日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
34 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 高橋 努
    2023 年34 巻3 号 p. 95-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 永井 裕崇
    2023 年34 巻3 号 p. 96-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    うつ病患者や慢性ストレスに曝露したげっ歯類は,前頭前皮質や海馬の萎縮など多様な脳領域の機能構造変化を呈する。糖質コルチコイドや全身性・脳内炎症を介した神経細胞の分子シグナル変容が脳領域特異的に生じることで,ストレス関連脳領域により構成される神経回路ネットワークの活動ダイナミクスが変容し,ストレスによるうつ様行動を招くことが示されてきた。これらの活動ダイナミクスは環境因子の蓄積によっても変化し,ストレスに対する脆弱性とレジリエンスの形成にも寄与することがわかりつつある。本稿では,ストレスによる神経細胞の機能形態変化を担う機序と,神経形態変化が神経回路ネットワークに与える影響を解明するために有用な三次元電子顕微鏡を用いたシナプスの微細構造解析手法について紹介する。今後は,ストレスや環境因子の蓄積により特異的神経回路に生じる機能構造変化を明らかにすることが,ストレス病態の解明ならびにストレスに対する脆弱性とレジリエンスの機構解明に重要となると考えられる。
  • 有岡 祐子
    2023 年34 巻3 号 p. 102-106
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ゲノム解析技術の進歩により,精神疾患の発症に強くかかわるゲノムバリアントが次々と同定されている。精神疾患の病態メカニズムを明らかにするためには,これら発症リスクバリアントがもたらす脳の変化をひとつずつ多方面から紐解いていくことが必要である。そのアプローチのひとつとしてiPS細胞がある。精神疾患研究におけるiPS細胞の知見が蓄積されるにつれ,リスクバリアントを有する患者の発達期神経系細胞では,共通して突起伸長低下やシナプス形成低下,遊走異常など,神経発達異常の表現型が得られることが明らかとなってきた。つまり,分子・細胞レベルでの小さな神経発達異常が脆弱性となり,精神疾患発症に寄与している可能性が考えられる。本稿ではリスクバリアントを有するiPS細胞を用いることで明らかとなってきた精神疾患研究の現状と今後について述べる。
  • 疋田 貴俊
    2023 年34 巻3 号 p. 107-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    行動の柔軟性とは,環境の変化に応じて行動を適応させることを指す。多くの精神神経疾患では行動の柔軟性が低下しているため,その神経機構の解明は重要である。状況に応じた柔軟な行動は逆転学習と新しい戦略へ注意を移すセットシフトに分類される。ここでは報酬や忌避の情報に基づく認知学習行動に関与している側坐核に着目し,行動の柔軟性にかかわる神経回路機構を概説した。注意セットシフト課題により,側坐核の間接路がセットシフトではなく逆転学習に重要であることを明らかにした。また,タッチスクリーン視覚性図形識別学習課題での柔軟な認知学習に間接路が重要であることを示した。これらは精神神経疾患病態に神経回路の可塑性が重要であることを示している。
  • 鳥海 和也, 新井 誠
    2023 年34 巻3 号 p. 111-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは,約4割の統合失調症患者において終末糖化産物AGEsのひとつであるペントシジン(PEN)が血中に蓄積していることを見いだした。しかし,この統合失調症で認められるPEN蓄積の原因は不明であり,結果的にPEN蓄積がどのように統合失調症の分子病態に関与するのかについても解明されていない。本研究では,血漿を用いたメタボローム解析により,PENの新たな前駆物質としてグルクロン酸(GlcA)を同定した。さらに,GlcAが統合失調症の診断や罹病期間,陰性症状などの臨床的特徴と有意に関連することを見いだした。また,統合失調症患者ではGlcAを分解するaldo‐keto reductase(AKR)活性が減少し,GlcA蓄積に関連している可能性が認められた。今後,これら知見は統合失調症のみならず,PEN蓄積を伴う多くの疾患の分子病態解明に寄与するものと期待される。
  • 植野 仙経
    2023 年34 巻3 号 p. 117-119
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    繰り返し頭部外傷を受傷したケースでは慢性期に慢性外傷性脳症がみられることがある。慢性外傷性脳症は,神経原線維変化などのタウの沈着を示す所見がみられることから,タウオパチーの一種として位置づけられる。中等症から重症の単発外傷性脳損傷においても,慢性期に慢性外傷性脳症様の精神・神経症状ならびに神経病理学的変化が生じることがある。中等症から重症の単発外傷性脳損傷の慢性期におけるタウイメージングでは一部のケースにおいて脳溝の深部に目立つトレーサーの局所的集積が認められる。外傷性脳損傷におけるタウ病理に関与する要因の1つとして神経炎症が指摘されている。タウイメージングにおける参照組織を選択するうえでは,小脳が慢性外傷性脳症においてタウが蓄積しうる領域であることを考慮する必要がある
  • 黒瀬 心
    2023 年34 巻3 号 p. 120-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    アロイス・アルツハイマーが1906年に報告したオーギュスト・データーは40代に嫉妬妄想をはじめとした精神症状から発症し,その後,記憶障害,失語,視空間障害といった認知機能障害を呈した。現代においてアルツハイマー病における精神病症状はある程度認知機能障害が進行した後に出現し,認知機能障害の周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)と考えられている。これまでのアルツハイマー病における精神病症状に関する研究は,認知機能障害が進行した例を主として対象にしてきていた。一方で,近年のコホート研究では老年期初発の精神病症状が認知症発症のリスクとして報告され,死後脳研究においてもタウオパチーやシヌクレオパチーが老年期精神疾患でみられるという報告がある。本稿ではこれらの先行研究についてレビューするとともに,筆者らのグループで行っている老年期精神疾患患者を対象としたアミロイド・タウPET研究の試みについても触れる。
  • 小松 浩
    2023 年34 巻3 号 p. 125-126
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
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