真菌と真菌症
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28 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 前田 学
    1987 年 28 巻 3 号 p. 279-284
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    40歳, 男性.畜産業 (肉牛飼育) 従事.岐阜県吉城郡古川町在住.昭和58年5月中旬より, 右手背に紅斑出現し, 同時に右季肋下部にも同様の紅斑が出現したため, 同年5月31日に当科を受診.右手背の中央部と右季肋下部とに拇指頭大の扁平降起した浸軟化局面がみられ, 丘疹と膿疱を伴い, 強い発赤が認められた.この皮疹の鱗屑にはKOH標本で菌要素がみられ, 培養にてTrichophyton verrucosumを得た.患者の家の飼育牛170頭中, 20頭余に疣状皮疹がみられ, この皮疹からもT. verrucosumを検出.
    家族歴で昭和50年, 妻と次女に同様な皮疹の出現がある.
    自験例は東海地方での第1例目と考えられた.
  • 池田 輝雄, 田渕 清
    1987 年 28 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    ナナオマイシンAを用いた各種病原体に対する薬剤感受性試験および油性製剤による牛皮膚糸状菌症の治療試験を実施した.
    薬剤感受性試験において, ナナオマイシンAは, Trichophyton verrucosumを含む皮膚糸状菌に対して, 他の抗真菌剤と比較した場合優れた抗菌活性を示した.又, 酵母様真菌, グラム陽性菌およびマイコプラズマに対しても有効であった.
    治療試験では, 試験に供した牛皮膚糸状菌症8例のうち5例は, 1回塗布にて1週または3週後に治癒した.残る1例は1回塗布では症状の変化が認められなかったが, 1週間後の再塗布により治療開始3週間後に治癒した.
    以上の結果よりナナオマイシンAの牛皮膚糸状菌症の治療薬としての有用性を認めた.
  • 森 健, 松村 万喜子, 渡部 晶子
    1987 年 28 巻 3 号 p. 291-295
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギローマ患者から剖検時に得られた菌球, 生存例で治療中に喀出された菌塊ならびに血清診断用Aspergillus fumigatus粗抗原 (振盪培養濾液抽出物) について, 各々赤外線吸収スペクトルによる分析, さらに蛋白質, シアル酸, ヘキソサミン, フコースについて定量を行った.その結果, 菌球・菌塊の赤外線吸収スペクトルは, 各症例による差はなく, 非常によく一致したパターンを示し, 主に蛋白質と多糖体より成る混合物であることが判明した.一方, 血清診断用粗抗原では, 菌球・菌塊にはみられないバンドが一部にみられたが, 基本的には類似したパターンを示し, これもまた蛋白質および多糖体を主成分とする混合物であった.
    定量の結果は, ヘキソサミンとフコースの含有比は, いずれにおいても大体一定した値 (菌球・菌塊では100 : 19.7, 粗抗原では100 : 20.13) を示した.
  • -フリーズ・フラクチャー電顕法による観察-
    前田 学, 北島 康雄, 鹿野 由紀子, 森 俊二
    1987 年 28 巻 3 号 p. 296-301
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    Sporothrix schenckiiの培養7日目の酵母相を用いて, 39℃, 40℃および42℃の各3時間と42℃, 24時間の温度刺激を与え, その際生じる細胞膜の変化をフリーズ・フラクチャー電顕法を用いて観察した.その結果, 細胞膜上の多数のinvaginationは溝が浅くなって, その形が不明瞭となり, さらに変性が進むとこれらのinvaginationは完全に消失した.また膜内蛋白粒子が所々に集合した像がみられた.これらの変化はagingの際に認められる細胞膜構造と極めて類似していた.
  • 本間 喜蔵, 西本 勝太郎, 今福 武
    1987 年 28 巻 3 号 p. 302-305
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    48歳女性のTrichophyton rubrumによる両前腕の体部白癬を報告した.本人の他部位および家族には同症はなかったが, 飼犬にT. rubrumによる白癬があり, これが感染源となったと推定した.T. rubrumnによる白癬の犬から人が感染した症例はわれわれの調査したかぎりでは報告がない.人獣共通感染の観点から白癬について若干の考察を加えた.
  • 陳 豪勇, 金田 暁, 三上 襄, 新井 正, 五十嵐 一衛
    1987 年 28 巻 3 号 p. 306-315
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    マウスのカンジダ菌血症モデルで, 6種類の免疫賦活化剤 (Biological response modifer : BRM) の感染防御効果を比較検討し, 宿主防御機構増強による深在性真菌症の予防と治療の可能性を考察した.その結果, 使用したOK-432, LPS, リピドA, レンチナン, レバミゾール, インドメタシンの6種類すべてについてカンジダ感染に対する予防効果が観察されたが, 特にレンチナン, レバミゾールでは強い効果が認められた.また, OK-432, レンチナン, レバミゾールについては治療効果も観察され, これらBRMの真菌感染に対する免疫療法への応用の可能性が示唆された.また生存曲線の比較から, 感染初期のみ有効なリピドA, 比較的感染後期に効果が著明になるレンチナンおよびレバミゾールの2群に分けられた.感染後期に有効なレンチナン, レバミゾールは, 細胞性免疫成立後のマクロファージの殺菌作用に対して強力な増強作用を示すのではないかと考えられ, この2剤についてマクロファージのカンジダ増殖抑制作用を測定したところ有意に活性が上昇していた.これらBRM, 特にレンチナン, レバミゾールでは広範にわたる免疫賦活作用を持つことより, 実際の抗カンジダ効果にはそれぞれのBRMに特有なファクターが関与している可能性が示唆された.
  • 河野 兼久, 榊 三郎, 重沢 俊郎, 中村 寿, 松岡 健三, 香川 泰生
    1987 年 28 巻 3 号 p. 316-323
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    著者らは意識・呼吸障害を呈した重症クリプトコックス髄膜炎の2症例に対し, 側脳室前角にOm-maya reservoirを留置して, 長期間にわたりamphotericin Bの脳室内投与を行い良好な結果を得たので報告する.1例は意識障害, 左動眼神経麻痺で入院し, amphotericin Bの静脈内および脳室内投与, flucytosineの内服で, 一旦は菌の消失を認めたが, flucytosine内服のみで経過観察中に再燃し, am-photericin Bの脳室内投与の再開により完治した.約5ヵ月間に計62回, 総量32.75mgのamphotericin Bの脳室内投与を行った.他の1例は肺癌の術後, 抗癌剤投与中に発症し, 意識・呼吸障害で入院.miconazoleの静脈内および髄腔内投与, flucytosine内服により一旦, 菌消失を認めたが, すぐに再燃しamphotericin Bの脳室内投与開始後, 速やかに菌の消失を認めた.しかし, 肝障害と消化管出血を併発し死亡した.1例目の経過中にamphotericin Bの血中, 髄液中濃度測定を行い, 少量脳室内投与の有効性を確認した.Flucytosine, miconazoleは副作用が少なく長期連用に適しているが, 抗菌力が劣り, 耐性もおこり易い.従って, 重症クリプトコックス髄膜炎に対しては, 早期から積極的にOmmaya reser-voirを留置し, amphotericin Bの脳室内投与を考慮すべきである.
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