傍の局所構造に関し検討し,二つの酸点が酸素6員環内で向き合うように存在している構造が特に安定であることを見出した。最後に,不純物を含まないSiO2のモデルとして水晶の表面を用い,複数の表面OH基が相互に近接し,相互作用を及ぼしうるアンサンブルを形成した際には比較的強い酸性度を示すことを見出した。これらの検討内容を紹介する。
一般論文
  • 村田 和久, Viboon Sricharoenchaikul, 劉 彦勇, 稲葉 仁, 高原 功
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 6 号 p. 371-380
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    熱分解GCMS,石英反応管などを用いて,ジャトロファ搾油廃材の急速熱分解のための金属修飾炭素触媒の探索を行った。熱分解GCMSを用いた結果から,含浸法でNiを修飾した活性炭(AC)触媒が有効であることを見出した。主生成物は芳香族または脂肪族炭化水素であり,合計選択率は79.4 %,含酸素化合物などが副生した。Ni/活性炭触媒を用いて石英反応管で反応させた時,芳香族および脂肪族炭化水素選択率は熱分解GCMS法より少し低く64.1 %であった。Ni/活性炭触媒上での水素移動を通して,逐次反応が600 ℃で起こっていることを推定した。商業規模で液体燃料製造プロセスを構築するためには,触媒性能そのものや反応方法などの改良がさらに必要であることが分かった。
  • 松橋 博美, 谷口 央, 平井 美佐子, 山本 啓太, 鈴木 絢平
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    酸化コバルトの酸性度を向上させるため,酸化コバルトを硫酸化した。その際,硫酸コバルト水溶液を含浸液として用いることとし,得られた化合物を高温で焼成した。通常の酸化物硫酸塩化の方法では硫酸を用いるが,酸化コバルトは硫酸に溶解してしまうためである。酸触媒反応であるエタノール脱水反応に対する酸化コバルトの触媒活性は,硫酸塩化により著しく向上した。本触媒の活性は,酸触媒であるシリカアルミナ触媒に匹敵した。本研究で提案した方法にて調製した硫酸化ジルコニア,すなわち硫酸ジルコニウムをジルコニアに含浸担持して得たもので,触媒することのできるペンタン異性化には,本硫酸化酸化コバルトは活性を示さなかった。最高活性は1073 Kでの加熱で得られた。この温度はこれまでの硫酸化金属酸化物の中で最も高かった。
  • 中嶋 伸昌, 芹口 慶洋, 加藤 睦美, 吉成 幹記, 吉田 俊男, 渡辺 克哉
    原稿種別: 一般論文
    2013 年 56 巻 6 号 p. 388-394
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    重質油を付加価値の高い軽質留分に転化することは重要である。これを達成する方策の一つとして,直接脱硫装置でより重質な原料油を処理し,この生成油をFCCやRFCCで処理することが挙げられる。直接脱硫装置でより重質な原料油を,同一触媒,同一プロセス条件において処理した場合には,生成油の硫黄分が上昇し,これを補うために運転温度を上昇させることが必要となる。この運転温度上昇は結果として触媒寿命の短縮につながる。そのため,残油水素化脱硫触媒について多くの研究が行われており,NiMo/Al2O3触媒にリンを添加すると脱硫活性が向上することは良く知られている。本研究では,このリン添加NiMo/Al2O3触媒の調製時にアルミナ担体を亜鉛でさらに修飾すると触媒上へのコーク堆積量が減少し,脱硫活性の初期劣化を抑制できることを明らかにした。IR分析により触媒表面のOH基を分析したところ,リン添加は触媒上の酸性OH基を増加させるが,さらに亜鉛で修飾することで酸性OH基の増加が抑制され,これが触媒のコーク劣化を抑制したものと考えられる。亜鉛・リン修飾技術を用いたNiMo/Al2O3残油水素化処理触媒はベンチプラントにおける長期寿命試験においても初期劣化が抑制され,結果として優れた安定期での脱硫活性を示した。本触媒を商業装置に用いて実証運転を行った結果,想定の優れた性能が発揮された。
ノート
  • 南雲 亮, 岩田 修一, 森 秀樹
    原稿種別: ノート
    2013 年 56 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    近年,バイオマスのガス化によってCH4を主成分とする合成天然ガス(SNG)を製造し,化石資源の代替燃料に活用するアプローチの実用化が検討されている。バイオマスのガス化は吸熱反応であるため,メタネーションの発熱反応と統合することで,オートサーマル方式でSNGを製造できる可能性がある。そこで本報告は,オートサーマル型SNG製造のプロセス性能を,未反応のH2モル分率やCH4収率という重要な指標に基づいて評価した。特に,SNG製造後のCO2分離には多大な熱エネルギーを要する点を踏まえ,省エネルギーなCO2回収を実現する有力候補としての膜分離法に着目した。その上で,オートサーマル型SNG製造システムに膜分離ユニットを導入することの可否を,プロセス計算によって評価した。その結果,膜分離のユニット性能を表すCO2/CH4分離係数の値が50を上回ると,CH4損失率が2 %未満に抑えられることが判明した。本報告で得られた結果は,CO2膜分離型SNG製造プロセスの実現可能性を検証するための基礎データとして位置づけられる。
技術報告
  • 望月 剛久, 鳥羽 誠, 葭村 雄二
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 56 巻 6 号 p. 401-405
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    実験室規模の急速熱分解反応で生成するエアロゾル状態のバイオオイル(タール)を高効率に回収するため,3種類のオイルミストトラップを比較検討した。オイルミストトラップとして,冷却方式,溶媒方式,電気集塵方式を用いた。急速熱分解反応は,ジャトロファケーキおよびスギを300~500 μmに整粒したものをバイオマス原料として,流動層型反応器において500 ℃で行った。電気集塵器の印加電圧を9 kVとすることで,ほぼ全量のバイオオイルを回収できることが観察された。バイオオイルの液収率は電気集塵方式>溶媒方式>冷却方式の順となった。溶媒トラップ方式も比較的高い回収率を得られるが,溶媒からの分離が必要となり,電気集塵方式が最も効率的にバイオオイルを回収できることが見出された。
  • 田崎 雅晴, 岡村 和夫, Mark Sueyoshi, Rashid Al-Maamari
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 56 巻 6 号 p. 406-413
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    原油とともに生産される地下水である随伴水には,除去が困難な油分や金属が含まれる。その量は一般的に原油掘削量の3~6倍にもなり,産油国共通の最大の廃棄物である。特に,オマーンでは随伴水の割合が高く,原油の6倍量になる。このオマーンの油田から生産される石油随伴水について,窒素ガスマイクロバブルを利用した凝集浮上処理を主体とし,アンスラサイト濾過,活性炭吸着を装備したパイロットプラントを用いて連続処理試験を行い,その除去性能を検討した。三つのサイトの異なる水質の随伴水による試験を行った結果,どの随伴水においても良好な油分除去が確認された。随伴水原水の油分濃度が低いサイトにおいては,凝集浮上処理のみで,オマーン国再生水利用基準の油分濃度をクリアする処理が可能であった。また,油分濃度が高い二つのサイトの随伴水においては,凝集浮上処理により海洋投棄基準を達成し,さらに吸着処理まで行うことにより再生水としての基準を達成することができた。原水に硫化水素等の硫黄化合物が含まれる随伴水については,硫黄化合物除去にエアレーション処理を併用することで良好な処理が可能であった。
  • 羽部 浩, 新保 外志夫, 山本 拓司, 佐藤 俊, 島田 広道, 榊 啓二
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 56 巻 6 号 p. 414-422
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    近年,バイオエタノールが化学品製造における重要な原料となっている。バイオエタノール中の不純物が,下流の化学品製造プロセスで使用する触媒の性能に影響を及ぼす可能性があるため,17種のバイオエタノールサンプルについて不純物の分析を行った。リグノセルロース系バイオエタノールは,糖・デンプン系バイオエタノールと比較して,高濃度かつ多種類の有機不純物を含んでいた。特に,リグノセルロース系バイオエタノールは,高濃度の酢酸,アセトアルデヒド,メタノールおよびフルフラールのようなフラン系化合物を含んでいた。また,リグノセルロース系バイオエタノールは,有機硫黄系不純物としてジメチルジスルフィドおよびチアゾールを含んでいたのに対し,糖・デンプン系バイオエタノールからは,ジメチルスルフィドおよびジメチルスルフォキシドが検出された。加えて,リグノセルロース系バイオエタノールからは,0.1 μg/mL以上のSiが検出された。
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