近年, 低出力レーザー照射の消炎鎮痛効果が注目されているが, その作用機序は明らかではない。今回我々は, 慢性関節リウマチ (RA) 患者の滑膜培養細胞にin vitroでレーザー照射実験を行い, そのDNA合成能に及ぼす影響を検討した。
RA患者6名の膝関節手術時に滑膜組織を採取し, 培養した滑膜細胞に波長632.8nm, 出力8.5mW±20% (実測11.5mW) の連続波He-Neレーザーを照射した。種々のエネルギー密度 (0.5, 50, 500, 2000mJ/cm
2) で照射後,
3 H-thymidineの取り込み量からみたDNA合成能を測定した。
3 H-thymid重neの取り込み量は, 6例中全例において有意に抑制された。しかし, 照射エネルギー密度の違いによるその抑制パターンは症例により異なっていた。また, 位相差顕微鏡による細胞形態観察では, 熱エネルギーによる破壊性変化等レーザー照射による明らかな変化を認めなかった。
以上より, 本実験の照射条件において, 低出力He-NeレーザーがRA滑膜培養細胞に直接作用し, 何らかの非熱効果によりその病的な細胞増殖を抑制することが推察された。
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