真菌と真菌症
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29 巻, 4 号
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  • 特に Counterimmunoelectrophoresis の感度, 特異度, 有用性ならびに抗原作製と普及に関する考察
    小原 共雄
    1988 年 29 巻 4 号 p. 235-245
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    我々の研究室で Aspergillus fumigatus (ATCC 26430) より独自に作製した粗抗原 (J抗原) 並びに鳥居薬品の A. fumigatus 抗原 (T抗原) の2抗原を用いて, 気管支肺アスペルギルス症80例 {肺アスペルギローム50例, アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA) 19例, アスペルギルス肺炎9例, 気管アスペルギルス症1例, 気管支断端アスペルギルス症1例} 並びに対照群88例 (アスペルギルス症以外の各種真菌症, 呼吸器諸疾患, 健康人等からなる) について, 血清中沈降抗体の有無を counterimmunoelectrophoresis (CIE) によって検討した. 特に肺アスペルギロームに関しては, 胸部X線像及び喀痰等の真菌培養成績に基づき8亜群に分類し, 各亜群の陽性率を比較検討した.
    その結果, 血清中沈降抗体は肺アスペルギルロームではJ抗原に対し50例中45例 (90%), T抗原に対し50例中44例 (88%) に各々陽性, ABPAでは両抗原に対し共に19例中5例 (26.3%) に陽性であった. その他のアスペルギルス症及び対照群では両抗原に対する血清中沈降抗体は全て陰性であった. また肺アスペルギロームの各亜群間での陽性率に差異はなかった.
    今回の成績から, J抗原とT抗原との比較において, 感度, 特異度, 有用性に有意差を認めなかったことより, 今後, 血清学的診断に用いる A. fumigatus 抗原は, このT抗原のような安定した試薬が, 市販, 標準化され, 誰もが入手可能となることが望まれる.
    CIEによる沈降抗体検出法は簡便性, 迅速性, 特異性などの点で優れており, 肺アスペルギロームに関してはほぼ満足できる域に達していると考えられる.
  • 福地 祐司, 蝦名 敬一, 横田 勝司
    1988 年 29 巻 4 号 p. 246-251
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Asp-hemolysin の産生を, Aspergillus fumigatus の6種の菌株を用いて検討した. 各毒素画分は菌体抽出液と培養ろ液の混液から硫安沈澱, Sephadex G-50 と DEAE-Sephadex のカラムクロマトグラフィーでそれぞれ調製した. Sephadex G-50 で得られたFI画分の溶血活性レベルは, FM株が最も強く, K-2, K-9およびIAMの3株ではわずかで, TIMMとAUGEの2株では陰性であった. なお, 溶血活性を示す Asp-hemolysin とK-2, K-9, IAMの各FI画分は, いずれもFM株より精製された Asp-hemolysin による抗 Asp-hemolysin 抗体に対し, 完全に融合する一本の沈降線を形成した. 一方, IAM, TIMM, K-2 3株のFI画分はヒト赤血球に対し結合能を有することが間接酵素抗体法による光学顕微鏡観察で明らかとなった.
  • 阿部 章彦, 永田 茂樹, 稲葉 鋭, 発地 雅夫
    1988 年 29 巻 4 号 p. 252-256
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素を投与して高度の肝障害をマウスに作成後, 実験的カンジダ症を惹起して感染性の亢進がみられるか否か検討した. その結果, 四塩化炭素を投与すると, 小葉中心性に広範な肝細胞壊死が出現した. カンジダを接種した場合, 肝障害群は早期より死亡例が出現し, 最終生存率は, 0%であったが, 非肝障害群では20%であった. さらに, カンジダによる病変も, 非肝障害群では, 腎に限局する傾向を示したが, 肝障害群では, 肺, 心にも病変が認められた. 以上から, 高度な肝障害時には, カンジダに対して感染性亢進に働くことが示された.
    さらに, 肝障害群ではTIBCが有意に低下しており, トランスフェリン (TIBC) の低下がカンジダに対して感染性亢進に働く可能性が示唆された. しかし, 肝障害マウスにアポトランスフェリンを投与した場合には, TIBCが増加せず, 易感染性には変化はみられなかったので, 今回の鉄代謝変化と易感染性との関係については今後さらに検討する必要があると考えられる.
  • 山本 哲郎, 宮崎 敬之, 柳生 淳二, 岩瀬 一, 片桐 信之, 穂垣 正暢, 内田 勝久, 竹重 厚子, 野原 久美子, 山口 英世
    1988 年 29 巻 4 号 p. 257-264
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    酵母 Hansenula mrakii IFO 0895株の産生するキラートキシンは, 51株の Candida glabrata を10μg/ml以下で完全に阻止した. 一方, 74株の Candida albicans に対しては, 100μg/ml以上の最小発育阻止濃度 (MIC) を示した. また, Candida krusei に対するMICは5μg/mlであったが, Candida tropicalis および Candida parapsilosis は100μg/mlでも阻止されなかった.
    このキラートキシンの選択毒性を利用して, 外陰・膣真菌症の二大原因菌である C. albicansC. glabrata の分離と鑑別を簡便に行う培地の開発を検討した. すなわち, 真菌のみを選択的に分離する目的で, YEPD培地に抗細菌性抗生物質のメズロシリンおよびシソマイシンをそれぞれ100μg/mlおよび50μg/ml, さらに亜テルル酸カリウムを20μg/ml添加した培地 (MS培地) を作製したところ, MS培地は真菌の発育にはほとんど影響を与えず, 細菌の発育のみを特異的に阻害した. 次に, 膣真菌症の主要な病原菌である C. albicansC. glabrata をキラートキシンの感受性の違いにより判別するために, 90mm径のシャーレを2分し, 一方がMS培地, 他方がMS培地に15μg/mlのキラートキシンを添加した簡易判別培地 (KMS培地) を作製し, 膣より真菌の分離, 同定を行ったところ, C. albicansC. glabrata の2菌種のみが検出された. しかも, 両菌種は簡易判別培地上で明瞭に判別でき, 同定結果とも一致した. また, C. albicansC. glabrata の単独感染率は75例中, それぞれ50例 (67%) および20例 (27%) であった. さらに, C. albicans の血清AとB,または, C. albicansC. glabrata の複合感染もそれぞれ1例および4例みられた.
  • 加藤 卓朗, 香川 三郎
    1988 年 29 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    癜風の真菌学的な治療効果判定を直接鏡検とともに培養を用いて行い, 併せて再発率について検討した. 癜風140例と健常人56例を対象とした. 治療は1~4週間行い, 治療中止後約1ヵ月毎に再発の有無を検査し, 培養を行った. 結果は最終の直接鏡検陽性率が8/129 (6.2%) であるのに対し, 培養陽性率は37/90 (41.1%) と高値であった. 使用薬剤別ではイミダゾール系のクリームが最も良好で, 液剤は劣った. 再発率は1ヵ月以内7/48 (14.6%), 2ヵ月以内10/37 (27.0%) であったが, 3ヵ月以内では17/33 (51.5%) と上昇し, 6ヵ月以内では22/34 (64.7%) と極めて高値であった. 治療中止時 (直接鏡検は陰性) の培養陰性例では2ヵ月以内の再発率は1/15 (6.7%) と低いが, 6ヵ月以内では8/12 (66.7%) であった. 治療後 (非再発例) の培養成績は1ヵ月後22/32 (68.8%), 2ヵ月後13/23 (56.5%) で, 3ヵ月後には10/12 (83.3%) と高値になった. 以上より治療効果判定には直接鏡検とともに培養も重要であること, 再発率は極めて高く, 治療中止時の培養成績は早期再発率に大きく関係すること, 治療中止後の培養陽性率は非再発例においても3ヵ月以後は高いことなどがわかった.
  • 西山 千秋, 佐伯 真理子, 関口 かおる
    1988 年 29 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    患者は大正9年生まれの男性. 昭和54年9月, 左上肢と背部の潰瘍を主訴に来院した. 診断確定後はグリセオフルビン (以下GFと略す) 投与にて加療し, 約半年後潰瘍は外観上瘢痕治癒した. それ以後もGFを継続投与していたにも拘わらず, 小潰瘍の再発を見たが, その都度瘢痕治癒していた. しかし瘢痕を生検すると菌要素は検出された. 昭和60年頃より瘢痕を取り囲むように浸潤性暗紅色局面が新生し, 右背部から側胸, 左上肢全体に拡大, GF 1日量1,500mgに増量しても, 全く反応しなかった. ケトコナゾールに変更したところ約6ヵ月後潰瘍は殆ど瘢痕化し, 略治した. 昭和54年初診時の潰瘍肉芽腫病変および表在性病変からの分離株は, サブロー室温培養にて発育比較的速やか, 表面綿毛状を呈し, GFに対するMICは6.25μg/mlであった. 昭和60年に生検した潰瘍辺縁部の組織所見では, 真皮上層の肉芽腫反応内に多数の菌要素を証したが, 同一材料をサブロー培地に接種しても室温では発育をみず, 37℃にて発育中等度帯白色の集落を得た. この分離株のMICはGFに感受性はなく, ケトコナゾール6.25μg/ml, ミコナゾール3.13μg/ml, アンフォテリシンB 1.56/mlを呈した.
  • 今村 宏, 平谷 民雄, 内田 勝久, 山口 英世
    1988 年 29 巻 4 号 p. 275-291
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ピリミジン基を含む新しい3-ヨードプロパルギル誘導体である rimoprogin の in vitro 抗菌活性を同じ3-ヨードプロパルギル誘導体に属する既存の抗真菌剤 haloprogin およびイミダゾール系抗真菌剤として知られている isoconazole nitrate を対照薬剤として比較検討した結果, 以下の知見が得られた.
    1) 本剤は広い抗菌スペクトルを有し, 酵母状真菌, 皮膚糸状菌, Aspergillus および類縁菌, 接合菌, 二形性真菌および黒色真菌を含むほとんどすべての病原性真菌に対してのみならず, グラム陽性細菌に対しても低濃度で発育阻止効果を示した. これらの菌群間で本剤に対する感受性を比較すると, 二形性真菌が最も高く, 次いで皮膚糸状菌, Aspergillus および類縁菌, 黒色真菌, 酵母状真菌, 接合菌の順であった.
    2) 各種真菌に対する本剤の最小発育阻止濃度 (MIC) は接種菌量および培養時間により, 軽度しか影響を受けなかったが, 培地pHによる影響は顕著にみられ, 酸性側で高い抗菌活性を示した. また血清の添加により抗菌活性は低下したが, その程度は対照薬剤に比べて軽度であった.
    3) Candida albicans および Trichophyton mentagrophytes を rimoprogin 存在下で培養した場合, 2.5μg/ml以上の薬剤濃度では6時間以内に明らかな生菌数の低下が認められ, 本剤が感受性菌に対して殺菌的に働くことが示唆された.
  • 高橋 泰英, 黒沢 伝枝, 家本 亥二郎, 飯吉 英里子, 中嶋 弘, 澤泉 健二郎
    1988 年 29 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    長期間のステロイド外用により増悪したと思われるクロモミコーシスの1例を報告した. 症例74歳, 男. 横須賀市在住. 昭和57年8月, 左肘頭・前腕に擦過傷を受けた後皮疹が出現した. 2年間放置後ステロイド外用療法を約1年間受けたがむしろ悪化したため, 昭和61年1月31日当科を紹介され入院となった. 左肘頭から前腕にかけて92×260mmの不整形局面があり, やや離れて自家接種によると思われる同様の病巣が3個認められた. いずれも厚い痂皮で覆われた浸潤性紫紅色斑で, 所属リンパ節は触知しなかった. 鱗屑のKOH標本ではいわゆる sclerotic cells が無数にみられ, 発芽管と菌糸の形成も著明であった. 真菌培養では Fonsecaea pedrosoi が分離された. 入院後ステロイド外用を中止し経過をみたところ, KOH標本では sclerotic cells がやや減少し,発芽管~菌糸は明らかに減少した. 組織学的検索でも sclerotic cells は著明に減少した. 以上の経過より本症の増悪にステロイド外用が強く関与しているものと推察された. 初診時とステロイド中止後の病理組織学的所見, 免疫組織化学的所見も合わせて報告し, 若干の考察を加えた.
  • 症例報告と分離菌株 Nocardia asteroides の分類学的考察
    倉田 幸夫, 北林 一男, 岩佐 和典, 高橋 繁夫, 末永 孝生, 新井 正, 横山 知世子
    1988 年 29 巻 4 号 p. 299-307
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    54歳, 男性. 溶血性貧血と汎発性白癬に合併した皮膚ノカルジア症の1例を報告した. 2年前より溶血性貧血でステロイドを内服, 5ヵ月前より体部白癬でビフォナゾールクリームを外用していた. 昭和63年1月, 右大腿に皮下硬結が出現した. 外傷の既往はなかった. 体幹, 四肢に鱗屑をつけた紅斑, 落屑性紅斑性局面が多発, 指趾の爪甲に混濁, 肥厚, 右大腿内側に67×54mm,弾性硬の皮下硬結がみられた. 体幹, 四肢の紅斑より Trichophyton rubrum を分離した. 皮下硬結の組織像では, 皮下脂肪織の深部に膿瘍, グラム陽性の菌要素がみられ, 組織片からの分離菌株は, サブロー寒天培地で橙黄色の限局した固い集落を形成, 粗雑な気菌糸と分生子を着生した. 菌の形態学的性状, 生化学的性状より Nocardia asteroides と同定された. 汎発性白癬はグリセオフルビンの内服が奏効, ノカルジア性皮下膿瘍は切開排膿, クラブラン酸アモキシリンの全身投与およびネチルマイシンの局所投与が有効であったが, 治療中止2.5ヵ月後, 腹壁に転移性膿瘍を生じた. 各種検査で細胞性免疫の低下が認められ, 両疾患発症の誘因と考えられた. 皮下硬結からの分離菌株につき, 疑義名とされる Nocardia farcinica との関連性を含め, 若干の分類学的考察を加えるとともに, 本邦における続発性皮膚ノカルジア症の報告例11例のまとめを行なった.
  • 松川 清, 千早 豊
    1988 年 29 巻 4 号 p. 308-311
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    牛は濃厚飼料多給による前胃アシドーシスにおいて粘膜変性を惹起し, そこに食渣内常在真菌の侵入を招くといわれている. 同じ反芻獣の緬羊を用い, 実験的にムーコルが前胃アシドーシス下, 粘膜に感染することを実証した.
  • 1988 年 29 巻 4 号 p. 313
    発行日: 1988年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
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