Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
  • 日浅 友裕
    2024 年 19 巻 3 号 p. 149-156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/08
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    【目的】外来で放射線療法を受けるがん患者の気がかりを測定できるスケール開発を目的とした.【方法】文献検討をもとに項目を精選し,Item-level Content Validity Index(I-CVI)による内容的妥当性の検討でスケール原案を作成した.その後,5施設の外来通院で放射線療法を受けるがん患者400名に無記名自記式質問紙調査を実施し,スケールの信頼性・妥当性を検討した.【結果】探索的因子分析で2因子(がんとともに生きていくことの気がかり,照射生活を送ることの気がかり)9項目が確認された.スケール全体のCronbach’s α係数は0.848, 確証的因子分析における適合度はGFI=0.930, AGFI=0.879, CFI=0.926, SRMR=0.058であった.新版STAI状態不安尺度と相関を認めなかったことから,一定の弁別的妥当性を確認した.【結論】本研究で開発した外来で放射線療法を受けるがん患者の気がかりスケールは,信頼性,妥当性の結果に対しては概ね確認できた.

  • 小澁 朝子, 五十嵐 隆志, 中村 真穂, 三浦 智史, 熊澤 名穂子
    2024 年 19 巻 3 号 p. 157-162
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
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    メサドン治療における補正QT間隔(QTc)方法と心拍数の関係を検討するために単施設後ろ向き研究を行った.2013年4月~2023年8月に当院にてメサドンの目的に心電図検査を実施した進行がん患者を対象に,Bazett(B)法によるQTc(B)とFridericia(F)法によるQTc(F)でQT延長と評価される患者の割合と,心拍数とB法やF法によるQTcの関係を評価した.対象は83名(年齢中央値57歳,男性59%),平均QTc(B)は430.3±25.8 msec,平均QTc(F)は409.2±20.8 msecであった.QT延長の割合はB法27.7%,F法8.4%であり,F法の方が19.3%低値であった(p<0.001).また,心拍数の増加に伴いB法とF法のQTcの差は増加した(p<0.001).メサドン投与時のQT間隔補正法にF法を用いることで,メサドン適応患者が増加する可能性がある.

  • 笹原 朋代, 落合 亮太, 竹之内 沙弥香
    2024 年 19 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/02
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    【目的】本研究の目的は,エンド・オブ・ライフ(EOL)ケアに関する看護実践測定尺度の開発を目指し,その信頼性と妥当性を検討することである.【方法】4病院の,前年度死亡患者数10名以上の病棟に勤務する看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.【結果】探索的因子分析の結果,18項目からなる1因子構造の尺度が同定された.Cronbachのα係数は0.95であり,十分な内的一貫性が認められた.EOLに関する教育の有無などによる尺度得点の比較により,既知集団妥当性が示された.【考察】今回開発した看護師のEOLケア実践評価尺度は,内的一貫性と既知集団妥当性を有することが確認された.本尺度の活用により,看護師のEOLケア実践やEOL教育効果の測定が可能となる.

  • 萬谷 和広
    2024 年 19 巻 3 号 p. 195-206
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/30
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    【背景】緩和ケア病棟におけるソーシャルワーカーの支援の状況は,十分明らかになっていない.【目的】本研究の目的は,(1)緩和ケア病棟におけるソーシャルワーカーの介入状況と支援内容の現状を明らかにすること,(2)遺族支援に関する関連要因を明らかにすることの2点である.【方法】緩和ケア病棟の支援を担当するソーシャルワーカーを対象に,自記式質問紙調査法を実施した.【結果】緩和ケア病棟におけるソーシャルワーカーの介入状況ならびに支援内容についての全体像が把握できた.また,遺族支援については,ソーシャルワーカーとしての経験や,緩和ケア病棟での実践経験など,経験に関係する要因の関連性がわかった.【結論】緩和ケア病棟においてソーシャルワーカーが充実した支援を展開するには,ソーシャルワーカーとしての経験や緩和ケア病棟での実戦経験を積み重ねることが重要であり,また,それを可能とする職場の環境整備も必要である.

症例報告
  • 大屋 清文, 福田 暁子, 佐藤 秀人, 德谷 理恵, 浜野 淳, 横道 直佑, 石木 寛人, 小山田 隼佑, 平本 秀二
    2024 年 19 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
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    症状緩和のための腹腔穿刺ドレナージ時の排液速度については,定まった見解がない.今回われわれは在宅診療の現場で,用手吸引による急速腹腔穿刺ドレナージを明らかな有害事象の出現なく実施しえた3例を経験したので,具体的な実践方法を交えて報告する.症例Aは72歳男性,非代償性肝硬変による腹水貯留の患者.症例Bは73歳男性,膵尾部がん・腹膜播種による悪性腹水の患者.症例Cは54歳男性の膵尾部がん・多発肝転移による悪性腹水の患者であった.排液量は1.4~3 Lで,処置時間は12~14分だった.処置直後・処置2(±1)時間後,処置24時間後の収縮期血圧はいずれの患者も90 mmHgを下回ることはなく,その他明らかな有害事象も指摘されなかった.用手吸引式急速腹腔穿刺ドレナージは患者の長期臥床の負担軽減,処置時間の削減,訪問医の訪問回数の減少につながることが期待できる.今後,本手技の安全性を検証する量的研究が必要である.

  • 池上 貴子, 松原 奈穂, 石川 彩夏, 川崎 成章, 荒川 さやか, 石木 寛人, 伊東山 舞, 横山 和樹, 里見 絵理子
    2024 年 19 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/29
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    【緒言】頭蓋内腫瘍はさまざまな神経症状や神経障害性疼痛をきたすが,オピオイド等西洋医学的治療のみでは症状緩和に難渋することも多い.【症例】44歳男性.前医で左鼻腔乳頭腫の疑いで切除したが,術後病理検査で扁平上皮がんの診断となり,術後早期に左眼窩内転移をきたした.腫瘍の頭蓋内浸潤により,左三叉神経第2,3枝領域に疼痛,両側三叉神経第2枝領域にしびれ(Numerical Rating Scale: NRS10/10)を認めた.ヒドロモルフォンを導入し疼痛は緩和したが,しびれが残存(NRS8/10)した.経過中にしびれ,疼痛が増悪したがMRIでは腫瘍増大はなく,腫瘍周囲組織の浮腫が原因と考え五苓散を開始したところ,しびれ,疼痛ともに緩和が得られた.【考察】五苓散は,アクアポリン阻害による水分調節作用を有し脳浮腫への有効性が示されている.本例は五苓散による腫瘍周囲組織の浮腫軽減が症状緩和に寄与したと考える.

  • 加藤 絵理花, 岩井 峻一, 中薗 健一, 上田 諭, 稲 秀士
    2024 年 19 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/09
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    ヒドロモルフォンは生物学的利用能が小さいことが知られているが,肝機能障害において,ヒドロモルフォンは注射剤から経口剤へ変更する換算比は,確立されているとはいえない.過量投与では呼吸抑制などの重大な副作用を生じる可能性があり,投与量には注意が必要である.今回,肝機能障害を認める患者においてヒドロモルフォンを持続皮下投与から経口徐放性製剤へ変更した際,呼吸抑制を生じた.等力価となる換算比とされる1 : 4の用量で注射剤から経口剤へ変更したが,肝機能障害による生物学的利用能の上昇により呼吸抑制が生じたと考えられた.症例により換算比は大きく変動し,肝機能障害時には,細心の注意を払う必要がある.

  • 前 知子, 服部 政治, 河野 優
    2024 年 19 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/06
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    【目的】脊髄鎮痛法を用いて高用量オピオイドの漸減に成功した経験を紹介する.【症例】53歳男性.直腸がん仙骨転移による臀部痛に対し,専門的がん疼痛治療とオピオイド減量目的に紹介入院となった.入院時,経口モルヒネ換算5040 mg/日のオピオイド内服中で,NRSは10/10であった.大量ではあったが不正取引や精神依存は否定された.疼痛の増悪とオピオイドの急激な増量による耐性形成が要因と思われた.入院後,硬膜外鎮痛と脊髄くも膜下鎮痛を導入しながらオピオイドを漸減し,30日後,脊髄くも膜下モルヒネ24 mg/日+経口オピオイド120 mg/日(経口モルヒネ換算)までの減量に成功し,紹介元病院に転院した.【結論】がん疼痛はオピオイドの大量投与を招く可能性がある.高用量オピオイドからの離脱には専門的な疼痛治療の併用が有用であることが今回示唆されたが,オピオイドが超大量になる前に専門的疼痛治療の導入についても検討することが望ましい.

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