我々の研究室で
Aspergillus fumigatus (ATCC 26430) より独自に作製した粗抗原 (J抗原) 並びに鳥居薬品の
A. fumigatus 抗原 (T抗原) の2抗原を用いて, 気管支肺アスペルギルス症80例 {肺アスペルギローム50例, アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA) 19例, アスペルギルス肺炎9例, 気管アスペルギルス症1例, 気管支断端アスペルギルス症1例} 並びに対照群88例 (アスペルギルス症以外の各種真菌症, 呼吸器諸疾患, 健康人等からなる) について, 血清中沈降抗体の有無を counterimmunoelectrophoresis (CIE) によって検討した. 特に肺アスペルギロームに関しては, 胸部X線像及び喀痰等の真菌培養成績に基づき8亜群に分類し, 各亜群の陽性率を比較検討した.
その結果, 血清中沈降抗体は肺アスペルギルロームではJ抗原に対し50例中45例 (90%), T抗原に対し50例中44例 (88%) に各々陽性, ABPAでは両抗原に対し共に19例中5例 (26.3%) に陽性であった. その他のアスペルギルス症及び対照群では両抗原に対する血清中沈降抗体は全て陰性であった. また肺アスペルギロームの各亜群間での陽性率に差異はなかった.
今回の成績から, J抗原とT抗原との比較において, 感度, 特異度, 有用性に有意差を認めなかったことより, 今後, 血清学的診断に用いる
A. fumigatus 抗原は, このT抗原のような安定した試薬が, 市販, 標準化され, 誰もが入手可能となることが望まれる.
CIEによる沈降抗体検出法は簡便性, 迅速性, 特異性などの点で優れており, 肺アスペルギロームに関してはほぼ満足できる域に達していると考えられる.
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