Journal of the Japan Petroleum Institute
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51 巻, 4 号
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総合論文
  • 大勝 靖一
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 4 号 p. 191-204
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    ヒンダードアミン光安定剤(HALS)は他の添加剤と異なって多くの機能を有し,高分子材料の長寿命化に頻繁に使用されているが,それは併用する添加剤のえり好みが激しい。その組合せは必ずしも相乗作用ではなくて,拮抗作用を示すことがしばしばある。結果としてHALSを中心とした他の添加剤との相互作用については,多くの研究が報告されている。しかし,その成果の多くは相互作用を大きな相乗作用から大きな拮抗作用までの多様な局面に対して定性的に議論し,相互に統一性を欠いている。
    HALSおよびその同族体には多くの誘導体が知られている。本論文では,これらの誘導体を「良いHALS」と分類し,一方で著者らが新しく発見したHALS誘導体,すなわちHALSニトロソニウムを「悪いHALS」として表記する。過去の研究はこの良いHALSを用いてHALSの他の添加剤との悪い拮抗作用を説明しようとした。ここに問題があった。本論文は,HALSと他の添加剤の混とんとする相互作用を,これもまた著者らが発見した良いHALSによる相乗作用と悪いHALSによる拮抗作用とに分けて動力学的,かつ熱力学的に議論する。その結果として,上述したような広範にわたる相互作用を半定量的,かつ統一的に説明する研究手法を提案する。
    本論文で総括する成果は,諸事実の発見によりHALSの複雑で多岐にわたる性質を明らかにし,これらに基づいてHALSの単独でのおよび他の添加剤共存での作用機構を統一的に議論しうる可能性を提示することである。この統一的な考えに基づいて高分子材料の安定化および機能化を行えば,従来よりも非常に容易に添加剤処方が決定でき,かつさらには新添加剤の開発が可能となるであろう。
  • 稲津 晃司, 小山 徹, 宮地 輝光, 馬場 俊秀
    原稿種別: 総合論文
    2008 年 51 巻 4 号 p. 205-216
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    筆者らが行ってきた二つのプロピレン合成法について概説する。その一つは,銀イオン交換を用いたエチレン共存下でのメタン転化反応である。もう一つはプロトン交換ゼオライトによるエチレン転化反応である。この反応では,プロピレンはゼオライトの分子ふるい効果によって選択的に生成する。
    銀イオン交換ゼオライトはメタンを活性化できる。このことは銀イオン交換Y型ゼオライトにメタンを吸着させると,メタンのC-H結合が不均等解離することが1H MAS NMR測定によって明らかとなった。メタンの不均等解離によって生成したCH3は,400℃付近でエチレンと反応してCH3CHCH3を生成する。メタンとエチレンとの反応によってプロピレンが生成することは,13CH4とCH2=CH2とを反応させると13CC2H6が生成することから支持される。
    一方,13CH4とCH2=CH2との反応を試みたとき,プロトン交換ゼオライトではC3H6が生成し,13CC2H6が生成しない。この結果は,プロトン交換ゼオライトではエチレンからプロピレンが生成していることを示している。なかでもSAPO-34はエチレンからプロピレンを選択的に生成する。たとえば,400℃で反応を行うと,エチレン転化率が71.2%のときプロピレンの最高収率は52.2%(選択率は73.3%)であった。プロピレンの高い選択性は,SAPO-34の酸性プロトンの性質と分子ふるい効果によってもたらされると思われる。
一般論文
  • Mohammad Jamshidnezhad
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 4 号 p. 217-224
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    石油産業におけるアスファルテン析出の問題は,石油精製においてコスト上昇を招いている。そのため原油タンク中のアスファルテン量を予測するモデルの開発が必要とされている。本研究では,Peng-Robinson状態方程式とFlory-Huggins溶解理論に基づいてアスファルテン析出を予測する新たなモデルを開発した。このモデルでは,アスファルテンと液状オイルの溶解度パラメーターの値および原油の熱力学特性値がPeng-Robinson状態方程式から計算されるので,従来に比べて大幅に時間が短縮され,それを用いた簡易なアルゴリズムによる計算が可能となった。二つの原油タンクからの実験データと比較した結果,高い精度でアスファルテン析出挙動を予測することができた。
  • 三木 康朗, 鳥羽 誠, 葭村 雄二
    原稿種別: 一般論文
    2008 年 51 巻 4 号 p. 225-233
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    直留ナフサおよび接触分解ガソリンに含まれる硫黄化合物を選択的硫黄検出器付きガスクロマトグラフを用いて定量した。硫黄化合物の定性的分析には,オープンカラムクロマトグラフィーと硝酸銀水溶液処理を併用した。さらに同定のため,市販試薬,合成分析用試料および市販の質量スペクトルライブラリーを活用した。直留ナフサの硫黄濃度は242 ppmで,83化合物が同定された。硫黄化合物の組成はチアシクロアルカン類が34 wt%,チオール類/スルフィド類が38 wt%,チオフェン類が12 wt%,ジスルフィド類が11 wt%,未同定化合物が5 wt%であった。接触分解ガソリンの硫黄濃度は154 ppmで,41化合物が同定された。硫黄化合物の組成はチオフェン類が46 wt%,ベンゾチオフェン類が32 wt%,チオール類/スルフィド類が14 wt%,チアシクロアルカン類が4 wt%,ジスルフィド類が0.6 wt%,硫化水素が0.3 wt%,未同定化合物が3 wt%であった。軽質留分の硫黄化合物の定量的分析にはオープンカラムクロマトグラフィーと硝酸銀水溶液処理の併用が有効であることがわかった。軽質留分中の硫黄化合物の組成から脱硫の難易が予測可能であることが,脱硫の結果より示唆された。
ノート
  • 村田 和久, 稲葉 仁, 高原 功
    原稿種別: ノート
    2008 年 51 巻 4 号 p. 234-239
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    H-ZSM-5触媒をエタノールの低級オレフィンへの変換反応に用いた。無修飾のH-ZSM-5ゼオライトでもエタノールの炭化水素への変換は進行するが,ベンゼン,トルエン,キシレン(BTX)などの芳香族やC1~C4の飽和炭化水素が主として生成し,目的であるプロピレンやエチレンは主生成物ではない。芳香族や飽和炭化水素などの副生物を減少させるために,H-ZSM-5のWやLaなどによる修飾が有効であり,エタノール転化率100%において,プロピレンやエチレンへの選択率が向上し,BTX選択率は低下した。炭素析出の傾向は修飾前後で変わらなかった。プロピレンやエチレンへの選択率向上は,H-ZSM-5触媒上のブレンステッド酸点の割合と相関していることを推測した。
  • Qi Zhang, Peiwen Que, Huaming Lei, Zuoying Huang, Min Cai
    原稿種別: ノート
    2008 年 51 巻 4 号 p. 240-244
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    原油輸送用海底パイプラインの漏えい事故を未然に防ぐためにパイプラインの探傷作業は必要欠くべからざるものである。本論文では超音波による探傷装置を紹介している。超音波が高周波数であるため,高速のデータ取得ならびに大容量保管システムを開発した。探傷システムの主要な機能は超音波信号前処理,データ取得,ノイズ除去およびリアルタイムデータ圧縮である。一方,システムはマイクロコンピューター,FPGA,データ保管装置,トランスデューサー,事前処理回路,デジタル信号プロセッサー,ゲートアレイ,保管システム,USBインターフェイスから構成されている。これら探傷装置の有効性を評価するため,実際のパイプラインが設置されている海中条件を模擬したプールに人工的に傷をつけたスチール製パイプラインを設置し,探傷作業ならびにデータ転送による解析作業を実施した。実験の結果,超音波探傷のデータ取得ならびに保管システムによるオンライン検査の有効性が実証された。
技術報告
  • 溝口 隆, 渡辺 圭太郎, 小堀 寿浩, 藤本 尚則, 熊谷 仁志, 佐々木 健
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 51 巻 4 号 p. 245-251
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    製油所の活性汚泥排水処理施設(600 m3規模活性汚泥槽)のかたわらに,高速撹拌処理とアルカリ処理を組み合わせた活性汚泥可溶化実証装置(3 m3)を設置した。
    予備試験として,最適なアルカリ濃度と高速撹拌の回転数を検討し,それぞれ0.025 mol/l と2500 rpmと決定した。この条件で40~50%の汚泥可溶化率が得られた。この可溶化液を活性汚泥槽に返送しつつ,排水処理と可溶化を連続的に64日間行った。1日に144 kg/日(可溶化処理を行わない場合に1日に発生する余剰汚泥の乾燥重量)の余剰汚泥を可溶化処理した。その結果,最終放流水のCODは12~27 mg/l で,COD除去率は87%であった。64日の平均余剰汚泥減容化率は47%に達した。
    この新しい汚泥減容化プラントは,実際の工場で活性汚泥に悪影響を与えることなく長期の汚泥減容が可能であると実証された。
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