筆者らが行ってきた二つのプロピレン合成法について概説する。その一つは,銀イオン交換を用いたエチレン共存下でのメタン転化反応である。もう一つはプロトン交換ゼオライトによるエチレン転化反応である。この反応では,プロピレンはゼオライトの分子ふるい効果によって選択的に生成する。
銀イオン交換ゼオライトはメタンを活性化できる。このことは銀イオン交換Y型ゼオライトにメタンを吸着させると,メタンのC-H結合が不均等解離することが
1H MAS NMR測定によって明らかとなった。メタンの不均等解離によって生成したCH
3+は,400℃付近でエチレンと反応してCH
3CH
+CH
3を生成する。メタンとエチレンとの反応によってプロピレンが生成することは,
13CH
4とCH
2=CH
2とを反応させると
13CC
2H
6が生成することから支持される。
一方,
13CH
4とCH
2=CH
2との反応を試みたとき,プロトン交換ゼオライトではC
3H
6が生成し,
13CC
2H
6が生成しない。この結果は,プロトン交換ゼオライトではエチレンからプロピレンが生成していることを示している。なかでもSAPO-34はエチレンからプロピレンを選択的に生成する。たとえば,400℃で反応を行うと,エチレン転化率が71.2%のときプロピレンの最高収率は52.2%(選択率は73.3%)であった。プロピレンの高い選択性は,SAPO-34の酸性プロトンの性質と分子ふるい効果によってもたらされると思われる。
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