Microsporum canisの猫由来菌株の交叉試験において有性世代の産生が認められた.これより単一子嚢胞子菌株を作成し, 交叉試験を行つた結果, 本菌はheterothallicであつた.閉子器は最初白色で後淡褐色となり, 球形で, 大きさは280~700μであつた.その周辺部の菌糸は網状を呈し, 多く2つに分岐し, 薄い棘状の壁の菌細胞が連続しているのがみられた.この細胞は対称性にくびれがあり, 後数珠状となつた.付属器官として螺旋菌糸, 帯状菌糸および大分生子がみられた.子嚢は透明で亜球状を呈し, 大きさ約6μで8ケの胞子を内蔵していた.子嚢胞子は亜球形ないし楕円形で, 大きさは2~3.8μであつた.以上のことから本菌は
Nannizzia属の新種と考えられた.また単一子嚢胞子菌株を用いて, 人および動物由来の21菌株と交叉試験を行つたところ, 10株との間で有性世代の産生がみられた.なお本菌を
Nannizziaotae otaeとすることを提唱する.
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