日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
26 巻 , 1 号
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  • 中込 和幸
    2015 年 26 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 緒方 優, 池亀 天平, 文東 美紀, 笠井 清登, 岩本 和也
    2015 年 26 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    セロトニントランスポーターをコードする SLC6A4 遺伝子には,HTTLPR と呼ばれる機能的な多型と,第一エクソン周辺に CpG アイランドが存在している。CpG アイランドやその周辺の CpG アイランドショアと呼ばれる領域のメチル化率と遺伝子発現量は負の相関が認められている。双極性障害では脳と末梢試料に共通して,CpG アイランドショアの高メチル化が認められている。神経系細胞株を用いた実験では,気分安定薬存在下で同領域が低メチル化することが認められている。今後, HTTLPR とメチル化状態の関係や疾患特異性,メチル化の機能的な意義についての検討が必要である。
  • 沼田 周助, 木下 誠, 大森 哲郎
    2015 年 26 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,エピジェネティクスの 1 つである DNA メチル化修飾を調べた統合失調症の臨床研究を紹介する。DNA メチル化修飾は環境要因により変化し,遺伝子発現や行動に影響を与える可能性があることから,統合失調症においても注目されてきている。遺伝学的研究同様,技術の進歩によりマイクロアレイや次世代シークエンサーを用いたゲノムワイドなメチローム解析が可能になっており,今後,DNAメチル化修飾解析研究により新規の統合失調症の分子病態が明らかになることが期待される。
  • 朴 秀賢
    2015 年 26 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    幼少期ストレスと成体海馬神経細胞新生の精神疾患の発症脆弱性への関与,および,幼少期ストレスが成体海馬神経細胞新生を減弱させることが既に知られている。しかし,幼少期ストレスが成体海馬歯状回の神経前駆細胞にどのような影響を及ぼすのかは不明であった。そこで,幼少期に母子分離ストレスを負荷したラットが成体になったときに海馬歯状回由来神経前駆細胞(ADP)を取り出し, ADP の増殖・分化・生存に母子分離ストレスが及ぼす影響を検討した。その結果,母子分離ストレスは ADP の増殖や生存に影響を与えないが,ADP から neuron への分化能を減弱させることが明らかになった。さらに,その背景には DNMT1 の発現増加やレチノイン酸受容体α(RARα)プロモーターの DNA メチル化増加が存在していた。したがって,幼少期ストレスの成体海馬神経細胞新生減弱作用には DNA メチル化増加が重要な役割を果たしている可能性が示唆される。
  • 三宅 邦夫, 久保田 健夫
    2015 年 26 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝的・環境的要因による調節機構の破綻が神経発達障害の発症や病態に関与していることが知られている。エピジェネティックな遺伝子発現機構の中心分子をコードする MECP2 はレット症候群の原因遺伝子であるだけでなく,自閉症や成人精神疾患にもかかわることがわかってきた。また,これらの病態に神経細胞とともにグリア細胞も関与していることが判明し,これらの患者から作製された iPS 細胞を用いた治療薬開発研究も盛んになりつつある。さらに妊娠中の喫煙や飲酒,残留性有機汚染物質の曝露によって生じた胎児の DNA メチル化異常が,自閉症や注意欠陥 / 多動性障害などの発達障害の発症要因となりえることも明らかにされつつある。このようなエピジェネティックな変化には可逆性があることから,これを修復する薬物よる治療法の確立が期待されている。
  • 新井 誠, 小堀 晶子, 宮下 光弘, 鳥海 和也, 堀内 泰江, 畠山 幸子, 内田 美樹, 井上 智子, 糸川 昌成
    2015 年 26 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の精力的なゲノム研究が世界的に取り組まれているものの,統合失調症の病態生理が不均一であるが故に(異種性),その分子基盤を理解する際の大きな障壁となっている。筆者らは,これまでも臨床的な側面から特徴的な病像を呈する症例を集積し,かつ家系症例や希少症例を軸にして,個々の症例が有する分子基盤の一端を一般症例へ敷衍するというストラテジーを実践してきた。この研究手法により,まれな遺伝子変異を持つ家系症例から「カルボニルストレス」という代謝経路の障害を見出し,一般症例のおよそ 2 割に同じカルボニルストレス代謝の障害をもつ比較的均一な亜群を同定した。また,カルボニルストレスを呈する症例群の臨床的特徴を明らかにするとともに,カルボニルストレスの解毒作用をもつピリドキサミンを用いた医師主導治験を実施した。本稿では,これまでのカルボニルストレス性統合失調症について概説し,統合失調症研究における我々の将来展望について述べた。
  • 橋本 謙二
    2015 年 26 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,統合失調症の病態に酸化的ストレスや炎症がかかわっていることが判ってきた。例えば,統合失調症患者の血液中の炎症性サイトカイン濃度が,健常者と比較して有意に高いことが報告されている。また PET を用いた画像研究からも,統合失調症患者の脳では,ミクログリアの活性化が起きていることが報告され,さらに,抗酸化作用および抗炎症作用を有する化合物が,統合失調症の症状を改善することが報告されている。本稿では,統合失調症の発症の予防の可能性としての抗酸化物質(N-acetyl cysteine および sulforaphane)について考察したい。
  • 溝口 義人, 鍋田 紘美, 今村 義臣, 原口 祥典, 門司 晃
    2015 年 26 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    がん,糖尿病,心血管疾患などの身体疾患,肥満など生活習慣病およびうつ病を含む精神疾患にはいずれも慢性炎症が病態に関与するとされる。心身相互に影響する共通の分子機序として,免疫系の関与が重要であるが,精神疾患の病態においては脳内ミクログリア活性化が重要な位置を占める。ミクログリアの生理的機能を解明しつつ,向精神薬の作用を検討していくことは今後も重要であり,うつ病を含む各精神疾患の病態仮説にかかわる BDNF の作用機序および向精神薬の薬理作用には細胞内 Ca2+シグナリングが関与すると考えられる。
  • 永井 竜児, 白河 潤一, 大野 礼一, 品川 雅敏, 畑野 孝太, 須川 日加里, 山中 幹宏, 荒川 翔太郎, 永井 美芽
    2015 年 26 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    アミノ酸や蛋白のアミノ基は,還元糖が有するカルボニル基と非酵素的に縮合反応を起こす。本反応は発見者であるフランスの食品化学者に由来してメイラード反応,あるいは蛋白に糖が結合する反応から糖化(英語では Glycation)とも呼ばれている。本反応はおおまかに二段階に分かれており,前期では血糖値の臨床マーカーとして既に世界的に測定されているヘモグロビン A1c(HbA1c)に代表されるアマドリ転位物が生成する。その後,酸化反応などによって,後期生成物である AGEs(Advanced Glycation End─ products)に変化する。当初,本反応は生体内で主にグルコースからゆっくりと進行すると考えられていたが,最近の研究から AGEs は解糖系,脂質過酸化,炎症反応などから生成する,グルコースより反応性の高いカルボニル化合物から迅速に生成することも明らかとなっている。これまで AGEs は加齢関連疾患や生活習慣病との関与が主に報告されてきたが,AGEs の測定系が確立されるにつれ,統合失調症をはじめとする精神疾患に対する AGEs の関与も明らかとなってきた。
  • 功刀 浩, 古賀 賀恵, 小川 眞太郎
    2015 年 26 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    海外では,うつ病患者において肥満,脂質異常,n-3 系多価不飽和脂肪酸,ビタミン B12 や葉酸,鉄,亜鉛などにおける栄養学的異常が発症や再発のリスクと関連するという報告が増えている。しかし,わが国におけるエビデンスは今のところ乏しい。特に精神科受診患者を対象とした研究はほとんどない。そこでわれわれは,うつ病患者と健常者における栄養素・食生活について調査し,予備的結果を得た。末梢血を採取し,アミノ酸・脂肪酸・ビタミン濃度等について詳細に測定した。食生活調査は食事歴法質問紙を使用した。うつ病群は健常者群と比較して肥満,脂質異常が多かった。脂肪酸では,エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸濃度について両群間で有意差は見られなかった。ビタミンでは葉酸が低値を示す者がうつ病群に有意に多かった。アミノ酸では,うつ病群で血漿トリプトファン値が有意に低下していた。鉄や亜鉛などのミネラルの血清中濃度に関しては,欠乏を示す者は患者と健常者の両群に高頻度でみられたが,両群の間で有意差は見られなかった。嗜好品では,うつ病患者は緑茶を飲む頻度が低い傾向がみられた。以上から,海外での先行研究と必ずしも一致しないものの,日本のうつ病患者においても栄養学的問題が多数みられることが明らかになり,うつ病患者に対する栄養学的アプローチの重要性が明らかになった。
  • 征矢 英昭, 岡本 正洋, 征矢 茉莉子, 島 孟留, 陸 彰洙
    2015 年 26 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    慢性的なストレスにより発症するうつ病は気分障害だけでなく認知機能の低下がみられる。慢性的なストレスは成体海馬神経新生(AHN)に抑制的に働くが,この現象はうつ病患者でも確認されることから,うつ病患者における認知機能低下の背景には AHN に関連した海馬機能低下が一つの要因として考えられる。近年,うつ病の治療方法として抗うつ薬のほかに,習慣的な軽い運動もうつ病に対して有効であることが想定されている。近年,乳酸性作業閾値(LT)以下の習慣的な低強度運動はAHN を促進し,さらに AHN 促進因子である脳由来神経栄養因子(BDNF)やアンドロゲンを海馬で増加させることが明らかとなった。さらに低強度運動が高強度運動に比べ AHN を促進させる背景には,これまで想定されていた因子のほかに,新たに同定された遺伝子として,脂質代謝にかかわる APOE,タンパク質合成にかかわるインスリン様成長因子Ⅱ(IGF-2),インスリン受容体基質 1(IRS1)や炎症性サイトカインである IL1B や腫瘍壊死因子(TNF)が AHN に関与することが明らかとなった。低強度運動にはこれらの AHN 促進因子を高める効果があり,うつ病患者の海馬神経を活性化させることで海馬神経可塑性を高めることが期待できる。低強度運動は抗うつ薬と同様に,うつ病の新たな治療法となるかもしれない。
  • 堀 輝, 杉田 篤子, 香月 あすか, 吉村 玲児, 中村 純
    2015 年 26 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の病院を受診するうつ病患者数が増加している。うつ病治療においては精神療法,薬物療法,環境調整などが行われるが,寛解率は決して高いわけではない。さらに,たとえ寛解に至り職場復帰したとしても,再休職率も高いことが知られている。つまり現在の治療に加えて非薬物療法の役割が期待されている。その中で運動療法における役割は大きい。うつ病治療における運動療法はノルアドレナリン神経系を介して精神症状の改善,活動性の維持によって就労の継続に寄与する可能性がある。またうつ病予防という観点から運動療法の役割も大きいとされ,抑うつ状態の軽減,睡眠リズムの改善効果が期待されている。
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