真菌と真菌症
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27 巻, 4 号
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  • 特に, BUN上昇と骨髄抑制作用について
    進藤 邦彦, 水野 忠興, 林 謙二郎, 福村 基典, 蘇 鴻偉, 伊藤 章, 大久保 隆男, 福島 孝吉
    1986 年 27 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Cryptococcal meningitis の治療は, amphotericin B (以下AMPH〔B〕) と flucytosine (以下5-FC) の併用治療が, 繁用されて来ている. 今回, 両者の併用の際における副作用, 特に, BUN上昇と骨髄抑制の二つの副作用にのみ限って自験例を検討した. AMPH〔B〕単独治療例3例 (Group I) と, AMPH〔B〕と5-FCとの併用例3例 (Group II) の二つの群にわけた. Group I では3例中1例にBUN上昇がみられ, 同時に骨髄抑制もともなっていた. 他の2例にはいずれの副作用もみられなかった. Group II では3例全例にBUN上昇と骨髄抑制がみられた. BUN上昇又は, 骨髄抑制のいずか一方のみが副作用として認められた症例はなかった.
    AMPH〔B〕と5-FCの併用療法にあたっては, AMPH〔B〕の腎障害のために, 血液中にBUNの上昇にともなって増加する5-FCによる副作用, 特に, 造血器障害には十分注意する必要があると思われる.
  • Fusarium oxysporumの皮内接種による皮膚病変について
    崔 進, 佐野 健司, 馬場 健, 伊藤 誠, 発地 雅夫
    1986 年 27 巻 4 号 p. 222-229
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporumによる皮膚病変を検討する目的で以下の実験を行なった.ウサギを対照群,感作群および抗癌剤投与群に分け,F.oxysporumの小分生子を皮内に接種し,病理組織学的に検討した.結果:対照群では,接種後,主として多形核白血球が応答し,膿瘍と皮膚の潰瘍を形成した.続いてマクロファージがそれを囲んで出現し,表皮の再生も生じて,膿瘍は縮小した.真皮内に小肉芽腫および少しの菌体成分を残して治癒した.感作群では,病変の性状は対照群とほぼ同様であったが,炎症性細胞浸潤が強く,より大きい病巣を形成した.抗癌剤投与群では,初期には菌糸の発育が著しく,それに対して多形核白血球の浸潤が乏しかった.数日経つと他の2群と同様の炎症性細胞浸潤が著明になり,小さい膿瘍と皮膚の潰瘍を形成した.小肉芽腫を残して治癒したが,肉芽腫内に菌体成分がより多く残存した.F.oxysporumに対する血清抗体価をみると,対照群と抗癌剤投与群では全経過中抗体価の上昇はなかった.感作群では,一部の動物で接種後抗体価が低下した.剖検時の真菌培養では,感作群が他の2群に比してより早く陰性化した.以上の結果は,実験的皮膚カンジダ症の皮膚病変にある程度類似しているが,小肉芽腫および菌体成分を残して治癒するところは本菌に特徴的であった.
  • 特にNannizzia otaeの土壤からの分離について
    久保 等
    1986 年 27 巻 4 号 p. 230-238
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    北海道ほぼ全域の1,000ヵ所から土壤標本を採取し,Vanbreuseghemのhair baiting法を用いて好角質性真菌の分離を試みた.その結果,383ヵ所から計461株の菌を得た.内訳はTrichophyton ajelloi 318株(Arthroderma uncinatum 90株),Microsporum cookei 59株(Nannizzia cajetani 13株),Chrysosporium keratinophilum 32株,C.tropicum 23株,Chrysosporium anamorph of A. tuberculatum 15株,T.terrestre 6株(A.insingulare 3株,A.quadrifidum 1株),Chrysosporium sp.4株,M.canis 2株,M.gypseum 1株,Ctenomyces serratus 1株である.本州以南と比較すると,T.ajelloiが多く分離され,M.gypseumが少なかった.M.canis 2株のうち1株は完全型N.otaeであり,これは自然界から分離されたはじめての記録である.また,C.serratusも本邦で初めて分離した.
    以上の結果から,北海道は本州以南と土壤中の好角質性真菌の分布に違いがみられた.とくに今回の調査でM.canisの(+)系統株の土壤中での存在が確認されたことから,現在北海道の犬,猫やヒトのM.canis感染症のうち少なくとも(+)系統株は北海道固有のものと推定された.
  • 森田 達也, 野沢 義則
    1986 年 27 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    チオカルバミン酸系抗真菌剤,ナフチオメートTのスクワレンエポキシダーゼ(squalene epoxidase)阻害について,Candida albicansとラット肝よりミクロソーム画分を調製し比較検討した.その結果,ナフチオメートTによるスクワレンエポキシダーゼ活性の阻害作用は,C.albicansに対し極めて選択的に作用することが示された.また,C.albicansにおけるスクワレンエポキシダーゼ活性の阻害は,i)可溶性画分(活性化因子)の有無に関係なく発現すること,ii)基質であるスクワレンに対して非競争的(non-competitive)であること,iii)可逆的であること,iv)ミクロソームの電子伝達系には作用しないことが明らかにされた.
  • 局所温熱療法に関して
    仲 弥, 原田 敬之, 西川 武二
    1986 年 27 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    近年,黒色真菌感染例に対して局所温熱療法が用いられ,有効な結果が得られているが,その作用機序については未だ明確にされていない.我々は,病原性黒色真菌5種25株について,その発育に及ぼす温度の影響を観察するとともに,懐炉圧抵時の表面皮膚温および深部温を測定し,自験7例のクロモミコーシスの病理組織標本における菌要素の存在部位を比較検討した.その結果,1)上限発育温度はFonsecaea pedrosoi 39℃, Exophiala jeanselmei 36~38℃, Exophiala dermatitidis 40~42℃(ただし顆粒形は38℃),Phialophora verrucosa 37℃, Cladosporium trichoides 45℃以上であり,41℃の環境下にて,F.pedrosoiま25日目,E.jeanselmeiは5日目,P.verrucosaは5日目に死滅していたが,E. dermatitidis, C. trichoidesは25日後も死滅しなかった.2)懐炉貼布にて皮表42℃のとき深さ3~4mmの部位は40.5℃まで上昇した.3)局面型を呈する病変組織内において,黒色真菌の菌要素は皮表から1.5mm,炎症性細胞浸潤は4mm以内に認められた.以上の結果よりクロモミコーシスにおいては,原因菌がF. pedrosoi, E. jeanselmei, P. verrucosaであれば局所温熱療法が有効であることが示されたが,温熱効果には菌に対する直接効果以外にも宿主側の要因も考えられるので,更に検討が望まれる.
  • 曽山 浩吉, 中西 忍, 今宿 晋作
    1986 年 27 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    血清中D-アラビニトールの簡易なレサズリン共役蛍光定量法について述べた.本法はD-アラビニトール脱水素酵素とジアホラーゼを用い,レサズリンがレゾルフィンになる速度を励起波長560nm,蛍光波長580nmで測定してD-アラビニトールを定量する.
    本法を用いてカンジタ性肝膿瘍を合併した急性リンパ性白血病患児の血清中D-アラビニトールを経時的に測定した.本症例においては二度目の再発後の寛解導入療法後に腹部CTで,肝,脾に多くの小さな低吸収域が認められた時点で,血清中のD-アラビニトール値およびD-アラビニトール/クレアチニン比は正常の10~20倍に上昇した.
  • 山田 直子, 平谷 民雄, 山口 英世, 山田 陽子, 多紀 晶子, 大隅 正子
    1986 年 27 巻 4 号 p. 256-264
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚糸状菌Trichophyton mentagrophytesの発育に及ぼすbifonazoleの影響について,スライド培養法を用いて,走査電子顕微鏡学的手法により追究した.薬剤無添加対照培養においては,T.mentagrophytesの分生子から発芽した菌糸は極めて速やかに発育する.若い菌糸は表層が平滑で,均一な幅の真っ直ぐな形態を呈した.これに対して,bifonazoleを添加して培養した場合には,薬剤濃度と作用時間に応じて,次の3つに大別される特徴的形態変化を示した.i)菌糸発育の阻害(菌糸の波状,弯曲,屈曲,ねじれ),ii)菌糸発育形態の異常(不整形化,表層の皺襞形成),iii)菌糸の破壊(細胞壁の剥離,細胞外へ放出された物質の融合によるシート化)などである.また2ng/mlといった最小発育阻止濃度(0.63μg/ml)をはるかに下回る濃度でも,bifonazoleの菌糸に及ぼす有意な形態学的影響を検証した.
  • 仲 弥, 増田 光喜, 多島 新吾, 原田 敬之, 西川 武二
    1986 年 27 巻 4 号 p. 265-267
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Collagen分解酵素を産生する微生物種は数少なく,深在性真菌であるSporothrix schenckiiにおいてもcollagen分解活性を有する酵素の産生の報告は未だみられない.今回,我々はS.schenckiiの培養濾液中にazocoll分解活性を有する酵素を見いだした.この酵素は至適pH4.0で,pepstatinにより活性が阻害された.また,この酵素を含む分画中には未変性collagenをも分解する活性が認められた.この実験結果より,S.schenckiiがこの酵素活性によりcollagenを分解し,栄養源としてのペプチドを獲得し,病原性を発揮している可能性が強く示唆される.
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