日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
選択された号の論文の1013件中451~500を表示しています
  • 小幡 年弘, 北本 宏子, 中村 敦子, 福田 篤徳, 田中 喜之
    p. 452
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    イネの耐塩性機構に関与する新規カチオン輸送体遺伝子をクローニングするために,Na+ポンプを欠損した塩感受性酵母株(G19, Δena1-4)の塩感受性を相補するイネcDNAのスクリーニングを試みた。当所イネゲノム研究チームの所有する約28,000のイネ完全長cDNAを,Gateway System(Invitrogen)を用いて酵母の多コピー発現ベクターと連結することにより,イネ完全長cDNAの酵母発現ライブラリーを作製した。ライブラリーをG19株に導入後,0.5 MのNaClを添加したSD選択培地上で生育可能な株を選抜し,導入されたcDNAクローンを同定することにより,イネカチオン輸送体遺伝子のクローニングを行った。その結果,シロイヌナズナの内向き整流性K+チャネルであるKAT1およびKAT2に相同なタンパク質(OsKAT1)をコードするcDNAが,G19株の塩ストレス感受性を相補することが明らかになった。また,酵母細胞内のNa+およびK+含量をイオンクロマトグラフィーにより測定したところ,Na+ストレス条件下において,OsKAT1を導入した株とベクターのみを導入した株の細胞内K+含量はほぼ同等であったが,Na+含量はOsKAT1発現株の方が低かった。このことから,塩ストレス条件下においてOsKAT1が細胞内のイオンバランス維持に関与する可能性が示唆された。
  • 元田 弘敏, 佐々木 孝行, 松本 英明, 山本 洋子
    p. 453
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    コムギのALMT1タンパク質は、細胞膜局在性のアルミニウム(Al)活性化型リンゴ酸トランスポーターであり、ハイドロパシー検索から5から8の膜貫通領域を持つと予想されている。我々は、Alなどのリガンド結合部位の解明を最終目的に、本研究では、ALMT1蛋白質のC末端について、膜配向性の解析を行った。ALMT1遺伝子の3'末端にエピトープ・タグを付加したALMT1をタバコ培養細胞に導入した形質転換体を作成し、ALMT1蛋白質の発現ならびにAl依存性のリンゴ酸放出能を確認した。次に、形質転換体を、抗エピトープ抗体およびC末端側218アミノ酸を抗原とした抗ALMT1抗体で免疫染色し、レーザー共焦点顕微鏡で観察した。その際、界面活性剤処理により細胞内に抗体を透過させた場合とさせない場合とで、免疫染色の程度を比較した。その結果、ALMT1発現株では、両抗体で細胞膜の染色が界面活性剤の有無にかかわらずほぼ同程度に見られた。一方、非形質転換体では、両抗体による細胞膜の染色は認められなかった。従って、ALMT1タンパク質のC末端は細胞膜の外側に存在する可能性が高いと思われる。
  • 福山 幸樹, 佐々木 孝行, 松本 英明, 山本 洋子
    p. 454
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    コムギのアルミニウム(Al)耐性遺伝子ALMT1は、Alで活性化されるリンゴ酸輸送体をコードする。我々は、Al耐性が高くコムギの近縁種であるライムギを用いてALMT1相同遺伝子の解析を行った。ライムギでは、根部のAl処理を2時間行った後にリンゴ酸およびクエン酸の放出が報告されている。我々も同様の現象を確認し、さらにAl未処理の植物であっても、その切断根に1時間のAl処理をすることで高い有機酸放出が誘導されることを見いだした。次に、ノーザン解析を行い、ALMT1相同遺伝子の発現量の増加と有機酸放出量の増加とが類似していることを見出した。従ってライムギにおいても、ALMT1相同遺伝子がAl依存性の有機酸放出を担っている可能性が高い。ライムギのALMT1相同遺伝子を単離するため、RT-PCR法やcDNAライブラリーからのスクリーニングを行った結果、ライムギにおいてコムギALMT1-1と核酸配列レベルで90%の相同性を示す3種類のALMT1相同遺伝子の存在を明らかにした。現在、これら3種類のライムギALMT1相同遺伝子について、発現様式や機能の相違について解析している。
  • 小塚 正太郎, 山本 洋子
    p. 455
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    Alは植物根の生育を著しく阻害するが,その阻害経路はまだ解明されていない。本研究では、タバコ培養細胞(SL細胞株)を用い、細胞膜を介したショ糖吸収に対するAlの阻害効果を解析した。まず、タバコ細胞におけるショ糖吸収特性を解析した。タバコ細胞を、異なる濃度の14C-ショ糖を含み且つ浸透濃度が一定になるようにマンニトールで調整した溶液中に懸濁し、14C-ショ糖の取り込み速度を求めた。その結果、タバコ細胞では、ショ糖濃度に応じて、高親和性(1~3mM ショ糖)と低親和性(25 ~75 mM ショ糖)の取り込みが認められた。さらに、高親和性のショ糖取り込み機構について、阻害剤(CCCP、Wortmannin)を用いて検討した結果、タバコ細胞に見られるショ糖取り込みの大部分はショ糖-プロトン共輸送体を介したものであり、エンドサイトーシスではないことが明らかとなった。次に、Alのショ糖取り込みへの影響を見たところ、Alは、高親和性・低親和性の両方を、Al添加後30分で60%程度阻害することが明らかとなった。以上の結果から、タバコ培養細胞では、高親和性と低親和性のショ糖吸収があり、Alはその両方を阻害すること、Alによるショ糖吸収阻害はAl添加後30分から見られる初期応答反応の一つであることが明らかとなった。
  • 浜本 正文, 大石 明美, 佐藤 文彦, Forestier Cyrille, 矢崎 一史
    p. 456
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナはそのゲノム中に約130種のABCタンパク質遺伝子を有しており、その数は動物や昆虫のそれをはるかにしのぐ。これらは構造特性からいくつかのサブクラスターに分類されるが、その中で最大の分子量をもち、ヒトなどでコレステロールおよびリン脂質の輸送体として活発に研究が進められているABCA1の植物オルソログAtABCA1は、シロイヌナズナに1コピーのみ存在する。これに相当するオルソログは単子葉植物のイネや単細胞生物の酵母には見いだされていないことから、双子葉植物の生理機能に重要な役割を果たしていると推定される。本研究ではAtABCA1遺伝子発現の組織特異性および環境応答性を明らかにするため、northern解析とAtABCA1プロモーター領域2kbを用いたGUS形質転換体による解析を行った。その結果、AtABCA1遺伝子は様々な化合物、特にアブシジン酸の添加に対して正に応答すること、および芽生えから成熟植物体に至る全ての生長過程においても、根、茎、葉の維管束で特異的に強い発現を認め、さらに成熟花粉でも強い発現が認められた。維管束における強い発現は、篩部に特異的であった。現在、AtABCA1の細胞内局在を明らかにするために、シロイヌナズナのGFP融合タンパク質安定形質転換体を用いて蛍光観察を行っている。
  • 東 泰弘, 渡辺 むつみ, 野路 征昭, 斉藤 和季
    p. 457
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    硫黄同化経路の最初のステップを触媒するATPスルフリラーゼ(ATPS)は、硫酸イオンを活性化する唯一の酵素である。シロイヌナズナゲノムには、4つのATPS遺伝子が存在する。シロイヌナズナのATPS活性は、葉緑体と細胞質から検出されている。しかしながら、4つのアイソフォームはすべて葉緑体に局在する事が予想されており、細胞質に局在するATPSアイソフォームの同定及びその存在意義は不明である。本研究では、ATPSアイソフォームの生理学的な役割分担を明確にするために、シロイヌナズナATPS遺伝子の発現解析と、T-DNA挿入変異株を用いた機能解析を行った。
    4つのシロイヌナズナATPS遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法にて測定した結果、2週齢の地上部におけるATPS123及び4の発現量比は、68、10、8、15%であった。ATPS4の発現量は、2週齢の地上部では低いが、2週齢の根においては53%、6週齢の地上部及び根、鞘においては48%、57%、45%と高い事が分かった。ATPSの硫黄同化における役割は、アイソフォーム間で異なると考えられる。またATPS2ATPS3のT-DNA挿入変異株の地上部についてシステインとグルタチオンの蓄積量を測定した結果、いずれの変異株も野生型株と比較して80%前後に減少していた。現在、ATPS1ATPS4の変異株について解析を行っている。
  • 渡辺 むつみ, 野路 征昭, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 斉藤 和季
    p. 458
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    セリンアセチル転移酵素(Serat)は、セリンとアセチルCoAから、システインの前駆体となるO-アセチルセリン(OAS)を生成する酵素である。シロイヌナズナゲノムには、5つのSerat遺伝子(Serat1;1, 2;1, 2;2, 3;1, 3;2)が存在する。我々はこれまでに、各Serat遺伝子にT-DNAが挿入されたノックアウト変異体を単離し、遺伝子発現解析及び代謝物分析を行うことにより、各Serat遺伝子はシステイン生合成系において異なる役割を果たしている可能性を示した。今回、各Serat遺伝子の役割をさらに詳細に解析するため、細胞質、葉緑体、ミトコンドリアにそれぞれ局在している主要なアイソフォームSerat1;1、Serat2;1、Serat2;2の各変異体を交配した二重変異体(serat1;1serat2;1, serat1;1serat2;2, serat2;1serat2;2)を作出した。serat2;1serat2;2二重変異体の解析において、Serat3;2遺伝子の発現量の増加や、OAS、システイン、グルタチオン蓄積量の著しい減少が観察された。このような結果は、serat2;1またはserat2;2単独変異体では観察されなかった事から、Serat2;1及びSerat2;2は互いに機能を相補していることが示唆された。現在、他の二重変異体についての解析を行っている。
  • 山本 紘輔, 金刺 岳人, 桃木 芳枝
    p. 459
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    新規植物アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は,我々がトウモロコシ幼苗から世界で初めて単離・精製し,そのcDNAクローニングに成功した.AChEは42-44kDaのポリペプチドからなる88kDaのホモ二量体で,完全長のcDNAは1471bp,シグナルペプチド29残基を含む394アミノ酸残基のタンパク質をコードしている.本研究では,トウモロコシ由来AChEの酵素特性をマメ科植物サイラトロおよび電気ウナギのAChEと比較検討した.植物AChEはアセチルチオコリンおよびプロピオニルチオコリンを加水分解した.一方,S-ブチリルチオコリンに対する基質分解活性は示さなかった.また,植物体内に存在するアセチルコリンおよびプロピオニルコリンに対する分解活性も検出された.さらに,AChEの特異的な阻害剤である臭化ネオスチグミンにより競争阻害されることも確認された.これらの結果は,植物AChEが電気ウナギAChEと同様の触媒機構を有していることを示唆している.しかし,電気ウナギAChEと比較し,植物AChEの基質および阻害剤に対する親和性が低いことも認められた.また,動物AChEの一般的な酵素特性である高基質濃度下における基質阻害を検討した結果,植物AChEでは,動物のような基質阻害は確認されなかった.これらのことから,動植物間におけるAChEの活性部位周辺の構造差異が示唆された.
  • 山口 麻里子, 藤川 律子, 藤川 愉吉, 飯島 憲章, 江坂 宗春
    p. 460
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ホスホリパーゼA2 (PLA2)はグリセロリン脂質のsn-2位のエステル結合を加水分解し、リゾリン脂質と脂肪酸を遊離させる酵素である。動物のPLA2は、一次構造や細胞内局在などの違いにより分類されている。なかでも、分泌型PLA2 (sPLA2)は低分子量の細胞外酵素で、その酵素活性の発現にはmMレベルのCa2+を必要とする。さらに、sPLA2の一次構造内に存在するCa2+結合領域や活性領域は、様々な動物のsPLA2間で高く保存されている。一方、植物については、多くの植物種でPLA2の存在や発現が確認されるようになってきた。当研究室では、これまでにタバコから2種のsPLA2 cDNAをクローニングし、両sPLA2の一次構造内に、Ca2+結合領域や触媒領域とみられる配列が存在することを明らかにしている。さらに、大腸菌により両sPLA2の組換えタンパク質の発現にも成功している。そこで、本研究では、これら両sPLA2を精製し、その酵素性状について解析した。その結果、いずれもPLA2活性を有し、1つはsn-1位のエステル結合も加水分解することが明らかになった。また、いずれの酵素も活性発現には、mMレベルのCa2+が必須であるが、両者のPLA2で、至適pHと基質特異性が異なることが分かった。現在、部位変異を導入した組換えsPLA2を作製し、その酵素性状について、より詳細な解析を行っている。
  • 藤川 律子, 藤川 愉吉, 山口 麻里子, 飯島 憲章, 江坂 宗春
    p. 461
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ホスホリパーゼA2(PLA2)はグリセロリン脂質の2位のエステル結合に作用し,遊離脂肪酸とリゾリン脂質を産生する酵素の総称である。現在までに,多数の植物種においてPLA2の発現や存在が確認されるようになり,その重要性が示唆されてきた。しかしながら,植物PLA2に関する基礎的研究は動物PLA2の研究に比べ,著しく遅れている。これまでに,タバコから,動物の分泌型PLA2(sPLA2)と相同性を持つ2種のアイソフォームcDNAをクローニングした。しかし,それら2種のsPLA2アイソフォームについては,その発現量が少ないことから,組織特異的発現などに関する研究が進んでいなかった。本研究では,定量的RT-PCR法により,両sPLA2のmRNA発現量を調べた。まず,タバコの各組織における2種のsPLA2アイソフォームの遺伝子発現について検討した結果,いずれのsPLA2アイソフォームも,花において,葉や茎,根と比べて高いmRNA発現が認められた。さらに,酵素活性についても,花において,他の組織より高い活性が認められた。現在,タバコ植物体または培養細胞BY2を用いて,ストレス応答などにおける両sPLA2の発現応答について解析している。
  • 森川 智美, 水谷 正治, 青木 望, 渡辺 文太, 嵯峨 寛久, 斎藤 茂樹, 及川 彰, 鈴木 秀幸, 櫻井 望, 柴田 大輔, 和田野 ...
    p. 462
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    側鎖C-22不飽和結合を持つステロールは真核微生物(エルゴステロール)および植物(スチグマステロール,ブラシカステロール)に存在する.真核微生物における側鎖不飽和化反応はシトクロムP450 (CYP61)が触媒するが,高等植物のステロール側鎖不飽和化酵素遺伝子は不明である.まずCYP61と植物P450のタンパク質構造比較によってステロール生合成への関与が推定される植物P450候補を同定し,それらのcDNAをシロイヌナズナ植物体で恒常的に発現させた.続いて,ステロール組成変化のプロファイリングによって,シロイヌナズナの4種のCYP710A遺伝子(At710A1-At710A4)及びトマトCYP710A11遺伝子が当該反応に関与する可能性を明らかにした.At710A1及びSe710A11の過剰発現体ではスチグマステロール,At710A2過剰発現体ではスチグマステロールとブラシカステロールの両方の顕著な蓄積が見られた.プロモーター:GUS遺伝子発現解析によって,シロイヌナズナにおいてCYP710A遺伝子は厳密な組織特異的発現制御下にあることが示され,発育段階特異的なステロールの関与が示唆された.酵素活性は昆虫細胞発現系にて作製した組換え酵素タンパク質とT-DNA挿入変異体の解析によって確認した.以上の結果によって,これまで不明であった植物膜ステロール生合成の最終段階が解明された.
  • 佐々木 慎弥, 志水 元亨, 割石 博之, 堤 祐司, 近藤 隆一郎
    p. 463
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    モデル植物であるArabidopsis thalianaOryza sativaの全ゲノム塩基配列の解読により、シロイヌナズナには73個、イネには138個のペルオキシダーゼ遺伝子の存在が明らかとなりペルオキシダーゼ機能の多様性が期待されている。一方で、ペルオキシダーゼは基質特異性が低いため、その差異による機能分化は考えにくく、むしろ機能の多様性は時間的かつ空間的な発現制御に基づくことが予想される。
    我々は樹木ペルオキシダーゼの生理機能解明に向けて、Populus trichocarpaの全ゲノム塩基配列から100を超えるペルオキシダーゼ遺伝子を見いだし、転写及び翻訳の両面からペルオキシダーゼアイソザイムの発現制御を明らかとする研究を開始した。
    今回、定常条件のポプラ各組織に発現しているタンパクを抽出し、次いでConcanavallinカラムにより分画した糖タンパク画分を2D-PAGE及びMALDI-TOF-MS分析に供しアイソザイムの同定を試みた。各組織ともにpI 4.0-4.3の酸性アイソザイムが複数同定された。これらのアイソザイムはポプラペルオキシダーゼ系統樹上で同一クラスターを形成していたが、各組織で発現するアイソザイム構成は異なっていた。以上の結果から、同一クラスター内の個々のアイソザイムは異なる発現制御下に置かれていると考えられた。
  • 先山 哲史, 鈴木 石根, 桑原 朋彦
    p. 464
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    グラム陰性細菌が産するRTX(repeat in toxin)毒素タンパク質はCa2+のhalf-binding (GGXGXDXUX) motif配列を複数有し,その高次構造はCa2+の脱着によって可逆的に変化する。この毒素の毒性は高次構造変化によりホストの細胞膜に孔を形成して細胞機能を損なわせることによる。近年,病原菌以外にもRTXタンパク質の存在が明らかになりつつあり,シアノバクテリアのそれは運動性に関与するといわれている。しかし,Synechocystis sp. PCC 6803の場合には,逆に,RTXタンパク質 Sll1951は,運動性のある野生株(WT)では発現が抑制されており,運動性のないグルコース耐性株(GT)ではS-layerに豊富に発現している(全タンパク質の10%以上)。このことからRTXタンパク質の運動性への関与はシアノバクテリアにおいて一般的とは言えない。発現量の多さからSll1951はGT株の重要な機能を担っていることが予想される。今回,Sll1951の生理機能を明らかにするために,WTおよびGT株においてその遺伝子をトランスポゾンの挿入により破壊した。現在,遺伝子破壊株における表現形質の変化を解析中である。本発表では,運動性,細胞表層構造,および増殖におけるCa2+濃度効果等の結果を報告し,Sll1951の生理機能について議論する。
  • 平栗 章弘, 中澤 悠宏, 森山 裕充, 福原 敏行
    p. 465
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    2本鎖RNAに特異的に結合するタンパク質群が様々な生物で発見されている。RNAサイレンシングに関与するDICERもその1つであり、2本鎖RNA結合モチーフ(dsRBM)を含む。また、DICERは別の2本鎖RNA結合タンパク質と相互作用することが線虫、ショウジョウバエなどで見出されている。我々は、シロイヌナズナにおけるdsRBMを有するタンパク質(DCL1-4, HYL1/DRB1, DRB2, DRB4, DRB5)について生化学的な解析を行っており、これまでに、DCL1, DCL3, HYL1/DRBファミリーのタンパク質が実際に2本鎖RNAに結合すること、DRB4、DCL4、HYL1/DRB1、DCL1は核に局在すること、in vitroでDCLファミリーのタンパク質とHYL1/DRBファミリーのタンパク質が結合することを報告した。中でもDRB4はDCL4と、HYL1/DRB1はDCL1と特異的に強く結合した。そこで、生体内におけるDRB4とDCL4の相互作用を解析する目的で、免疫沈降実験を行った。その結果、実際にDRB4とDCL4が複合体を形成することが示された。
    これらの結果から、植物由来のDICERも別の2本鎖RNA結合タンパク質(HYL1/DRBファミリー)と共に機能していることが示唆された。
  • 岡野 陽介, 三木 大介, 山田 久和, 島本 功
    p. 466
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年siRNAが、クロマチンの不活化あるいはエピジェネティックな遺伝子発現抑制に関与していることが示唆されているが、これらに関する知見は十分ではない。そこで本研究では、siRNAのエピジェネティックな制御を解析するため、プロモーター配列と相同なsiRNAを高発現させた系を構築した。プロモーターsiRNAは、相同なターゲットプロモーターにDNAメチル化やヒストン修飾のエピジェネティックマーカーを誘導し、ターゲット遺伝子の発現を抑制することが予想される。
    これまでに、8つの遺伝子をそれぞれターゲットにした形質転換イネを作出した。現在までの解析から、35S::GFP および内在遺伝子Se5において発現抑制が引き起こされたが、残りの6つの内在遺伝子では特に有意な発現抑制は認められなかった。そこで、発現抑制とエピジェネティックな修飾との相関を解析した。その結果、発現抑制の有無に関わらず、いずれのターゲットプロモーターにおいてもDNAメチル化は誘導されていた。しかし、ヒストンH3の脱アセチル化は、発現抑制がみられる35S::GFPのターゲットプロモーターにのみ観察された(Se5は解析中)。現在、他のヒストン修飾についても解析を行なっている。また、エピジェネティックな修飾に対する阻害剤を用いた解析も進行中であり、本年会ではこれらの結果も踏まえ、siRNAのエピジェネティックな機能を考察したい。
  • 山崎 朋人, 大濱 武
    p. 467
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    シトシンのメチル化は、ヒストン修飾と共役してエピジェネティックな遺伝子発現制御に重要な役割を果たす。メチル化は、プロモーター領域だけでなく、遺伝子コード領域にも及び、転写伸張反応を阻害して遺伝子発現を抑えることが知られている。
    我々は、Chlamydomonas reinhardtiiにおいて、スペクチノマイシン耐性賦与遺伝子aadAを標的に、inverted repeat (IR)でRNAiを誘起することに成功した。しかし、効果的なノックダウンが見られた株でも、その効果は経時的に不安定であり長期間ノックダウンが続かない株が多数ある事を見出した。RNAiを誘起した株は、体細胞分裂を経た後に単細胞分離したクローンで、サイレンシングの強度が異なる細胞集団となることが分かった。強度の異なるクローンを調べると、サイレンシングが弱いものは、強いものと比べ、IRにCGメチルが多く蓄積し、ヘアピンRNAの蓄積量が少なかった。また、ヘアピンRNAの転写伸張反応が途中で停止したことに由来するRNAが多数検出された。一方、標的遺伝子にはsiRNAによるメチル化は起こっていなかった。ヒストン脱アセチル化阻害剤であるTSAによりヘアピンRNAの蓄積量が増加することから、IR構造依存的なDNAのメチル化と、ヒストン修飾が関連し、ヘアピンRNAの転写が阻害される事でサイレンシング強度が低下する事が示唆された。
  • 三浦 孝太郎, 芦苅 基行, 北野 英己, 吉村 淳, 松岡 信
    p. 468
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    イネ突然変異体Epi-d1は、1個体内に矮性型と正常型の2つの表現型をキメラ状に併せ持つ変異体である。詳細な遺伝調査の結果、この変異体は表現型が固定せず、メンデル遺伝に従わないエピジェネティックな変異体であることが明らかになった。
    日本型イネのEpi-d1とインド型イネのカサラスとの交配後代を用いたポジショナルクローニングの結果、このエピジェネティック制御を行う領域をイネ第5染色体-59cM、33.5kbにマップした。この候補領域には3つの8.6kbリピート配列とD1 (G-protein α-subunit)を含む。
    Epi-d1矮性型表現型は d1機能欠損型変異体と酷似しており、この両者の同座性検定では、これらは同座であると示唆された。さらにEpi-d1変異体におけるD1の発現解析の結果、正常部位では野生型と同様の発現量が検出されたのに対し、矮性部位では発現が抑制されていることが明らかとなった。これらの結果から、Epi-d1変異体でエピジェネティックな発現制御を受けている遺伝子はD1であると確定した。
    Epi-d1変異体においてエピジェネティック制御がどのように関与しているか確認するため、DNAメチル化感受性酵素を用いたサザンブロット解析を行った。その結果、Epi-d1矮性型においてD1遺伝子座の高メチル化を検出し、D1発現抑制とDNAメチル化との相関を見いだした。
  • 長屋 進吾, 新名 惇彦, 加藤 晃
    p. 469
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    植物では導入した遺伝子やそれと相同な内在性遺伝子の発現が不活性化される現象が知られている。これはジーンサイレンシングと呼ばれ、導入遺伝子の染色体上への挿入位置、コピー数の増加、反復・欠失構造の形成、mRNAの過剰蓄積などが原因とされている。しかし、これらの複数要因が同時に想定される形質転換体を用いた解析では、何がサイレンシングのトリガーかを明らかにすることは困難である。
    我々は、反復や欠失を伴わないシロイヌナズナシングルコピー形質転換体(pBI121)を取得し、コピー数だけを増加させる解析を行った。掛け合わせにより4遺伝子座にヘミでCaMV35S(cauliflower mosaic virus)- GUS(β-glucuronidase)遺伝子を持つラインを作出し、その自家受粉後代を解析したところ、1から5コピーまではコピー数に相関するGUS活性を示したが、6、7コピーではGUS活性は検出されず、サイレンシングが引き起こされた。このサイレンシングは、GUS smallRNAやCaMV35S-GUS遺伝子領域に限定的なDNAメチル化を伴っていた。さらに経時的な解析の結果、サイレンシングは播種後4週間目で引き起こされ、GUS活性を有する播種後2週間目ではDNAのメチル化は低レベルであった。
  • 黒谷 賢一, 賀屋 秀隆, 柴原 慶一, 荒木 崇
    p. 470
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    真核生物のDNAはヒストンをはじめとするタンパク質とクロマチンと呼ばれる機能的複合体を形成し、核内に収納されている。Chromatin assembly factor-1 (CAF-1)はin vitroで DNA複製に伴いクロマチンアッセンブリー活性を持つものとしてHeLa cell抽出物より単離され、後にDNA修復にも関与することが示されている。またCAF-1依存的にヌクレオソームアッセンブリーを促進する因子としてショウジョウバエより精製されたRCAFがH3/H4とanti-silencing function 1 (Asf1)からなる複合体であることが示された。我々はこれまでにシロイヌナズナにおいてヒトCAF-1の3つのサブユニットのうちp150, p60のカウンターパートをそれぞれFASCIATA1 (FAS1), FAS2 として報告している。現在、シロイヌナズナにおけるヒトAsf1a, Asf1bのホモログASF1a, ASF1bのT-DNA挿入変異体をそれぞれ2系統ずつ得ており、それらasf1変異体とfas2変異体とのあいだで二重もしくは三重変異体を作出し、その表現型を解析した。その結果、asf1aもしくはasf1bの単独変異では際立った表現型は示さないが二重変異体ではfas2様の葉の形態が観察された。さらにそれぞれとfas2との二重変異体では雄性不稔形質が現れ、三重変異体は胚致死であることが観察された。本発表ではこれらの結果からシロイヌナズナにおけるASF1およびCAF-1の生体内における役割について考察する。
  • 土生 芳樹, 七夕 高也, 田口 文緒, 篠村 知子
    p. 471
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    遠縁間交配で得られたF 1個体は収量・対環境特性などの様々な点でしばしば親系統よりも優れた形質を示す場合がある。この現象はヘテロシス(雑種強勢)とよばれ、それぞれの親系統が持つ遺伝的形質がF 1個体で相加的・相乗的に発現されることによると推測されているが、生長速度や個体サイズなどの普遍的な細胞の活性に関わる強勢の発現は特定遺伝子の組み合わせでは説明しにくい。本研究では生長速度のような様々な生物に普遍的なヘテロシスの機構解明の手がかりを得ることを目的として、イネの種内遠縁間交配(ジャポニカ[日本晴]xインディカ[カサラス])で得られたF 1個体のモデル環境下における発芽から第三葉までの初期生長を成長自動モニタリング装置による連続画像として記録・解析し、ヘテロシスの数値化と特徴付けを試みた。ヘテロシスはF 1個体における第三葉の伸長速度に見られたが、その程度は交配の方向によって異なった。さらに親系統ゲノム間の差異を認識する機構が生長速度のような普遍的なヘテロシスを誘導するとの仮説を検討するために、ゲノム間相互作用への関与が予想されるクロマチン構造形成に影響するヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤(トリコスタチンA)を用いて、F 1個体における第三葉伸長速度に及ぼす影響を解析した結果、F 1個体で阻害剤濃度依存的なヘテロシスの低下が見られた。
  • 鄭 貴美, 杉本 恵, 佐野 浩
    p. 472
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    植物は病気や傷などのストレスに対して防御応答を起こす。その防御応答までの細胞内シグナル伝達経路としては、MAPK カスケードが知られている。 タバコのMAPK カスケードに関する研究は多いにもかかわらず、その下流因子についてはあまり報告されていなかった。本研究室ではYeast two hybridによって、WIPKの下流因子としてNtWIFを単離し、その解析を行ってきた。
    本研究では、NtWIFのリン酸化サイトと思われるアミノ酸に変異を導入した変異NtWIFと野生のNtWIFを比べることにより、N-末端のThr-Proが特異的にリン酸化されることを明らかにした。 また、NtWIFのN-末端側がauxin response factorと相同性が高い事からAuxin response element(ARE)モチーフを用いてゲルシフト解析を行った。その結果、NtWIFはARE モチーフに特異的に結合する事がわかり、そのチーフの転写活性化にNtWIFが関与している事も明らかになった。この事から少なくとも、NtWIFのターゲット遺伝子のプロモータにはARE モチーフが存在することが示唆された。NtWIF過剰発現植物体と野生株のマイクロアレイ解析により過剰発現植物体でNtWIFに直接または間接的に影響を受け、発現が上昇した遺伝子を同定した。現在、そのプロモータ領域にAREモチーフを持つ遺伝子を中心に発現パターンやプロモータ活性測定及びNtWIFとの関連性について調べている。
  • 岩田 雄二, 米田 真理, 小泉 望
    p. 473
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    小胞体で合成されるタンパク質は正しい高次構造をとった後、小胞輸送により目的の場所へ運ばれる。この過程に異常が生じBiPなどの小胞体シャペロンの遺伝子が誘導される現象は小胞体ストレス応答と呼ばれ、哺乳動物では正常な発達に必要であること等が明らかにされている。私達は植物での分子機構、生理機能を明らかにするためにシロイヌナズナを用いて研究をおこなっている。その過程で糖鎖合成阻害剤ツニカマイシンにより転写誘導されるbZIP型転写因子AtbZIP60を同定した。AtbZIP60はC末端側に膜貫通領域を有し、膜貫通領域以降を除いたタンパク質(AtbZIP60ΔC)とGFPの融合タンパク質は核に局在した。また、AtbZIP60ΔCの強発現は小胞体シャペロン遺伝子のプロモーターを活性化した。一方、全長のAtbZIP60の過剰発現は活性化に影響を与えなかったことから、タンパク質レベルでの切断が活性化に必須である可能性が示唆された。次に、小胞体ストレスによるAtbZIP60のタンパク質レベルでの切断を調べるために抗体を作製し、ウエスタン解析を行った。その結果、ツニカマイシン等の処理により切断型のAtbZIP60タンパク質が検出された。つまり、非ストレス条件下では不活性な膜結合型として存在し、ストレスに依存してタンパク質レベルで切断されて核へ移行して転写因子として機能すると考えられた。現在、細胞内局在の変化と切断型タンパク質のシス配列との結合を調べている。
  • 児玉 悠一, 長屋 進吾, 新名 惇彦, 加藤 晃
    p. 474
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの研究で、シロイヌナズナにおいてはヌクレオソームのない局所的にオープンな領域であるDNase I高感受性部位(DNase I hypersensitive site; DNase I HS)がコンピテントな(発現している、もしくは誘導可能)遺伝子プロモーターのシス配列近傍に存在していること、また、インコンピテントな(発現しておらず、かつ誘導されない)遺伝子プロモーターには存在しないことを明らかにした。
    今回新たに、ヒストンの修飾状態と転写活性化、発現のコンピテンシーとの関係を理解するためクロマチン免疫沈降法による解析を行った。 まず、熱誘導性のHSP18.2遺伝子の転写不活性・活性化状態におけるプロモーター周辺のクロマチン構造を解析したところ、不活性な状態でDNase I HSはシス配列のすぐ上流に形成されており、活性化に伴いヒストンのアセチル化レベルが増加すること、DNase I HSの下流のヌクレオソーム構造が破壊されシス配列と転写開始点を含む領域がオープンになることが明らかとなった。この結果から、DNase I HSはクロマチン修飾酵素(リモデリング因子やヒストンアセチル化酵素)が接近可能な“足場”として機能していることが示唆された。転写制御におけるDNase I高感受性部位の存在と転写因子の結合およびヒストンの修飾状態の変化について議論する予定である。
  • 立木 賢輔, 長屋 進吾, 児玉 悠一, 新名 惇彦, 加藤 晃
    p. 475
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    Matrix attachment region ( MAR )は、核内骨格構造体である核マトリックスとタンパク質を介して結合するDNA領域である。MARは1kb前後の配列で、染色体上に50 kbから100 kbの間隔で存在しているとされているが、共通配列は見出されておらず、また、植物での知見は少ない。
    本研究では、植物におけるMARの機能を調べるために、シロイヌナズナの5番染色体の長腕をカバーするゲノムタイリングアレイを用いて、MARの候補となる領域を多数同定した。アレイ解析には、シロイヌナズナの培養細胞からプロトプラストを作製し、TritonX-100による細胞膜・核膜の可溶化、Micrococcal NucleaseによるDNAの切断、さらに遠心し、核マトリックスと挙動を共にしたDNAをプローブとして用いた。次に、アレイ解析より得られたMAR候補について、調整した核マトリックスとの結合実験を行ったところ、ほぼすべての候補が核マトリックスと結合した。また、MAR候補領域を含む20 kbの領域(4遺伝子を含む)について、さらに鮮明に解析したところ、この領域内には3箇所にMARが存在していた。これらMARと4つの遺伝子の位置関係についても合わせて報告する。
  • 藤田 清仁, 太田 にじ
    p. 476
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    植物において二酸化炭素の固定の酵素RuBisCOはrbcL, rbcSにコードされている。RbcLのアミノ酸アラインメントを基に系統樹を作成すると、大きくプロテオバクテリア型(R型)とラン藻型(G型)に分かれることが報告されている。G型のRuBisCO遺伝子はrbcL-rbcSのオペロン構成をとっているが、R型のRuBisCO遺伝子はrbcL-rbcS-cfxQオペロンとしてRuBisCO遺伝子の発現に必要と推測されている未知遺伝子cfxQが存在している。
    原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeは最近全塩基配列が決定され、核ゲノムと色素体ゲノムの両方にcfxQをコードしていることがわかった。また、この二つの遺伝子は系統、転写様式も異なっていることを我々は明らかにしてきた。本研究では色素体と核にコードされている二つのcfxQについて機能とそれぞれの相違点を明らかにすることを目的として研究を進めている。
    今回、核と色素体のCfxQタンパク質を精製しゲルシフト解析を行った結果、両CfxQが色素体ゲノム上のrbcLプロモーター領域に結合すること、また結合に影響を与える因子が存在することが明らかになった。このことからCfxQの機能について考察する。
  • 藤本 祥恵, 太田 にじ
    p. 477
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    光合成関連遺伝子のほとんどは、明期に発現量が多く、暗期には非常に少ないと考えられているが、その時系列的変化の詳細は明らかではない。本研究では、原始紅藻類に属するC. merolae を用い、明期12時間、暗期12時間の光周期により細胞分裂を同調させ、光合成遺伝子の転写産物の蓄積量をノーザン解析により計時的に測定した。その結果、遺伝子によって発現のパターンが数種類に分類されることが明らかとなった。psaA、psbB-T では、明期に多く存在した転写物は、暗期に入ると徐々に減少し、次の明期で増加した。psbO、psbU、psbC では、暗期に入ると蓄積量が急激に減少したが、その後徐々に増加を始め、明期に入ると、急激に増加した。psbAの転写物蓄積量は、明暗に関わらず、ほぼ一定であった。psbEFLJ の蓄積量は、明期に入ると徐々に増加した。現在、他の光合成関連についても解析中である。転写産物蓄積量により遺伝子をグループ分けし、考察を行う。
  • 滝元 宏治, 太田 にじ
    p. 478
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    色素体のチラコイド内腔への前駆体タンパク質の輸送経路に、SecA、SecY、SecEからなるSec経路の存在が知られている。全ゲノム配列より原始紅藻Cyanidioschizon merolaeにおけるsecAsecYsecE遺伝子の存在が明らかとなった。C. merolaeでは核と色素体の両方にsecA遺伝子がコードされている。本研究ではC. merolaeの色素体のSec経路を構成するこれらの遺伝子について系統解析、遺伝子発現解析を行った。この結果、secYsecE、そして色素体にコードされたsecA遺伝子は他の植物やランソウの遺伝子と近縁である。しかし、核にコードされたsecAはマイコバクテリアのsecA2と系統が近かった。また、これらの遺伝子は実際に発現している。核と色素体のsecA遺伝子の機能を解析するために、大腸菌温度感受性secA変異株に対する相補性解析を行った。どちらのsecA遺伝子も大腸菌secAをサプレスできなかった。また、色素体コードのsecAの過剰発現により大腸菌の生育が著しく阻害されるが、核コードではされなかった。このことから、2つのSecAの機能の違いが示唆される。
  • 田部井 陽介, 岡田 克彦, 吉田 拓也, 都筑 幹夫
    p. 479
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    Synechocystis sp. PCC6803 は光独立栄養での生育も可能であるが、1日5分程度の光照射によりグルコースを炭素源とする従属栄養的生育が維持される。これまで、従属栄養条件下における光照射の役割について調べる過程で、解糖系関連酵素をコードする複数の遺伝子が光照射下で増加することを報告した(日本植物生理学会年会、2005)。
    そこで、解糖系酵素の1つであるfructose-1,6-bisphosphate aldolasefbaA)の発現と、グルコース及び光照射との関係を詳細に調べた。その結果、fbaAの発現は光照射により誘導され、特に、グルコース存在下で大きく誘導された。また、グルコース非存在下で誘導されたfbaA転写産物は不安定であり、グルコースによってmRNAが安定化されていることが示唆された。
    PCC6803に存在するHTH様転写因子の発現を追跡したところ、グルコース添加、光照射条件下で、複数のHTH様転写因子と考えられる遺伝子の発現が誘導された。破壊株を作製し、性質を調べたところ、光独立栄養条件下では野生株と同様の生育を示すが、光活性化従属栄養条件下でほとんど生育できない株が見いだされた。破壊株におけるfbaAの発現は、連続光条件下では野生株と同等であったが、グルコース存在下で光照射をしても誘導されなかった。このことから、PCC6803のfbaAは光独立栄養条件下と従属栄養条件下で異なる発現調節を受けていることが示唆された。
  • 兼目 裕充, 大塚 稔, 笠原 博幸, 豊増 知伸, 三橋 渉, 佐々 武史, 神谷 勇治, 山口 信次郎
    p. 480
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ジベレリンの生合成中間体ent-カウレンは、色素体に局在するent-CDP合成酵素(CPS)とent-カウレン合成酵素(KS)によって生合成される。これまでにent-カウレンが植物体から気相へ放出され、また、シロイヌナズナのga1-3およびga2-1突然変異体(CPSまたはKSの機能欠損株)は気相ent-カウレンを取り込むことにより、矮性から完全に回復することを見出している。
    本研究ではジテルペン炭化水素の気相放出や受容に関わる構造特異性の評価を行う目的で、新たに色素体で異種ジテルペン炭化水素を生産する形質転換シロイヌナズナを作出した。この形質転換体において、異種ジテルペン炭化水素の気相放出をGC-MS分析によって確認できたことから、シロイヌナズナはent-カウレンとは構造の異なる異種ジテルペン炭化水素も気相放出できることを明らかにできた。さらに、色素体に局在するMEP経路や細胞質に局在するMVA経路に特異的に取り込まれる各13Cラベル中間体を用いた取り込み実験を行なったところ、この形質転換体から気相放出される異種ジテルペン炭化水素のイソプレンユニットは、主に色素体のMEP経路に由来することが明らかとなった。現在、ジテルペン炭化水素の気相放出と受容メカニズムの解明を目的として、機能喪失型または過剰発現型のシロイヌナズナ変異株を用いて、気相放出と気相ent-カウレンの取り込みに関与する因子のスクリーニングを行っている。
  • 野村 崇人, 花田 篤志, Zhu Yongyou, He Zuhua, Mander Lewis, 神谷 勇治, 山口 信次郎
    p. 481
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    イネのelongated uppermost internodeeui)は出穂時にのみ表現型が現れ、特に最上部節間が徒長する劣性の突然変異株である。野生型とeuiの最上部節間における内生ジベレリン(GA)含量についてGC-MSを用いて定量を行った結果、eui節間のGA1が野生型に比べて24倍も蓄積していることが明らかとなった。さらに、野生型の節間では検出されなかったGA4eui節間から高濃度で検出された。これらの結果からeuiの表現型は内生の活性型GA量の上昇によるものであることが明らかとなった。さらに、Eui遺伝子がコードしている機能未知のシトクロムP450酵素を酵母において発現させ、その機能の解明を行った。GA4をEUIタンパク質を含むミクロソーム画分とインキュベートし、その代謝物をGC-MSで確認したところ、16α,17-epoxy GA4が同定された。同様に、GA4の前駆体であるGA9とGA12もそれぞれ16α,17-epoxy体への変換が確認された。しかしながら、C-13位に水酸基をもつGA1、GA20及びGA53はEUIタンパク質の基質とはなりえなかった。また、短銀坊主を用いたバイオアッセイにおいて16α,17-epoxy GA4はGA4に比べて伸長促進活性が著しく低下していた。以上の結果から、EUIタンパク質はGAの新奇不活性化酵素であることが明らかとなった。
  • 服部 洋子, 芦苅 基行, 北野 英己, 松岡 信
    p. 482
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    浮イネは通常の栽培条件では、栽培イネと同じく出穂時において1m程度であるが、洪水などの深水条件では著しい節間伸長を示し、最大7mまで伸長する。浮イネの有する節間伸長制御機構の解明は、植物における節間伸長機構の新たな知見をもたらすと考えられる。本研究では浮イネ性を有するイネの祖先種であるOryza rufipogon(W0120)とバングラデシュ浮イネ栽培品種(C9285)を普通栽培イネの台中65号(T65)と交配して得られたF2集団についてQTL解析を行った。各F2集団に対して深水処理を行い、各個体の総節間長(TIL)、伸長節間数(NEI)および最下位伸長節間節位(LEI)を計測し、QTL解析を行った。QTL解析の結果、2集団共に第12染色体の長腕側末端に、節間伸長度および伸長節間数を増加させるという強いQTLが検出されたことから、このQTLが浮イネの深水条件下での節間伸長に関する遺伝子の中でも特に大きな作用を持っていると考えられる。これまでにW0120にT65の戻し交配と分子マーカーによる選抜を行い、QTL解析で得られた浮イネ性遺伝子領域を保持する準同質遺伝子系統(NIL)を作出することに成功している。作出したNILを用いて、エチレンおよびジベレリン(GA)に関する生理学的実験を行ったところ、エチレンとGAは浮イネの深水条件下での節間伸長に密接に関与していることが明らかとなった。
  • 上吉原 裕亮, 森 仁志
    p. 483
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    エチレン生合成の律速段階を担うACC合成酵素(ACS)の発現は、主に転写段階で制御されているが、近年、ACSが翻訳後の制御も受けていることが明らかになった。我々はこれまで、トマト傷害誘導性ACC合成酵素LeACS2のSer-460が翻訳後直ちにリン酸化され、細胞内ではリン酸化型で働いていること、さらにリン酸化型の半減期が非リン酸化型よりも長いことを示した。このことはLeACS2が脱リン酸されると分解されやすくなることを示唆しており、細胞内のLeACS2タンパク質の代謝回転は、脱リン酸化段階において制御されていると考えられる。そこで本研究では、LeACS2の脱リン酸化を担うプロテインフォスファターゼの同定を試みた。LeACS2のSer-460を中心としたビオチン化リン酸化ペプチド(Biotinyl-454KNNLRL(pS)FSKRMYD467-CHO)を合成した。傷害を与えたトマト果肉組織の抽出液とペプチドを反応させ、ペプチドと結合したタンパク質を回収した結果、32 kDaのタンパク質が検出され、そのサイズから、セリン/スレオニンフォスファターゼの触媒サブユニットである可能性が示唆された。このタンパク質は加えるペプチドの量に依存して検出された。我々は、このタンパク質がリン酸化型LeACS2を脱リン酸するプロテインフォスファターゼのサブユニットであると推定し、同定を試みている。
  • 笠原 博幸, 榊原 均, 武井 兼太郎, 神谷 勇治, 山口 信次郎
    p. 484
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    trans-ゼアチン(tZ)はオーキシンと共に植物細胞の増殖・分化を誘導するサイトカイニンの一種である。近年、サイトカイニン生合成経路の解明が進んだ結果、シロイヌナズナ芽生えのtZ型のプレニル側鎖は主として色素体のメチルエリスリトールリン酸(MEP)経路から合成されることが示された。さらに、このMEP経路を介したtZ生合成経路におけるプレニル側鎖の水酸化酵素はオーキシンにより負の調節を受けることが明らかになった。また、cis-ゼアチン(cZ)型のプレニル側鎖は細胞質のメバロン酸(MVA)経路から主に合成されるが、このcZ型の酵素的なシス−トランス異性化によってもtZ型が一部合成されることが示されている。これらの事実から、植物におけるtZ型サイトカイニン生合成の主要経路はオーキシン濃度などによって変動する可能性が考えられる。一方、タバコBY2細胞など多くの培養細胞が培地へのオーキシンの添加を必要とするのに対し、サイトカイニンには要求性を示さない。この様な高オーキシン濃度条件下で生育される培養細胞のサイトカイニン生合成経路は野生型植物の経路と異なる可能性があるが、これについてはMEP経路発見以前の研究報告が殆どで十分に解明されていない。本研究においてはシロイヌナズナT87細胞やタバコBY2細胞をモデルにサイトカイニン生合成経路の解析を進めており、今回はそれらのトレーサー実験の結果を報告する。
  • 大西 利幸, Bancos Simona, 渡辺 文太, 横田 孝雄, 坂田 完三, Szekeres Miklos, 水谷 正治
    p. 485
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ブラシノステロイド (BR) 生合成経路の多くの酸化反応はシトクロムP450 (P450) 酵素により触媒されることが示されている。これまでに様々な植物種から多くのBR欠損矮性変異体が単離され、その原因遺伝子として多数のP450分子種(CYP85A, 90A, 90B, 90C, 90D, 724B)が同定されている。それら変異体の内生BR量の分析およびBR中間体処理による回復実験の結果から各P450遺伝子の酵素機能が推定されているが、生化学的証明はC-6位酸化反応 (CYP85A) とC-22位水酸化反応 (CYP90B1) のみである。今回、我々はBR生合成酵素と推定されているシロイヌナズナ由来CYP90C1およびCYP90D1に注目し、その機能解析を行ったので報告する。各P450を昆虫細胞-バキュロウィルス発現系により発現させ、様々なBR中間体を基質として酵素アッセイを行い、酵素反応生成物をGC-MSによって分析した。CYP90C1および CYP90D1は6-deoxocathasteroneから6-deoxoteasteroneを生成し、両P450は共にC-23位水酸化反応を触媒した。一方、これまでC23位水酸化はCYP90A1が触媒すると推定されてきたが、CYP90A1はC23位水酸化活性を示さなかった。発表では、C-23位水酸化酵素の基質特異性などの酵素化学的詳細とcyp90c1cyp90d1二重変異株の内生BR量の分析結果およびBR中間体処理による回復実験の結果についても報告する。本研究によりCYP90C1とCYP90D1が共にC-23位水酸化酵素であることを明らかにした。
  • Riffat Jabeen, Wai Wai Then Tin, 長谷川 剛, 久松 洋輔, 山田 小須弥, 末永 聖武, 関口 光広, 繁 ...
    p. 486
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年、光屈性反応はオーキシンの光側組織から影側組織への横移動に伴う影側組織の成長促進によるものではなく、光屈性刺激によって誘導される成長抑制物質(光屈性制御物質)が光側組織で生成することによる光側組織の成長抑制に起因するというBruinsma-Hasegawa説が提唱され、数々の証拠が提示されてきた。本研究はヒマワリ下胚軸の光屈性における光誘導性成長抑制物質の本体を徹底的に解明し、光屈性に伴う動態を明らかにすることを目的とした。これまでにヒマワリからは光屈性制御物質の候補としてcaprolactam及び8-epixanthatinが単離・同定されているが、今回我々はこれらの成長抑制物質よりも更に強い抑制活性を示す物質の単離に成功した。NMR等のスペクトル解析により8-O-β-D-glucopyranosyl-1,9,14-pentadecatriene-4,6-diyne-3,8-diol と同定し、トウモロコシの学名(Helianthus annuus L.)にちなんでhelianと命名した。この物質はクレスの幼根伸長を2.6 × 10-6 M以上の濃度で抑制した。更に、HPLCクロマトグラムの比較から光屈性刺激によってこの物質が影側組織よりも光照射側組織に多く存在していることも明らかにした。これらの結果より、ヒマワリ下胚軸の光屈性反応の制御にhelianが関与していることが強く示唆された。
  • 中城 治之, 久松 洋輔, 後藤 伸治, 長谷川 宏司, 繁森 英幸
    p. 487
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナは、分子遺伝学的な有用性からモデル植物として知られているが、その生理活性物質については、いくつかの植物ホルモンを除いてほとんど報告されていない。そこで、シロイヌナズナからの生理活性物質の探索を行った結果、これまでにシロイヌナズナ地上部から4つの新規糖脂質Arabidopside A~D (1~4)を単離・構造決定してきた。化合物 1~4は12-oxophytodienoic acid (OPDA)およびdinor-oxophytodienoic acid (dn-OPDA)を含む、ユニークなモノガラクトシルおよびジガラクトシルグリセロールである。今回、さらに生理活性物質の探索を行った結果、2種の糖脂質5および6を単離し、スペクトルデータならびに化学的手法を用いてこれらの構造を明らかにした。
    まず、クレスの根の生長に与える影響を検討したところ、Arabidopside A (1), B (2)およびD (4)に生長抑制活性が認められた。また、アベナの第一葉にArabidopside A (1)を投与し、クロロフィルの含量を測定した結果、Arabidopside A(1)にはOPDAよりも強いクロロフィル分解促進活性が認められ、ジャスモン酸メチルと同程度の活性を示すことがわかった。以上の結果と併せて、Arabidopside類のような糖脂質が葉緑体膜に存在していると推定されていることから、Arabidopside A(1)がシロイヌナズナの老化に大きく関与している可能性が示唆された。
  • 飯野 真由美, 深澤 征司, 野村 崇人, 森 昌樹, 浅見 忠男, 郷田 秀樹, 吉田 茂男, 辻本 雅文, 竹内 安智, 米山 弘一, ...
    p. 488
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    プロゲステロンは、ほ乳類の受精卵の着床や妊娠維持などの生理機能を持つ雌性ステロイドホルモンである。我々の研究グループは、GC-MSによってアラビドプシス、イネ、エンドウなど様々な植物においてプロゲステロンが存在することを明らかにした。また、シロイヌナズナを用いた弱光条件下での生理実験から、プロゲステロン100nM処理区では無処理に比べて約20%の伸長効果が認められたことにより、プロゲステロンが植物に対しても生理活性を示すことを明らかにした。
    続いて、植物のプロゲステロン生理活性発現の分子機構をより詳しく明らかにすることを目的として、プロゲステロン情報伝達・生合成関連遺伝子の探索を試みた。動物でよく知られる核内転写因子型のプロゲステロン受容体の相同性遺伝子はアラビドプシスのゲノムDNA上には存在しないと考えられている。しかし、近年新たに同定されたヒトの7回膜貫通型プロゲステロン受容体を用いた検索の結果、アラビドプシスのゲノムデータDNA上にこの相同性遺伝子を6種同定した。これらの遺伝子破壊株を選抜し育成したところ、1つの破壊株において、さやの長さが野生型に比べて30%短くなる形態を示すことが明らかになった。現在、この遺伝子が植物におけるプロゲステロン受容体であるかどうかを明らかにするために、大腸菌での大量発現系の構築や形質転換体によるin vivoでの機能解析を試みている。
  • 田中 亨勇, 加藤 尚
    p. 489
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    食品加工の過程で大量に廃棄されているユズの果実の絞り粕の再利用法を検討するため、ユズ果皮が植物の生長に与える影響を調べた。 凍結乾燥したユズ果皮を粉砕し、その粉末のアレロパシー活性を測定した。 その結果、微量のユズ果皮が検定植物の生長を抑制し、アレロパシー物質が含まれていることが明らかになった。 次に、そのアレロパシー物質を明らかにするため、ユズ果皮の抽出物の分離・精製を試みた。 その結果、アブシジン酸-β-D-グルコシドエステル(ABA-GE)が主要な生長抑制物質として単離された。 次に、ABA-GEと(+)-ABAの生長抑制活性を比較した。 その結果、ABA-GEはレタスの生長を抑制し、その生長抑制活性は(+)-ABAと比べ、1/3程度であった。 さらに、ユズ果実の絞り粕を果皮、じょうのう、種子に分け、それぞれの抽出物の生長抑制活性とそれらのABA-GEの濃度を測定した。 その結果、生長抑制活性とABA-GEの濃度は果皮、じょうのう、種子の順に大きかった。 また、生長抑制活性とABA-GEの濃度の間には強い相関関係があった。
    以上のことから、ABA-GEはユズの果実のアレロパシーにおいて重要な役割をもっており、ユズ果実の絞り粕は化学合成農薬に代わる新しい雑草防除手段として有効であることが示唆された。
  • 保浦 徳昇, 岩渕 雅樹, 小川 健一
    p. 490
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ジベレリンは種子の発芽を促進する重要な植物ホルモンであることが知られている。一方、様々な植物の種子発芽にはH2O2やO2-などの活性酸素が必要であることが示唆されている。H2O2処理によってシロイヌナズナの発芽が促進され、ジベレリンの合成に関わる遺伝子が誘導されることをマイクロアレイ解析と発芽試験によりすでに明らかにしており、また、吸水処理後には活性酸素(O2-)が生成されていることを明らかにいしている。そこで、種子発芽時に生成されるO2-の役割を明確にするためにNADPHオキシダーゼの阻害剤であるDPIがO2-の生成とジベレリン合成経路の遺伝子発現に与える影響を調べた。DPIによるO2-生成の抑制は限定的であったがその抑制の程度と同程度のジベレリン合成経路遺伝子発現の減少が認められた。以上より、種子発芽時に生成されるO2-はジベレリン合成経路遺伝子の発現を正に制御しており、その生成にはNADPHオキシダーゼが関わっている可能性が考えられた。
  • 岡本 昌憲, 桑原 亜由子, 久城 哲夫, 神谷 勇治, 小柴 共一, 南原 英司
    p. 491
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ABAの主要な代謝酵素であるABA 8'位水酸化酵素はCYP707A遺伝子群にコードされている。シロイヌナズナの4つのCYP707A (CYP707A1-4)の種子における生理的役割を明らかにする事を目的に、これら遺伝子の発現と変異体の形質を解析した。種子のABA量の調節においては、CYP707A2のみが重要であると考えられていたが、cyp707a1の乾燥種子はcyp707a2よりも多くのABAを蓄積しており、強い種子休眠性を示した。遺伝子発現解析および変異体を用いた実験から、CYP707A1は種子登熟期中期に胚で強く発現しており、登熟期中期に蓄積したABAの不活性化に主要な役割を果たすことが明らかとなった。一方、CYP707A2の発現ピークはCYP707A1よりも遅れて種子登熟後期に胚乳と胚で見られた。二重変異体の解析も併せた結果、種子の休眠性の強さは、乾燥種子に含まれるABA量の蓄積量よりも、種子吸水時におけるABA量の維持と正の相関を示した。種子吸水時における急激なABA量の減少にはCYP707A2が主要な役割を果たしており、一方、CYP707A1は種子発芽後の生長時におけるABAの不活性化に主要な役割を果たしていることが明らかとなった。これらの結果から、CYP707A1とCYP707A2は種子形成時から発芽後の発達段階で異なる時期にABAの不活性化を担っていることが示唆された。
  • 鷲尾 健司, 森川 正章
    p. 492
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    穀物種子の発芽では、ジベレリン酸(GA)が、胚乳組織の外層に発達する糊粉層に作用して、貯蔵物質の分解利用に関与する加水分解酵素遺伝子群の発現を促す。この生理作用には、GAが初動的に発現を促す転写因子であるGAMybなどの、GA初期反応遺伝子の機能が必須である。GAによるリアルな遺伝子制御のしくみを知るため、初期反応遺伝子自体の発現機構を調べている。これまでの解析により、初期反応遺伝子が示すGA応答性には、長大な第1イントロンにあるエンハンサー効果が必要であることを明らかにした。これらの特徴は、既知のクロマチン制御を受ける遺伝子との類似性があるため、GA初期反応遺伝子の発現がクロマチン段階での制御を受けると想定して、クロマチン動態に関わる1つの要因であるDNAのメチル化状態をbisulfite sequence法で調べた。その結果、GAMyb遺伝子のプロモーター領域に、2ヶ所の主要なメチル化部位を検出した。生体内での3種の周知なメチル化様式のうち、維持型の修飾が非誘導組織である実生で高く、標的組織となる糊粉層では軽減されていた。また糊粉層では、GAの作用によりasymmetricな修飾の一部が有意に減少する傾向が見られた。全体的な修飾の比率は、各々の組織の核型の違いと相関があり、胚乳を起源とする糊粉層の持つ倍数性が、この組織での高いGA応答性に何らかの形で寄与する可能性が示された。
  • 松田 健太郎, 森田(寺尾) 美代, 角谷 徹仁, 田坂 昌生
    p. 493
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    減数分裂時の相同組換えは性や年齢、温度などの影響を受けることが知られている。我々はシロイヌナズナを材料としてゲノム全体における減数分裂時の相同組換えを検出する方法を確立した。そしてこの方法を用いて長日条件下で育てた植物の主茎において4~9番目に咲く初期の花(発芽後約3~4週間)の雌性配偶体形成時の組換え頻度は30~40番目に咲く後期の花(発芽後約5~6週間)の雌性配偶体形成時の組換え頻度より低いことを明らかにした。一方、初期の花と後期の花において雄性配偶体形成時の組換え頻度には違いはなかった。なお初期、後期それぞれの時期の花における雌性配偶体形成時の組換え頻度は雄性配偶体形成時のそれよりも低かった。
    今回これらの事実を基に、植物体の雌性配偶体形成時の組換え頻度の変化と植物個体のエイジの関係を詳しく調べた。長日条件下で育てた植物のロゼット葉から生じる側枝につく初期(発芽後約5~6週間)・後期(発芽後約8~10週間)の花、および短日条件下で生じる主茎につく初期(発芽後約9~10週間)・後期(発芽後約13~15週間)の花に関して、各配偶体形成時の組換え頻度を調べた。これらの結果から生殖生長時の相同組換えに関与する茎頂分裂組織のエイジについて考察したい。
  • 久保 美和, 松島 良, 服部 千恵子, 蘇都莫日根 , 坂本 亘
    p. 494
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物の花粉は1つの栄養細胞と2つの精細胞から構成される。栄養細胞は花粉の大部分を構成し、花粉発芽時には頂端生長して精細胞を胚珠に輸送する。2つの精細胞は栄養細胞に取り込まれた形で存在し、それぞれが胚珠において重複受精を行う。植物細胞は核以外にミトコンドリアとプラスチドにオルガネラDNAを持つ。多くの被子植物の花粉では発生過程において栄養細胞ならびに雄原細胞(後に精細胞に分化する細胞)のオルガネラDNA量が減少することが知られているが、その分子機構の詳細は不明である。我々はこれまでに、シロイヌナズナの花粉をDNA特異的結合試薬であるDAPIを用いて染色する方法を用いて、花粉におけるオルガネラDNAの減少に異常を示す変異体を探索している。現在までに、栄養細胞の細胞質に野生型では観察されないDAPIのシグナルが観察される突然変異体を数系統単離している。野生型と変異体の花粉をDAPIとミトコンドリア染色試薬であるDiOC6を用いて二重染色をした結果、栄養細胞の細胞質中に観察されたDAPIのシグナルはプラスチドDNAに由来する可能性が得られた。また、得られた系統のうち1系統は、葉に斑入りの表現型を示した。現在、透過電子顕微鏡による詳細な解析と原因遺伝子のマップベースクローニングを進めており、その結果も合わせて報告したい。
  • 橋田 慎之介, 高橋 秀行, 川合 真紀, 内宮 博文
    p. 495
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年、ニコチンアミド補酵素群(NAD)のエネルギー伝達系における機能に加え、タンパク質修飾やシグナル伝達経路における機能が明らかになってきたが、未だNADの生合成、代謝経路についての知見は少ない。酵母や動物ではNADの生合成経路はde novo経路とsalvage経路の2経路が存在し、両経路において働く鍵酵素としてNMNATが知られている。我々のグループではシロイヌナズナのNMNATはシングルコピー遺伝子として存在する事を見出し、その大腸菌組換えタンパク質はin vitroにおいてATP依存的にN(a)MNからN(a)ADを合成する活性を持つ事を明らかにした。また、T-DNA挿入系統から選抜したNMNATの破壊株(mgm)では野生型と比較して種子収量が40-50%低下しており、遺伝学実験の結果からmgmは配偶体型の雄性不稔系統であることが示唆された。花粉中のNAD量は低下しており、in vitro花粉管伸長試験では葯半数の花粉管で発芽後の伸長に異常が観察された。in vivoにおいても同様の結果を示した事から、NAD欠乏による花粉管伸長の異常が雄性不稔の原因と考えられた。さらに花粉管伸長時にNADの添加濃度に応じた応答を示した事から、花粉管伸長過程ではNADが必須である事が明らかとなった。
  • 小泉 綾子, 風間 裕介, 西山 りゑ, 河野 重行
    p. 496
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ナデシコ科雌雄異株植物ヒロハノマンテマの無性花変異体であるK034は、1個体に無性花と不完全な雌花(雌様花)をほぼ9:1の割合でつける。無性花は成熟した雄蕊や雌蕊をもたず、雌様花では通常の雌花に5本あるはずの雌蕊群が2本に減少する。高真空SEMを用いて花の発達段階を観察した。初期には、無性花と雌様花は野生型の雄花に似ていて、それらの第4whorlは雌花に比べて小ぶりであった。後期には、無性花では雌蕊原基が抑制され雄蕊原基の伸長は停止したのに対し、雌様花では野生型雌花と同様に雌蕊原基が伸長した。Bクラス遺伝子SLM2とCクラス遺伝子SLM1の発現をin situハイブリダイゼーション法で調べると、野生型雄花の雄蕊原基では雄蕊原基伸長期にともに発現するが、K034の無性花ではいずれも発現していなかった。雌様花でのSLM2SLM1の発現を現在調べている。雌様花に野生型の雄を交配したところ、野生型の雌株と雄株に加え無性花と雌様花をつけるK034タイプがそれぞれ2:2:1の割合で現れた。分離比だけではK034が雄株由来か雌株由来かはわからなかったので、Y染色体全域に分布するSTSマーカーの有無をPCRで調べた。STSマーカー11個のうち6つは確認されたが、p腕上の5つが欠損していた。ヒロハノマンテマのY染色体p腕上には、雌蕊の抑制に関わる領域と雄蕊の初期発達に関わる領域があるとされている。
  • 風間 裕介, 小泉 綾子, 河野 重行
    p. 497
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    ヒロハノマンテマはXY型の性染色体をもつ雌雄異株植物である。雌雄どちらの花芽にもはじめ雄蕊原基(♂)と雌蕊原基(♀)が形成されるが、雄花(♂)では雄蕊(♂)のみが成熟し、雌花(♀)では雌蕊(♀)のみが成熟する。黒穂菌が雌株(♀)に感染すると、黒穂菌感染雌株(♀)は雄蕊(♂)原基も発達させて擬似的な両性花をつける。花芽形成遺伝子のヒロハノマンテマホモログ(SlLFY, SlWUS, SlUFO等)を単離するため、直径1mm 以下のつぼみから合成したcDNAをテンプレートに縮重PCRを行った。単離した花形成遺伝子ホモログとBクラス遺伝子SLM2の、雄(♂)、雌(♀)、黒穂菌感染雌(♀)における発現パターンを、in situハイブリダイゼーションで調べた。SlLFYは、花器官が分化していないステージ1において雌雄の花芽全体で発現していたが、がく片と雌蕊(♀)原基が分化するステージ4では第3,4 Whorlにおける発現は消失していた。SlUFOは、雄蕊と雌蕊が未分化のステージ2において、雌雄に関係なく第2,3 Whorlで発現していた。SlUFOの発現が見られない第4 Whorlの表面の細胞数は、雄花では23であったのに対し、雌花(♀)と感染雌花(♀)では42であった。雄蕊が発達する感染雌花(♀)でも、発達初期の第4 Whorlの大きさは、雌花(♀)と同じように雄花(♂)よりも大きいことが示された。
  • 青野 直樹, 長谷部 光泰
    p. 498
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    花を形作る遺伝子が花を獲得する以前の植物でどのような役割を担っているかを明らかにすることは、花の進化を理解する上で重要である。花の形成に必須であるMADS-box遺伝子は花のないシダ植物やコケ植物でも発現していることが報告されているが、その機能は明らかとなっていない。我々は、遺伝子ターゲティングが容易なヒメツリガネゴケを用いて、コケ植物におけるMADS-box 遺伝子の機能を解き明かすことを目的として研究を進めている。
    セン類のヒメツリガネゴケは6つのMIKCc型MADS-box遺伝子を持つ。各遺伝子の終止コドンの直前にGUS遺伝子を挿入した系統を作出し、レポーター融合遺伝子の発現を調べた。その結果、各遺伝子は異なる発現様式を示し、原糸体、茎葉体、仮根、造精器、造卵器、胞子体など、様々な組織での発現が観察された。各遺伝子の破壊株において野生株との顕著な違いは検出されなかったが、PPM1、PPM2、PpMADS1を破壊した三重遺伝子破壊株を作出したところ、胞子体を形成する茎葉体の数が減少していた。このことからヒメツリガネゴケMADS-box遺伝子は生殖および胞子体形成に関与していると考えられる。現在、残りの3つの遺伝子(PpMADS5、PpMADS6、PpMADS-S)も同時に破壊した多重遺伝子破壊株を作出中であり、これらの解析結果と併せて報告する。
  • 村井 耕二, 朱 ヨウ, 皿池 辰徳, 山本 優子
    p. 499
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    連続戻し交配により近縁野生種 Aegilops crassa 細胞質を導入した細胞質置換コムギ系統は、雄ずいの雌ずい化(pistillody)による雄性不稔を誘発する。一方、遺伝学的な解析により、コムギ品種「Chinese Spring」(CS)の7B染色体長腕(7BL)には、この pistillody を抑制する優性の主働遺伝子Rfd1が存在し、Ae. crassa 細胞質を導入しても pistillody が起こらないことが示された。この pistillody は、Ae. crassa 細胞質ミトコンドリアゲノムに存在する原因遺伝子の何らかの作用により、雄ずいが雌ずいへとホメオティックに変化する現象(cytoplasmic homeosis)であり、核ゲノムに存在するRfd1遺伝子は、ミトコンドリア原因遺伝子の作用を何らかの形で抑制すると考えられる。最近、私たちは、pistillody の直接的な原因は、雄ずいの identity の決定に関与するクラスB MADSボックス遺伝子の発現パターンが変化することであることを明らかにした。今回、pistillody系統と正常系統の幼穂由来cDNAサブトラクションの結果、Ae. crassa 細胞質ミトコンドリアゲノムに存在するorf256-coxIキメラ遺伝子およびnad1-ND6キメラ遺伝子をミトコンドリア原因候補遺伝子として同定した。
  • 遠藤 誠, 三上 一保, 土屋 亨, 大島 正弘, 若狭 暁, 宮尾 安藝雄, 広近 洋彦, 渡辺 正夫, 川岸 万紀子
    p. 500
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    イネの生殖過程に機能する新規遺伝子を同定する目的で,イネ葯より合成したcDNAを用い,マイクロアレイ解析を行った.葯で高発現する多様なクローン中で,1核期・2核期で特に強く発現する2種類の遺伝子がシロイヌナズナCER1遺伝子に類似性のあることを見いだした.この2種類の遺伝子の一方は同定済みのOsCER1と同一であったが,他方はこれと高い類似性をもつ新規遺伝子でありOsCER1Bと名付けた.レトロトランスポゾンの挿入によりOsCER1Bが破壊された変異株が2系統見いだされ,両系統で,トランスポゾンの挿入ホモ型の個体に種子稔性の著しい低下が認められた.野生型との交配の結果より,稔性の低下は花粉側によるものであると考えられた.シロイヌナズナのCER1遺伝子は表層ワックスの合成に関与する酵素をコードし,この遺伝子の欠損により花粉の表層ワックスの構造が変化して,花粉稔性が低下することが知られている.OsCER1Bの変異においても同様の変化が観察されるか,現在変異株の花粉の構造を解析している.また,イネのゲノム配列の検索より,OsCER1, OsCER1Bに加え,CER1類似遺伝子がさらに2つ見いだされ,計4種類の類縁遺伝子がゲノム上に存在することがわかった.これらの遺伝子の機能の違いについての手がかりを得るため,まず4種類の遺伝子の発現パターンの違いについて解析を進めている.
  • 中畦 悟, 山田 健志, 國枝 正, 近藤 真紀, 西村 幹夫, 西村 いくこ
    p. 501
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    会議録・要旨集 フリー
    液胞プロセシング酵素(Vacuolar Processing Enzyme; VPE)は、液胞タンパク質の成熟化に関わる酵素として発見されたcysteine proteaseである. シロイヌナズナδVPEは種子発生初期に内珠皮の特定の細胞層(ii2・ii3層)に一過的に発現する.これらの細胞層では種子形成の過程で細胞死が進行する.δVPE欠損株では内珠皮の細胞死に遅れがみられる.動物のアポトーシスでは実行因子としてCaspasesが知られているが,δVPEはCaspase-1活性を持っている.以上の結果から,δVPEが種皮形成を目的とする内珠皮層の細胞死に重要な役割を果たしていることを示した.
    今回我々は,δVPEの局在する新規の構造体に注目して解析を行った.この構造体は電子密度が高く,内珠皮の特定細胞層における細胞死の初期に細胞膜と細胞壁の間に出現する.この構造体を遠心によって沈殿画分を得ることで粗精製し,その内容物をN末端シークエンスによって同定した.その中の1つの因子について抗体を作製し,イムノブロットによって解析したところ,発現時期・器官がδVPEと非常によく似ていた.また蛍光抗体染色の結果から,δVPE同様,内珠皮の特定の細胞層(ii2・ii3層)に一過的に発現する事が分かった.以上の結果からこの新たな因子はδVPEの関連因子で内珠皮細胞死に関与していると考えられる.
feedback
Top