社会福祉学
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論文
  • 狩野 俊介
    2024 年 64 巻 4 号 p. 1-13
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
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    本研究の目的は,精神保健医療福祉専門職を対象としたクライシス・プラン(CP)研修プログラムを開発し,その研修実施の効果を検証することである.本プログラムは,120分1回の研修会として実施した.研究対象は,三つの県精神保健福祉士協会に所属する会員に対して募集を行い,合計51名の参加が得られた.効果測定のための調査は,研修1カ月前,研修直前,研修直後,研修1カ月後に実施し,回答を得た.その結果,35名から回答があり,各尺度得点において研修1カ月前と研修直後,研修1カ月後,研修直前と研修直後,研修1カ月後の間で,CPの実践効力感の向上に有意な差が認められた.これまで示されてこなかったCPの作成方法や活用方法であるが,本研究から本プログラムを精神保健医療福祉専門職にCPを普及するための方策の一つとして位置づけることができると考えられる.

  • 増井 香名子, 岩本 華子, 鄭 丞媛
    2024 年 64 巻 4 号 p. 14-29
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,DVサバイバーの加害者と別居後の心理的・精神的経験を明らかにし,支援のあり方を検討することである.そのため,DVサバイバー30名に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と心的外傷後成長(PTG)をIES-R,PTGI-Jを用いた質問紙調査および,半構造化面接を実施した.その結果,PTSD高リスク者は73.3%であった.PTGは,国内の先行研究のスコアより高かった.インタビュー調査から,あらゆる生活場面で心理的困難を経験しているが,さまざまなコーピング戦略を用いていること,このコーピングがPTGの生起につながることが示唆された.結果から,トラウマインフォームドケアの重要性,また継続的な心理的支援とPTSDをスクリーニングするシステム,安全の支援および新たな可能性が描ける生活支援の必要性が示された.さらに,DVサバイバーのコーピングやPTGの経験はロールモデルとして当事者に共有することが重要である.

  • 黒田 文
    2024 年 64 巻 4 号 p. 30-41
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は当事者の知と制度的援助専門職者の「専門知」との運用を考察することである.わが国の一部のサービスでピアサポートが報酬加算対象となったことから,制度的援助専門職者にはピアサポートの土台となる当事者の知を理解してともに支援にあたることが求められる.当事者の知と「専門知」は双方が知であるものの,完全には同じ知ではないなら,双方の関係性を検討して建設的に運用される必要がある.本稿では,生きられた経験と当事者の知の潮流の観点から当事者の知を理解する一方,技術的合理性や省察的実践という観点から「専門知」を捉えた.制度的援助専門職者が専門性を開き,当事者を中心としたサービスを提供するには,当事者の知と「専門知」の運用を活性化する対話にもとづき,“実践の中の知”を蓄積する必要がある.双方の知の共同(協働)的運用には制度援助専門職者が知/パワーに自覚的になり,当事者の知vs「専門知」の二項対立に陥らない態度が求められる.

  • 日田 剛
    2024 年 64 巻 4 号 p. 42-55
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,成年後見制度の利用を阻害する要因を,地方中山間地域の特性と成年後見制度に関連のある社会資源までを射程範囲に含めて明らかにすることである.成年後見制度の申立て動機には「介護保険契約」の割合が比較的多い傾向が確認されており,介護保険サービスなどの社会資源の整備状況が,成年後見制度の利用になんらかの影響を及ぼすと考えられる.よって,特に地方において顕著に見られる社会資源の脆弱性が,利用の阻害要因になっているとの仮説を立てた.成年後見制度に関わる社会福祉関係機関の職員へインタビュー調査を行い,得られたデータを越智(2011:65)の作成した「福祉アクセシビリティ」の分析枠組みをもとに分析した.その結果,介護保険サービスなどへの福祉アクセシビリティの脆弱性は成年後見制度に繋ぐことを困難にしており,また,持ち家や山,田畑などの不動産管理を担う専門職の不足も阻害要因として示された.

調査報告
  • 湯原 悦子, 掛川 直之, 斉藤 雅茂, 山田 壮志郎
    2024 年 64 巻 4 号 p. 56-69
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
    ジャーナル 認証あり

    名古屋市は2017年に法務省が実施する地域再犯防止推進モデル事業に取り組む地方公共団体の一つとして選定された.翌年には事業実施にあたり,市内で福祉や保健などの支援を行う92機関を対象に,2015年度から2017年度の間,万引きや窃盗,詐欺などの逮捕歴がある者を支援した経験の有無,再犯の有無などを尋ねる調査を行った.結果,92機関のうち59機関(67.0%)が調査対象に該当する者の支援を経験しており,報告のあった201事例の26.9%に支援中の再犯が確認された.支援者が感じた課題としては,本人に関すること,本人の家族に関すること,支援機関に関すること,再犯防止など4事項18種が確認できた.今後は検察庁をはじめ市内各機関との適切な連携方法を模索し,既存の支援の可能性を追求すること,もし既存の支援では十分な支援が行えない場合は市のプロジェクトとして新たな支援手段を創出していくことが求められる.

  • 門下 祐子, 羽山 慎亮
    2024 年 64 巻 4 号 p. 70-83
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/05/21
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    本研究の目的は,今後日本で知的障害者の「性」の学びを保障するためのあり方やシステムについて,日韓の現状や課題の異同をふまえたうえで考察・提起を行うことである.そこで,韓国の①キップンウリ福祉館での知的障害者にわかりやすい冊子作成の経緯等,②中浪青少年性文化センターでの知的障害児・者への性教育の目的や内容について,視察およびインタビュー調査を行った.その結果,①問題となる性的行動を単に禁止するのではなく,性教育を生涯教育の一環として捉えるなかで冊子の作成に至ったこと,②知的障害児・者自身が「性の権利」を認識し,主体的に自己を表現しつつ安全な暮らしを営むために性教育を行っていることがわかった.日本政府は人権とジェンダー平等を基盤とする包括的性教育に消極的な姿勢を示すなか,韓国では法的根拠に基づき,女性家族部が性教育の専門機関を各地域に設置するなどして性教育の実践を支えていた.

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