日本顎関節学会雑誌
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1 巻, 1 号
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  • 高橋 章, 実光 章年, 村上 秀明, 竹森 康仁, 藤下 昌巳, 渕端 孟
    1989 年 1 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症の本態の一つである顎関節軟組織の異常の診査に関しては, 顎関節造影法は現在のところ正確かつ簡便な方法として有用な検査法である。しかしながら本法は外科的侵襲を避けることができない。本研究は, 造影検査後に生じた合併症の程度と頻度を明らかにし, 本法の外科的侵襲の程度を知ることを目的とした。
    顎関節造影検査を施行した90関節について, 検査前後の問診等による診査結果を比較した。39関節に落痛や開口障害等の合併症が検査後にみられた。うち26例は落痛の変化 (不快感の発生を含む) を訴えた。最も多かったのは, 開口時疼痛の発生または悪化であった。造影時に既に疼痛を有していた症例では, 疼痛の程度が悪化したものが高頻度に認められた。これらはいずれも特に治療を施さずとも1ヵ月以内に自然に消退した。11例において最大開口量の変化が認められた。その持続期間は, 疼痛の変化と比較していくぶん長期にわたる傾向にあった。造影前にlate clickを有していた5例中3例に, 造影直後にclosed lockへの移行がみられた。他の合併症として, 腫脹, 咀嚼不能, 湿疹, 難聴および顔面麻痺感が認められた。これらの症状は治療を施さずとも自然消退した。以上の結果より, 顎関節造影法は, 外科的侵襲は伴うが, 大きな危険性を有する可能性は低いと考えられた。
  • 高野 直久, 高野 英子, 近田 正道, 佐藤 公, 柴田 考典
    1989 年 1 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    以前開発したエックス線CT像カラー表示画像処理システムを機能拡張し, 水平断エックス線CT原画像データを基に, 前額断, 矢状断, 斜走断再構成画像を3次元的にカラー表示可能とした。顎関節部のカラー画像をこの方法で再構成したところ, 硬軟両組織が明確に表示され, また筋や脂肪組織などの軟組織の識別も容易にできるようになった。
    また, 部分的拡大像の描出により, 微細部も高鮮明に表示でき, 詳細な観察が可能となった。本画像処理システムはこのような多用性を持ち, 口腔疾患のみならず全身各部の疾患の臨床診断に利用できると思われる。
  • 中村 隆志, 吉川 健司, 大前 泰三, 井上 俊二, 石垣 尚一, 奥田 眞夫, 赤西 正光, 丸山 剛郎
    1989 年 1 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    いわゆる顎関節症患者において, 閉口筋とくに咬筋および側頭筋に圧痛などの症状を認めるものが多い事が報告されている。我々は顎口腔機能異常のなりたちを知るべく研究を行ってきているが, 今回は下顎の側方運動をとりあげ, 側方運動時の咬合状態と咬筋および側頭筋の筋活性について検討を行った。
    被験者は, 大阪大学歯学部学生で, 咀嚼筋群に症状を認めない者20名を用いた。静的咬合分析として, 咬合器装着模型上で側方運動時の接触状態を接触歯数および接触部位によって分類し, 口腔内で接触点の確認を行った。機能的咬合分析として, 両側の咬筋, 側頭筋前部および後部より表面筋電図を誘導し, シロナソグラフを用いて下顎運動を同時記録した状態で, 被験者には, 顎位を維持できる程度のクレンチを持続させたまま, 咬頭嵌合位から側方運動を計3回行なわせた。データは再生後, A/D変換し, 咬頭嵌合位から側方運動を開始する点を基準として, 側方運動を行なう以前の2秒間と側方運動中の2秒間の筋活動量について比較を行い以下の結果を得た。
    1. 下顎側方運動時に側頭筋とくに後部は, 90%以上の被験者において作業側の筋で明瞭な筋活性を認めたが, その筋活性は側方運動時の接触歯数や接触部位には影響を受けなかった。2. 咬筋においては, 左右側方運動時ともに右側の筋活性が明瞭な被験者が多く, 作業側と明瞭な筋活性を認めた側とのあいだには一定した関係は認められなかった。
  • 川村 仁, 佐藤 修一, 長坂 浩
    1989 年 1 巻 1 号 p. 27-39
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    臨床的に顎関節内障と診断した37人の, 下関節腔造影法についての検討を報告した。全ての顎関節造影像が, 顎関節円板の位置的形態的異常を示した。すなわち, 顎関節内障の存在については, 臨床的診断と下関節腔造影診断の一致がみられた。しかし, 顎関節内障は様々な関節円板の形態変化を伴うことが予想され, これら関節円板の形態変化を臨床的に診断することは困難な場合が多いと考えられた。その様な例で, 顎関節円板を客観的にとらえるには, 下関節腔造影法が非常に有用であった。
  • 不島 健持, 秋本 進, 高本 建雄, 亀井 照明, 佐藤 貞雄, 鈴木 祥井
    1989 年 1 巻 1 号 p. 40-50
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症の発現に対する咬合異常の関わりを明らかにする目的で, 神奈川歯科大学矯正科に来院した不正咬合者149人に対し顎関節症状に関する疫学的調査を行なった。
    不正咬合者全調査対象における有症状者率は33.6%であった。これを男女別にみると, 男性が27.8% (54人中), 女性が36.8% (95人中) であり, 顎関節症の発現は男性より女性に多かった。
    有症状者の顎関節症状の発現は, 顎関節雑音が最も多く76.0%であり, 次いで疼痛が68.0%, 顎運動障害が38.0%であった。
    有症状者率の年齢的推移から, 顎関節症状は8歳頃より顕在化してくることがわかり, 有症状者率は15歳から18歳頃に一時期低下し, 19歳以降に高い値を示した。このような変化には, 混合歯列期における乳歯から永久歯への交換現象, あるいは第三大臼歯の萌出現象といった咬合系の変化が関連していると思われる。
    不正咬合別の有症状者率は, 4前歯反対咬合, 側切歯反対咬合という対称性の不正を呈するものでは低い一方, 臼歯部反対咬合, 下顎側方偏位で高かった。このことは, 顎関節症の発現に下顎頭の側方への偏位が関わっていることを示唆しているものと考えられる。
  • 土川 幸三, 飯浜 剛, 渋谷 善行, 杉浦 正, 武田 幸彦, 梅沢 義一, 斉藤 裕, 東野 信昭, 岡野 篤夫, 森 和久, 土持 真 ...
    1989 年 1 巻 1 号 p. 51-65
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    慢性リウマチの治療法選択にさいし, 病状の進展度および活動性を把握することは重要なことである。本検討は, 1974年以来当科に受診した15例の慢性関節リウマチより, 顎関節における臨床症状とX線所見について行なわれた。
    臨床症状は10例 (66.7%) に認められた。最も頻度が高かったのは運動時の疼痛, 次いで開口障害と雑音であった。長期罹患患者ほど臨床症状も頻発した。1例に急性期の症状 (開口障害, 耳前部の腫脹・圧痛) を認めた。
    X線所見では, 全例に異常を認めた。私達は下顎部吸収度を設定し, 他の所見と比較検討した。吸収度1は3関節に, 2度12関節, 3度14関節, 4度7関節に認めた。下顎窩や関係結節の吸収は, この吸収度とよく一致した。吸収度が増すごとに臨床症状も著しく出現した。罹患期間も吸収度と関連していた。99mTc-MDPによる骨シンチは, 活動性を表現するによい方法と考えられた。
  • 深沢 裕文, 向山 雄彦, 栗田 定明, 浦野 順, 三谷 英夫
    1989 年 1 巻 1 号 p. 66-78
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    矯正治療中, 前歯部被蓋改善後に顎機能異常の発現した低年齢反対咬合症例について, 初診時顎顔面形態の特徴を形態学的に検索した。
    研究資料として初診時に顎機能状態に異常の認められなかった6-9歳の低年齢反対咬合者50名の側面および正面頭部エックス線規格写真を用いた。これらは被蓋改善後に関節雑音の発現をみた発現群22名と, 顎機能異常の発現をみなかった対照群28名から構成される。矯正治療にはchin cap装置を含む種々の矯正装置を用いた。側面および正面頭部エックス線規格写真を分析・比較検討し, 次の結果を得た。
    1顎顔面の側面形態は, 両群間に有意な差は認められなかった。
    2顎顔面の正面形態について
    (1) 上, 中顔面骨格の非対称性は認められなかった。発現群の上顎歯槽部 (CMo点) は, 有意に左右非対称性を認め, U1点は有意に側方偏位していた。
    (2) 発現群では, 対照群に比べ下顎部のオトガイ部 (Me点), 顎角部 (Go点) が有意に側方偏位していた。
    (3) 発現群では, 対照群に比べ下顎中切歯中点 (L1点) の側方偏位が有意に認められた。
    これらのことから, 顎顔面, 特に下顎の非対称者で顕著な正中線の偏位を認める者に対しては, 矯正治療により被蓋改善を行うにあたって, 顎機能異常の発現に対する十分な注意と管理が必要であることが示唆された。
  • 第1報 20歳台から40歳台の女性潜在患者
    和気 裕之, 萩原 均
    1989 年 1 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    歯科開業医を受診した一般患者の, 顎関節症状を診査し, 年齢, いわゆる随伴症状, 子供の数・年齢との関係について報告した。
    20歳台から40歳台 (平均35.5歳) の女性168例を対象に分析したところ, 顎顔面部痛が9.5%, 関節雑音が44%, 開閉口時の下顎偏位が29.2%に認められ, 潜在患者と考えられるものが57.1%存在した。また最大開口時切歯間距離は平均47.6mm (S. D. 5.3) で開口障害を示したものはなかった。
    潜在患者は20歳台に少ない傾向がみられた。また, いわゆる随伴症状を, 顎関節に機能的な異常のないものと比較したところ, 頸のこりが顎関節症状に関連して出現していることが示された。
    潜在患者は子供の数の増加に伴い出現率が高くなり (0人: 39%, 1人: 45%, 2人: 59%, 3人: 71%), また低年齢児 (3歳以下) を持つものに高い傾向がみられたことから, 女性の顎関節症の発症に出産, 育児が関与している可能性が明らかになった。
    以上のことから歯科の日常臨床において, 常に顎関節症を考慮して診療にあたることの必要性が示され, 今後予防的見地から開業医における潜在患者の研究が重要になると考えられた。
  • 稲田 雅仁, 小沼 孝行, 嶋田 淳, 加藤 義浩, 平沼 康彦, 阪本 栄一, 山本 美朗
    1989 年 1 巻 1 号 p. 89-101
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節突起部は下顎骨骨折の好発部位の一つであり, 従来より多くの臨床統計的ならびに実験的研究が行われ, 報告されている。しかし同部の骨折の発生機序に関しては未だ不明な点も多く, 特に関節包内骨折および関節包外骨折が生じる機構の差異については, 完全には解明されていない。
    著者の一人である嶋田は, 日本口腔外科学会誌上において, 関節突起部骨折の発生しやすい条件は, 下顎頭部をピン支持とし骨体長軸方向より荷重を負荷した場合であり, またその際, 同部に生じる骨折線の走向は, 下顎頭部の形態により左右される可能性があることを発表した。この点をさらに解明する目的で, 二次元有限要素モデルを用い, 下顎頭の前額断面形態の違いによって, 関節突起部の応力分布にいかなる差異が生じるかを検討したところ, 以下の結果を得た。
    1) 下顎枝長軸方向荷重では, 下顎頭頂部に圧縮応力が働き, オトガイ部および下顎骨体部荷重では, 下顎頸部に引張り応力が, 認められた。
    2) 垂直方向荷重では, convex型に粉砕骨折が, concave型に縦骨折が, またstraight型に中間型骨折が, 起こるであろうと示唆された。
    3) 水平方向荷重では, 3形態とも下顎頸部骨折の可能性が示唆されたが, 特にstraight型でその傾向が著しいと思われた。
  • 第1報 閉口時について
    高木 律男, 大橋 靖, 吉田 重光, 小林 茂夫
    1989 年 1 巻 1 号 p. 102-109
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    成熟家兎の閉口時における顎関節円板周囲の血管分布を血管鋳型走査電顕法で観察した。
    顎関節には豊富な血管供給が認められ, 特に円板後方部において血管の分布密度が高いが, 関節円板に相当する領域は, いわゆる無血管領域として観察された。
    円板後組織と関節円板との移行部には上・下2層の滑膜下血管網が認められ, 形態的に明かな差を示していた。すなわち上関節腔の滑膜下血管網は, 帽子状の形態で, その内層に比較的太い血管が観察され, これらの分枝が表層で一層の粗な毛細血管網を形成していた。これに対し, 下関節腔の滑膜下血管網は一様の太さよりなる非常に密で平坦な毛細血管網で構成されている。毛細血管の走行は, 上下ともに蛇行を示すものの, 下関節腔において, より強い蛇行が認められた。
    また, これら上下関節腔の滑膜下血管網と無血管領域との境界部には, 単純なヘアーピン状の毛細血管ループが認められたが, ループの形成は, 上関節腔においてより明瞭であった。
    このような, 形態的な差は単に上・下関節腔の運動範囲の差によるもののみではなく, 滑液産生, 栄養供給といった機能的差異の存在を示唆していることも考えられた。
  • 横山 尚弘, 澤田 明, 山口 泰彦, 丸山 道朗, 木村 朋義, 内山 洋一
    1989 年 1 巻 1 号 p. 110-121
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節雑音は, 顎関節症の症状の1つとして高頻度に認められ, その発現時期・大きさなどを分析することは, 病態の把握, 治癒過程の判定などにとって重要である。
    著者らは, 従来のシロナソ・アナライジング・システムに改良を加え, 下顎運動と顎関節雑音を同時記録することにより, 下顎運動の変化と顎関節雑音の関連を詳細に検討してきた。
    本研究は, 顎関節雑音を一症状とする顎関節症患者の顎関節内部の状態の推測や病態の診断, 治療効果の判定を行なうことと, 下顎運動とそれに伴って発現する顎関節雑音との関連性を明らかにする目的で, 開閉口運動時の速度を幾つかに規定した場合と, 咬みしめを行なった後の顎関節雑音の変化について検討を行なった。その結果は以下のようであった。
    1. 習慣性開閉口運動の速度を変化させると, 顎関節雑音の発現位置はほとんどの症例において有意に変化した。特に速度が遅くなると閉口時の顎関節雑音の発現位置は, 閉口末期に近づく傾向を示した。
    2. 顎関節雑音の振幅は, 関節雑音非発生側で咬みしめを行なった後の開口時に著明に増大した。
    3. 以上の結果から, 顎関節雑音の発現位置の変化に開閉口速度が関与し, さらに咬みしめが雑音の振幅を変化させることが示唆された。
  • 山本 昌家, 竹之下 康治, 平野 裕士, 嬉野 智子, 岡 増一郎
    1989 年 1 巻 1 号 p. 122-128
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は, 第8回顎関節研究会に於いて, 顎関節症の臨床的観察を行ない, 近年少なくとも患者総数の増加傾向がみられ, 更に本症に対して保存療法を施し, 1次治療成績で約70%に良好な結果を得, 過去2回の検索と変わらないことを報告した。ところで, この経験した多数例のうちには, 従来より報告の散見される言わば再発例ともいうべき症例も含まれている。しかしながら, このような顎関節症に於ける比較的長期間を経た症例についての報告は殆どみられない。そこで今回これらの治療が終了した後, 一定以上の期間 (3ケ月以上) を経て, 顎関節部の症状を訴えて再度来院した症例を過去4年間に33例経験したので, 再受診までの期間, 症状の推移, 治療効果と転帰, X線像による変化, その他の検査所見などを検討した。
    対象は, 昭和59年から62年の間に顎関節症にて再受診した症例33例で, 初診から再来までの期間は3ヵ月-7年間の幅がみられた。その結果, 初診時および再来時の症状については疼痛, 開口制限, 関節雑音の3項目に着目すると, 再来時症状が初診時と同じ症例20例, 軽快している症例4例, 症状の種類が変化した症例3例, 悪化した症例6例であった。治療の効果及び転帰に関しては, 完治も含め軽快し放置した症例が初診時18例, 再来時18例で最も多かった。
  • 吉田 謙一, 松本 尚之, 高橋 啓, 吉田 忠雄, 川本 達雄, 木下 善之介
    1989 年 1 巻 1 号 p. 129-138
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    前歯部反対咬合を主訴として来院した初診時年齢15歳の片側性唇顎裂を有する女性患者に対し, 全帯環装置を用いた矯正治療により, 前歯部被蓋改善を行ったところ, clickingに続いて開口障害が生じた。
    診査の結果, 関節円板の復位を伴わない前方転位, すなわち, closed lock状態であると診断した。
    矯正治療を中断し, まず徒手整復法によりclosed lockの解除を行い, 続いて前方整位型スプリントを装着した。装着後3ヵ月で顎関節部の疼痛が緩和し, また開口障害も改善された。この時点で, 右側犬歯部に咬頭干渉がみられたためポータータイプの拡大装置を用いて上顎歯列の側方拡大を行ったところ, 犬歯間幅径が増大し咬頭干渉もなくなった。その後3ヵ月間親察を続けたが, 経過は良好であったため, 矯正装置を除去し保定装置を装着した。
    反対咬合を有する患者の矯正治療を始めるにあたり, 顎関節部の形態および機能についての精査が必要であることが示唆された。
  • 和嶋 浩一, 三田 雅彦, 矢崎 篤, 井川 雅子, 住井 裕, 小飼 英紀, 鈴木 彰, 中川 仁志, 野本 種邦
    1989 年 1 巻 1 号 p. 139-150
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障症例に対し顎関節腔造影X線検査を施行し, 関節円板の動態を観察した。復位を伴う関節円板前方転位と復位を伴わない関節円板前方転位を診断し, 円板形態を分類した。そして, 各症型別の円板形態の構成を比較検討し, また年齢, 罹病期間との関連を検討した。
    研究対象は顎関節腔造影X線検査の結果, 関節円板前方転位と診断された患者である。内訳は復位を伴う関節円板前方転位60関節, 復位を伴わない関節円板前方転位67関節であった。円板形態の分類はWestessonらの分類規準を用いて行った。
    復位を伴う関節円板前方転位例の60関節中25関節 (41.7%) は変形 (-), 35関節 (58.3%) は変形 (+) と判定された。復位を伴わない関節円板前方転位例の67関節中15関節 (22.7%) は変形 (-), 53関節 (77.3%) は変形 (+) と判定された。両者の円板形態の構成を統計学的に比較検討した結果, 有意に異なることが判った。2つの症型について円板形態とclick期間, lock期間およびclick期間+lock期間との関連を検討したが, 特に関連性は認められなかった。これはいずれの症型においても, 罹病期間が長くなっても円板形態が変形 (-) から変形 (+) に変わる可能性は低い, また変形 (+) 例のなかでtypeが変化する可能性も低い, と考えられた。
  • 中村 昭二, 岩田 敏男, 谷田 耕造, 永原 邦茂, 白川 健次, 飯塚 哲夫
    1989 年 1 巻 1 号 p. 151-161
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    一般に開口障害を主訴として来院する患者は急性症状を有するものが多く, 慢性的開口障害者は少ない。今回は歯科矯正科を来院した強度な骨格性下顎前突者で外科的処置を必要とする患者51名 (平均年齢18歳4か月, ∠ANB≦O) を調査した。
    まず, 調査対象者の初診時の最大開口時における下顎窩内での下顎頭の動きを, 殆ど移動しないA-type, 下顎頭が関節結節を越えないB-type, 関節結節を越えるC-typeの3つに分類した。そして, 患者を5つのタイプ (AA, AB, BB, BC, CC-type) に分けて分析を行なった。
    その結果, 次のようなことがわかった。 (1) 調査対象の73%が女性で, 全例の65%に日常生活内において顎関節症状を自覚する事なく慢性的に開口障害を有する者があった。AA-type, AB-type, BB-type, BC-typeがそれぞれ12%, 6%, 31%, 16%であった。 (2) AA-type, AB-typeの上顎後方臼歯は対咬歯との接触歯数が少ない傾向にあり, 特に上顎第2小臼歯が接触していないものが多く見られたのに対し, CC-typeは全ての症例で接触が見られた。 (3) これらのことより, 開口障害者の最大開口時の下顎頭の動きに特徴的な制限があり, その中心咬合の重心が後方にあることがわかった。
  • 守光 隆, 野首 孝祠, 長島 正, 吉田 実, 池邉 一典, 奥野 善彦
    1989 年 1 巻 1 号 p. 162-171
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎顔面頭蓋における形態的要素と筋活動との関係については, これまでに種々報告されているが, 総活動量や咬筋関与率などの機能的要素との間の相関性については不明な点が多い。そこで本研究は, これら両者の関係を明らかにすることを目的として行った。
    被験者は, 健常有歯顎者10名とし, 各被験者に対して側方頭部X線規格写真 (セファロ) を撮影し, トレーシングペーパー上にトレースを行ったのち, 距離的項目と角度的項目に分けて計測を行った。また, タッピング運動時における側頭筋前部と咬筋浅層の筋電図活動を記録し, 両者の筋活動量の合計である総活動量と, その総活動量に占める咬筋活動量の比率である咬筋関与率を算出した。ついで, セファロにおける各項目と筋活動量に関する各パラメータとの相関係数を算出し, 両者間の相関の有意性について検討を行い, 以下の結果を得た。
    1) 総活動量は, 下顎骨の大きさ, 各基準平面間の角度や上下顎前歯の突出度などの形態的要素の間に有意な相関が認められた。
    2) 咬筋関与率は, 顎顔面頭蓋における形態的要素との関連性はほとんど認められなかったが, 歯の植立方向やその位置との間に有意な相関を有することが示唆された。
    したがって, 閉口筋筋活動を診査, 分析する際には, 顎顔面頭蓋における形態的要素ならびに歯の植立方向やその位置などによって影響されることを十分考慮した上で行う必要のあることが示された。
  • 瀬上 夏樹, 藤村 和磨, 村上 賢一郎, 松木 優典, 宮木 克明, 横江 義彦, 飯塚 忠彦
    1989 年 1 巻 1 号 p. 172-182
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障クローズドロック症例89症例, 96関節に対して, 上下顎関節腔造影側面断層X線診査を施行し, 本症における円板変形の出現率, 形態分類, さらに各型における円板穿孔, 骨変形の出現率などを検討した。この結果, 1型-円板各部の形態, すなわち円板後方肥厚部, 中央狭窄部, 前方肥厚部の形態が残存し, 前後に延長した形態を有するもの39関節, 2型-屈曲して重畳像を呈するもの11関節, 3型-下顎頭前方で塊状を呈するもの46関節と, 3種に大別可能であった。各3型をさらに7亜型に分類して検討した結果, 円板変形は96関節中64関節 (66.7%) に認められた。一方, 円板穿孔数は, 1型2関節, 2型1関節, 3型11関節, 骨変形数は, 1型5関節, 2型1関節, 3型13関節と, いずれも3型において退行性変化が高頻度にみられた。各型の平均年齢は, 1型28, 1歳, 2型27, 2歳, 3型40, 1歳と, 1, 2型に比して3型は高齢者において多くみられた。
    以上の結果より, クローズドロック症例では顎関節を構成する硬軟組織の変形が高頻度に出現することが明かとなった。
  • 下顎臼歯部歯軸に関する検討
    佐分利 紀彰, 田口 望, 福岡 保芳, 浅井 嗣久, 小谷 久也, 丸山 高広, 仲田 憲司, 金田 敏郎, 峰野 泰久, 桑原 未代子, ...
    1989 年 1 巻 1 号 p. 183-189
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    名古屋大学医学部口腔外科および同分院歯科口腔外科を受診した女性の若年発症顎関節症患者37名 (T群) と, 同世代の女性健常者27名 (N群) について, 以下の項目について比較検討した。
    1) 下顎第1大臼歯と下顎第2大臼歯の歯軸のなす角度
    2) 咬合平面に対する下顎第1大臼歯の歯軸の角度
    3) 咬合平面に対する下顎第2大臼歯の歯軸の角度
    4) 下顎下縁平面に対する下顎第1大臼歯の歯軸の角度
    5) 下顎下縁平面に対する下顎第2大臼歯の歯軸の角度
    6) 咬合平面傾斜角
    7) 下顎下縁平面角
    そして, 次の結果を得た。
    1. 咬合平面傾斜角については, T, N群間に有意差は認められなかった。
    2. T群に下顎第2大臼歯が近心傾斜している症例が多く認められた。
    3. T群に下顎下縁平面角の大きな症例が多く認められた。
  • 12年間の治療及び経過
    宗永 泰一, 大野 元, 三井 一史, 阪本 知二, 吉賀 浩二, 高田 和彰
    1989 年 1 巻 1 号 p. 190-194
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節強直症は顎関節部の線維性, 骨性変化により, 顎関節固有の運動が障害されたもので, 炎症や外傷によるものが多く, 幼少期に発症すると下顎骨発育不全を呈する。その治療法である顎関節受動術については, 手術法, 手術時期等に種々の問題がある。
    今回我々は, 鉗子分娩によると思われる小児顎関節強直症に対し, 顎関節受動術を施行し, さらに矯正治療による咬合機能改善にて良好な下顎骨発育を認めた症例を経験したのでその概要を報告する。
    症例は7歳男児で, 開口障害を主訴に当科受診した。初診時, 顔貌は左右非対称でオトガイ部の左方偏位を認め, 開口域は7.5mmであった。レントゲンにて左側顎関節部の透過性は低下し, 骨性癒着を思わせる像を認めた。左側顎関節強直の診断下, 14歳時に顎関節受動術を施行した。下顎頭頸部にて約10mm幅の骨切除と筋突起の切断を行い, 約30mmの開口域を得た。術後7ヵ月目より咬合機能改善を目的に矯正治療を開始した。その結果, 術後5年を経過した現在, 顔貌はほぼ左右対称となり, 下顎骨の良好な発育を認め, セファロ分析にても顔面の対称性が改善された。さらに左側関節突起部には新しい関節様構造の形成を認めた。現在再発もなく経過良好である.
  • そのエックス線学的検索所見について
    沢井 清治, 石橋 克禮, 浅田 洗一, 浜田 清俊, 深谷 哲司, 尚原 弘明, 山中 一成, 地挽 雅人, 小林 馨
    1989 年 1 巻 1 号 p. 195-208
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    習慣性脱臼における顎関節硬組織形態と関節円板の動態との関連を検討するため, 顎関節造影を行った習慣性脱臼3例4関節について多層断層所見を中心に検討を加えた。
    3例4関節とも上関節腔の前方への大きな拡大を示した。このうち, 不全脱臼を示した2例では開口時, 下顎頭は関節円板を伴い関節結節を越え, 大きく前方移動し, 関節円板後組織は伸展したが, 下顎頭は関節円板中央狭窄部にあり, 相互関係は正常であった。また, 関節結節下縁は比較的平坦で, このうちの1例において関節円板の前方転位を認め, 他方の1例に関節結節下縁の著明な骨の陥凹を認め, 開口時の下顎頭は同部にはまり込んだ様相を呈していた。これに対し, 習慣性完全脱臼の1例では関節結節前方部の骨は形態急峻で, 関節円板後組織の伸展は比較的大きくはなく, 下関節腔の拡大を伴い下顎頭は関節円板を越えて前方に移動していた。この症例のもう一方の関節は不全脱臼の状態にあり, 関節結節下縁はやや平坦型を示し, 上記の不全脱臼例に近い特徴を有しており, 関節円板の前方転位を認めた。
    以上のごとく, 習慣性脱臼では下顎頭の過剰な前方移動に伴い, 関節円板を伴うものとこれを乗り越えるものを認め, また, 骨形態においてもやや幅広い変化を伴っていることが明らかとなった。
  • 大西 正俊
    1989 年 1 巻 1 号 p. 209-216
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節における関節鏡視下手術は, 関節内病変に対する新たな治療法としてその効果が期待される。鏡視下手術の術式としては鏡視後に行う盲目操作法のほかに有視下での操作法があげられる。有視下での鏡視操作には1チャンネル外套管の2部位穿刺法と2チャンネル外套管の1部位穿刺法があるが, 安全確実性の点では後者が有利である。しかしながら, 従来の針状関節鏡システムには2チャンネル外套管を装用しうるものがなく, 有視下操作がより円滑に行いうる手術用関節鏡の開発が望まれていた。
    今回, われわれがオリンパス光学工業 (株) と共同開発した関節鏡 (SES-17TMJ) は鏡筒外径1.7mmでその特徴は外套管の外径2.0mm, 1チャンネルのものと, 外径3.8×2.0mm, 楕円形2チャンネルのものが同一関節鏡に交互に使用可能であり, 関節鏡検査はもとより, いずれの鏡視下手術も行いうる構造である。すなわち1チャンネル外套管で関節鏡視ののち鏡視下手術が必要と判断した時点で外套管を2チャンネルのものに交換することで, 前記の有視下での鏡視下手術がすべて可能になる。さらに手術器具の挿入が鏡筒と全く平行に行えることから, 手術器具の小型化が可能となり, 操作性が大幅に向上した。
    以上の新たに開発した顎関節の診断用ならびに手術用関節鏡についてその概要を報告した。
  • 1989 年 1 巻 1 号 p. 217-225
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 1 巻 1 号 p. 226-255
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 1 巻 1 号 p. 256-289
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 金田 敏郎
    1989 年 1 巻 1 号 p. Preface1-Preface2
    発行日: 1989/06/30
    公開日: 2010/08/06
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