2000年2月,茨城県南東部に位置する浅い富栄養湖である北浦の全域60地点において,エクマンバージ採泥器を用いてユスリカ幼虫の水平分布を調べた。全地点から合計13分類群のユスリカ幼虫が採集された。砂質帯(6地点)における全幼虫密度(平均値±SD)は709±458個体m
-2であり,優占種はPolypedilum spp.(57.1%)とLipiniella sp. (17.1%)幼虫であった。一方,砂質帯以外の場所(54地点)の幼虫個体数は297±235個体m
-2であり,アカムシユスリカPropsilocerus akamusi,スギヤマヒラアシユスリカClinotanypus sugiyamaiおよびカスリモンユスリカTanypus punctipennisの3種が,全個体数のそれぞれ32.3%,30.3%および23.9%を占めていた。オオユスリカChironomus plumosus幼虫はいずれの底質においても密度が低かった。
コアサンプラーとエクマンバージ採泥器を併用した2003年5月の調査から,Lipiniella sp.幼虫の場合,エクマンバージ採泥器では実際の幼虫密度の約4%しか採集できなかった。これは北浦の砂質帯において,当該幼虫がエクマンバージ採泥器による採集可能深度(0-3cm)より深いところに多く生息するためであると推測された。実際には北浦の砂質帯に相当数のLipiniella sp.幼虫が生息していると考えられる。
北浦のユスリカに関するこれまでの調査報告をもとに,ユスリカ幼虫の密度および種組成の長期変遷を解析した。その結果,幼虫密度は1980年をピークに減少の一途を辿っていた。また,1985年以降,優占種がオオユスリカとアカムシユスリカからスギヤマヒラアシユスリカへと変化していた。ユスリカ幼虫密度の減少した要因について議論した。
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