日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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最新号
令和7年4月
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第133回学術大会/臨床リレーセッション4 「フィニッシュラインからみる歯冠修復」
  • 木林 博之
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 59-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     間接修復における歯肉縁下フィニッシュラインは,審美修復および機能的安定のため重要な役割を果たす.本論文では,歯肉縁下フィニッシュラインにおける適応症,設定法を通じた問題点と解決策を検討する.特に,歯肉縁下のConvexカントゥアが歯周組織に与える影響と,骨縁上組織付着に基づくフィニッシュライン設定の限界について文献的考察を行った.また,深いフィニッシュライン設定が必要な場合の適応症を提示し,具体的な技術的指針を示した.本論文は,審美性と歯周組織の健康を両立させる治療計画の立案に寄与する.

◆企画:第133回学術大会/シンポジウム5 「咀嚼・咬合によるメカノバイオロジー:咀嚼・咬合力は体にどんな変化をもたらすか?」
  • 黒嶋 伸一郎, 中野 貴由, 澤瀬 隆
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 69-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     本依頼論文は,研究から得られた科学的情報に基づいて,骨質の概念と力に対する骨組織の応答性を正しく理解することであり,著者らが行ってきた骨質に関する一連の基礎的研究と非臨床試験について検討した.その結果,動物種(部位特異性はある)によらず,インプラントに荷重を付与すると,オッセオインテグレーション,骨量,骨密度,骨質が大きく変化した.また,骨質を変化(向上)させるデンタルインプラントの存在が確認できた.したがって,骨質は骨密度とは独立した概念で,同義でもなく類似もしておらず,荷重環境下ではインプラントデザインによりインプラント周囲の骨質が大きく変化することがわかった.

  • 大島 正充, 松香 芳三
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 77-84
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     物理的刺激(メカニカルストレス)は,細胞増殖や分化,形態形成などの生物における普遍的な根幹機能に関与することが理解されるようになり,その仕組みを解明する学問(メカノバイオロジー)として発展してきた.再生医療の分野では,メカニカルストレスや機械的環境の関与を生物学的に解明・応用する研究が活発化しており,分化誘導因子などの化学物質を用いることなく,再生器官の形態形成の制御や再生組織の成熟を賦活化する新たな再生医療技術が開発されてきている.本稿では,外的圧力や咬合刺激といったメカニカルストレスが,歯の器官発生や歯周組織の成熟に与える効果を説明し,歯科再生医療技術としての応用例について紹介する.

◆企画:第133回学術大会/専門医研修会 「下顎位を再考する −補綴・歯周・矯正の観点から−」
  • 高橋 慶壮
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 85-92
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     欧米には歯周補綴治療を専門とする講座があり,歯周病学と補綴学の知識を統合して患者の口腔健康の長期的な維持と機能回復を行っている.一方,日本では歯周病学と補綴歯科学は別の講座に分けられている.本誌では以前,日本の補綴歯科専門医の立場から歯周病患者に対する固定性補綴治療について「米国型」と「スカンジナビア型」に分類し論じている.健康寿命の延伸および生活の質の観点からは,歯周治療と補綴治療の共通の目標は残存歯の保護と患者が「何でも美味しく食べられる」を実現することである.Anteの法則は重度歯周炎患者の口腔機能回復治療には適用できない.クロスアーチブリッジ,インプラント治療およびテレスコープクラウンを利用した歯周補綴治療が適応されている.

  • 藤山 光治, 早野 暁, 内田 健太, 畚野 里紗, 上岡 寛
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 93-99
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     矯正歯科治療における理想的な最終的顎位として,Centric Occlusion(CO: 中心咬合位)と,Centric Relation(CR: 中心位)を近似させるという考え方がある.一方で,COとCRを完全に一致させるように治療すると,良好な結果になるという明確なエビデンスは存在しない.アライナー型矯正装置は,従来のブラケットと異なり,歯を咬合させない状態で排列を進める装置であり,この特性により,早期接触の有無を容易に判断できる反面,誤った治療計画が原因で動的治療終了時にCOとCRのずれが大きく,安定した咬合を構築することができないといった症例も散見される.そこで,本稿では当院における治療計画の立案方法を例示しつつ,アライナー矯正治療が目指す治療のゴールを再考したい.

◆企画:令和5年度 西関東支部学術大会/シンポジウム 「インプラントのトラブルシューティング」
  • 〜インプラント手術における手術部位感染〜
    今村 栄作, 中島 敏文, 嚴 英利香, 毛呂 駿汰, 橘 竜佑, 水野 彩, 赤池 翼
    原稿種別: 依頼論文
    2025 年17 巻2 号 p. 100-105
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

     インプラント手術は口腔内という狭小な術野に対して多くの器具やインプラント体関連材料の使用する手術であるため,通常の口腔外科小手術よりもさまざまな併発症が起こりやすいと考える.神経損傷や隣在歯根損傷のような完全なリカバリーが難しいものから,出血や骨の火傷,気腫などのようにリカバリーが可能な併発症もある.なかでも手術部位感染(Surgical Site Infection:以下SSI)は早期に適切な対処を施せば,ほとんどの症例においてリカバリー可能と考えるが,インプラント体の脱落や顎骨炎などに移行する場合や治療期間の延滞による人的資源や医療費用の増加も起こるため,可能な限り発症を防ぎたい併発症である.本稿では,インプラント手術に関連するSSIとその後の当院での対応について,これまでの文献も交えて報告する.

専門医症例報告
  • 水頭 英樹
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻2 号 p. 106-109
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は76歳男性.近歯科医院で製作した即時義歯の不適合による咀嚼困難を主訴に来院した.すれ違い咬合を呈し,さらに全身疾患による出血傾向があったため,抜歯困難な部位は根面板としたうえ,上顎は全部床,下顎は部分床義歯のオーバーデンチャーによる機能回復を行い,良好な経過が得られた.

    考察:患者の全身疾患を考慮して支持機能のみ付与した根面板は,過度の側方力から解放され,外科的介入を回避するだけでなく,義歯の沈下防止による咀嚼機能回復に寄与できたと考える.

    結論:全身疾患による出血傾向のため,観血的介入を回避し,支持機能のみの根面板のオーバーデンチャーによる機能回復を行い,良好な経過を得た.

  • 藤本 けい子
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻2 号 p. 110-113
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は65歳の女性,上顎前歯部ブリッジの動揺を主訴に来院した.長期予後の期待できない歯を抜歯し,上顎即時義歯および下顎旧義歯,プロビジョナルレストレーションで咬合の安定を図った後,最終補綴装置を装着した.

    考察:補綴前処置により適切な咬合平面を設定したことに加えて,剛性の高い金属床を用いることで,機能時に咬合圧を分散することができたと考えられる.

    結論:臼歯部の咬合支持の喪失による咬合平面の乱れを認める症例に対し,予後不良歯を抜歯し,すれ違い咬合となったが咬合平面を是正し全顎的な歯科補綴治療を行うことで良好な経過が得られた.

  • 柴口 塊
    原稿種別: 症例報告
    2025 年17 巻2 号 p. 114-117
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/02
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は61歳女性.臼歯部咀嚼困難と前歯部審美不良を主訴に来院した.重度咬耗による下顎前歯の歯冠長の不足と上顎右側臼歯挺出による補綴空隙の減少を認めたが,咬合高径の低下は認めなかった.外科的補綴前処置の応用と,咬合挙上を行わない補綴治療により,機能および審美回復を行った.

    考察:下顎前歯に対し外科的歯冠長延長術を行い,審美性および部分床義歯の鉤歯として歯冠長が確保された.上顎歯列を無歯顎としたことで補綴設計が単純化され,管理も容易となった.

    結論:重度咬耗と臼歯部すれ違い咬合に対し,適切な補綴前処置後の歯冠および欠損補綴治療により,咬合平面の是正と補綴装置の維持力向上につながった.

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