Fusarium oxysporumによる皮膚病変を検討する目的で以下の実験を行なった.ウサギを対照群,感作群および抗癌剤投与群に分け,
F.oxysporumの小分生子を皮内に接種し,病理組織学的に検討した.結果:対照群では,接種後,主として多形核白血球が応答し,膿瘍と皮膚の潰瘍を形成した.続いてマクロファージがそれを囲んで出現し,表皮の再生も生じて,膿瘍は縮小した.真皮内に小肉芽腫および少しの菌体成分を残して治癒した.感作群では,病変の性状は対照群とほぼ同様であったが,炎症性細胞浸潤が強く,より大きい病巣を形成した.抗癌剤投与群では,初期には菌糸の発育が著しく,それに対して多形核白血球の浸潤が乏しかった.数日経つと他の2群と同様の炎症性細胞浸潤が著明になり,小さい膿瘍と皮膚の潰瘍を形成した.小肉芽腫を残して治癒したが,肉芽腫内に菌体成分がより多く残存した.
F.oxysporumに対する血清抗体価をみると,対照群と抗癌剤投与群では全経過中抗体価の上昇はなかった.感作群では,一部の動物で接種後抗体価が低下した.剖検時の真菌培養では,感作群が他の2群に比してより早く陰性化した.以上の結果は,実験的皮膚カンジダ症の皮膚病変にある程度類似しているが,小肉芽腫および菌体成分を残して治癒するところは本菌に特徴的であった.
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