老年者を対象とする当センターにおける真菌血症の近年の動向について検討した. 1972年6月から1987年3月までの15年間に, 菌血症は1,239例, 分離株数は1,459株であった. 検出頻度の高い菌種は
S. aureus, K. pneumoniae, P. aeruginosa, Enterococcus, 真菌の順で, 真菌血症は全菌血症の5.8%を占めていた. 真菌血症の割合は年々増加傾向を示しており, 1972~1974年1.5%, 1975~1977年3.6%, 1978~1980年4.0%, 1981~1983年6.2%, 1984~1986年7.4%であった. また, 分離される菌種は年々多様化しており,
C. albicansは1983年以前では36.2%を占めていたが, 1984~1986年には17.9%に減少し,
C. tropicalisと
C. glabrataが上位を占めていた. 近年の真菌血症の増加の要因の一つとして, 血管内留置カテーテル感染が指摘されており,
IVカテーテル先端の培養と血液培養を同時に施行し, 分離菌が一致した症例59例についてみると,
Candida属は26.7%を占め,
C. albicans5株,
C. glabrata4株,
C. tropicalis3株, その他4株であった. 一方, 重篤な基礎疾患を背景として深在性真菌症に陥いった症例も散見された. 真菌血症は漸増傾向にあり, compromised hostの増加, 血管内留置カテーテルの普及, 一般細菌用抗生剤の進歩などが関与していると思われる.
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