好温菌には生育温度の差異に基いて, 高温菌, 耐温菌, 微高温菌, 移行型中温菌の別がある. 研究者間によって定義に違いはあるが, 高温菌は18~50℃ (または50℃以上) の範囲で生育するもの, 耐温菌は45℃まで生育可能な菌とみなされる. このような好温菌は人や温血動物の体温でよく生育し, mucormycosis, aspergillosis で代表されるように日和見感染症の病因となる素地を持っている.
日和見菌としての好温菌の疫学に関しては必ずしも十分に研究されているとはいえず, どのような環境に生息するのか自然界での生態が不明な病原性好温菌の例も少なくない. 一方, 腐生的好温菌として発見された真菌が, 日和見感染症の原因となることによって再認識されることもある. いずれも種々の好温菌による症例報告の増加がその根底にあるものと思われる.
Thermoascus aegyptiacus, Chaetomium virescens, Neotestudina rosatii, Myceliophthora hinnulea を例として, こうした関係を述べた.
耐温菌
Neosartorya は
Aspergillus fumigatus のテレオモルフとして知られ, 土壌に生息する一般腐生菌であるが, 病原性についての記録ある. 最近発見された
N. spathulata および
N. fennelliae は共に heterothallic な種であるが,
N. fischeri, A. fumigatus と異種間交配試験を行った結果,
N. fischeri に対する子嚢果形成刺激と
A. fumigatus がa性因子を潜在的に備えていることを見出した.
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