Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
20 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 瀧澤 理穂, 牧野 智恵
    2025 年20 巻2 号 p. 129-136
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
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    電子付録

    本研究の目的は,子どもに病名を伝えるか否かに悩む乳がん患者を支援する看護師が体験した困難を明らかにすることである.看護師7名と面談を行い,質的記述的に分析を行った.その結果,「患者を支援する時間が十分にもてない」,「医療者間での連携が不十分で継続的に関われない」,「患者の精神的負担に配慮すると,子どもへの病状説明に関する話題に触れられない」,「子どもに病名を伝えないことで最期に生じる親子関係や子どもへの影響を危惧するも,どうすることもできない」の四つのカテゴリーが抽出された.看護師は患者が子どもに病名を伝えていないことで今後生じる問題を危惧していたが,その話題に触れる勇気が持てず苦慮していたことがわかった.このような状況にある看護師へのサポートとして,患者が何に悩み,どうしていきたいと思っているのかを把握し,さらに医療者間で患者情報の共有を図れるように連携する重要性が示唆された.

  • 藏合 勇斗, 松本 卓, 星野 圭太, 辻 哲也
    2025 年20 巻2 号 p. 119-127
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/13
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    【目的】Japanese version of Edmonton Functional Assessment Tool 2(EFAT2-J)の反応性を検討した.【方法】対象は緩和ケアチームが対応し,根治的な治療をしていないがん患者とした.反応性は,リハビリ開始時から約2週間後のEFAT2-Jと既存の評価尺度の変化量の比較および相関関係の検討,standardized response means(SRM)の算出を行った.【結果】対象は31名.すべての評価尺度においてリハビリ前後で有意に改善した.また,EFAT2-Jと既存の評価尺度における変化量に有意な相関関係を認めた.EFAT2-JのSRMはlargeであり,既存の評価尺度はmoderateおよびsmallであった.【考察】EFAT2-Jは,末期がん患者の身体機能の変化を的確に捉えることができる優れた身体機能評価であった.

  • 辻川 真弓, 犬丸 杏里, 中村 喜美子, 船尾 浩貴, 玉木 朋子, 武田 佳子, 坂口 美和
    2025 年20 巻2 号 p. 111-118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/30
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    電子付録

    目的:健康状態がよい時期に行うAdvance Care Planning(ACP)を推奨するWork shop(WS)が,「人生会議」を動機づけるかを明らかにする.方法:民生委員171名を対象に2回のWSを開催し,前後で4回(T1~T4)質問紙調査を行った.主要評価項目は「人生会議」実施率,副次的評価項目はACPの準備状態を測定するACP Engagement Survey日本語版 Japanese version of Advance Care Planning Engagement Survey(ACPES-J)および死生観尺度とし,介入前後(T1vsT4)で比較した.結果:分析対象は149名,実施率は38.3%であり,介入前の6%に比べ有意に上昇した(p<.001, w=.54).ACPES-Jの自己効力感,レディネス,Totalは有意に上昇したが(p<.001~.031, d=.29~.67),死生観は有意な変化を認めなかった.結論:WSは「人生会議」を動機づけることが示唆された.

短報
症例報告
  • 前倉 俊也, 相木 佐代, 櫻井 真知子, 吉金 鮎美, 田宮 裕子, 八十島 宏行
    2025 年20 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/11
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    緒言:オピオイド離脱症候群では自律神経症状や精神症状が出現する.今回,がん疼痛に対してヒドロモルフォンを投与していた患者が離脱症候群と類似した精神症状を認め,徐放製剤の分割投与を行うことで症状が改善した症例を経験した.症例:60歳女性.左乳がん術後,腰椎転移再発に伴う疼痛に対してヒドロモルフォン,非オピオイド鎮痛薬,鎮痛補助薬,神経ブロックによる治療を行っていたがヒドロモルフォン徐放製剤の定期内服前に不安やいらいら,静座不能といった症状が出現するようになった.定期内服から数時間後には改善していたことからオピオイドの血中濃度低下の影響を考え,同薬剤を1日2回の分割投与に変更したところ,症状は劇的に減少した.結論:オピオイドの内服中に離脱症状に類似した精神症状を呈した場合は,血中濃度低下の影響を考え,分割投与などの調整を行うことで症状緩和が得られる可能性がある.

総説
  • 鈴木 梢, 片山 英樹, 小原 弘之, 松田 能宣, 合屋 将, 角甲 純, 笠原 庸子, 森 雅紀, 中山 健夫, 渡邊 紘章, 山口 崇
    2025 年20 巻2 号 p. 95-102
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
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    電子付録

    目的:がん患者の呼吸困難へのコルチコステロイド全身投与の有効性を検討する.方法:CENTRAL, MEDLINE, EMBASE, 医中誌を用い,2019年9月23日までに発表された全文献を検索した.主要評価項目は,患者報告による呼吸困難強度,副次評価項目は生活の質(quality of life: QOL),せん妄,重篤な有害事象とした.結果:4263件中2件の無作為化比較試験を採用し,メタ解析を行った.コルチコステロイド群はプラセボ群より有意に呼吸困難を軽減した[平均差:−0.71, 95% confidence interval (CI): −1.4~−0.03].2件中1件は肺病変を伴うがん患者を対象とした試験だった.QOLとせん妄のメタ解析はデータ不足により実施できず,重篤な有害事象の発生率に有意差を認めなかった(相対発生率:0.96, 95%CI: 0.19~4.93).結論:コルチコステロイドはがん患者の呼吸困難に有効である可能性があるが,その適応は限定的である可能性がある.

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