白癬の原因菌としてしばしば分離される
Trichophyton mentagrophytes は, 交配試験により数種の異なつた完全世代を有する菌種からなることが判明し,
Trichophyton mentagrophytes complex と総称されている. 著者はこの
Trichophyton mentagrophytes を構成する菌種のうち,
Arthroderma benhamiae, Arthroderma vanbreuseghemii および
Trichophyron interdigitale の3菌種について免疫血清学的ならびに生化学的方法を用いて, その抗原性状を検討した. すなわち,
Arthroderma benhamiae および
Arthroderma vanbreuseghemii の加熱死菌を家兎に免疫して得られた抗血清を用い, 本2菌種および
Trichophyton interdigitale を抗原として行なつた抗体価の測定および相互吸収試験ならびに3菌種の構成糖および核磁気共鳴スペクトル (proton magnetic resonance spectrum, PMR) 分析を用いた多糖類の立体構造の比較を行なつた. その結果
Trichophyton mentagrophytes に属するこれら3菌種の性状は, いずれの場合も微妙な差異はあるものの極めて近似した相互関係を示唆するものであつた. 以上の結果から, 本菌群は交配試験からは heterogeneous な分類群に属するが, 系統発生学上, 近縁な関係に位置するものと考えられる.
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