真菌と真菌症
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26 巻, 4 号
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  • 螺良 英郎, 深沢 義村
    1985 年 26 巻 4 号 p. 262
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 深沢 義村
    1985 年 26 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    真菌症の血清学的診断法においては抗体検出法と抗原検出法があり, また血清反応の種類も多様であるために, 統一された指針が示されていない現状である. 抗体検出法においては患者の免疫応答の問題も考慮されなければならない. すなわち感染においても菌種や個体によっては十分な抗体応答のみられない場合も少なくない. このことは近交系マウスにおける抗体応答において大きなばらつきがみられることからも示唆される. そこでクリプトコックス症や内臓カンジダ症においては抗原検出法に期待がかけられている. 血清反応の選択については迅速性, 感受性, 特異性, 入手性などを総合的に考慮すべきである. 要約すると, 抗体検出には免疫拡散法 (ID, CIE) が特異性において優れており, 抗原検出法においては抗体感作ラテックス凝集反応, ELISAの抗体検出法における阻止反応などが迅速性と感受性において優れており, 今後広く応用されるものと考えられる.
  • 浜本 恒男
    1985 年 26 巻 4 号 p. 268-275
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    気管支肺アスペルギルス症38例 (肺アスペルギローム24例, アレルギー性気管支肺アスペルギルス症13例, 気管アスペルギルス症1例) ならびに対照群94例 (20~30歳代の健康成人50例, 気管支喘息20例, 肺結核10例, 肺ノカルジア症2例, カンジダ血症12例) について, Aspergillus fumigatus 抗原に対する血中抗体の有無を, 寒天ゲル内二重拡散法 (DD), counterimmunoelectrophoresis (CIE) および間接赤血球凝集反応 (IHA) によって検討した. その結果, DD, CIEは簡便な検査法であり, 肺アスペルギローム診断における信頼性は高く, IHAはアレルギー性気管支肺アスペルギルス症に対して, DD, CIEよりも有用な検査法と考えられた. さらに, これらの血清学的診断法は, 診断のみでなく, 治療効果の判定や追跡調査にも役立ち, 肺アスペルギロームでは, 術後あるいは抗真菌剤の空洞内注入により菌球が消失した後2~3年で血中抗体は消失することが判明した.
    一方,カンジダ症53例 (カンジダ血症14例, カンジダ尿症11例, 腟カンジダ症21例, 口腔カンジダ症5例, カンジダ性腹膜炎1例, カンジダ性食道炎1例) ならびに対照群135例 (20~30歳代の健康成人50例, 気管支喘息20例, 慢性気管支炎15例, 肺結核10例, 気管支拡張症3例, 原発性肺癌10例, 肺アスペルギローム10例, 細菌性肺炎7例, びまん性細気管支炎6例, Torulopsis glabrata による真菌血症1例, T. glabrata による真菌尿症3例) について, Candida albicans 抗原に対する血中抗体の有無を, DD, CIE, IHAおよび slide agglutination test によって検討した. その結果, カンジダ症の血清学的検査として, DDは有用性が低く, slide agglutination test は日常的なスクリーニング検査に適しており, CIE, IHAは信頼性が高いことがわかった.
  • 篠田 孝子, 池田 玲子, 西川 朱實, 大塚 盛男, 深沢 義村
    1985 年 26 巻 4 号 p. 276-283
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    わが国において, クリプトコックス症の血清学的診断法を普及する目的で, 抗原検出法として抗体感作ラテックス凝集反応 (LAテスト) を,抗体検出法として加熱菌体を用いたスライド凝集反応 (CSAテスト) を検討した. 当教室に検査依頼のあった34例のうち25例は医師により診断がつけられていたもので, そのうち13例はクリプトコックス髄膜炎, 9例は肺クリプトコックス症, 3例は皮膚クリプトコックス症であった. 9例は診断が未確定であった. LAテストに用いた感作ラテックス粒子の Cryptococcus neoformans A型株の多糖類抗原に対する最小抗原検出濃度は 2.4~9.8ng/mlであった. 上記25例の診断の確定した患者のうち21例 (84%) が抗原陽性であり, 5例 (20%) が抗体陽性であった. また, 9例 (28%) は可溶性抗原抗体複合体を形成していた. 13例のクリプトコックス髄膜炎患者では全例に抗原が検出された. 肺および皮膚クリプトコックス症では, 両者とも67%の抗原検出率であった. 診断未確定の9例のうち1例がLAテストでクリプトコックス髄膜炎と診断された. 他の1例はCSAテストで肺クリプトコックス症が疑われる結果を得た. リウマチ因子との交差反応性は, 患者血清を pronase 処理することにより除去され, また可溶性抗原抗体複合体もこの処理により抗原が遊離することが示唆された. クリプトコックス症の迅速診断には, LAテストを最初に行ない, 次にCSAテストを行なうことが望まれる.
  • 石崎 宏, 小林 博人, 沢田 光夫
    1985 年 26 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    スポロトリコーシス患者11血清および正常人28血清の Sporothrix schenckii 抗原に対する抗体価を酵素免疫定量法 (ELISA), 免疫蛍光法 (IF), 凝集反応 (AG) を用いて測定した. 患者群ではELISA512~16,382 (平均4,096) 倍, IF 8~512 (平均73) 倍, AG 4~256 (平均68) 倍, 一方, 正常人群ではELISA 128~4,096 (平均699) 倍, IF 4~64 (平均19) 倍, AG 4~64 (平均22) 倍で, 患者と正常人群の抗体価の一部に重なりがみられた. 患者群ではELISAとIFおよびAG抗体価は相関したが, 正常人群では相関しなかった. ELISA 2,048倍, IF 64倍, AG 64倍以上の抗体価の2項目を充たし, かつスポロトリキン反応が陽性であれば, 活動性のスポロトリコーシスとの診断が可能と考えられた.
  • 阿部 美知子, 久米 光, 奥平 雅彦
    1985 年 26 巻 4 号 p. 289-295
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    真菌症の免疫血清学的検査の診断学的有用性について臨床材料652検体および健康者88検体の合計740検体を供試材料として, counterimmunoelectrophoresis (以下CIE), passive haemagglutination (以下PHA) および latex agglutination test (以下LA) の三法で比較検討した.
    臨床的および病理組織学的にカンジダ症が確認された66例中, CIEによる抗カンジダ抗体陽性率は48.5%およびPHA37.9%で, 病型別には内臓カンジダ症の陽性率が高かった.
    同様にアスペルギルス症が確認された39例中, CIEによる抗アスペギルス抗体陽性率は38.5%およびPHA 77.3%であった.
    クリプトコックス症11例のCIEによる血清中抗クリプトコックス抗体陽性率は30.0%, 同様に抗原陽性率50.0%で, 髄液中の抗体陽性率は0%, 同様に抗原陽性率は62.5%であった. また, LAによる抗原検出率は血清および髄液ともに100%で, クリプトコックス症では抗原検索の有用性が示唆された.
    なお,内因性の感染症であるカンジダ症の診断では, 確定しえなかった症例でも臨床材料より頻回に大量のカンジダが分離される症例では高頻度にカンジダ抗体の検出をみた. このことは検索成績の評価に充分な配慮が必要であることを示唆するものである.
  • Takeshi Mori, Makiko Matsumura, Hiroshi Isonuma, Tsuneo Hamamoto, Kazu ...
    1985 年 26 巻 4 号 p. 296-299
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    This report is on a case of rarely reported tracheal aspergillosis.
    A 54-year-old patient with acute myelogenous leukemia receiving antibiotics, steroid and blood transfusions, had a persistent high fever after 1 week of therapy. Aspergillus fumigatus was detected in the sputum and pulmonary aspergillosis diagnosed. Combination therapy of intravenous amphotericin B and oral flucytosine was instituted. However, he died of respiratory failure. The cause of death was thought to be congestive heart failure and sepsis due to Grampositive rods, but autopsy revealed only several tracheal polypoid lesions caused by Aspergillus. Therefore, the diagnosis was revised to one of tracheal aspergillosis. Such a condition is very rare and is interesting because the aspergillotic lesions developed in only the trachea during therapy.
  • 日比野 順子, 森 健
    1985 年 26 巻 4 号 p. 300-309
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus を原因菌とする肺アスペルギローマ5例 (検査材料として2例は化学療法が不十分なまま死亡し, 剖検時に摘出した菌球, 局所的化学療法を充分施行後に手術により摘出した菌球1例および喀出菌塊2例), アスペルギルス肺炎2例 (化学療法未施行1例と施行1例) ならびに気管アスペルギルス症1例 (化学療法施行) について, 臨床的に検討するとともに, 病巣内の本真菌の形態を光顕と走査電顕により観察し, かつ培養所見と対比して検討することによって, 治療および予防計画についての考察を試みた.
    先ず肺アスペルギローマでは, 化学療法の有無にかかわらず, A. fumigatus は菌球の内部ではその活性度が低く, かつ培養でも発育はみられなかったが, 菌球の表面では菌の活性度が高く, しかも治療例でも真菌の発育がみられた. また菌球は真菌要素のほかに, 真菌の代謝産物, 気管支や空洞壁からの分泌物などによって緊密に構成されているものと考えられた. 以上のことから肺アスペルギローマの内科的治療においては, 抗真菌剤を菌球表面に直接接触させることは必要と思われたが, これに加えるに, 菌球自体に対して機械的に菌球の崩壊を促したり, また蛋白, 多糖体の溶解剤等を局所的に投与してその溶解を促すような手段をあわせ講ずれば, いっそう効果的ではないかと考えられた.
    次に組織侵入型のアスペルギルス肺炎では, 宿主の感染防御能の程度によって予後が大きく左右されるが, 少なくとも化学療法未施行では走査電顕で菌糸が肺胞を中心として肺組織内に, 縦横無尽に発育し伸長する像が観察されており, 早期診断と早期化学療法の必要性が強調される一方, 抗真菌剤の経気道的局所投与が予防上有意義ではないかと考えられた. また気管アスペルギルス症では, 走査電顕で真菌の定着, 付着そしてさらに組織侵入の像がみられたことから, 肺炎と同様に抗真菌剤の全身投与と経気道的局所投与との併用が必要と思われた.
  • I. In vivo 活性
    近藤 譲
    1985 年 26 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans で免疫したモルモットの脾臓とリンパ節細胞からの組織細胞浮遊液を凍結融解によって破壊した上清を限外濾過により分子量1万以下の透析性物質 (dialyzable-transfer factor) を作製してその in vivo での活性を検討した. その結果, transfer factor を非免疫モルモットに投与1~2日後, Candida 抗原, その他 purified protein derivative (PPD), Cryptococcin, ovalbumin (OVA), bovine serum albumin (BSA) に対する遅延型皮膚反応, 皮膚反応部位での組織学的検査とマクロファージ遊走阻止試験を行ったところ, Candida 抗原, 特にタンパク抗原に対して特異的な細胞性免疫が受身伝達 (transfer) されることが確認された.
  • II. In vitro 活性
    近藤 譲
    1985 年 26 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans 免疫モルモットの脾臓, リンパ節細胞から調整した透析性 transfer factor (TF) を用い, in vitro での活性を検討した. このTFと非免疫モルモットのリンパ節リンパ球を培養し, そのリンパ球でマクロファージ遊走阻止試験を行うと, Candida 抗原特異的な遊走阻止が認められたが, purified protein derivative (PPD), Cryptococcin, ovalbumin (OVA) や bovine serum albumin (BSA) では遊走阻止反応はみられなかった. この反応はTFと3時間培養したリンパ球で認められた. さらに, TFを Sephadex G-25で分画し, その transfer 活性を検討した結果, Candida 抗原特異的な遊走阻止が示される分画と, マクロファージの非特異的な遊走を促進する分画も認められ, TFの in vitro における多様な活性が示唆された.
  • 渡辺 富美子, 岩津 都希雄, 石田 久枝
    1985 年 26 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    成田赤十字病院皮膚科外来における昭和54年10月から昭和59年9月までの5年間の白癬菌相を調査した. この結果と千葉大学における白癬菌相とを比較検討した. 1) 成田赤十字病院の白癬菌相は, Trichophyton rubrum 715株 (68.0%), T. mentagrophytes 277株 (26.3%), Epideromophyton floccosum 28株 (2.7%), Microsporum canis 20株 (1.9%), M. gypseum 12株 (1.1%) であった. 千葉大学とほぼ類似した結果であったが, T. rubrum の分離率が千葉大学より低く, T. mentagrophytes の分離率は千葉大学より高かった. 2) 成田赤十字病院での顔面, 体部, 股部白癬全体では T. rubrum が圧倒的に多く, 以下 E. floccosum, T. mentagrophytes と続いていたが, 千葉大学では第二, 三位が逆転していた. 3) 足白癬では成田赤十字病院では, T. mentagrophytes が優位であったのに対し, 千葉大学では T. rubrum が第一位であった. 4) 小児では, 成人を含む症例全体に比して T. rubrum の分離率が低い傾向にあった.
  • 奥田 長三郎
    1985 年 26 巻 4 号 p. 330-342
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚の真菌感染における組織反応を検討するために, Candida albicans の酵母形の生菌および死菌浮遊液 (108個/ml, 0.1ml) をそれぞれモルモットの皮内に接種し, 経時的に採取した生検材料を主として電顕的に検討した. 生菌では胞子および皮膚組織中で発芽した菌糸は接種3時間後にはすでに多核白血球 (PMN) に貪食されていた. 貪食したPMNは変性し, その後PMNに貪食された菌の周囲に変性したPMNと考えられる高電子密物質を認め, あるいはPMNの変性遺残物と考えられる膜構造が菌の周囲に数層をなして認められ, 貪食された菌は時間の経過につれて変性を示すものが多くなった. これらは菌が繰り返しPMNに貪食され, 死滅していく像と考えられた. また菌体を含む膿瘍は, 表皮と毛包から伸長してきた新生上皮により囲まれ, 表皮の再生と共に皮表へ排除された. 皮表へ排除された菌の一部は痂皮中でも微細構造的にはほとんど変性を示さず, 生存していると考えられた. 一方, 死菌はPMNに貪食され, 次いでマクロファージにより貪食・消化され, 皮表への排除は起こらなかった.
    以上より, Candida albicans の皮内感染に際しては, PMNによる反復性の貪食による殺菌作用と, 菌要素を含む膿瘍全体を皮表へ排除する transepithelial elimination が, 皮膚の感染防御反応として重要な役割を演じていると考えられる.
  • 崔 進
    1985 年 26 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Opportunistic fungal infection に関する研究の一環として Fusarium による肺病変を検討するため, 以下の実験を行なった. ウサギを対照群, 感作群及び抗癌剤投与群に分け, F.oxysporum の小分生子を経気道的に接種して, 病理組織学的に検索した. その結果, 対照群では, 接種後主として多形核白血球 (PMN) が応答し, 続いてマクロファージ (Mφ) が集簇して, 徐々に肉芽腫性病巣を形成した. その後, 次第に小病巣を残して治癒に向かった. 感作群では, 初期からPMNとMφが応答し, やがて, Mφが主体となり, より早く菌を排除して治癒したが, その反応は対照群に比して激しかった. 抗癌剤投与群では, 早期から菌糸の発育が著しく, それに対して, PMN及びMφの浸潤が少なく, 且つ貪食能と殺菌能の著しい低下を示し, 一部の動物が感染死に至った. Fusarium に対する血清抗体価をみると, 対照群と抗癌剤投与群では, 生菌接種後, 抗体の上昇は認められなかったが, 感作群では生菌接種後, 血清抗体価は一時的に急激に下がり, やがて再び上昇して, 接種時に近い抗体価を示した. 剖検時肺の培養では, 抗癌剤投与群が他の2群より陽性率が高かった. 以上の結果は, 実験的肺アルペルギルス症に比して, 病変はやや軽度であったが, その性状はほぼ同様であり, 特に組織内菌形態が Aspergillus spp. のそれによく類似しており, 鑑別は酵素抗体法によってなされた.
  • スクワレンエポキシダーゼ活性の阻害作用
    森田 達也, 野沢 義則
    1985 年 26 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    チオカルバミン酸系抗真菌剤であるナフチオメートTのステロース代謝におよぼす影響を Candida albicans の全細胞および無細胞抽出系において検討した. ナフチオメートT処理により全細胞で認められたスクワレンの代謝阻害は無細胞抽出系においても認められ, この阻害作用はスクワレンからスクワレンエポキシドへの生成経路, すなわち, スクワレンエポキシダーゼ阻害によることが明らかにされた.
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