入院患者の急変時対応システムは非常に重要である.院内心停止が起こると生存退院する可能性は低く,起こる前から前兆を早めに捉えて介入することが重要視されつつある.多くの病院は『コードブルー』と呼ばれる院内一斉放送対応システムで運用していることが多いが,あまり効率的とは言えない.特定の決められたチーム(MET: Medical Emergency Team)が対応することで迅速かつ効率的となる.さらに近年はあらかじめ決められたバイタルサイン基準に則って,急変の前兆の段階でコールするRRS(Rapid Response System)という概念が浸透しつつある.前兆の段階で対応することで予期せぬ院内心停止を減らすことができるというデータも出てきている.群馬県内の主要な病院の院内急変対応システムがどのような形式であるかということも併せて,それぞれのシステムの利点欠点を整理する.
院内心停止が起こった際に,蘇生が成功する可能性はわずか49%に過ぎず,さらに生存退院する可能性は15%である.1近年,院外心停止の蘇生率の改善は著しいが,院内心停止の生存率は改善していない.
従来,病院内で患者の急変があった場合,現場に居合わせた医師や看護師が対応するか,対応不可能な場合には,“Code Blue”のような院内一斉放送システムで全館コールをして,現場に駆けつけることができるスタッフで対応することが一般的であった.しかし,2000年以降,院内に急変対応チームを組織して,その部署をコールして,そのチームが対応することが提唱されるようになった.2002年にBuistらにより,Medical Emergency Team(MET)を院内に組織して院内急変に対応することにより,院内心停止数,院内死亡率のいずれも減少したと報告された.
2さらに医療安全に関する意識の高まりを受けて,米国医学研究所は1999年に『To Err Is Human: Building a Safer Health System』を出版して,注意喚起を促し,米国医療の質改善研究所は医療安全の実現のために,2つのキャンペーンを行った.2005年1月から2006年6月まで展開された『100,000 Lives Campaign』と2006年12月から2008年12月の『5 Million Lives Campaign』であるが,その中で新たな院内急変対応システムであるRapid Response System(RRS)の導入により,院内心停止が15%減少したと紹介された.
ここでは院内急変対応の新しい概念の紹介と,対応システムのメリット・デメリットならびに群馬県内の現況について解説する.
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