酵母の細胞壁の多糖質, zymosan を正常血清と反応させると, 第2経路によつて補体系を活性化して, 中間生成物としてC3bをエステル結合したC3b・zymosan (Z・C3b) を生じる. このものは多形核白血球やマクロファージのC3bレセプターに結合して, 食作用やO
-2などの活性酸素の生成反応を誘発する. 筆者らは, Z・C3bの生物活性を生化学的に明らかにする目的から, モルモットの多形核白血球よりのO
-2生成反応を始動する機構について研究し, 以下の事実を明らかにした.
Z・C3bは抗原抗体結合物と同様にO
-2生成反応を誘発するが, その始動過程が diisopropyl fluorophosphate や mepacrine などによつて強く阻害される. したがつて, これらの免疫複合体がC3bあるいはFcレセプターに結合して, 細胞膜中の NADPH oxidase を活性化する刺激伝達機構には, キモトリプシン様セリンプロテアーゼと phospholipase A
2 が関与すると推定した. 一方, sodium dodeyl sulfate など, 特異的レセプターを介しない刺激物では, セリンプロテアーゼは関与せず, phospholipase A
2のみが関与することを認めた. phagosome を形成した細胞膜中の NADPH oxidase は刺激しない膜の酵素と Triton X-100 や trypsin 処理に対する安定性の点で相違することや, Triton X-100 存在で電気泳動的に分離した NADPH oxidase の研究から, 細胞膜中の NADPH oxidase は刺激によつて存在状態が変化し, 同じ膜中の cytochrome
b などの因子と共範できるようになつて, 活性化する機構を提案した.
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