著者らは意識・呼吸障害を呈した重症クリプトコックス髄膜炎の2症例に対し, 側脳室前角にOm-maya reservoirを留置して, 長期間にわたりamphotericin Bの脳室内投与を行い良好な結果を得たので報告する.1例は意識障害, 左動眼神経麻痺で入院し, amphotericin Bの静脈内および脳室内投与, flucytosineの内服で, 一旦は菌の消失を認めたが, flucytosine内服のみで経過観察中に再燃し, am-photericin Bの脳室内投与の再開により完治した.約5ヵ月間に計62回, 総量32.75mgのamphotericin Bの脳室内投与を行った.他の1例は肺癌の術後, 抗癌剤投与中に発症し, 意識・呼吸障害で入院.miconazoleの静脈内および髄腔内投与, flucytosine内服により一旦, 菌消失を認めたが, すぐに再燃しamphotericin Bの脳室内投与開始後, 速やかに菌の消失を認めた.しかし, 肝障害と消化管出血を併発し死亡した.1例目の経過中にamphotericin Bの血中, 髄液中濃度測定を行い, 少量脳室内投与の有効性を確認した.Flucytosine, miconazoleは副作用が少なく長期連用に適しているが, 抗菌力が劣り, 耐性もおこり易い.従って, 重症クリプトコックス髄膜炎に対しては, 早期から積極的にOmmaya reser-voirを留置し, amphotericin Bの脳室内投与を考慮すべきである.
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