都市計画論文集
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45.3 巻
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  • 英国DASと3市の景観地区制度の運用実態より
    小浦 久子
    2010 年 45.3 巻 p. 301-306
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    英国の計画許可申請においてデザインの正当性を説明する文書であるDASおよび、京都・鎌倉・芦屋における景観地区の運用実態の調査にもとづき、定性基準を合理的に運用するための制度的工夫と定性基準による協議許可型の制度運用の可能性について考察した。定性基準は場所ごとに適正な解釈が求められるところに特徴があり、事前明示性と場所ごとの判断をどのように調整するかが基準の適用において難しい。3市では事前相談・協議が行われている。これらの事例分析により、適切な事前協議は計画調整に重要な役割を果たすこと、事前相談や協議において共有化される基準の解釈を計画の認定において参照基準として制度的に位置づけていくことの工夫が、今後の協議許可型運用を進めていくうえで課題となることが指摘できる。
  • 中心市街地商店街をモデル地区として
    藤澤 徹, 秀島 栄三
    2010 年 45.3 巻 p. 307-312
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    まちづくりにおける利害調整や合意形成のプロセスを理解・記述し、円滑化させる方策を導くために数多くの研究アプローチが採用されている。しかしコミュニティの計画策定プロセスには多様な主体、経年的な相互関係の積み上げがあることにより、捨象した記述や数理的な解析を行うことが難しい場面もある。そこで本研究ではある商店街地区のアーケード改修工事に係る計画策定プロセスを対象として関係主体間のコミュニケーションに着目して参与観察を行った。その記録結果をもとに計画策定プロセスをフェーズに区分するとともに、フェーズと、フェーズが変化するパートに焦点を当て、効率的に短縮化されたプロセス、不適切なプロセス等を構造的に記述するとともに、プロセス的な合理化の可能性について考察を加えた。
  • 名古屋市名東区「めいとうまちづくりフォーラム」を事例に
    吉村 輝彦
    2010 年 45.3 巻 p. 313-318
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年のまちづくりの動きは、行政を中心とした「統治(ガバメント)」から多様な主体の多元的で重層的な連携によって成立する「共治(ガバナンス)」へ展開してきている。これを実際に進めていく上では、人々の多様な関心や想いを紡ぐ対話や交流が不可欠となるが、より具体的には、そのための「場」(及び「場づくり」)のあり方が問われてくる。そこで、本研究は、協働型まちづくりの展開における相互作用と関係変容を促す対話と交流の場のあり方を論じ、さらに、名古屋市名東区の「めいとうまちづくりフォーラム」を事例に、場づくりの可能性や課題、そして、場づくり支援に向けた示唆を得た。実際に、めいとうまちづくりフォーラムという「わいわいがやがや会議」の場では、様々な出会いや新しいつながりが生まれ、話し合いを通じていくつかの「わくわくどきどきな活動(アクション)」が提案された。創発的な状況を作りながら、柔らかいマネジメントを行うことで、参加者の多様な関心に基づく多彩な活動が生み出されていく可能性を示している。
  • 丸の内地区における都市開発プロジェクトを事例に
    岡田 忠夫, 有田 智一, 大村 謙二郎
    2010 年 45.3 巻 p. 319-324
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、大手町・丸の内・有楽町地区における新丸ノ内ビルディングの開発事例を対象として、公民間の協議における議論の分析を通じて、新たな公共貢献のあり方について検討することを目的とする。本研究で明らかになったことは、以下の点である。第一に、正規の都市計画手続き前の公民間の協議において、建物形態・導入用途機能・容積ボーナスなどの事業計画が確定しており、この段階の協議の重要性が明らかになった。第二に、事業者側からの、敷地外公共施設整備への貢献や、環境まちづくり支援機能や新規創業支援機能の導入など、多様な公共に貢献する内容が提案されている。第三に、こうした事業者からの提案の多様化に対応するために、行政においても容積率ボーナス対象とする範囲の多様化やプロジェクト評価方法の柔軟化が図られている。
  • 京都府亀岡市におけるセーフコミュニティ活動の事例分析
    村中 亮夫, 谷端 郷, 中谷 友樹, 花岡 和聖, 白石 陽子
    2010 年 45.3 巻 p. 325-330
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、京都府亀岡市における住民参加型の安全安心マップ作成のワークショップを事例に、ワークショップへの参加行動の背景を検討することを目的とする。本研究では、(1)地域住民があらかじめイベント情報を認知していたか否か、(2)イベント情報を認知していた住民がワークショップへ参加したか否か、に関する2つのロジスティック回帰分析を行った。分析の結果、ワークショップ実施に関する情報は全自治会加入世帯に提供されているが、近隣住民との日常的な社会関係が欠如している住民は、ワークショップ実施に関する情報を認知していない傾向が見られた。また、ワークショップ実施の情報を認知している住民は、近隣住民との日常的な接触と同時に自然災害に対するリスク認知によって、ワークショップ参加を促されていることが示唆された。本研究の結果からは、地域社会の安全を向上させる住民参加型のワークショップを計画する際には、地域住民の社会関係や地域住民の持つリスク認知を考慮すべきであると考えられる。
  • 樋野 公宏, 吉村 輝彦
    2010 年 45.3 巻 p. 331-336
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    国土交通省・警察庁による「住まいと街の安全・安心再生プロジェクト」では、防犯まちづくりを関係機関の連携に基づく計画的なものとするため、全国13のモデル地区で「住まいと街の安全・安心再生計画」を策定した。こうした地区レベルでの防犯まちづくりに関する計画づくりの意義は、(1)関係主体の連携・協力、(2)防犯活動の継続・発展にあるという仮説に基づき、上記モデル地区等にアンケート調査とヒアリング調査を行った。調査の結果、計画策定によって(1)および(2)の効果が見られ、計画策定の意義を見出せた。しかし、行政や専門家の関与なしに住民自らが策定・実施することは難しく、普及のためには、上記の意義をできるだけ損なわず、住民が自立して策定・実施可能な計画策定のあり方を探る必要が示唆された。そこで、既存の活動や地区の課題の情報、それに緩やかな将来目標と、これらに基づき適宜企画・合意形成される新規の活動を集めた計画が定期的に更新されるプロセスを提案した。
  • 吉武 哲信, 吉本 幸太, 出口 近士
    2010 年 45.3 巻 p. 337-342
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、民間が設置するモニュメント等に対する行政の指導・助言に関し、全国の景観行政団体にアンケートを実施し、デザイン等の改善プロセスを含む許可システムの実態を明らかにし、そのあり方に知見を得ようとしたものである。アンケートは平成21年10月時点での景観行政団体376自治体に配布し、298自治体から回収された。この結果、民間主体のモニュメント設置に関して景観関連条例に基づく許可事例があったのはわずか4自治体であること、一法で、条例に基づかない指導・助言を実施している自治体も存在することが明らかになった。また、許可発行しているものの助言・指導が行なわれないケースも多いこと、助言指導が行なわれる場合、外部専門家の参画がある自治体は必ずしも多くないことなどが明らかになった。
  • 鹿児島県下の自治体における景観計画策定プロセス
    木方 十根, 吉田 浩司
    2010 年 45.3 巻 p. 343-348
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでの景観計画の運用に関する研究では、自主条例からの移行に注目した研究が多く、景観法制定をきっかけとした景観計画策定の実態に注目したものは少ない。しかし今日、景観法制定を契機として景観施策を展開した事例も出現しており、景観施策の展開プロセスに関する事例検証の蓄積が必要である。本研究では鹿児島県内での景観施策の展開状況を概観したうえで、特に鹿児島市と薩摩川内市の施策展開について詳しく検証した。本研究では、主に薩摩川内市での取り組みの検証に基づき、景観法に基づく提案制度を支える地域振興施策の基盤の存在、住民主体での運用手法や他の施策・制度との補完関係、制度活用の工夫が、景観施策の地域振興施策への展開を生み出す要因であるとの知見を得た。
  • 彦根市における異なる2テーマによる景観創出事例を対象として
    高田 誠 マルセール, 城所 哲夫, 大西 隆
    2010 年 45.3 巻 p. 349-354
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、歴史的背景の異なる2つの景観創出事例を対象に調査を行い、以下の結論を導き出した。(1)歴史的連続性ならびに空間の質が与える影響の分析 まちづくりテーマの歴史的連続性が住民の景観評価に与える影響として〈彦根らしさ〉と〈歴史資源〉が挙げられた。その理由として、〈生活・生業〉〈コミュニティ〉〈観光資源〉に対してはテーマと居住地属性による評価に差は生じないことが明らかになった。(2)地域住民による継続的発展にむけた展開の可能性の検討 「江戸風町並み」においては彦根の伝統文化を取り入れた展開、4番町においてはより大正時代の雰囲気づくり、大正文化を核とした地域づくりを展開する必要がある結果となった。具体的にはテーマの歴史的連続性が与える影響が少ない〈生活・生業〉や〈コミュニティ〉空間としての特性を伸ばす取組みを実施することで、夢京橋とは異なる特色を持った空間へと発展していくことが望ましい。特に大正風町並みにおいては、生活やコミュニティの場として地域空間を発展させるなかで、空間の質を高めていく空間意匠の創出を行うことで、〈歴史資源〉や〈彦根らしさ〉の評価を獲得していくことが望ましい。
  • 考古学的・芸術的目録を対象として
    江口 久美
    2010 年 45.3 巻 p. 355-360
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、古きパリ委員会(CVP)による考古学的・芸術的目録(CAA)が、20世紀初頭の歴史的記念物保全に如何に都市的視点を与えたかを明らかにすることを目的とする。CVPは1897年にセーヌ県に設立され、専門家や有識者により構成された「ピクチャレスクな特徴を示す市の一部(古きパリ)」の記録・保全、歴史的記念物審議会の活動補完を目的とした組織である。結果として、CVPは、歴史的記念物指定制度による単体の建物の価値評価のみが行われていた20世紀初頭に都市的視点を提示した。歴史的記念物に関する1913年法は公的価値を有する建物の単体指定・保全制度であった。1916年設置のCAAは都市のピクチャレスクな景観の点的及び面的な要素の記録・保全を目指し、これを踏まえて、1927年、歴史的記念物保全制度に歴史的記念物補助目録(ISMH)登録制度が設置され、都市的視点からの建物評価・保全の為の仕組みが準備されたが、面的保全には十分に活用されなかった。都市的視点導入の流れは、パリ市記念物的パースペクティブ委員会(1929年)、1930年法の「景観地」の解釈拡大、1943年の500m規制として継承された。
  • 専門職員が継続的に建物調査・設計から施工まで一貫して支援する三重県亀山市の場合
    飛田 裕彰, 嶋村 明彦, 浦山 益郎
    2010 年 45.3 巻 p. 361-366
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    重伝建地区では、伝統的建造物が群としてもつ歴史的町並み景観を保存するために、建造物の現状変更は許可制とされ、伝統的建造物の「修理」、それら以外の一般的建造物の「修景」が求められる。修理修景事業によって、歴史的町並み景観の維持・回復が進んでいるが、重伝建地区の制度は建築物単体の「修理」「修景」には有効であっても、駐車スペースの確保や家族構成の変化に伴う新築や改築に対して、壁面線や高さなどの保全基準を適用することが難しいという問題がある。この問題に対応するためには、「修理」「修復」だけでなく、非伝建についても補助基準を適用した「修景」を進める、あるいは現状変更が行われた建築物に追加的に「修理」「修景」を行うことによって歴史的町並み景観に適合させる必要がある。本稿で取り上げる三重県亀山市の関宿重伝建地区では、旧東海道に面する建造物の現状変更を行う場合、行政の担当者が建物調査、修理修景案の設計から修理工事の指導まで一貫して支援している。さらに、現状変更後も継続的に関与して、町並み景観に馴染むように改善している。本研究の目的は、この取り組みの有効性およびその成立要件を考察することである。
  • 青木 慎也, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2010 年 45.3 巻 p. 367-372
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、歴史まちづくり法が施行されるなど、歴史的な都市が注目を浴びている。歴史的な都市の面的保存については、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)制度が確立され、重伝建地区は今後の更なる都市の魅力向上の大きな鍵を握っている。しかし重伝建地区などでは、歴史的な建築物のみが文化財として集中的に関心を呼ぶ傾向が強く、建築物を支えている道路網構成については、歴みち事業が実施される地区を除いてはあまり積極的に議論なされてこなかった。さらに全国で都市計画道路の見直しが積極的に行われており、歴史的な地区において過去に決定された都市計画道路を積極的に今一度考えることができる時期にある。そこで本研究では、重伝建地区内に都市計画道路はどのように配置されているかその実態を明らかにし、広域的な見地から都市計画決定された道路(幹線都市計画道路)の都市計画決定ならびに変更と重伝建地区指定との関係はどのようになっているかについて具体的な把握を行い、自治体関係者へのアンケートを通じて、現在の重伝建地区を取り巻く交通問題を整理し、重伝建地区における今後の都市交通施設整備について考察を加えることを目的とする。
  • 白木 里恵子, 久保 勝裕
    2010 年 45.3 巻 p. 373-378
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論では、地域の歴史的資源を「転用を起点としたまちづくりへの波及」という概念において、地域の歴史を物語る建物の活用実態を明らかにすることで今後の地域再生の起点となる建物を見いだし、まちづくりの波及をに向けた考察を行った。その結果、30年間の現存率は57.7%であった。現存建築物の現在の所有者は約4割が「官」であり、特に指定等のある公共建築物の現存率は著しく高かった。「民」が所有している現存建築物の1/4は「住宅」として継続利用されていた。また、自治体内では<中心市街地>の現存率が低く、特に「民」所有の商業・業務施設の滅失が多かった。これらの滅失要因として、再開発などの経済活動の中で建築物の更新が進んでいることが明らかになった。以上を踏まえると、今後まちづくりの波及に結びつける為には、1)転用主体の多様化、2)活用方法の多様化、3)これらを支える行政の役割が重要である。
  • 持永 愛美, 奥田 紫乃
    2010 年 45.3 巻 p. 379-384
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本を代表する歴史的・文化的都市である京都では、伝統的な町家によって街並みが形成されてきた。現在では街並みを保全するために町家を継承する動きがあり、町家を商業施設にリノベーションする事例が見られ、その中のひとつに町家カフェが挙げられる。カフェは飲食だけでなく、休息やコミュニケーションの場など様々な目的で利用され、カフェの外観デザインには、多様な目的を持つ利用者に対する誘引性が求められると考えられる。しかし、歴史的・文化的都市である京都では、誘引のみを目的としたデザインの店舗が増えると、街並みの秩序が乱れ、景観が損なわれる可能性がある。そこで本研究では、京都の街並み景観にふさわしい町家カフェのファサードデザインを明らかにすることを最終目標とし、町家カフェのファサード構成要素に加え、夜間における内部からの漏れ光がファサードの評価に与える影響を検討することにより、個々の店舗が立地条件や営業時間帯などに応じてファサードデザインを決定するための資料を示すことを目的とした主観評価実験を実施した。その結果、開口部の面積率が10~43%の条件において町家カフェのファサードとして好ましいことが示された。
  • 田島 春香, 星野 裕司, 増山 晃太
    2010 年 45.3 巻 p. 385-390
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    非日常な場所の使い方は、その体験者が場所に意識をむけ、新しい関心や愛着持つことへと繋がる。つまり、魅力的な場所には、空間的な要因だけでなく、そこが上手く使われていることが必要である。このような視点から、本研究では、日常の都市の中でパフォーマンスアートを展開しているプロジェクトであるStreet Art-plex KUMAMOTOを対象に、その使い方と場所の空間特性を具体的に記述し、その関係について考察を行った。体験者の記した事後レポートの記述を分類することで、場所の見方やパフォーマンスの違いによる使い方の評価を示した。さらに、会場を4種類に大別し、それらの典型例について使い方から空間特性を考察した。その結果、周囲と切り離されているか、繋がっているかという視点による、使い方と空間特性との関係を明らかにした。
  • 荒井 美紀, 鈴木 優太, 中野 恒明
    2010 年 45.3 巻 p. 391-396
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては映画の舞台ともなった柴又帝釈天参道について街並みの現状と形成の変遷を調査し、その特徴と価値を明らかすることを目的とする。同時に現状より今後の保全整備の可能性を考察した。得られた知見は以下の通りである。1)地域住民の生活の場、帝釈天への信仰の街から映画の舞台となったことを契機に商店主等を中心として地元発意的に映画の観光地として街並みが創造されている。2)映画公開後には街並み整備事業が導入され映画の舞台としてだけでなく街並みの観光地化が目指されている。3)街並みは歴史的木造建築物が多くを占めるため、その防災対策が課題としてあり、また防火地域であるため仮に街並みが消失した際に復元は困難であることも課題としてある。
  • 牧 寛, 石川 幹子
    2010 年 45.3 巻 p. 397-402
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は1960年代の急速な都市化のなかで埋没・消失した、現在は身近な都市にある文化的景観の構造を明らかにすることを目的とする。対象地域は、17世紀半ばに江戸のフリンジの地域へ水を供給するために創設された、三田用水の給水域とした。本研究の明らかにしたこと・成果は次の3つである。第一に、三田用水の形成した文化的景観の特徴は、庭園や眺望点の展開し、台地の縁の高低差を利用していることと、文化的景観を構成する景観要素は、断片化されたものの、何らかの形でいまも存続していることが明らかになった。第二に、上記の結果から文化的景観構想図を作成した。第三に、文化的景観の再生計画のための有効な方法としての文化的景観ポテンシャル図を示した。
  • 大森の海苔養殖を事例として
    村山 健二, 石川 幹子
    2010 年 45.3 巻 p. 403-408
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、海苔養殖で栄えた大森の地先海面利用を歴史的に分析することを通じ、地先海面の地域的な共同利用がどのように成立していたのかを「空間」・「人(組織)」・「法」の観点から明らかにする。その方法として、大森の地先海面の歴史を概観した後、さらに詳細に、漁家分布、漁場の位置、河岸の分布と使われ方、地先海面を共同利用するための組織、の分析を行った。結論として、大森の海苔養殖における地先海面利用では、利権の私的な独占に対し、共同性と持続性を目的とした利用システムの調整が、1.堀・河岸などのインターフェース空間の創出、2.漁業組合における公平性を旨とする分配の仕組みの導入、3.有限な資源を管理する法の運用等により、持続的に行われてきたことを明らかにした。
  • 小森 美紗子, 十代田 朗, 津々見 崇
    2010 年 45.3 巻 p. 409-414
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では全国の温泉地を対象とし、量的変化及び観光振興上の課題を整理した上で、宿泊者数の変化パターンによる分類を行い、宿泊機能の変化や取組みの特徴が温泉地の盛衰とどのように関係しているか、を明らかにすることを目的としている。結論の概要は次の通り。1)全体の半数以上が宿泊者数が減少しており、全国上位の温泉地も集客に悩んでいる。個性づくり、新たな価値づけ、温泉地全体を考える視点、雰囲気作り等が温泉地の課題として常に指摘されている。2)93温泉地の宿泊者数の増減から、再生温泉地17か所、衰退温泉地18か所を抽出した。3)宿泊施設軒数、平均室数、最低単価平均を用いたクラスタ分析により、宿泊機能によって4タイプに分類した。その変遷を見ると、宿泊者数の増減に対応して宿泊機能を変化させる温泉地は少ない。3)再生温泉地である土湯温泉の特徴は、宿泊者数が減少から増加に転じた時期に、温泉地に関する提言を行う記事が多く、さらに温泉地内の連携や協力が必要であるという論調が全国的に先駆けて見られた点である。
  • 長野県を事例として
    峯苫 俊之, 十代田 朗, 津々見 崇
    2010 年 45.3 巻 p. 415-418
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、わが国の別荘地の運営・管理の実態および課題を明らかにしている。結論は以下のようになっている。1)別荘地の分譲区画数、建築済戸数、管理団体を把握している自治体は少ない。2)自治体による別荘地の運営・管理に対する具体的な計画や施策が少ない。3)管理主体と別荘地の利用規模といった条件の違いにより、議論されている課題が異なっている。4)自治体の役割としては、別荘地外への参加の仕組みを提供することが重要である。
  • イタリア・スペイン旧市街の街路ネットワークを対象として
    福山 祥代, 羽藤 英二
    2010 年 45.3 巻 p. 421-426
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、広場と街路の構成に着目して、イタリア、スペイン旧市街の街路ネットワークを対象にネットワーク分析を行った。旧市街のネットワークデータを作成し、ネットワークの接続性指標としてコミュニティと媒介中心性を主に用いて指標値を計算し、街路ネットワークの特性を分析した。その結果、主要広場のハブ性を確認するとともに、旧市街の骨格を構成する街路の媒介性が示された。さらに、バルセロナにおける多孔質化戦略による中心市街地への広場空間の外挿が、市街地全体の媒介中心性や情報中心性を変化させ、回遊時の経路選択肢そのものに影響を与えていることを示した。
  • 地理情報ツールに着目した実証分析
    佐野 由有, 伊藤 香織
    2010 年 45.3 巻 p. 427-432
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、空間把握の文化的差異を明らかにすることを目的としている。調査では、地図および経路案内文を用いた経路探索実験を行い、その結果確信度および探索アクションが観測された。今回明らかにされた点は、以下の3点である。(1)経路案内文は、北米出身の探索者の経路探索に役立つ。しかし日本人探索者にとっては、役立つ地理情報ツールとは言えない。(2)地図上の道路形状は、移動の手掛かりとして北米出身者の経路探索を不安にさせる一方で、日本人探索者の経路探索を安心しやすい傾向を持っていた。(3)空間情報を確認する場所として、北米出身者はすべての交差点であるのに対し、日本人探索者は方向転換を行なう交差点のみで確認を行なっていた。
  • 東本 靖史, 高田 寛, 岸 邦宏
    2010 年 45.3 巻 p. 433-438
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    バス利用者の減少が年々、深刻化する中、2002年の改正道路運送法の施行に伴い、バス事業者としては経営上、公共性よりも採算性を重視せざる終えなく、全国的に赤字路線からの撤退が相次いだ。地域のバスサービスの低下は、地域住民の移動手段を奪うこととなり、地域生活に大きな影響を及ぼすことになるが、更には地域の利便性の低下は地価の下落を招くこととなり、社会経済的な損失は多大である。そこで本研究では、路線廃止や減便などのバスサービスの低下がもたらす地価下落への影響を分析するため、ヘドニックアプローチにより地価関数の変数にバスサービスを含めたモデルを構築する。特に、各地域のバスサービスについては、バス便数や系統数、バス停までの距離が複合的に影響するため、本研究では包絡分析法(Data Envelopment Analysis)を用いて、新たなバスサービス水準指標を設定した。
  • 高木 昌也, 奥嶋 政嗣, 近藤 光男
    2010 年 45.3 巻 p. 439-444
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市のバス路線では、利用者数減少とサービス水準低下の負のスパイラルから脱却するために、多様な利用促進策の検討がなされている。しかしながら、行動と意図の一致性の問題があり、バス利用促進策に対する利用者ニーズを的確に捉えるのは容易ではない。本研究では、地方都市のバス路線網における潜在需要分析への行動意図法の適用方法を提案する。ここで対象都市を徳島市とし、住民意識調査結果に基づいて、バスの利用経験、自動車利用の習慣およびバスサービスに対する利用意向などを把握する。これらの要因に基づいて行動意図法により年齢階層別にバス利用の最大需要を推計する。また、主要なバスサービス向上の有無による交通需要の変動に関して分析を行う。これより、地方都市のバス路線網における利用促進策により顕在化する可能性のある交通需要の把握が可能となる。
  • 原 祐輔, 羽藤 英二
    2010 年 45.3 巻 p. 445-450
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    カーシェアリングは日本において次第に認知されるようになってきているが、大きな普及には至っていない。本研究ではカーシェアリング会員サービスについての料金設計について、カーシェアリング導入社会実験と実験終了後のSP調査に基づき知見を得ることを目的とする。サービスプランへの加入・不加入という選択と加入後の利用頻度の選択について離散・連続選択モデルを用いて同時推定を行い、カーシェアリングを普及させるため、サービス事業者にとって望ましい料金設定施策について検討を行う。結論として高頻度利用ユーザーと低頻度利用ユーザーに特化した特徴的なプランを設計することで自己選択メカニズムに基づいて加入を促し、総収入と加入者数の双方を高めることができることが明らかになった。
  • 木梨 真知子, 金 利昭
    2010 年 45.3 巻 p. 451-456
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    夜間の経路選択行動は、昼間の交通手段選択に影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、光環境に着目し、夜間の歩行者の経路選択構造を明らかにしたものである。第一に、ブレーンストーミングとプレ現地調査により、明るさや見通し、監視性などの防犯等に関する経路選択要因を抽出した。第二に、アンケート調査を用いて、歩行者の夜間経路選択要因を明らかにした。第三に、一対比較法を用いたSPデータにより非集計経路選択モデルを構築した。その結果、夜間の歩行者は経路選択をしていること、夜間の経路選択要因は、女性は男性と比べ、特に明るさ、人通りなどを重視していること、夜間の歩行者の経路選択行動に効いている要因は明るさ、次いで見通しということが明らかになった。
  • 横溝 恭一, 森本 章倫
    2010 年 45.3 巻 p. 457-462
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、MMは公共交通の利用者を増加させるための政策として、効果の分析が進められている。しかし、1年以上の長期的効果は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、MM実施後のバス利用動向を把握することである。さらには、MM実施による行動変容が長期的に継続されやすい被験者属性を分析する。分析の結果、MM実施後1年後の調査まではバス利用頻度が増加を続けているものの、その後減少に転じていることが示された。加えて、バスLOSが高い地域の居住者ほど、MM実施効果が定着しやすい傾向にあることが示された。
  • 神田 佑亮, 松村 暢彦, 藤原 章正
    2010 年 45.3 巻 p. 463-468
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では新エネルギー整備基金の確保を目的とした環境地域通貨流通スキームの構築と併せて、市民を対象としたMMを連携して実施し、環境、まちづくり、交通行動面での効果を評価した。環境地域通貨は、市内の加盟店舗で利用可能なクーポン券であり、新エネルギー発電施設整備基金の確保と市民の割引サービス、地元商店街活性化の両立を目指している。このスキームと市民を対象に適度なクルマ利用を促すモビリティマネジメントを連携して実施した。運用開始後3ヶ月で約130冊の環境地域通貨が流通し、総額の約3割の利用があった。地域活性化の面では、大規模店舗から地域の中小店舗への来訪意図の変容や、購入した店舗とは別の店舗を訪れ利用するといった回遊効果が確認された。交通行動の変容効果の観点では、環境地域通貨を利用した買い物により、買い物時の交通手段も自動車から徒歩や自転車等に転換する意図が見られた。環境面では、MMとの連携実施によりCO2削減効果に相乗効果が見られることが確認された。これらの結果から、両立が難しいと考えられる低炭素まちづくりと地域活性化の共存可能性について1つの方向性が示された。
  • 豊田市を対象として
    三村 泰広, 西堀 泰英, 河合 正吉, 加知 範康, 稲垣 具志
    2010 年 45.3 巻 p. 469-474
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、一般に移動の制約が大きいと考えられ、社会基盤整備が重点的に進められる身体障がい者のうち、下肢障がいおよび視覚障がい者との比較を通じて、知的障がい・精神障がい者の交通行動特性およびその制約要因を把握することにより、障がい者の移動を保証する社会基盤整備における基礎的知見を得ることを目的としている。まず、知的障がい・精神障がい者の特徴に関して、既存調査などにより整理する。次に、豊田市に在住する障がい者を対象に実施した交通行動に関する意識調査の結果を整理することにより、特に、身体障がい者と比較した際の知的障がい・精神障がい者の交通行動特性およびその制約要因について明らかにする。
  • 大村 陽, 室町 泰徳
    2010 年 45.3 巻 p. 475-480
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、対象とする都市交通メガプロジェクトに関与した人々から得られる自由回答インタビューデータと一般資料とを、言語情報処理技術を援用して比較することで、一般資料からは得られにくいものの、インタビューデータからは捕捉し得る対象プロジェクトに関わる経験知識の抽出を試みた。インタビューデータに出現しやすく、一般資料に出現しにくい単語を形態素解析により抽出した結果、「住民」の他、「地下鉄」や「埋設物」といった単語が見られ、インタビューデータにおいて「住民」、「地下鉄」事業主体、「埋設物」管理主体との関係に関わる文脈がより多く抽出される可能性が示唆された。また、談話分析を用いて、対象プロジェクトに関わる経験知識の抽出を試みた結果、「プロジェクトに対する「住民の理解」を得ること」、「プロジェクトに対する「行政の理解・承認」を得ること」に関連付けられる経験知識がインタビューデータから捕捉し得ることが示された。総じて、インタビューデータから得られる経験知識は、今後、他のプロジェクトを実施する上で多くの有用な内容を含んでいるものと考えられる。
  • 安藤 章, 森川 高行, 三輪 富生, 山本 俊行
    2010 年 45.3 巻 p. 481-486
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは、自動車交通の削減効果と受容性改善効果の双方を持ち合わせた新しいロードプライシングスキームとして、駐車デポジット制度(PDS)を提唱している。筆者らが行った過去の研究成果より、PDSの受容性改善効果は示されたが、今後実都市への導入にあたっては、より詳細に市民のリアクションやリアクタンスを確認する必要がある。そこで、本研究では、PDSの市民評価をできるだけ素直な形で収集することを目指し、フォーカスグループインタビュー調査を実施し、そこで得られた発話データより、PDSの市民評価を把握した。この際、賛否層の相互作用が合意形成に与える影響等を勘案するため、討議過程の視覚化を行うことを考え、自己組織化マップ(SOM)の援用を試みた。まず、発話データの質的分析や主成分分析を実施したところ、PDSでは返金対象交通の設定が極めて賛否態度に重要な影響を及ぼすことや反対層では現在のライフスタイルにもとづく移動制約感が反対要因を誘発することがわかった。また、SOM解析では、賛成層と反対層等の賛否態度によって、発話マップが明確に異なり、今後SOM等が討議過程のマネジメント手法としても期待できることが示された。
  • 瀬戸 裕美子, 宇野 伸宏, 塩見 康博
    2010 年 45.3 巻 p. 487-492
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    災害の多いわが国において、道路網に途絶が生じても確実かつ迅速に被災者を医療施設まで搬送するためには、最低条件としてまず発着地間の経路が確保されなくてはならない。加えて、医師の不足や偏在が問題となっている昨今では、各都市に適正な医師数を配置するための評価基準が必要である。本研究では、都市間の連結性と各都市にて享受できる医療機会を併せて定量的に把握する道路網評価指標の構築を目的とする。従来、都市間の連結性に関しては連結信頼性指標が提案されている。この指標ではリンク途絶確率が入力として必要となるが、それを正確に推定することは容易ではない。本研究では、ネットワーク脆弱性の概念を援用し、N-Edge-connected Networkの考え方から、都市間の連結性を非重複経路数に基づいて評価する。その上で、交通抵抗項において非重複経路による都市間連結性を考慮した、新しいアクセシビリティ指標を構築する。また、同指標を用いて、総数の限られた医師をネットワークに最適に配置する計画モデルを提案する。さらに、仮想ネットワークに適用することでネットワークのアクセシビリティを最大とする医師配置を求めた。
  • 小畑 純一, 室町 泰徳
    2010 年 45.3 巻 p. 493-498
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地下鉄道における震災時の避難計画に資することを目的とし、通勤ラッシュ時における地下鉄道の運行状況、及び地下鉄道利用者の震災時における意識や行動意向を検討した。地下鉄道利用者の震災時における意識、及び行動意向を把握する目的から行ったアンケート調査結果からは、地下鉄道利用者の多くは、震災時の地下鉄道の安全性に対し否定的な評価を持っており、地下鉄道は大規模地震に対して比較的安全な空間である点を十分に認識していない点、利用者の多くは震災時に「駅員の指示に従う」といった落ち着いた行動を取るという意向を持っているものの、いざ自分の周囲が地上へ避難し始めると、利用者はその行動に同調することになり、およそ70%以上の人が地上へ避難することになる点が示された。しかし、地下鉄道に対する安全評価の高い人は、地上へ避難することへの同調率が低下することがわかった。また、平日朝の通勤ラッシュ時のように混雑率が非常に高い列車に乗車している場合、震災後、待機可能な時間は20分程度である。この時間を過ぎると、一部の利用者が列車外へ脱出し始め、最終的に半数以上の乗客が車外へ出てしまう可能性が示された。
  • 長野市善光寺表参道のトランジットモール本格導入に向けた取り組み
    柳沢 吉保, 高山 純一, 滝澤 諭, 轟 直希
    2010 年 45.3 巻 p. 499-504
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、(1)歩行者優先街路形状および交通条件に対する満足度に因子分析を適用することで街路空間評価の構成概念(潜在評価意識因子)を抽出する。(2)潜在評価意識因子を構成する満足度評価項目と道路交通条件実測データとの相関分析を行う。(3)共分散構造解析を適用することで、道路交通用件を多重因子、各満足度評価項目を多重指標としたMIMIC(Multiple Indicator Multiple Cause Modelの略。複数の観測変数によって構成概念が規定され、その構成概念が別の複数の観測変数に影響を与えているモデルであり、多重指標の観測変数を、他の多数の説明変数によって予測可能なモデル)モデルを構築する。(4)MIMICモデルに、過去の社会実験時の道路交通条件および改善策を代入し、それぞれ比較検討することで、望ましい歩行者優先街路空間の整備指針を提案する。
  • 古河により建造された土砂扞止施設と堆積場の遺構が有する歴史的意味について
    青木 達也, 永井 護
    2010 年 45.3 巻 p. 505-510
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、足尾銅山の鉱毒問題について、問題と原因の認識に関する変遷と、古河により建設された土砂扞止施設や堆積場に関する変遷を整理し、これら土砂扞止施設と堆積場の持つ歴史的意味合いを明らかにしようとするものである。鉱毒問題の変遷の整理においては、古河機械金属所による報告書、足尾の治水や砂防に関する報告書、鉱害問題の文献等を用いて行った。そして、鉱毒問題に対する原因の認識、被害地からの要求が変化していく様子を把握した。また、土砂扞止工事や堆積場建設の変遷については、これまで公開されていなかった古河所蔵の史料から情報を得て整理を行った。そして、土砂扞止工事内容の変化と堆積場が建設されていく様子を把握した。これらの結果から、土砂扞止工事と堆積場が鉱毒問題の解決にとって、重要な意味を持っていることが確認できた。
  • 群馬県六合村におけるケーススタディ
    森田 哲夫, 塚田 伸也, 佐野 可寸志
    2010 年 45.3 巻 p. 511-516
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    山間地域では、急速な過疎化および高齢化が進行しており、日常生活やコミュニティの維持などが大きな問題となっている。本研究はこのような状況を背景とし、群馬県内の過疎・高齢地域の人口動向を把握した上で、対象地域を人口約1,700人の六合村に設定し、集落単位で人口動向を分析し、限界集落化の状況を把握した。次に、六合村を対象に居住意向に関するアンケート調査を実施した結果、生活に不便を感じていながらも高齢者ほど定住意向が高いことがわかった。また、年齢以外にも、職業等の個人属性、地区特性が、居住意向に影響を与えていることを明らかにした。その次に、集落人口、個人属性、地区特性により、拠点的な集落、他の集落に共生していく集落、徐々に縮退していく集落の3つの集落種類に分類し、複数の集落種類による集約型居住のあり方を提示した。これら分析は、集約型居住の実現に向け、自治体と検討を進めていくための基礎資料とするものである。
  • 佐多 孝徳, 出口 近士, 浅野 誠, 吉武 哲信
    2010 年 45.3 巻 p. 517-522
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    土地区画整理事業は権利者が多数であることや事業期間が長いこと等に起因して、資金破綻を招く恐れのある多くのリスクを含んでいる。その結果、プロジェクトマネジメントの観点からリスクの特定やリスクの影響度を評価することが重要となっている。本稿では、施行中の公共団体施行者に対して、事業資金計画の破綻を及ぼす影響度を一対比較法で回答してもらい、これをAHP法で分析した。その結果、施行者の違いやDID区域内外の差異によってリスクの影響度が異なること、またリスクが7つのパターンに類型できることを明らかにしている。
  • 町田市の相原・小山土地区画整理事業を事例として
    霜田 宜久, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2010 年 45.3 巻 p. 523-528
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東京都の多摩ニュータウンの相原・小山地区で東京都が実施した土地区画整理事業において、事業と併用して地区計画によるゾーニングや先行買収した都有地の活用、地権者も含めたまちづくり協議会の設置、などによる計画的・複合的な街づくりの試みを取り上げ、そこで行われた「住み、働き、憩う」街づくりを目指した試みが、その後の市街地形成の状況を調査し、何が市街化を促進し、何が計画の意図通り実現し、どういったことが計画の意図に反して起きたのか、施行者である東京都はそれにどう対応したのか、を分析した。本研究は、こうした事例の分析を通じて、今後、複合的な街づくりを目指す時に考えなければならない検討課題を明らかにすることを目的としている。
  • 東海市東海浅山新田土地区画整理事業のケーススタディ
    中島 浩, 高桑 公平, 小中 達雄, 中川 大
    2010 年 45.3 巻 p. 529-534
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    組合施行区画整理は、地権者が設立する組合が健全な市街地の造成を行うという公共的意義とともに、組合員所有土地の自己利用や売却、賃貸による土地活用を通して目標とする市街地像の実現を図る事業でもあることから、地域の人々による草の根まちづくりの実践という側面を併せ持つ。研究対象として取り上げた事例は東海市東海浅山新田土地区画整理事業である。事業環境の厳しい中で区画整理の地権者出資による株式会社が企業誘致を行い、地権者の所有土地の賃貸料収入を安定的に確保するなどして、区画整理の速やかな推進とあいまって農地からの物流拠点づくりを短期間に成し遂げたものである。事例研究を通して、会社方式による土地活用の実現は適用性の高い事業推進方策として大きい意義を持つものであると確認できた。
  • 土地利用計画と交通計画の連携によるCO2排出量削減に着目して
    村木 美貴, 須永 大介
    2010 年 45.3 巻 p. 535-540
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、低炭素型都市づくりのための土地利用計画を、特に郊外型開発でいかに進めるか、なかでも交通計画との連携に着目しオレゴン州を対象に明らかにすることを目的とする。2章ではオレゴン州では、再生可能エネルギーの増加と、住宅・商業・交通での排出量削減が求められること、交通と土地利用での連携で、基礎自治体レベルでの対応に限界にあることが明らかとなった。3章では、土地利用と交通計画の連携のために、州政府がプログラムを創出していること、広域行政のあるメトロ地域では、土地利用計画と交通計画が連携の上に議決を持って戦略方針が策定されていること、反対に他地域では、交通計画での立案の受け皿が見られないことが明らかとなった。4章では、住民立法案37号による郊外型開発申請に着目し、補償申請地の立地場所から自動車と開発に伴う将来発生CO2を推計し、TODによる集約化、面的エネルギーシステム導入、自動車利用の削減で、郊外開発が起きる場合に比較して、62%削減が可能と推計された。結論として、厳格な土地利用規制、都道府県等広域調整機能の役割構築、交通計画と連動した土地利用プログラムについてその必要性を提示した。
  • 東京都千代田区におけるCO2削減目標に着目して
    石河 正寛, 村木 美貴, 小倉 裕直
    2010 年 45.3 巻 p. 541-546
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、経済開発と環境負荷低減の両立が求められる都心の低炭素化をいかに実現させうるか、エネルギーシステムの更新・整備に着目して計画立案の基礎資料を提供することを目的とする。具体的には、東京都千代田区を対象に、当該区が地球温暖化防止条例で定めるCO2削減目標の達成のあり方を、複数のエネルギーシステム整備シナリオの検討による実施可能性を提示する。2章では、地方自治体のCO2排出量特性と対策枠組みに着目し、千代田区が過去のCO2排出量、開発需要から多面的な施策展開の方向性が必要であることが明らかとなった。3章では、千代田区のエネルギー需要を開発トレンドから推計し、2020年に2006年比1.22倍であることが明らかとなった。4章では排出量削減のために(1)建物内既存熱源の高効率化、(2)地域冷暖房の導入、(3)区外の未利用熱エネルギーの活用の3パタンについて検討を行った。結論として、今後の低炭素型都市づくりの実現には、目標市街地像の明確化とその実現担保手段の構築、将来的な技術革新に対応可能な形での空間管理が必要であることを提言した。
  • 岡村 敏之, 中村 文彦, 中津川 拓也
    2010 年 45.3 巻 p. 547-552
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    防犯意識・犯罪不安感に着目した住環境の評価を行なうために、郊外住宅地の住民を対象とした意識調査を行い、以下の点を明らかにした。まず、住宅地の利便性・快適性・安全性/安心感について住民の満足度の意識構造モデルの推定結果から、住環境を構成する指標としての「防犯意識・犯罪不安感」が、交通などの他の住環境指標よりも人々の意識の中で相対的な重要な位置づけにあることが明らかとなり、既存住宅地の持続可能性という観点からも、犯罪不安感の軽減や犯罪発生の抑止が重要な課題であることが明らかとなった。また、現状の犯罪不安感と今後の防犯対策の必要性との間の因果構造モデルの推定結果、および現状の犯罪不安感と今後の防犯対策への賛否との因果構造モデルの推定結果から、「監視性」で代表されるような、郊外の既存住宅地がかかえる高齢化や人口減少・人口流出等の問題に起因する犯罪不安感が、今後の防犯対策の必要性への意識の高まりと、実際の防犯対策の実施に対する積極性に大きく影響を与えていることが明らかになった。
  • 山都町菅地区における土砂災害への減災対策の実践
    山本 幸, 柿本 竜治, 山田 文彦
    2010 年 45.3 巻 p. 553-558
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。
  • 市古 太郎, 木村 美瑛子, 加藤 孝明, 石川 金治, 中林 一樹
    2010 年 45.3 巻 p. 559-564
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    内閣府は2010年4月に大規模水害に関する報告「首都圏水没:被害軽減のために取るべき対策とは」を公表した。その対策にはさまざまなアプローチが含まれるが、重点対策の1番目にある「広域避難」の方法論について、防災都市計画の視点から取り組む価値があろう。本研究は、広域避難のツールであり、すでに配布活用されている「洪水ハザードマップ」に着目し、その認知や避難準備行動などに与える影響について、荒川下流左岸、葛飾区堀切地区と新小岩地区を対象に、4,600通のアンケート意識調査を実施し、考察をおこなったものである。結果として、ハザードマップを「見たことがある」世帯は70%で、閲覧度合いは(1)カスリーン台風経験、(2)町会活動への協力状況、(3)日常時の河川利用頻度、に影響を受け、特に(2)の因子は、町会組織活動が有する共同防衛意識を意味するものと考えれることなどが明らかとなった。また分析結果をもとに、広域避難率を向上させていくため情報戦略チャートを作成し、考察をおこなった。
  • 石倉 智樹
    2010 年 45.3 巻 p. 565-570
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    パンデミックは人類の歴史上繰り返し発生し、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらしてきた。近年でも、高病原性インフルエンザ(A/H5N1型)の流行など、世界的な感染症流行の拡大が生じている。パンデミックが生じると、都市の社会機能や経済活動の混乱が起きる。パンデミックが発生した際には、ワクチンの開発には最低でも3~6ヶ月はかかると言われている。それまでの間、感染拡大を抑制または遅延させるための有効な政策として、公共交通の停止や学校閉鎖といった人々の活動制限が考えられる。一方でこれらの政策は、経済活動の縮小を伴うものであり、行うタイミングを誤れば効果が半減するだけでなく、経済活動へ大きな損失を与える。すなわち、活動制限による適切な政策効果を得るためには、政策実施を適切なタイミングを把握することが求められる。そこで、本研究は、パンデミック時の、特に初期の段階、すなわちワクチン生産等の医療対策が整っていない段階において、公共交通の停止や地域間境界閉鎖のような水際対策などの社会経済活動制限を行うか否かの判断、および活動制限の最適な実施タイミングを導出する方法論を提案する。
  • 佐藤 慶一, 牧 紀男, 中林 一樹, 翠川 三郎
    2010 年 45.3 巻 p. 571-576
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    内閣府中央防災会議では、2005年に首都直下地震の被害想定結果を公表し、その後、避難者対策等の検討が進められてきたが、同想定地震後の住宅再建問題については扱われていない。本稿では、想定首都地震後の住宅再取得意向に関する社会シミュレーションの構築を行ない、演算を行なった結果をまとめた。具体的には、まず、災害後の住宅再取得行動に整理した上で、次に、シミュレーションフローの設計や供給データの設定について記した。そして、シミュレーション実施結果について、集計結果や安定性の確認を行い、さらに、供給データを変えながら計算結果の変動を眺め、最後に、復興公営住宅供給を中心に考察を加えた。論文を通じて、想定災害後の住宅再取得問題の事前検討を行なう方法論が提示された。また、想定首都地震後の住宅再取得問題において、量的に賃貸住宅が重要な役割を果たすことを指摘した。
  • 奥村 誠
    2010 年 45.3 巻 p. 577-582
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大規模地震発生時の重傷者の医療施設への輸送を円滑に行うために、事前に道路ネットワークや医療施設を耐震化する場面を想定した数理計画モデルの提案が行われている。しかし、災害指定病院から離れた地域にDMATと呼ばれる医療チームを派遣する方が効率的な場合があり、道路の耐震化ではその輸送も踏まえた計画が必要となる。本論文では、医療チーム配置と医療施設及び道路の耐震化を事前に計画するモデルを提案した。派遣医療チームの活動は、チームの到着時刻と重傷者の到着時刻の遅いほうに制約されるというミニマックス構造を含むが、これを線形制約に変換し混合整数線形計画問題として定式化したのが特徴である。仮想的な小規模ネットワークでの計算例を通して、総医療チーム数の増加によって救急医療施設の耐震化費用の転用や道路施設の耐震化費用の削減が可能になり、最適耐震化戦略が変化する場合があることを示した。これにより、耐震化と医療チームの配置を同時に検討することの必要性を確認できた。
  • 増山 篤
    2010 年 45.3 巻 p. 583-588
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文では、人口分布と生活利便施設へのアクセシビリティの関係を分析するための制約付きランダマイゼーション・テストを提案する。都市計画においては、人口分布と他の空間分布との関連を探ることは、常に興味の対象であった。特に、近年では、商業施設や医療施設などの生活利便施設へのアクセシビリティに人口分布が影響されているか、人々がこれら施設の近くへ居住することを指向した結果として、施設周辺で人口密度が高くなっているかということが関心事となっている。一般に、人口密度には正の空間的自己相関が存在するということを考慮に入れ、この論文では、上記の関心に答えるための制約付きランダマイゼーション・テストを提案する。また、この方法を用いて、青森県弘前市における人口分布とスーパーマーケットの分布を分析した結果を示す。
  • 高円寺駅周辺を対象として
    布川 悠介, 伊藤 史子
    2010 年 45.3 巻 p. 589-564
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「グラフィティ」とは街に描かれる落書きのことである。本研究ではグラフィティ分布と都市要素との関係を分析し、ライターの行動特性に関する示唆を得ることを目的としている。高円寺駅を中心とした半径600m以内のグラフィティ分布の調査を行って得られた地点と数、種類のグラフィティ属性データを用いて空間分析を行った。駅距離とグラフィティ密度の関係から非線形回帰分析により密度関数を導出した。ライター間の敵対的な「Communication」地点と不特定多数に見せつけるための「Exposure」グラフィティの各分布が商業地域、駅南の商業地域に集中していることをKolmogorov-Smirnov検定、二項検定により示している。グラフィティを描く目的に着目して行った空間分析の結果より、ライターの行動特性は都市要素と関係していることがわかった。特に駅からの距離、用途地域はグラフィティを描く場所を決定する上での大きな要因となっている。これらの分析によって導かれた結果はライターの行動特性を空間的に捉える一つの指標になると考えられる。
  • 菴木 嶺, 大澤 義明
    2010 年 45.3 巻 p. 595-600
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市など建物が密集する空間において、日向・日陰という日照状態は時間とともに刻々と変化し、また場所により顕著な差異が表れる。日照条件を受けて、夏は暑さに耐えきれず日陰を歩き、逆に冬は寒さを少しでも和らげようと日向を歩くといったことは、誰もが経験としてあるのではないだろうか。本研究の目的は、道路面での日向・日陰という日照状況を加味したときの経路選択を考察することにある。都市内沿道建物によって影が生成されるとし、日向や日陰という日照条件を日向量というもので定義する。この日向量を用いて、日照に関する正反対の要求に応じた経路選択を論じるのである。また、道路の目的は移動である。したがって、日照状況に着目するのであれば、移動距離と日向量の両方の観点から分析を行っていかなければならない。そこで、一般の道路網において、移動距離と日照条件とのトレードオフに着目したパレート最適経路を求める。
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