琵琶湖(北湖)の今津沖中央地点水深90 mの湖水検体から,通常
Metallogeniumと呼ばれる微生物由来の特徴的な茶褐色のマンガン酸化物微粒子が2002年11月に初めて観測された。しかし,
Metallogeniumの系統学的位置や生化学については未解明な部分が多く,また特に継続的な培養例についての報告はきわめて少ない。今回,
Metallogeniumが発生した琵琶湖水を用いて
Metallogeniumの培養を試みたところ,実験室内の条件下で
Metallogenium様粒子を継続的に産生する培養系の確立に成功した。
Metallogeniumを産生する培養系には,真菌が存在する場合と真菌が存在せず細菌のみの場合とがあった。実際の湖水中には真菌の現存量は非常に少ないため,細菌のみによる
Metallogeniumの産生が湖水中での二価マンガンイオン(Mn
2+)の酸化的沈殿に主要な役割を担っていると考えられる。真菌が存在する培養系では約2週間程度の培養により
Metallogeniumが産生された。しかし,細菌のみの培養系においては,
Metallogeniumの産生に4週間から6週間を要した。本論文では特に細菌のみの培養系における
Metallogeniumの発育過程での形態の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて継続観察した結果について報告する。
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