陸水学雑誌
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66 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 飯泉 佳子, 横山 英也, 小倉 紀雄
    2005 年 66 巻 3 号 p. 153-164
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,奥日光地域の著しい森林衰退地域を含む外山沢集水域と,隣接する五色沢集水域において,河川水と地下水の水質変化を明らかにし,これら水質を規定する要因について検討を行うことと,流域への酸性沈着物質の影響を評価することを目的に,2000年8月から2001年10月まで現地調査を行った。
    本研究により,以下のことが明らかとなった。(1)外山沢では積雪期にNa+とMg2+,Ca2+の濃度が上昇し,これらは主に地質起源と思われる。(2)外山沢と五色沢では融雪や豪雨に伴う河川水や地下水中のイオン成分濃度の低下が観測され,既存の研究事例と一致した。(3)五色沢では降水と比較してSO42-/Cl-比(当量比)が高く,SO42-が地下の火山活動により供給されている可能性が指摘される。(4)外山沢に隣接する柳沢の水質分析結果(小林ら,1985)から,本地域では1979年から今日にかけて,大気沈着物質の負荷の蓄積により,流域からの流出負荷量が増大している可能性が示唆される。(5)外山沢流域ではNO3-/Cl-比は降水と同程度かそれ以上で,窒素飽和の第2ステージ(Aberら,1989)に相当する可能性が示唆される。
  • 中里 亮治, 土谷 卓, 村松 充, 肥後 麻貴子, 櫻井 秀明, 佐治 あずみ, 納谷 友規
    2005 年 66 巻 3 号 p. 165-180
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    2000年2月,茨城県南東部に位置する浅い富栄養湖である北浦の全域60地点において,エクマンバージ採泥器を用いてユスリカ幼虫の水平分布を調べた。全地点から合計13分類群のユスリカ幼虫が採集された。砂質帯(6地点)における全幼虫密度(平均値±SD)は709±458個体m-2であり,優占種はPolypedilum spp.(57.1%)とLipiniella sp. (17.1%)幼虫であった。一方,砂質帯以外の場所(54地点)の幼虫個体数は297±235個体m-2であり,アカムシユスリカPropsilocerus akamusi,スギヤマヒラアシユスリカClinotanypus sugiyamaiおよびカスリモンユスリカTanypus punctipennisの3種が,全個体数のそれぞれ32.3%,30.3%および23.9%を占めていた。オオユスリカChironomus plumosus幼虫はいずれの底質においても密度が低かった。
    コアサンプラーとエクマンバージ採泥器を併用した2003年5月の調査から,Lipiniella sp.幼虫の場合,エクマンバージ採泥器では実際の幼虫密度の約4%しか採集できなかった。これは北浦の砂質帯において,当該幼虫がエクマンバージ採泥器による採集可能深度(0-3cm)より深いところに多く生息するためであると推測された。実際には北浦の砂質帯に相当数のLipiniella sp.幼虫が生息していると考えられる。
    北浦のユスリカに関するこれまでの調査報告をもとに,ユスリカ幼虫の密度および種組成の長期変遷を解析した。その結果,幼虫密度は1980年をピークに減少の一途を辿っていた。また,1985年以降,優占種がオオユスリカとアカムシユスリカからスギヤマヒラアシユスリカへと変化していた。ユスリカ幼虫密度の減少した要因について議論した。
  • 山本 鎔子, 岩船 敬, 吉田 雅彦, 平林 公男
    2005 年 66 巻 3 号 p. 181-190
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    1998年から1999年にかけてユスリカ類のChironomus plumosus(オオユスリカ),Chironomus nipponensis(ヤマトユスリカ),Propsilocerus akamusi(アカムシユスリカ)およびTanypodinae spp.(モンユスリカ亜科,肉食:性ユスリカ)の各幼虫を河口湖および四尾連湖から採取し,体内の脂肪酸組成について分析した。幼虫の飽和脂肪酸とモノ不飽和脂肪酸の総和は総脂肪酸量の50-80mol%の高い値を示した。主要な飽和脂肪酸はC16:0(13-32mol%)であり,モノ不飽和脂肪酸はC18:1(6-23mol%)であった。またポリ不飽和脂肪酸は主にn-3系の脂肪酸Cl8:3(n-3),C20:5(n-3)であったが,C22:6(n-3)はTanypodinae spp.に存在したが,他のユスリカ幼虫では検出限界以下の濃度であった。ユスリカの羽化期には飽和脂肪酸の減少とn-3系の脂肪酸を含む高度不飽和脂肪酸の増加が認められた。ポリ不飽和脂肪酸の増加はユスリカ幼虫の成育過程において形態変化とくに羽化時に重要なエネルギーもしくは代謝に深い関係を持っ物質の基質となっている可能性のあることを考察した。
  • 本間 隆満, 朴 虎東
    2005 年 66 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    諏訪湖においてMicrocystis種組成と湖水中のmicrocystin濃度の関係について調査を行った。Microcystis細胞密度は1.0×103から7.4×105cell smL-1,湖水中のmicrocystin濃度は0.09から0.55μgL-1の変動を示した。しかし,細胞密度とmicrocystin濃度の変動には有意な関連は認められなかった。Microcystis属の種組成は5,月8日から7,月3日まではM.aeruginosaが優占しており,細胞あたりのmicrocystin含有量は0.03から0.49pgcelrlと高濃度であった。その後,優占種がM.aeruginosaからM.wesenbergii,M.ichthyoblabeへと交代し,細胞あたりのmicrocystin量は減少した。Microcystis属の細胞密度が増加した8月から10,月の間,M.ichthyoblabeが90%以上の割合で占めており,細胞あたりのmicrocystin含有量は最も低い濃度(0.003-0.Ol2pg cell-1)であった。これらの結果は,諏訪湖におけるmicrocystin濃度の変動は,Microcystis属の現存量ではなく,有毒種Maeruginosaと無毒種M.ichthyoblabeの割合の変化によって引き起こされることを示している。
  • 植田 真司, 築地 由貴, 近藤 邦男, 山室 真澄
    2005 年 66 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    青森県下北半島の太平洋側中央部に位置する汽水湖尾駮沼におけるベントスの出現特性を2001年から2003年に至る期間,8地点において調査した。ベントスの個体密度は淡水河川の河口部と沼の沿岸部が湖心部と比較して多く出現した。出現が確認されたベントスの分類群は53種であり,大部分は軟体動物,環形動物および節足動物の分類群で構成されていた。優占種はヤマトスピオ,スピオ科のPolydorasp.,カワグチツボ,ホトトギスガイ,タカホコシラトリガイ,イソコツブムシであった。本研究の結果から,尾駮沼におけるベントスの歴史的変遷をみると,過去50年間において種構成の変化は小さかったが,近年環形動物のイトゴカイ,軟体動物のムラサキイガイやオオノガイなどの増加が示唆された。
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