真菌と真菌症
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29 巻, 2 号
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  • 司会のことば
    猪狩 淳
    1988 年 29 巻 2 号 p. 81-82
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 小栗 豊子
    1988 年 29 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    1987年6~7月に国内の臨床検査室を対象に真菌検査の現状についてアンケート調査を実施した. 回答を得た182施設の構成は大学病院40%,綜合病院37%,検査センター4%, その他小医療施設14%である.
    真菌の分離培養検査は外注を含めると殆ど全ての施設で実施されていた. しかし, 培養温度, 観察日数は施設により異っており, 35~37℃で培養するという施設が28%に, まだ分離培地の観察を2日以内で打切る施設が13%認められた. 真菌の同定検査は酵母様真菌に限り行い, カビ類については行わない施設が25% (169施設中) に認められた. 皮膚糸状菌の検査は43%の施設は検査室では実施せず, 皮膚科で検査していた. この傾向は大学病院が最も強かった. 主要な病原真菌につき同定可能か否かを問うたところ, Candida類は殆どの施設が可能であったが, Trichosporonでは19%, Geotrichumは36%, A. fumigatus27%, Penicillium24%が不可能と答えた. 更に, 皮膚糸状菌, Sporothrix, Fonsecaeaでは38~67%が不可能と答えた. 臨床材料からの真菌の検出率は5~15%の施設が多く, 菌種はC. albicans, C. glabrata, C. tropicalisが上位を占め, カビ類は4.3%であった. 真菌の薬剤感受性検査の依頼は大学病院, 検査センターで特に多く, 将来, 測定を実施したいとの意向が強かった. 真菌検査の講習会の内容を問うたものでは同定検査を希望するものが最も多かった.
    今回の調査から我が国における真菌検査の現状は必ずしも満足できる状況ではなかった. 現行法の改善など, 正しい検査技術の普及, 検査技師のトレーニングの必要性が痛感された.
  • 阿部 美知子
    1988 年 29 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    真菌検査法のうち,直接鏡検標本の作製および鏡検ならびに分離培養時の留意点について列記し, 併せて酵母様真菌同定用キットの検討成績について記述した.
    検査にあたっては検体採取および保存法にも留意し, 検体は病巣中心部のみでなく健常部分を含む病巣移行部分を採取した方が良く, 出来るだけ早く検査する. 止むを得ず保存する場合は適切な方法で保存する.
    内臓真菌症においては検出される菌量が少いことが多いので遠心するなど集菌を心がける. 直接鏡検は病因的考察に際して, また迅速診断法としても意義の高いものである. 鏡検時に直接標本中に認められる形態は分生子または菌糸性菌要素が殆どで培養後に観察される形態とは異なることを念頭において鏡検する. 観察は丁寧に行い, 何よりも真菌要素を見つけ出そうという意欲をもって検査にあたることが肝要である. その為には日頃から臨床と連繋し, 出来るだけ多くの患者に関する情報を入手できるようにしておく.
    分離培養用培地としてはサブロー寒天培地が繁用されるが本培地上で酵母様真菌は種属による集落の特徴に乏しい. 集落による種属の鑑別が可能とされる分離用培地の併用は有用と思われる.
    酵母様真菌同定用キットはそれぞれに特徴があり, それらを熟知して使用すべきと思われた.
  • 山根 誠久
    1988 年 29 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    近年,臨床微生物検査の領域にも各種の自動検査機器が汎用されるようになってきた. これらの自動機器がもついくつかの検査機能の内,真菌検査に関する部分は, (1) 細菌尿スクリーニングの一部として酵母を定量培養する. (2) 生化学性状検査から菌種同定を行う, という2つである. 細菌尿スクリーニングの自動化が意図するところは, 専ら省力化にあり, 終末点 (end point) 法を測定原理とする機器, 濁度による発育曲線の解析から菌濃度を測定する機器, 菌体構成成分を定量する機器など, 各種の方法が応用されている. 生化学性状検査から菌種を同定する方法は, いずれの機器も簡易同定キットで採用されている複数項目での結果を組み合わせた数値同定の原理に基づいている. いずれの自動機器も酵母のみの同定にとどまり, 従来法との一致率は80~90%以上の精度を示す. 数値同定を採用している検査法では, 最終結果として得られる菌種レベルでの同定再現性に重きを置いている点に注意が必要で, 得られた性状数値コードをそのまま生物型 (biotype) として用いることはできない. 今後, 各種の抗真菌剤が開発されてくるに従い, 一般細菌と同様, これらの自動機器にも薬剤感受性試験の性能が加わっていく必要があろう.
  • 菅野 治重
    1988 年 29 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    1987年1月より12月までの1年間に千葉大学附属病院検査部で, 純培養または優勢に各種臨床材料より分離された酵母様真菌につき同定と感受性検査を行ない, さらに酵母様真菌が分離された患者の背景につき検討した. 外来患者からは帯下, 尿よりCandida albicans, Candida glabrataが主に分離された. 入院患者からは尿, 喀痰, 糞便, 帯下, 血液の順で分離株数が多く, 菌種では喀痰では圧倒的にC. albicansが分離され, 尿, 糞便, 帯下ではC. albicansC. glabrataの分離が多く, さらに尿ではTrichosporon beigeliiの分離も多かった. 血液では他の検体で分離が少なかったCandida parapsilosis, Candida guilliermondiiが高率に分離された.
    患者背景では, 外来患者では尿分離例では尿路系に基礎疾患を持つ例が多く, 帯下では腟炎例が多かった. 入院患者では手術例や白血病等の重篤な基礎疾患を持つ例や,広域抗菌剤の投与を受けている例が多かった.
    尿では尿中真菌数と尿中エステラービ活性の相関を調べたが, 104cfu/ml以上の菌数検出例でも尿中エステラーゼ陰性例が約2/3を占めた. 菌種ではC. albicansは他の菌種より尿中エステラーゼ陽性例が多かった.
    感受性ではflucytosineにT. beigelii C. albicansに耐性株が少数検出された. T.beigeliiはamphotericin Bに対しても他の菌種より高いMICを示したが, miconazoleには逆に他の菌種より低いMICを示した.
  • 安達 桂子
    1988 年 29 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    老年者を対象とする当センターにおける真菌血症の近年の動向について検討した. 1972年6月から1987年3月までの15年間に, 菌血症は1,239例, 分離株数は1,459株であった. 検出頻度の高い菌種はS. aureus, K. pneumoniae, P. aeruginosa, Enterococcus, 真菌の順で, 真菌血症は全菌血症の5.8%を占めていた. 真菌血症の割合は年々増加傾向を示しており, 1972~1974年1.5%, 1975~1977年3.6%, 1978~1980年4.0%, 1981~1983年6.2%, 1984~1986年7.4%であった. また, 分離される菌種は年々多様化しており, C. albicansは1983年以前では36.2%を占めていたが, 1984~1986年には17.9%に減少し, C. tropicalisC. glabrataが上位を占めていた. 近年の真菌血症の増加の要因の一つとして, 血管内留置カテーテル感染が指摘されており, IVカテーテル先端の培養と血液培養を同時に施行し, 分離菌が一致した症例59例についてみると, Candida属は26.7%を占め, C. albicans5株, C. glabrata4株, C. tropicalis3株, その他4株であった. 一方, 重篤な基礎疾患を背景として深在性真菌症に陥いった症例も散見された. 真菌血症は漸増傾向にあり, compromised hostの増加, 血管内留置カテーテルの普及, 一般細菌用抗生剤の進歩などが関与していると思われる.
  • 高橋 久, 近兼 健一朗, 奥田 賢, 波多野 真理, 星野 学, 金子 修, 河 陽子
    1988 年 29 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    われわれはモルモット表皮抽出物に殺Candida作用があることを発見した. 粗抽出物の殺Candida作用に関して濃度, 殺菌時間, 加熱およびpHの影響について検討した. また, 殺菌されたCandidaの細胞変化を電子顕微鏡により観察した. その結果この粗抽出物の殺菌活性は蛋白濃度20μg/mlでC. albicansを15分で94%,30分以後は100%殺菌し, 90℃, 10分間の加熱によって殺菌効力は70%に低下した. 濃度別1時間後の殺菌率は10μg/ml以上では100%, 5μg/mlでは87%に及んだ. また本物質はクエン酸緩衝液を用いた場合にはpH4.5以下において活性を有することを確認した. 電子顕微鏡的所見では本物質はelectron denseであって標的Candidaの周囲を取り囲む像が観察された.
    本抽出物をSephadex G 50カラムを使用して分画を行ったところ分子量約20,000と10,000以下の2ヵ所に殺Candida作用のピークを認めた.
  • Takeshi Mori, Tomoo Kohara, Makiko Matsumura, Takao Hirano, Yoshihisa ...
    1988 年 29 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    This report describes a patient with acute leukemia complicated with polymycotic septicemia caused by Candida albicans, C. krusei and Trichosporon beigelii (cutaneum). Oral flucytosine and intravenous miconazole were administered, but the patient died on the 59th hospital day. At autopsy, T. beigelii and C. albicans were isolated from the liver, and T. beigelii was isolated from the lung by cultural examination and pathological investigation by the peroxidase/anti-peroxidase solution method.
    The patient was intubated with an intravenous catheter for hyperalimentation for a long time. The indwelling intravenous catheter appeared to be the major factor leading to the fungemia.
    T. beigelii (cutaneum), a so-called “nonpathogenic yeast, ” must be considered a potential cause of fungemia.
  • 吉岡 史郎, 森田 達也, 水上 勇三, 野沢 義則
    1988 年 29 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    アムホテリシンB封入リポソームの調製と実験的カンジダ症への応用を検討した.
    リポソームは蛍光物質であるカルセインの保持能から血漿中において比較的安定であり, アムホテリシンBをリポソームに封入することにより赤血球溶血作用を減弱した.〔14C〕トリパルミチン標識したリポソームにおいて主な分布臓器は肝臓, 腎臓, 肺臓, 脾臓である. リポソーム封入化によりアムホテリシンBの急性毒性は著しく低下した. そのため高濃度アムホテリシンB投与が可能となりカンジダ感染マウスの延命効果が増大した. アムホテリシンB封入リポソームは, 血中で安定であり, 性が低く, 調製が容易であるため実験的カンジダ症における治療効果とも合せ勘案して内臓カンジダ症の治療に有効であろうことが示唆された.
  • 加藤 卓朗
    1988 年 29 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Malassezia (Pityrosporum) によって生じるとされる Malassezia (Pityrosporum) folliculitis (MF) を菌学的, 病理組織学的に癜風と比較して検討した. 菌学的には, MFの毛包内容の Pityrosporum 陽性率は, 直接鏡検および培養ともに尋常性座瘡, ステロイド座瘡に比べて有意に高かった. 非病変部の培養陽性率は癜風患者の非病変部よりも高く, また尋常性座瘡, ステロイド座瘡患者の非病変部より有意に高かった. 病理組織学的には, MFでは毛包開口部の狭窄に伴う毛漏斗拡大, 毛包壁の肥厚と破壊, 周囲の炎症性細胞浸潤とともに毛漏斗内に orbiculare 型胞子の集団をみたが, 菌糸はみられなかった. 一方, 癜風の毛包内菌要素をみると, 菌糸は開口部から acroinfundibulum にあり, 胞子はすべて orbiculare 型で, infrainfundibulum の毛の周囲にも少数みられた. また胞子が毛に沿って infrainfundibulum から開口部まで連続し, そこで菌糸を生じている例もあった. 以上よりMFの発症に関しては, 菌学的には癜風におけると同様に非病変部は, 発症の準備状態にあり, これを基盤として発症していること, 病理組織学的には癜風では毛包内で増殖した P. orbiculare が開口部で菌糸を形成して皮表に病巣が拡大していくのに対し, MFでは開口部の狭窄と毛漏斗の拡大により毛漏斗内のみで P. orbiculare が増殖して炎症反応を起こし, 毛包炎を形成するものであると推論した.
  • 岩津 都希雄, 宇田川 俊一
    1988 年 29 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 1988/10/01
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    An isolate of dematiaceous hyphomycete recovered from sea-water in Tsushima, Nagasaki, Japan was studied morphologically and physiologically. The colonies of the isolate (NHL 2975) were initially moist, greenish black, gradually becoming floccose, grayish olive, and attained 60mm in diameter after 60 days of growth at 27°C on Sabouraud's dextrose agar. Microscopically, round or scale-like bud scars were observed on the surface of thick projections (rachises) on hyphae. These bud scars were usually arranged on rachises in a sympodial manner, but sometimes overlapped each other to look like annellations. Conidia were one- or two-celled, ellipsoidal, short cylindrical or guitar-shaped, and often functioned as conidiogenous cells to produce secondary conidia in a sympodial or annellidic fashion. The isolate grew well on a medium containing 25% NaCl and hydrolyzed skim milk. At 37°C, growth of the isolate was restricted. These morphological and physiological characteristics permitted identification of the isolate as Hortaea werneckii (Horta) Nishimura et Miyaji.
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