陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
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84 巻, 2 号
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原著
  • 山ノ内 崇志, 加藤 将, 石戸谷 芳子, 横川 寛太, 山岸 洋貴
    2023 年 84 巻 2 号 p. 127-137
    発行日: 2023/05/25
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

     東北地方北部に位置するカルデラ湖の十和田湖において,2021年に水生植物相の調査を行った。調査の結果,水生植物20分類群が確認され,このうち既報の種1種が再同定され,5種が新産種であった。更新された植物相データに基づき,山ノ内ら(2016)と同じ手法で65湖沼を対象に現存種数と現存種の希少性を指標とした保全上の重要性を評価した。その結果,十和田湖は現存種数の多さでは65湖沼中19位から同12位に,希少性では65湖沼中17位から同8位に評価が向上し,これまで考えられていたより保全上の重要性が高いことが明らかになった。また,妥当な評価のためには精度の高い水生植物相データが重要であることが確認された。2014年に初めて十和田湖への侵入が報告されたコカナダモは,2021年には湖内全体に拡大して一部で大きな群落を形成しており,在来生態系への影響が懸念された。

資料
  • 杉野 史弥, 佐藤 登志子, 山室 真澄
    2023 年 84 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2023/05/25
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

     霞ヶ浦湖水・流入河川・湖水を原水とする水道水中のネオニコチノイド系殺虫剤(以下,ネオニコチノイド)濃度を分析した。湖水は霞ヶ浦(西浦)右岸の木原取水場近くの湖岸,河川水は取水場に最も近い流入河川である清明川で2020年9月から2021年8月の間16回,10 mm以上のまとまった雨が降った翌日に採水した。水道水は2020年9月から2021年3月の間に湖水・河川水を採水した日の夕方に7回採水した。国内で使用される7種のネオニコチノイドのうち,清明川では5種類,霞ヶ浦では4種類が検出された。またジノテフランとクロチアニジンは湖水・河川水ともに周年検出された。一方で水道水からは全期間においてネオニコチノイドが検出限界未満で,浄水場での活性炭処理により除去されていると考えられた。

  • 植田 真司, 東 麗緒菜, 落合 伸也, 矢部 いつか
    2023 年 84 巻 2 号 p. 143-161
    発行日: 2023/05/25
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー

     青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理施設に隣接する汽水湖尾駮沼において,物質挙動を支配する基礎情報である流動場及び海水交換率を明らかにすることを目的に,2020年8月1日~12月10日の期間,沼内の塩分及び流況,淡水流入量・流出量,及び沼-海を結ぶ水道部の海水流入量に関する調査を行った。尾駮沼の表層(水深0.5 m)及び底層(同3.5 m)における塩分の平均はそれぞれ21.1(変動範囲12.2~28.0)及び26.6(同19.7~31.7)psuとなり,海水の約3分の2の塩分が存在した。また,湖心部における平均流速は上下層ともに5 cm s-1以下と緩やかであり,90%以上が低流速(10 cm s-1未満)であった。尾駮沼への淡水流入量,海水流入量及び湖水流出量の平均はそれぞれ1.0×105,4.2×105及び5.9×105 m3 d-1と推定され,淡水流入量と海水流入量の和が概ね湖水流出量であった。これらの結果より,尾駮沼水道部における海水交換率の平均値±SDは0.58±0.15 d-1と推定され,上げ潮時に流入する海水の半分程度は下げ潮時に沼から流出することが示唆された。

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