1.吉野川水系(奈良県)の丹生川において,黒渕ダム湖築造前と完成後の水生昆虫群集について1954年4月3日と1960年4月2日に調査を行なつた.
2.黒渕ダム湖築造前の丹生川の水生昆虫群集は,種数,個体数,現存量ともに多く(
Hydropsyche ulmeri―
Parastenopsyche sauteriが優占種),造網型係数が64~94%に達し,瀬における水生昆虫群集の極相にあると考えられる.ダム完成後(ながれダム湖)の水生昆虫群集は,ダム湖の影響のない城戸では,種数,個体数,現存量とも変りはない.ダム湖と化した黒渕では種数,個体数,現存量ともに少なく,そのうちでも底質が湖首部の石礫,湖中部の泥かぶりの礫砂,湖尾部の泥となるにつれて,底生動物の優占種は
Ecdyonurus yoshidae→
Potamanthus kamonis→
Limnodrilus sp.の移りゆきを示す,またその優占生活形は匍匐型→掘潜型となる.黒渕堰堤のすぐ下流では,種数,個体数,'現存量とも少なく,優占生活形は匍匐型となる.和田の優占生活形は遊泳―匍匐型.さらに下流の生子は種数,個体数,現存量が増加し,優占生活形は造網型となる.
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