産業衛生学雑誌
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47 巻, 5 号
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総説
  • 冨岡 公子, 熊谷 信二
    2005 年 47 巻 5 号 p. 195-203
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/05
    ジャーナル フリー
    欧米では,抗がん剤を取り扱う医療従事者の職業性曝露に関する危険性について,1970年後半から警告的内容の報告がなされ,1980年代から1990年にかけて安全な抗がん剤の取扱いに関するガイドラインが制定されている.ガイドラインによって,個人保護具や作業環境が改善されてきている.また,職業性抗がん剤曝露の健康影響に関する調査・研究も盛んに行われている.日本においては,1991年に,日本病院薬剤師会がガイドラインを制定し,それ以降,抗がん剤の安全な取扱いに対する認識が看護師を中心に関心が持たれるようになったが,医療現場はあまり変化してきていない.産業衛生の分野に限ってみると,抗がん剤の安全な取扱いに対する記事や研究は,ほとんど見あたらない.抗がん剤を取り扱う医療従事者の職業性曝露に関する危険性についてはいまだに不明な点が多い.しかし,医療従事者における抗がん剤曝露の低減は,産業衛生上の重要な課題である.日本においては,抗がん剤の取扱いに適切な保護具や作業環境を普及させ,抗がん剤の安全な取扱いに関して検討する必要がある.また,欧米同様に,国家レベルの実効性や強制力が付与された抗がん剤の安全な取扱い指針が策定されることが望まれる.
原著
  • 小宮 康裕, 中尾 裕之, 黒田 嘉紀, 有薗 克晋, 中原 愛, 加藤 貴彦
    2005 年 47 巻 5 号 p. 204-209
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/05
    ジャーナル フリー
    禁煙や節酒支援への応用の可能性を検討する目的で,GSTM1およびALDH2遺伝子多型の遺伝子診断に対する意識調査を行った.対象は製造業の従業員1,654名(男性1,225名,女性429名)で1,434名(86.7%)が回答した.GSTM1およびALDH2の遺伝子診断結果を知りたいと回答したのは,それぞれ52.2%と56.6%だった.一方,知りたくないと回答したのは,それぞれ9.9%と7.2%だった.結果を知りたい理由は,自分への喫煙の影響を知りたい,将来の病気予防,副流煙の影響を知りたい,自分のアルコール許容範囲を知りたい,など個人の感受性を意識した理由が多かった.また,知りたくない理由では,結果を知っても止められない,止める意志がないが多かった.多変量解析では,現在喫煙している人(男性:OR=1.66 95%CI 1.29-2.14,女性:OR=2.33 95%CI 1.37-3.98),喫煙と肺がんの関連を知っている人(男性:OR=1.81 95%CI 1.25-2.63,女性:OR=2.77 95%CI 1.42-5.40),CAGE TESTの点数の高い人(男性:OR=1.96 95%CI 1.42-2.68,女性:OR=2.52 95%CI 1.07-5.94)で双方の遺伝子診断結果を知りたいと回答した人が有意に多かった.今回の調査より,GSTM1およびALDH2の遺伝子診断の禁煙支援や節酒支援への応用の可能性が示唆された.
  • ―某情報サービス企業の縦断研究―
    鄭 真己, 山崎 喜比古
    2005 年 47 巻 5 号 p. 210-223
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/05
    ジャーナル フリー
    国内の情報サービス産業のコールセンターにおいて組織特性を含めた労働職場環境特性が,ストレッサーとして「組織の健康」と位置づけた労働者の心身の健康度及び職務不満足,離職意向に及ぼす経年的な影響を検証することを目的とし,2001年及び2002年7~8月に自記式質問紙による縦断的調査を某企業において実施した(有効回答率96.2%,92.0%).対象事業所の8割を占める技術職のテクニカルサポートスタッフのうち両年のデータに不備のない296名を最終的な分析対象とした.29項目7尺度の「労働職場環境特性」の尺度を「組織特性」及び「作業・職場特性」の尺度に分け,それらの経年的変化を含め,「組織の健康」の4変数との関連性を階層的重回帰分析にて検証した.結果,「仕事の量及び質的負荷」の悪化が精神的健康度と,また「上司のサポート」の悪化は全ての従属変数と有意な関連性が認められた.一方で,「組織特性」の悪化が,蓄積的疲労兆候及び職務不満足の増大に影響し,それらの上司及び同僚のサポートの悪化との間接影響も明らかになった.「組織特性」を含めた労働職場環境特性への対策が,「組織の健康」すなわち,労働者の心身の健康度のみならず,組織のモラールや生産性との関連性が指摘される職務不満足への改善の有効性が示唆された.
調査報告
  • 田淵 武夫, 熊谷 信二, 平田 衛, 田井中 秀嗣, 吉田 仁, 織田 肇, 伊藤 昭好
    2005 年 47 巻 5 号 p. 224-231
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/01/05
    ジャーナル フリー
    プレス作業を有する小規模事業所において作業場の騒音および作業者の聴力についての調査を実施した.34の事業所で作業環境測定を実施した結果,殆どの事業所で高度の騒音曝露がみられ,騒音障害防止のためのガイドラインに基づく評価では,第I管理区分が2事業所(6%),第II管理区分が8事業所(24%),第III管理区分が20事業所(71%)であった.また,23人について個人曝露騒音レベルを測定した結果,8時間曝露の許容基準である85 dB(A)を超えていた者が21人(91%)と高率にみられ,最大値は102 dB(A)であった.作業者の聴力検査の結果,男性全体(97人)で,ガイドラインに基づく「要観察者1(前駆期の症状が認められるもの)」が20.6%,「要観察者2(軽度の聴力低下が認められるもの)」が30.9%,「要管理者(中等度以上の聴力低下が認められるもの)」が10.3%でこれらをあわせた聴力低下者は61.8%であった.年齢階層が高くなるほど聴力低下者の割合は高率となり,50歳代では93.1%,60歳代では100%であった.
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