日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
16 巻, 4 号
令和6年10月
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:令和5年度 西関東支部生涯学習公開セミナー 『「栄養摂取」と「美味しい」を守る補綴歯科』
  • 小児期から生涯を通しての歯科医療への期待
    鈴木 真由美
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年16 巻4 号 p. 393-399
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/24
    ジャーナル フリー

     我が国では人口減少,少子超高齢社会が到来した.健康寿命は生命寿命より約10年間短く,この差を短縮させることがQOL(生活の質)改善,医療費削減に貢献する.加齢により身体,認知機能は低下し,サルコペニア,フレイルに陥りやすいが,筋力は年齢に関係なく鍛えることにより上がる.適切な生活習慣(食事,運動,睡眠)を身につけることが,フレイル予防,筋量,筋力の維持に貢献する.小児期からよくかむ習慣をつけ口腔機能不全,咬合不全を是正し,壮年期には生活習慣病予防,是正,適切な補綴,高齢期にはフレイル,認知症の予防,維持などライフステージに合わせた歯科医療を実践することにより「美味しい」を守る健康長寿に貢献することを期待する.

  • 菅 武雄
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年16 巻4 号 p. 400-405
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/24
    ジャーナル フリー

     在宅医療の場における摂食嚥下リハビリテーションと歯科補綴の関係を考察する.生活機能に対するリハビリテーションは,医療の「場」よりも,「生活の場」で実施することに合理性があり,その起点を退院支援という地域包括ケアシステムに則った対応が求められている.また,令和6年度の医科保険改訂で導入された「リハビリテーション・栄養・口腔の三位一体」アプローチは,この分野における重要な転換点であることを紹介する.

     具体的な活動として「嚥下ショート」という活動を紹介する.嚥下機能の評価やリハビリテーションを短期集中で改善するという手法を地域で実践している例も合わせて紹介する.

◆企画:令和5年度 関西支部生涯学習公開セミナー 「咀嚼と栄養の科学:歯科の視点から」
  • 長谷川 陽子
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年16 巻4 号 p. 406-412
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/24
    ジャーナル フリー

     栄養教育の重要性が増しており,高齢者向けの歯科医療も口腔機能の維持・回復を中心とする治療に転換していく必要がある.栄養不良は医療現場で一般的な問題であり,栄養を理解することは医療従事者にとって重要である.医療従事者への栄養教育の不足が国際的にも認識されており,歯科においても栄養教育の充実が求められている.栄養不良は低栄養と過栄養の両方が問題であり,日本でも高齢者における低栄養と過栄養の共存が新たな課題となっている.栄養不良の指標や影響,栄養素の相互変換やエネルギー代謝についての知識は高齢者の健康管理に重要であり,至適栄養を実現するためにはバランスの取れた食事が必要である.また,身体活動量や目標体重に合わせた栄養摂取量の設定を,歯科医師も理解しておくことが今後重要となる.

     本総説は,2024年1月に開催された日本補綴歯科学会関西支部生涯学習公開セミナーにおける講演内容を要約したものである.

専門医症例報告
  • 村島 直道
    原稿種別: 症例報告
    2024 年16 巻4 号 p. 413-416
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:74歳の男性.上下顎臼歯部欠損による咀嚼困難を主訴として来院した.前歯部には著しい咬耗が認められ,低位咬合を呈していた.下顎にオクルーザルアプライアンスを装着し,咬合挙上および下顎位の修正後に,上顎には磁性アタッチメントを用いたオーバーデンチャー,下顎には部分床義歯を装着した.

    考察:上顎は患者の使用している義歯を修正し,下顎にはオクルーザルアプライアンスを装着することにより,下顎位を修正し,咬合支持を回復したことが良好な治療経過につながったと考えられる.

    結論:本症例において,オクルーザルアプライアンスを用いた咬合挙上と下顎位の修正により,咀嚼機能が回復される可能性が示された.

  • 伏田 朱里
    原稿種別: 症例報告
    2024 年16 巻4 号 p. 417-420
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/24
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は,79歳男性で,右側頰粘膜癌切除術後,義歯が装着できず咀嚼困難を訴え来院した.口腔前庭の喪失と切除部の瘢痕化による開口障害を認めたため,口腔周囲の軟組織の可動域を精査した後に,床縁の位置を決定し,上下顎全部床義歯を製作した.

    考察:本症例は,口腔腫瘍の切除により,義歯床の辺縁封鎖が困難であった.しかし,粘膜の可動域を考慮した,適切な床縁の設定により,義歯の維持および安定が得られた.

    結論:頰粘膜癌切除後の開口障害を伴う無歯顎患者に対し,床縁の位置設定に配慮し,全部床義歯を製作したことにより咀嚼機能が回復した.

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