真菌と真菌症
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19 巻, 4 号
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  • 岩津 都希雄
    1978 年 19 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    48歳, 女性の臀部の湿疹病変 (ステロイド剤の外用で治癒) の鱗屑を抗生物質加サブロー寒天培地にて室温で培養したところ, 2, 3種類の酵母および細菌に混じて黒褐色湿性の真菌集落を得た. 肉眼的ならびに顕微鏡的形態, 有性生殖器官形成の有無, 培養温度と発育速度との関係, コーンミール寒天培地における色素産生試験, 酵母相への転化試験, サイアミン要求性試験, マウス腹腔内接種試験および蛍光抗体法による抗原性状の検索にて, この真菌を Sporothrix schenckii と同定した.
    S. schenckii が病変をおこすことなく人体皮膚表面に附着をしていた稀有な例と考えた.
  • 奥平 雅彦, 久米 光, 佐々木 憲一, 田中 俊夫, 中 英男, 神田 哲郎, 山田 泰史
    1978 年 19 巻 4 号 p. 271-282
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    工業用酵母の1つである Candida utilis のNo. 1, No. 2, No. 3 およびATCC 9550の4株について, Saccharomyces cerevisiae ATCC 9763および Candida albicans KULM 5012との比較により, その病原性の有無, 程度を検討すべく, 実験病理学的検討を行つた.
    ddY系4週齢雄性マウスに各被検菌株5×106あるいは1×107cells/mouseを静注し, 3~4週間観察し, 身体症状発現率, 体重の推移, 致死率, 諸臓器からの逆培養陽性率などをしらべた. 6MPあるいはプレドニン投与の感染に及ぼす影響もしらべた. 本実験に使用したマウスは総計290匹であり, すべて病理組織学的に精査した. 得られたデータを種々の観点から検討し, virulence を示す C. albicans KULM 5012と avirulent とされている S. cerevisiae ATCC 9763との比較において, C. utilis の4株はすべて感染学的ならびに病理組織学的に S. cerevisiae ATCC 9763と顕著な差異がないと判断された.
  • 第1報 ラット皮膚の毛細血管透過性に及ぼす Biogenic Amine 及び N-Acetylated Amine の影響について
    田中 豊夫, 芥川 公昭, 牧野 実, 安藤 襄一
    1978 年 19 巻 4 号 p. 283-291
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚真菌症の感染部位の炎症時における痒痛浮腫機構解明のための研究の一環として, tyramine, histamine, serotonin, dopamine, N-acetyltyramine, N-acetylhistamine N-acetylserotonin の毛細血管透過性亢進作用をラット皮膚への色素(azovan blue)蓄積によつて検討した. すなわち,ラットは (1) 対照群と, ラット細胞内 amine 類を枯渇せしめて投与した biogenic amine 及び N-acetylated amine の作用を明確にするために (2) reserpine 投与群と (3) compound 48/80投与群に分け毛細血管透過性作用を比較検討し次の結果を得た.
    (1) 対照ラット群では histamine と serotonin が毛細血管透過性を強く亢進するのが認められた. 他の biogenic amine と N-acetylated amine においても同作用の亢進が認められたが, dopamine の同作用は著しく弱いことが認められた.
    (2) Reserpine 投与ラット群では histamine と serotonin によつて毛細血管透過性の強く亢進するのが認められた. Histamine の場合は対照群との間には有意差はなく, serotonin の場合は対照群との間に有意差 (p<0.01) が認められた. 他の biogenic amine と N-acetylated amine による同作用は対照群に比して減少し, 対照群との間の有意差はp<0.01-p<0.005であつた.
    (3) Compound 48/80投与ラット群では histamineとserotonin によつて毛細血管透過性の強く亢進するのが認められた. そして, 両物質とも対照群との間には有意差は認められなかつた. 他の biogenic amine と N-acetylated amine によつても同作用は認められたが, その作用は弱く対照群との有意差は tyramine と N-acetyltyramine はp<0.005, N-acetylhistamine はp<0.01であり, その他の物質では有意差は認められなかつた.
    (4) Biogenic amine とそれの N-acetylated amine との毛細血管透過性を比較すると tyramine と N-acetyltyramine (対照群, reserpine 投与群) を除き, いずれも biogenic amine が強く, 有意差p<0.005が認められた.
  • 西本 勝太郎, 穐山 富雄, 西 寿一
    1978 年 19 巻 4 号 p. 292-297
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    症例1.2歳男子, 長崎県五島在住. 数日来の頭頂部のケルスス禿瘡にて来院. 病巣内の毛に毛外性の菌寄生をみ, 培養により Trichophyton verrucosum を分離.
    症例2.3歳男子. 症例1の兄. やはり数日来の大腿の斑状小水疱性白癬にて, 弟より1ヶ月遅れて来院. 原因菌は T. verrucosum.
    いずれもグリセオフルビン内服と抗菌剤外用にて急速に治癒.
    患者の家業が牧畜を営なみ, 牛を飼つている点より, 患家を含めて五島福江島内の飼育牛の検診を行こない, 幼牛間にかなりの Trichophyton verrucosum の浸淫があるのを認めた.
    現在この菌は長崎県を含む九州一帯に定着したものと判断される.
  • 江川 朝生, 山口 英世, 内田 勝久, 平谷 民雄, 山本 容正, 岩田 和夫
    1978 年 19 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    合成抗真菌剤 miconazole の嫌気性細菌に対する in vitro 抗菌活性ならびに好気的および嫌気的条件下で培養した好気性細菌に対する in vitro 抗菌活性について検討し, 以下の成績を得た.
    (1) 本剤は球菌, 桿菌を問わずグラム陽性の嫌気性および好気性細菌に対し強い抗菌活性を有する.
    (2) 本剤は球菌, 桿は菌を問わずグラム陰性の嫌気性および好気性細菌には作用しないが, Bacteroides に対しては例外的に中等度の抗菌活性を有し, 殺菌的に作用する.
    (3) 本剤の好気性細菌に対する抗菌活性は好気的および嫌気的培養操作によつて, ほとんど影響をうけない.
  • 第2報 MIC値ならびにMCC値におよぼす諸因子の影響
    江川 朝生, 山口 英世, 岩田 和夫
    1978 年 19 巻 4 号 p. 303-315
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Miconazoleの諸種病原真菌に対するMIC値ならびにMCC値におよぼす諸因子の影響を検討し, 以下の成績を得た.
    (1) 培養時間の延長は Candida 属, ならびに皮膚糸状菌の諸菌種に対して両値にほとんどあるいは全く影響しない.
    (2) 接種菌量の影響は C. albicans の酵母形細胞で比較的大きく, T. mentagrophytes 分生子に対しては小さい.
    (3) 培地pHは C. albicans および T. mentagrophytes に対してアルカリ側で両値を上昇させる.
    (4) 本剤の全血, 血漿, 赤血球, 血清の添加は C. albicans および T. mentagrophytes に対して両値を上昇させる. ウシ血清アルブミンは C. albicans に対する両値を低下させるが, 血清の影響は軽度である.
    (5) 血清より抽出した脂質は C. albicans に対し本剤の抗菌活性を著しく低下させる.
  • 第2報 抗真菌活性に及ぼす諸因子の影響
    山崎 良治, 岩田 和夫
    1978 年 19 巻 4 号 p. 316-331
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    合成抗真菌剤 econazole は, 多くの酵母ならびに酵母様真菌および皮膚糸状菌に対して強い抗菌活性を有し, かつ殺菌効果の高いことを認めた. これらの真菌に対するMICは培養時間の延長に影響されるところが少ない. 本剤の殺菌作用は培地の栄養条件に拘らず菌と薬剤との接触直後から現われ, 被検菌と作用濃度により差異はあるが, 3~24時間以内に菌をほぼ100%死滅させる. このような抗菌活性は接種菌量および培地pHの変化に対しても比較的安定である. 血液成分は抗菌活性をある程度阻害する. その阻害は主として血球による可能性が強い. 血清による抗菌活性の阻害は主として脂質成分に帰せられる.
  • 第3報 実験的白癬菌感染に対する治療効果
    山崎 良治, 内田 勝久, 岩田 和夫
    1978 年 19 巻 4 号 p. 332-343
    発行日: 1978年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    合成抗真菌剤 econazole は Trichophyton mentagrophytes によるモルモットの実験的皮膚感染に対し, 局所適用法による治療効果は投与開始4日後から現われ, 2%薬剤では14日間の治療が終了と同時に症状は完全に治癒した. 0.5%薬剤でも治療終了2日後には100%治癒した. 逆培養試験でも2%薬剤治療群と同様の成績を示し, 実験最終日における逆培養試験では11例中6例で完全に菌が陰性化し, 菌が検出されても平均で感染皮膚面の10%以下の面積においてであつた.
    Econazole の殺菌効果は in vivo でも示され, 治療終了後少なくとも14日間は病変の再発は認められず, その抗菌作用は1%濃度における比較で clotrimazole と同等であつた.
    クリーム基剤による製剤も polyethylene glycol による製剤と同様に高い抗菌活性を示した.
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