産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
Print ISSN : 1341-0725
ISSN-L : 1341-0725
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Issue Information
総説
  • 山野 優子
    原稿種別: 総説
    2024 年 66 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー HTML

    目的:我が国では,本年4月から新たな化学物質規制の制度が導入された.これは特別則のような個別の物質ごとに具体的に措置を定めるのではなく,危険性・有害性のあるすべての化学物質について曝露低減のための措置を自主的に実施し健康管理していくというもので,手法としては作業環境測定を実施して曝露量を把握することが主となっていくであろう.では,生物学的モニタリングの必要性はどうなのであろうか.産業中毒と生物学的モニタリング手法の移り変わりから,その重要性を知ることを目的とする.方法:著者が経験してきた産業中毒(臭化メチル,多環芳香族炭化水素類,MOCA)とそれらの生物学的モニタリング手法について示す.また日本産業衛生学会の中の産業中毒・生物学的モニタリング研究会の歴史から,生物学的モニタリングの移り変わりを紹介する.結果:産業中毒・生物学的モニタリング研究会の講演では,その時々の産業中毒の話題や化学物質曝露による職業性の癌の事例などが発表されていた.また,生物学的モニタリングは,過去には,当該曝露物質の尿中代謝産物を測定するという方法が主であったが,曝露の質の変化に伴い生物学的モニタリング手法も変わっていき,微量・低濃度・混合曝露を捉えるような新しいツールが出てきていることが示された.結語:産業現場における化学物質等取り扱い作業者の健康管理が自律的管理に移行しても,真の曝露量の把握は生物学的モニタリングでしか証明できないのではないか,特に経皮吸収の疑われる物質等については,生物学的モニタリングによるリスクアセスメントは必要であり,今後もその測定方法の開発も継続されるべきであり,生物学的モニタリングの重要性はますます大きくなるであろう.

原著
  • 鳴海 泰子, 大塚 泰正
    原稿種別: 原著
    2024 年 66 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/08
    ジャーナル フリー HTML

    目的:公務従事者に特有のモチベーションであるPublic Service Motivation(以下PSM)に関する研究は,1990年代から主に海外で発展し,近年ようやく日本でも実証的研究が開始された.しかし,海外で作成されたPSM尺度を日本でそのまま適用することができないことが示唆されている.本研究では,日本におけるPSMの構成要素を明らかにし,PSMを測定する尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とした.方法:日本国内に勤務する行政職公務員21名を対象に半構造化面接を実施し,PSM尺度の原案を作成した.その後,20~60歳代の公務員402名(有効回答395名)を対象にweb調査を行い,探索的因子分析にてPSM尺度の因子構造を確認した.さらに,α係数の算出により信頼性,関連概念との相関分析により妥当性を検証した.結果:探索的因子分析の結果,PSMは「社会的インパクト志向」,「社会的公正志向」,「コミュニティ志向」,「未来・変革志向」,「権威志向」,「弱者救済志向」の6因子が抽出され,α係数は十分な値を示した.また,妥当性については,PSMとワーク・エンゲイジメント,パフォーマンス,ワークモチベーション,職務満足との間に,概ね想定した有意な正の関連が確認された.結論:本研究で作成した日本版PSM尺度は,一定の信頼性と妥当性が確認され,日本の公務従事者のPSMを測定するために利用できる可能性がある.

短報
調査報告
  • 福西 厚子, 町田 征己, 菊池 宏幸, 小田切 優子, 高宮 朋子, 福島 教照, 天笠 志保, 中谷 友樹, 樋野 公宏, 井上 茂
    原稿種別: 調査報告
    2024 年 66 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー HTML

    目的:車やバイクを用いた不活動通勤から徒歩,自転車,公共交通を用いた活動的通勤への切替えには様々な健康上の利益が期待されている.しかし,不活動通勤者のうち,どの程度が活動的通勤へ切替可能なのかは明らかでない.そこで本研究は日本在住労働者における不活動通勤者の割合と,それらの者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合を地域別に明らかにすることを目的とした.対象と方法:本研究はWeb調査を用いた記述疫学研究である.2021年4月~5月に調査会社に登録している20–79歳の3,000名(性,年齢,居住都道府県の割合が日本の人口構成と一致するように抽出)を対象に調査を行った.労働者に対し,通勤に利用する交通手段とそれぞれの片道利用時間(分)への回答を求めた.車またはバイクの片道利用時間が1分以上の者を不活動通勤者,それ以外の者(徒歩・自転車・公共交通のみ利用している者)を活動的通勤者と定義した.不活動通勤者に対し活動的通勤への切替可能性について回答を求めた(0–100%,10%単位で表示した11選択肢).切替可能性は,不可能(0%),難しい(10–40%),ある程度可能(50–90%),可能(100%)に分類した.不活動通勤者の割合と,それらの者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者(可能またはある程度可能と回答した者)の割合を地域別に算出した.結果:2,683名から回答を得た.そのうち労働者は1,647名,通勤をしている者は1,551名であった.通勤をしている者のうち不活動通勤者の割合は41.4%であり,地域別にみると地方で高かった.また,不活動通勤者のうち32.9%が活動的通勤への切替可能性があると回答し,労働者全体の12.8%を占めていた.不活動通勤者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合は都市部で高かった.一方で,労働者全体のうち切替可能性がある者の割合は地方で高かった.考察と結論:通勤をしている者のうち不活動通勤者の割合は41.4%であった.不活動通勤者のうち活動的通勤へ切替可能性がある者の割合は都市部で高く,地方で低かった.しかし,地方では不活動通勤者の割合そのものが高いため,労働者全体で考えると切替可能性がある者の割合はむしろ高かった.本研究より,地方にも不活動通勤から活動的通勤へ切替えることができる可能性がある者が一定程度存在することが明らかとなった.

feedback
Top