産業衛生学雑誌
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52 巻, 2 号
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原 著
  • 左達 秀敏, 村上 義徳, 外村 学, 矢田 幸博, 下山 一郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 2 号 p. 67
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/08
    [早期公開] 公開日: 2010/02/17
    ジャーナル フリー
    歯磨き行為の積極的休息への応用について:左達秀敏ほか.花王株式会社東京研究所―目的:本研究の目的は,歯磨き行為における積極的休息としての有用性を明らかにすることである. 対象と方法:生理指標としてフリッカー値を,心理指標として主観的アンケートを用いて検証した.まず,17名の健康な若年男女(男性12名,女性5名,平均年齢±標準偏差;22.5±1.5歳,右利き)を歯磨き群と非歯磨き群に無作為に割り当てた後,両群にパソコン上で20分の連続計算課題を実施させた.その後,歯磨き行為を行わせ,その前後でフリッカー値と気分を計測した. 結果:歯磨き群のフリッカー値は,歯磨きをしない群と比べて有意に増加した( p<0.05).一方,気分については,“爽快感”が歯磨きをしない群と比べて有意に増加し( p<0.05),“集中力”,“頭のすっきり感”が増加傾向を示した(p<0.1).また,“倦怠”,“眠気”は,有意に減少した( p<0.01).考察と結論:歯磨き行為による体性感覚刺激や口腔内触覚刺激が総合的に大脳活動を賦活させたと考えられ,また,気分を爽快にする効果が認められたことから,歯磨き行為は,積極的休息として応用できる可能性が示唆された.
    (産衛誌2010; 52: 67-73)
  • 宮島 啓子, 吉田 仁, 熊谷 信二
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 2 号 p. 74
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/08
    [早期公開] 公開日: 2010/02/17
    ジャーナル フリー
    内視鏡消毒従事者におけるオルトフタルアルデヒドへの曝露状況:宮島啓子ほか.大阪府立公衆衛生研究所衛生化学部生活環境課―目的と方法:最近,内視鏡消毒剤として,グルタルアルデヒドの代替品としてオルトフタルアルデヒド(OPA)の使用が増えてきている.我々は,消毒従事者のOPA曝露状況と健康影響を明らかにするため,内視鏡洗浄室17ヶ所において作業環境調査と質問紙調査を行った.これらの内視鏡洗浄室には,スコープの消毒に浸漬槽を用いる9ヶ所の手動洗浄室と自動洗浄機を用いる8ヶ所の自動洗浄室がある. 結果:スコープ消毒時のOPA曝露濃度は,自動群(中央値:0.35 ppb,範囲:ND-0.69 ppb)と比較し,手動群(中央値:1.43 ppb,範囲:ND-5.37 ppb)で有意に高かった.同様に,消毒液交換時も,自動群(中央値:0.46ppb,範囲:ND-1.35 ppb)よりも手動群(中央値:2.58ppb,範囲:0.92-10.0 ppb)の方が有意に高かった.消毒従事者の勤務時間中の平均曝露濃度は,手動群では0.33-1.15ppb(中央値0.66ppb),自動群では0.13-1.28ppb(中央値0.33 ppb)であり,手動群でOPA曝露が高い傾向が見られた.OPA製剤のみを使用していた女性の消毒従事者80人における消毒作業に関連した自覚症状愁訴率は,皮膚症状10%,眼症状9%,呼吸器症状16%,頭痛3%であった. 考察と結論:これらの結果は,消毒従事者のOPA曝露レベルを低減するために,自動洗浄機導入が望ましいことを示唆している.
    (産衛誌2010; 52: 74-80)
調査報告
  • ―2時間30分で実施する管理監督者研修の検討―
    巽 あさみ, 住吉 健一, 川口 仁美, 佐野 雪子
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 52 巻 2 号 p. 81
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/08
    [早期公開] 公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    短時間で行う積極的傾聴研修の効果―2時間30分で実施する管理監督者研修の検討―:巽あさみほか.浜松医科大学医学部看護学科―今回,我々は従業員1,400人の総合化学業A事業所の管理監督者に対し,積極的傾聴を取り入れたメンタルヘルス研修を実施した. 目的:本研究の目的は研修時間2時間30分での傾聴研修を実施し,その効果について明らかにすることである. 対象と方法:対象はA事業所における管理監督者全員とした.メンタルヘルス研修は2007年5月から2008年3月に21回,299人を対象に実施し,調査は2007年5月から2008年9月に実施した.研修は午後2時から事業所内の会議室で実施した.研修内容は,メンタルヘルス対策としての傾聴の重要性・意義と積極的傾聴の研修スケジュールを説明し,その後実際に役割練習と振り返りをそれぞれ2回ずつ実施した.まとめとして模造紙に傾聴についての気づきを記載してグループ毎に発表した.発表内容について講師がコメントを加え,最後に傾聴の要点をまとめた資料を配布し説明した.研修の評価指標として,研修終了時のアンケート,研修1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後の傾聴法実施状況に関するアンケートを行い,また研修前,研修1ヶ月後,研修3ヶ月後,研修6ヶ月後に三島らの開発したALAS(Active Listening Attitude Scale「聴き方」,「傾聴の態度」の2尺度からから構成,以下 ALAS)を使用して評価した.結果および考察:当日の研修終了時アンケートの結果(212人)では,研修時間はちょうどよかったものが60%で,短いと回答したものが30.1%いた.研修の難易度は適切が77.8%,研修内容を実践しようと思うものが79.7%,全体の満足度は85.9%と高い結果であった.6ヶ月後のアンケート(145人)で研修内容を覚えているものは81.4%,研修内容を実践しているものは49.7%であり,部下との業務以外の対話が増えた,部下との業務上の連絡や指示等が円滑になったなどの回答が増加していた.ALASの回答は研修前から6ヶ月後まで4回全てのアンケートに回答した84人について分析した.「傾聴の態度」については有意差は認められなかったが研修前より得点は高くなり,「聴き方」については有意に得点が上昇していた.また研修前と6ヶ月後の2回回答者125人に対象を拡大して分析した場合も同様の結果であった.これらの結果はALASを使用した既報告とほぼ同様であった.このことから2時間30分という短時間であっても傾聴研修の効果が充分あることが示唆された.
    (産衛誌2010; 52: 81-91)
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