陸水学雑誌
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83 巻, 1 号
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原著
  • 宮澤 雅光, 山室 真澄
    2022 年 83 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     湖沼において浮葉植物と抽水植物が底層の流動と溶存酸素濃度に与える影響を比較するために,手賀沼のハス群落を対象に,浮葉状態・抽水状態・抽水葉の立ち枯れ状態にある時期に群落の密度,平均的な流れ,溶存酸素濃度,底質などを分析した。底質については還元状態の指標となる硫化物やメタンも分析した。群落内外での流れは,浮葉時には葉が水面を覆う事で吹送流などを抑制しており,群落内で底層・表層の両方で流れの低下が確認された。同時に,浮葉時は単位面積当りに占める葉柄断面積が抽水時よりも低いにも関わらず,最も高い抵抗性を示した。抽水時および枯死時の流速は表層が底層より相対的に速くなり,葉柄断面積に比例して抵抗性が増加した。溶存酸素濃度は浮葉・抽水時に群落内で低下した。水温は抽水時が最も高かったが,溶存酸素濃度の低下割合は浮葉時の方が有意に高かった。以上よりハス群落においては抽水状態より浮葉状態の方が流動や溶存酸素を低下させる度合いが大きいと考えられた。10月に採取した底質から発生した気体は95.0 %,12月採取分では74.5 %がメタンだったことから,ハス群落の底質は周年,非常に還元的な状態にあることが分かった。

短報
  • 橋田 一輝, 加藤 季晋, 武邊 勝道, 山口 剛士
    2022 年 83 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究では, 日本海から海水が流入し宍道湖から湖水が流入する汽水湖である中海に着目し,塩分成層による貧酸素水塊が生じる時期において分子生物学的手法による原核生物の群集構造解析を行った。その結果,貧酸素水塊が生じる時期において中海の底泥に生息する微生物は,全域において硫黄循環に関与する微生物群が優占することが明らかとなった。また,硫酸還元菌が優占しており,それらの微生物によって貧酸素水塊が生じる時期では硫化水素が発生していることも示唆された。さらに,溶存酸素 (dissolved oxygen :DO) が低い場所では,底層水においても硫酸還元菌が生息しており,底泥のみならず底層水中においても硫黄循環が起こっていることが示唆された。窒素循環に関与する微生物として,10月において日本海からの海水流入によってDO値が回復したことによりアンモニア酸化アーキアであるNitrosopumilus maritimusの存在割合が増加した。また,亜硝酸酸化細菌であるNitrospira属に属する細菌も検出された。しかし,Nitrospira属の細菌も検出されたが,存在割合が小さかった。これらのことから中海では亜硝酸が蓄積しやすい環境であることが推察された。

資料
  • 橋本 慎治, 中島 和輝
    2022 年 83 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     霞ケ浦(西浦)の土浦旧港周辺から桜川河口にかけて2019年12月から2020年11月(2月から4月を除く)の間に130個体のブルーギルを捕獲し,胃内容物中における餌生物の出現頻度(%F)と重量割合(%W)を算出した。その結果,調査期間を通して最も高い%Fおよび%Wを示した餌生物はエビ類で,月別にみると9月から12月にかけて相対的に高い値を示した。続いて高い%Fおよび%Wを示したのは糸状藻類で,1月,5月,6月に高い値であった。これらの結果から,調査水域におけるブルーギルの主要な餌生物はエビ類と糸状藻類であった。全長を50-99 mm,100-149 mm,≥ 150 mmのサイズ区分別に%Fを算出した結果,すべての区分においてエビ類と糸状藻類が30 %以上を示し,サイズ区分によるはっきりとした傾向はみられなかった。一方,%Wは%Fと異なり,エビ類の%Wはすべての区分で40 %以上を示し体サイズとともに増加したが,糸状藻類はいずれも15 %未満で体サイズとともに減少した。

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