Journal of the Japan Petroleum Institute
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48 巻, 5 号
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総合論文
  • 塚原 建一郎, 澤山 茂樹
    2005 年 48 巻 5 号 p. 251-259
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    近年,再生可能で環境調和型のエネルギー資源であるバイオマスが注目されるようになってきている。なかでも,植物プランクトン(微細藻類)は植物よりも増殖が早く,高いCO2固定能を有しているため,有望なバイオマス種として注目されている。微細藻類からの効率的な液体燃料生産を行うため,テルペノイド系炭化水素を蓄積するBotryococcus braunii とグリセリンを細胞内に蓄積するDunaliella tertiolecta を用いて検討を行ったところ,B. braunii は,培養に下水処理水を使用することにより,液体燃料生産と同時に処理水中の窒素やリンを除去することが可能であること,D. tertiolecta は,細胞内に蓄積するグリセリンを情報伝達系で調節していることが分かった。液体燃料生産のエネルギー収支を計算すると,炭化水素含有率がより高いB. braunii の方がD. tertiolecta より有利であることが分かった。
一般論文
  • 近藤 崇, 森吉 昭博, 吉田 隆輝, 高橋 正一, 今井 猛
    2005 年 48 巻 5 号 p. 260-271
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    室外で作製した細粒度ギャップアスファルト混合物(13F)に関して,往復走行,一方向走行およびブレーキ走行が可能なホイールトラッキング(WT)試験機を用いて,ホイールトラッキング試験中における内部の骨材の動きの違いを明らかにした。
    解析結果より,ホイールトラッキング試験による走行荷重直下のわだち掘れは往復走行より一方向走行の方が大きくなり,側方部の隆起は往復走行では荷重端部の右側で生じ,一方向走行では荷重端部から50 mm程度離れた箇所に生じた。また,荷重直角方向の骨材の動きより,往復走行では圧密によるわだち掘れが主であり,一方向走行では流動によるわだち掘れが主であることが明らかとなった。この結果から,WT試験は往復走行とともに,実際のアスファルト舗装と同様の走行方法である一方向走行も行うことが,横断方向への変形も含めたわだち掘れ現象の解明につながると考えられる。
    ブレーキ走行を行った結果より,タイヤの摩擦による骨材の動きは鉛直下方向よりも走行方向の方が大きい。これは,タイヤの摩擦によりアスファルト混合物の内部が走行方向へ引きずられるためである。よって,車両のブレーキ操作が頻繁に必要となる場所では,流動によるわだち掘れおよび摩耗によるわだち掘れが生じると考えられる。
  • 木下 睦, 高橋 悟, 金 放鳴, 山崎 友紀, 守谷 武彦, 榎本 兵治
    2005 年 48 巻 5 号 p. 272-280
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    超臨界水を用いたビチューメンのオンサイト改質における脱硫の促進を目的として,ベンゾチオフェン(BT)類とジベンゾチオフェン(DBT)類のアルカリ水熱反応による分解を検討した。BTおよびDBT類はアルカリ水熱処理で分解し,分解の容易さはアルカリ水溶液の種類および濃度により影響を受け,KOH水溶液中での分解が最も進行した。分解はある濃度で残存率が最小となる極値を示した。また,水の超臨界状態では反応圧力が高い方が分解は容易に進行した。BT類とDBT類の両方について,本研究で報告した水熱分解とこれまでに他の研究者によって報告されている水素化脱硫法(HDS)とで生成物が異なり,また見かけの活性化エネルギーも大きく相違しており,両分解法において反応機構が異なることが示唆された。BTはDBTよりも分解が容易に進行し,またメチル基を有する硫黄化合物とメチル基を有さない硫黄化合物の分解の容易さを比較すると,メチル基を有さない硫黄化合物の方が容易に分解する。これらの傾向はHDSの場合と同様であり,水熱分解の場合も化合物の分子構造の影響を受けることがわかった。
  • 中村 博幸, 雨宮 正臣, 石田 勝昭
    2005 年 48 巻 5 号 p. 281-289
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    出発原料,担体,担持方法の影響の少ないモデル触媒(Co2.75Mo11,Ni2.75Mo11およびNi0.9Co1.85Mo11 wt%/γ-Al2O3)を調製して,4,6-ジメチルジベンゾチオフェンとジベンゾチオフェンの脱硫反応におけるH2S,NH3の影響を検討した。脱硫反応で考えられている水素化脱硫および直接脱硫ルートごとの性能をNiMo,CoMo,NiCoMo触媒で比較した。その結果,CoMo触媒とNiCoMo触媒はH2Sに対する被毒の影響が少なかったのに対して,H2SはNiMo触媒の両反応ルートの活性を大きく低下させた。一方,CoMo触媒の水素化脱硫ルートがNH3により強く被毒されるが,NiMo触媒の直接脱硫ルートはNH3に被毒されないことを明らかにした。また,NiCoMo触媒に関しては,NiMoとCoMoの担持比率から計算される水素化および直接脱硫ルートの反応速度定数の比例配分値より高い性能を示し,その値はNiMo触媒,CoMo触媒の各反応ルートのより高い値の和に近い値を示すことが分かり,被毒物質のある雰囲気ではNiMo単独あるいはCoMo単独より高い活性を示すことを明らかにした。
  • 西本 博晃, 池永 直樹, 中川 清晴, 小西 亨, 鈴木 俊光
    2005 年 48 巻 5 号 p. 290-300
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    メタンの部分酸化反応における酸化ダイヤモンド担持ニッケルおよびコバルト触媒(Ni/O-dia触媒およびCo/O-dia触媒)のキャラクタリゼーションをXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)およびtransient response法を用いて行った。
    873 Kでのメタンの部分酸化反応において,Co/O-dia触媒を用いたときには触媒表面上への炭素析出は見られなかったが,Ni/O-dia触媒を用いたときには炭素が析出した。各反応後の触媒をXPSで分析すると,Ni/O-dia触媒では部分的に還元された酸化ニッケル種が認められ,Co/O-dia触媒では0価のコバルト,部分的に還元された酸化コバルト種および酸化コバルト(III)の存在が確認された。一方,873 Kに保持した触媒にメタンのみを供給したところ,Ni/O-dia触媒ではメタン供給と同時に多量の水素が生成したが,Co/O-dia触媒ではわずかな量の水素しか生成しなかった。さらに,メタン/酸素混合ガス(2 : 1)をパルスで供給したところ,Ni/O-dia触媒では吸熱が起こり,Co/O-dia触媒では発熱が起こった。以上のことを考え合わせると,Ni/O-dia触媒ではまずメタンの分解によって水素が生成し,残った炭素種が酸素と反応し一酸化炭素が生成するものと考えられる。Co/O-dia触媒ではメタンの完全酸化が起こり,生成した水および二酸化炭素によるメタンの改質反応によって合成ガスが生成するものと考えられる。
  • 永易 圭行, 中山 哲成, 倉澤 俊祐, 岩本 伸司, 矢ヶ崎 えり子, 井上 正志
    2005 年 48 巻 5 号 p. 301-307
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    熱重量分析装置を用いて,ニッケル触媒によるメタン分解反応を検討した。グリコサーマル法によって得られたジルコニアにニッケルを担持した触媒は,多量の炭素生成を示した。反応温度400~680℃ では,反応温度の増加とともにメタン分解反応初速度も増加した。一方,700℃ 以上の温度領域では反応温度の増加により初速度は減少した。生成した炭素のTEM観察から,これらの炭素はカーボンナノチューブであることを確認した。また,ラマン分光測定より,高温域で生成したカーボンナノチューブは低温域のものに比べて結晶性の良いことが示唆された。反応ガスに用いるメタンに水素を共存させた場合,触媒が失活するまでの時間は長くなり,反応ガス中の水素分圧が大きくなるにつれて,炭素生成量も増加した。これらの結果より,触媒が失活する機構について検討を行った。
ノート
  • 山下 紘司, 佐藤 光三, 増田 昌敬
    2005 年 48 巻 5 号 p. 308-313
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    多孔質媒体中にフラクチャーが存在する場合,フラクチャー内では周囲の媒体に比べ浸透性が極めて大きいため,流体流動に大きな影響を及ぼす。トレーサー試験はフラクチャーを検知する一つの方法であり,得られたトレーサー流出濃度曲線を逆解析することでフラクチャーの特性を推定することが可能である。本研究では,多孔質媒体中に単一フラクチャーが存在する場合に行ったトレーサー試験を再現し,得られたトレーサー流出濃度曲線を逆解析することで,フラクチャーの特性を同定することを目的としている。シミュレーションにはフラクチャー周りの流れを正確に表すことができる複素変数境界要素法(CVBEM)を,逆解析には遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた。
    逆解析を行う際,1種類のトレーサー流出濃度データを用いただけでは正確な同定が困難であった。そこで,異なる坑井配置で得られた2種類のデータで逆解析を行ったところ,より正確にフラクチャーを同定することが可能であった。また,GAにおける収束挙動からトレーサー流出濃度曲線の形状に支配的なパラメーターを考察した。
  • Liang Chen, Peiwen Que, Zuoying Huang, Tao Jin
    2005 年 48 巻 5 号 p. 314-318
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    最も効率的かつ広範に実施されている輸送パイプラインに対する非破壊検査法として磁束漏えい検知手法が挙げられる。しかしながら現実に起きうる腐食は鋼管材質,輸送流体等の条件によりそのメカニズムが複雑であるためパイプラインの腐食形態も様々であり,その複雑な組合せの形態を物理的実験手法のみにより磁束漏えい信号パターンを解析,検討していくのは至難の業である。本報告においては,パイプラインに生じる複雑な腐食形態を模擬するため単純な鋼板を仮定し,その鋼板における金属表面のクラックや腐食などにより生ずる複雑腐食が磁束漏えい信号に与える影響について三次元有限要素法を用い解析した。解析の結果,複雑腐食が存在することにより磁束漏えい信号が孔食同士でお互いに影響しあうことが判明した。
技術報告
  • 岩本 隆一郎, 小鹿 博道, 高橋 信行, 稲村 和浩
    2005 年 48 巻 5 号 p. 319-323
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/01
    ジャーナル フリー
    硫黄分50 ppm以下での超深度軽油脱硫触媒の性能評価における問題点について検討した。GC-AEDおよびGC-MS分析により,生成油硫黄分のばらつきの原因を調べたところ,超深度脱硫軽油中に遊離硫黄が生成することが判明した。この遊離硫黄は,サンプリングした生成油中に溶存するH2Sが空気に接触すると生成することが分かった。遊離硫黄の生成機構は明らかではないが,溶存H2Sの直接酸化,クラウス反応,多硫化アンモニウムの酸化等が考えられる。いったん,生成油中に安定な遊離硫黄が生成すると,窒素等によるストリッピングでは除去できないため,硫黄分が実際よりも高く評価されるので問題となる。遊離硫黄の生成を防止するには,サンプリング前に系内のセパレーターでH2Sを除去するか,窒素シールしたサンプリング室内でH2Sを除去する必要がある。なお,商業装置ではプロセスフロー上,H2Sは空気と接触しないため,遊離硫黄の生成は認められなかった。
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