北関東医学
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68 巻, 4 号
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総説
  • 戸部 賢, 仙頭 佳起
    2018 年 68 巻 4 号 p. 221-224
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    入院患者の急変時対応システムは非常に重要である.院内心停止が起こると生存退院する可能性は低く,起こる前から前兆を早めに捉えて介入することが重要視されつつある.多くの病院は『コードブルー』と呼ばれる院内一斉放送対応システムで運用していることが多いが,あまり効率的とは言えない.特定の決められたチーム(MET: Medical Emergency Team)が対応することで迅速かつ効率的となる.さらに近年はあらかじめ決められたバイタルサイン基準に則って,急変の前兆の段階でコールするRRS(Rapid Response System)という概念が浸透しつつある.前兆の段階で対応することで予期せぬ院内心停止を減らすことができるというデータも出てきている.群馬県内の主要な病院の院内急変対応システムがどのような形式であるかということも併せて,それぞれのシステムの利点欠点を整理する.
    院内心停止が起こった際に,蘇生が成功する可能性はわずか49%に過ぎず,さらに生存退院する可能性は15%である.1近年,院外心停止の蘇生率の改善は著しいが,院内心停止の生存率は改善していない.
    従来,病院内で患者の急変があった場合,現場に居合わせた医師や看護師が対応するか,対応不可能な場合には,“Code Blue”のような院内一斉放送システムで全館コールをして,現場に駆けつけることができるスタッフで対応することが一般的であった.しかし,2000年以降,院内に急変対応チームを組織して,その部署をコールして,そのチームが対応することが提唱されるようになった.2002年にBuistらにより,Medical Emergency Team(MET)を院内に組織して院内急変に対応することにより,院内心停止数,院内死亡率のいずれも減少したと報告された.2
    さらに医療安全に関する意識の高まりを受けて,米国医学研究所は1999年に『To Err Is Human: Building a Safer Health System』を出版して,注意喚起を促し,米国医療の質改善研究所は医療安全の実現のために,2つのキャンペーンを行った.2005年1月から2006年6月まで展開された『100,000 Lives Campaign』と2006年12月から2008年12月の『5 Million Lives Campaign』であるが,その中で新たな院内急変対応システムであるRapid Response System(RRS)の導入により,院内心停止が15%減少したと紹介された.
    ここでは院内急変対応の新しい概念の紹介と,対応システムのメリット・デメリットならびに群馬県内の現況について解説する.
原著
  • 金泉 志保美, 佐光 恵子
    2018 年 68 巻 4 号 p. 225-232
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    目 的:地域で生活する医療的ケアを要する子どもを担当する相談支援専門員が行う家族支援の特徴を明らかにし,看護師等保健医療職と相談支援専門員との連携による家族支援の在り方について示唆を得ることを目的とした.
    方 法:医療的ケアを要する子どもの相談支援に携わった経験のあるA県内の相談支援専門員10名を対象に半構成的面接を実施し,質的記述的方法を用いて分析した.
    結 果:相談支援専門員が行う家族支援の実際として,【家族の援助ニーズを把握する】【家族の思いを受け止める】【家族関係調整の役割を意識してかかわる】【家族と支援機関等とをつなぐ】【家族全体をみながら相談支援を行い計画に活かす】【安心・安全を意識しながら支援する】【他職種・他機関と連携して家族支援をする】の7カテゴリが形成された.
    結 語:相談支援専門員が行う家族支援の特徴として,「つなぐ」役割や安心・安全を意識した支援などが明らかとなった.これらの特徴と,訪問看護師の医療面での専門性とを相互に活かしながら連携し,家族支援を実践することが求められる.
  • 堀越 摂子, 常盤 洋子
    2018 年 68 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    目 的:本研究の目的は,乳幼児をもつ母親の育児に伴うストレスマネジメントの概念を明らかにすることである.
    方 法:国内外の34文献を対象とし,Rodgersの概念分析の手法を用いて分析を行った.
    結 果:概念の属性は【育児に伴うストレス状況に応じた対処行動の工夫】であった.先行要件は【育児の中で感じるストレスの存在】【育児に伴うストレスの自覚】【育児に伴うストレスへの対処可能性の認識】であった.帰結として【育児に伴うストレスの軽減】【母親の心理的健康の維持・向上】【育児に関する自己効力感の向上】が導かれた.
    結 語:本研究における概念分析の結果得られた育児に伴うストレスマネジメントの概念は,乳幼児をもつ母親が育児に伴うストレスを自覚し,ストレスへの対処が可能であるという認識を抱くことで,様々な対処行動の中から自身に適した方法を選択・実行し,実行した対処行動を振り返り修正しながら育児に伴うストレス状況に応じて対処行動を使い分け,対処行動を工夫することである.本概念を基に,育児に伴うストレスマネジメントを「育児に伴うストレスを自覚し,ストレスへの対処可能性を認識し,育児に伴うストレス状況に応じて対処行動を工夫すること」と定義した.社会環境の変化により母親の育児の負担感が増し,母親が育児に伴うストレスをマネジメントできるように支援していくことは今後ますます重要となることが予測されるため,本概念は母親支援ならびに育児に伴うストレスマネジメントに関する研究への活用性が期待できる.
  • 吉田 久美子, 神田 清子, 藤本 桂子, 菊地 沙織, 清水 裕子, 京田 亜由美
    2018 年 68 巻 4 号 p. 241-253
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    【目 的】外来化学療法中あるいは放射線療法中のサバイバーの,社会役割と治療の調和に向けた看護プロセスを網羅したアルゴリズムの原案を開発することである.【方 法】1. アルゴリズム初回原案の基盤の構築,2. 初回原案の作成として第1段階:社会役割の支援に必要な記載項目の検討,第2段階:PFC形式での作成などを経て,初回原案の評価の調査と修正を行った.【結 果】サバイバーの状態をアセスメントし社会役割の継続に向けた具体的支援を含め,1)初回治療前/初回治療当日のアルゴリズム,2)診察日のアルゴリズム,3)治療変更時のアルゴリズム,4)症状悪化時のアルゴリズムの原案を開発した.【結 語】サバイバーの社会役割と治療の調和に向けた看護アルゴリズム原案は,サバイバーを総合的にアセスメントし具体的な対応を行い,他職種との連携により迅速に支援できる内容が含まれた.
症例報告
  • 上吉原 光宏, 井貝 仁, 吉川 良平, 大沢 郁, 矢澤 友弘
    2018 年 68 巻 4 号 p. 255-260
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    悪性胸膜中皮腫はまれな疾患であり,腫瘍の胸膜浸潤及び胸水貯留などによる胸部痛や呼吸困難を来すため,高齢者においてはQOLを著しく下げる疾患である.標準治療は手術(胸膜肺全摘術)・全身化学療法・片側胸郭照射の三者併用療法だが,胸膜肺全摘術は侵襲度が高く,高齢者においては術後合併症が懸念される.近年,胸膜全切除・肺剥皮術が行われるようになり,患側の肺実質温存が可能であり,治療成績も胸膜肺全摘と比較し遜色ないことがわかってきた.今回著者らは,胸水コントロール困難となった超高齢者の悪性胸膜中皮腫症例に対して,外科治療(胸膜全切除・肺剥皮術)を行った.術後経過は重大合併症なく退院した.超高齢者に対する同術式の報告はほとんどみられず,疾患自体の根本治療だけでなく肺機能温存によるQOL改善可能な手術として,認容性が高い有意義な術式と思われたため報告する.
  • 大崎 洋平, 寺崎 幸恵, 金谷 秀平, 田原 研一, 清水 啓明, 柳沢 邦雄, 石埼 卓馬, 小川 孔幸, 塚本 憲史, 半田 寛
    2018 年 68 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    【症 例】 65歳男性,C型肝炎,アルコール性肝障害,アルコール依存症,糖尿病,高血圧のため前医通院,禁酒のためX年4月11日からcyanamide(70mg/日)を内服していた.X年5月29日に左足の脱力感,構音障害が出現し当院へ救急搬送され,Hb 9.6g/dl,WBC 700/l(Neutrophile 49/l),Plt 3.5万/lと汎血球減少を認めた.骨髄穿刺ではcellularity 10%と低形成性骨髄で,形態異常を認めず,染色体は正常核型,PNH血球は検出されなかった.所見から再生不良性貧血(stage 5)が疑われたが,アルコール離脱せん妄と考えられる意識障害が強くMRI,インジウム骨髄シンチグラフィーなどの画像検査は施行できなかった.せん妄治療のため精神科病棟に入院し,蜂窩織炎を合併していたため抗菌薬を投与,内服薬をすべて中止し,G-CSFの投与を施行した.血球は6日で回復し,cyanamide以外の内服薬再開後も血球減少は認められなかったことから,cyanamideによる薬剤性再生不良性貧血と考えられた.【考 察】 cyanamide関連再生不良性貧血の報告は少なく,文献的には症例報告を3例認めるのみであった.内服開始から発症までの期間は20日から6ヶ月,回復までの期間は2-4週,cyanamideの内服量は50-120mg/日で本症例と一致する.稀な有害事象であり適切な治療で救命し得た症例と考え報告する.
  • 髙橋 真治, 呉屋 朝幸
    2018 年 68 巻 4 号 p. 267-270
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    患者は87歳,女性.心窩部痛を主訴に来院した.腹膜刺激症状はなく,血行動態は安定していた.造影CTで,十二指腸憩室および憩室内膿瘍,憩室壁外性のフリーエアーを少量認めた.炎症の範囲は限局的であった.以上から,十二指腸憩室穿孔と診断した.全身状態は良好であったため,保存的治療を選択した.治療経過は良好に推移し,治療開始16日目から食事を再開,28日目に退院した.十二指腸憩室穿孔の保存的治療完遂例は稀であり,今回われわれは,この1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 米山 智, 湯沢 賢治, 小林 仁存, 武藤 亮, 岡田 晃穂, 加藤 丈人, 小崎 浩一, 寺島 徹
    2018 年 68 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    完全内臓逆位は稀な疾患であり,それ自体の病的意義は少ないが,手術の際は十分な解剖学的理解が必要となる.今回我々は,完全内臓逆位症患者に発症した胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行したので報告する.患者は70歳代女性.小児期の虫垂炎手術の際に内臓逆位を指摘されていた.心窩部不快感を主訴に前医で胃癌と診断され,当院を紹介受診した.腹部造影CT検査では,腹腔動脈の分岐形態は正常者と比較して鏡面像を呈する以外に明らかな破格は認められなかった.多脾症や腸回転異常などの合併異常も認めなかった.術前に術者・助手で解剖学的理解を共有し,また手術の際は小開腹を先行させるとともに,立ち位置を通常と逆とするなどの工夫を行い,腹腔鏡補助下幽門側胃切術(Roux-en-Y再建)を施行し得た.完全内臓逆症患者に対する腹腔鏡手術は報告が少なく,術前に十分なシミュレーションを行う事が重要と考えられた.
  • 嶋口 万友, 大谷 泰介, 竹内 瑞葵, 中川 真理, 江原 玄, 竹内 悠二, 野田 大地, 松尾 亮太
    2018 年 68 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性で,臍ヘルニアの手術目的に当科紹介となった.当科初診時には腹部の自発痛は認めなかったが,腹部CTで腹腔内遊離ガスおよび膿瘍を認めたため,消化管穿孔を疑い入院加療となった.下腹部に軽度の圧痛を認めるのみで,炎症所見も軽微であったことより,保存的加療を行った.退院後も無症状で経過したが,約4か月後に施行した腹部CTで右下腹部に著明なガス貯留を伴う膿瘍腔の残存を認め,S状結腸憩室穿通による腹腔内膿瘍の診断で手術の方針となった.術中所見では,右卵巣および卵管采に手拳大の厚い壁を持つ膿瘍が強固に癒着していたため,右付属器膿瘍と判断した.憩室と膿瘍を伴う卵管との連続が確認でき,右付属器および膿瘍切除,S状結腸部分切除術を施行した.骨盤内膿瘍を伴う結腸憩室症では,付属器への瘻孔形成の可能性も念頭に精査を行い,治療方針を決定することが重要であると考える.
流れ
昭和キャンパス点描
抄録
編集後記
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