産業衛生学雑誌
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56 巻, 3 号
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原著
  • 松本 光寛, 李 範爽, 外里 冨佐江, 源内 和子, 椎原 康史
    2014 年 56 巻 3 号 p. 67-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    [早期公開] 公開日: 2014/03/11
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    目的:日勤・深夜勤の異なる勤務時間帯が看護師の睡眠に及ぼす影響を分析するため,加速度センサーを内蔵した携帯型活動量計(Actiwatch 2)を用いて睡眠の客観的な評価を行った.また,セントマリー病院睡眠質問票を用いた主観的評価を同時に行い,両者を比較検討した.対象と方法: 総合病院に勤務する女性看護職員19名を対象にした.非利き手手関節にActiwatch 2を装着し,2日間の日勤,16時間深夜勤,休日へ続くスケジュールに合わせて5日間の連続記録を行った.2つずつの睡眠と仮眠:1) 装着2日目の日勤日の夜間睡眠(sleep 1),2) 夜勤中仮眠(nap 1),3) 夜勤明け日中仮眠(nap 2),4) 夜勤後休日睡眠(sleep 2)を定義し,解析に用いた.比較には,Actiwatch 2から算出される入眠潜時,起床時間,睡眠効率,睡眠率,そして,睡眠質問票から得られる睡眠の深さ,途中覚醒の回数,熟睡度,朝の機敏さ,睡眠満足度を用いた.また,睡眠評価と参加者属性との相関,Actiwatch 2と睡眠質問票との相関を調べた.結果: Actiwatch 2を用いた比較では,日勤日睡眠より夜勤後休日睡眠において睡眠率が有意に高かったが,その他では有意な差はみられなかった.睡眠質問票では,ほとんどの項目において,日勤日睡眠より夜勤後休日睡眠,夜勤中仮眠より夜勤明け日中仮眠の方が良質の睡眠を示す結果となった.参加者属性では,年齢が高く,子どもの人数が多く,勤務経験年数や夜勤従事年数が長いほど夜勤明け日中仮眠に対する主観的満足度が低い傾向であった.睡眠の主観的評価は実質的な睡眠時間の割合を示す指標である睡眠率と相関が示されたが,仮眠の主観的評価は寝つきの良さも反映する指標である睡眠効率とで相関が示された.また,平日や休日の入床時刻が平均入床時刻から離れている対象者ほど夜勤中仮眠の主観的満足度が低い傾向であった.考察:客観的指標と主観的指標との相関が明らかになり,睡眠と仮眠では異なる側面が満足度に影響することが示された.育児に従事する看護師の場合,睡眠の質を高めるためには夜勤明け日中仮眠の質向上に取り組む必要があることが示唆された.また,平日や休日の入床時刻と夜勤中仮眠の満足度との関係が明らかになり,普段規則正しい睡眠リズムが確立されているか否かが夜勤中仮眠の質に関わることが示唆された.
調査報告
  • 池上 和範, 江口 将史, 大﨑 陽平, 中尾 智, 中元 健吾, 日野 亜弥子, 廣 尚典
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 56 巻 3 号 p. 74-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    [早期公開] 公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー HTML
    目的:本研究の目的は,若年労働者のメンタルヘルス不調の特徴を明らかにし,実効的なメンタルヘルス対策を検討することである.方法:国内の産業医386名に無記名の自由回答式質問票を送付し,109名から回答を得た.質問票は,産業医として対応したメンタルヘルス不調者の年齢階層別の特徴に関する設問と,若年労働者に対して実施しているメンタルヘルス対策とその効果の認知に関する2つのパートで構成された.全ての回答をデータ化し,質問毎に頻出語句とその出現数を数えた.前者に関しては,各年齢階層と頻出語句の関連性を検討するために統計学的処理を加えた.後者では,共同研究者および研究協力者10名にて,若年労働者に対して実施しているメンタルヘルス対策とその効果の認知に関する記述を整理した.結果:コレスポンダンス分析において,20歳代の周辺には,性格,未熟,他罰的,発達障害,統合失調症,新型うつ病,不適応,入社,社会,上司,同僚などの語句が布置された.30歳代では業務の質的負担,量的負担といった仕事に関する語句,40歳代は家庭,子供,介護といった職場外要因に関する語句が布置された.若年労働者に対して実施した対策は,教育と面談に関する記述が頻出したが,その効果は不明であるという回答が最も多かった.複数名の回答者から,上司や人事担当者,産業医といった職場関係者と若年労働者の家族との連携により家族の支援の向上が認められたという回答が得られた.考察:若年労働者のメンタルヘルス不調は,職場への不適応や未熟で他罰的な性格といった個人的要因や精神障害,労働者の背景や職場組織に関する職業性ストレスといった様々な要因の影響を受けていることが示唆される.職場と家族との連携は若年労働者にとって重要なメンタルヘルス対策となる可能性がある.
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事例
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