陸水学雑誌
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総説
  • 岡崎 友輔
    2024 年 85 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル フリー

     微生物生態学では,微生物の細胞サイズが小さいがゆえの技術的困難がボトルネックとなっており,新技術が新発見に直結し,新たな理解に繋がるブレイクスルーとなってきた。本総説では,湖沼微生物生態学における近年の動向について,それを裏打ちしてきた技術を主軸に,湖沼での応用に際する検討事項や注意点を交えながら概説する。DNAシーケンス解析技術の発展と普及によって登場したアンプリコンシーケンス・メタゲノム解析は,湖沼をはじめとする環境中の難培養微生物の多様性と生態をとりまく理解を塗り替えた。塩基配列データの充実にともない,そこから得られる情報を相補したり,仮説を検証したりする手段としてFluorescent in situ hybridization等に代表される顕微鏡観察による細胞の現存量カウントや,難培養微生物単離への挑戦の重要性も,むしろ高まっている。環境中の微生物について「誰がいるのか」「何をしているのか」といった情報が高解像度に得られる時代はすでに到来しており,微生物生態系はもはやブラックボックスではなくなりつつある。様々な視点から同じフィールドの研究に取り組む陸水学の枠組みがもたらす多様な切り口が,膨大なデータを最大限活用するための鍵となる。

短報
  • 小室 隆
    2024 年 85 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル フリー

     湖岸に生育するヨシ群落は湖岸の侵食防止や,動植物プランクトンや底生無脊椎動物などによる生物生産の盛んな場である。しかし,ヨシ群落が増水に伴う水位上昇時に浸水する場所にある場合,定期的な刈り取りや枯死した草体を撤去していなければ,河川を流下してくるゴミを堰き止めたり,埋積したヨシの枯死体が下流に流出する。千葉県にある手賀沼では,ヨシ群落から流出したヨシが排水機場の動作を停止させたり,そのまま下流の利根川に流出した場合には漁業被害も引きおこす可能性がある。本研究では手賀沼の流入河川である大堀川河口に発達するヨシ群落がいつ頃から,どのように発達してきたのかについて地形図と空中写真を使って明らかにし,現地調査によって現在の状況も確認した。 
     空中写真及び旧版地形図より,現地調査地点は1947年~1955年頃までは水域内にあり,現在のような高密度なヨシ群落は発達していなかった。1962年頃からは調査地点が水域内ではなく,陸上に位置するようになった。本研究の結果,大堀川河口のヨシ群落は1960年代頃から自然状態であった大堀川河口のヨシ群落が人為的に改変され,現在の形状となったことが明らかとなった。

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