日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
24 巻, 4 号
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  • 篠崎 和弘
    2013 年 24 巻 4 号 p. 177
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 富田 泰輔
    2013 年 24 巻 4 号 p. 179-184
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    患者脳の解析に始まり,遺伝学・生化学から,アミロイドβタンパク(amyloid -βpeptide ; Aβ)はアルツハイマー病(Alzheimer disease ;AD)の発症に深く関与することが示されつつある。 β, γセクレターゼは,それぞれAβの産生量および凝集性を決定する酵素である。そのためセクレターゼ活性制御による脳内Aβ量の制御は,発症機序に基づいたdisease-modifying therapy となることが期待され,重要な創薬標的分子と考えられてきた。これらセクレターゼの分子的な実態が明らかとなり,その酵素学的な解析と相まって,様々な抗Aβ療法が治療薬候補として開発され始め,その問題点も徐々に明らかとなりつつある。特に,近年の大規模臨床観察研究と治験の結果から,抗Aβ療法は予防的介入法すなわち先制医療として有効である可能性が考えられている。またゲノム解析技術の進歩により,様々なAD発症リスク因子が同定され始めている。本稿においては,ADに対する先制医療法の開発と最近の知見を述べる。
  • 勝野 雅央, 井口 洋平, 祖父江 元
    2013 年 24 巻 4 号 p. 185-190
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動ニューロンを選択的に障害する神経変性疾患である。孤発性 ALS患者の運動ニューロンでは,RNA結合蛋白質であるTDP-43が本来の局在である核から消失するとともに細胞質内に凝集体を形成し,断片化・ユビキチン化・リン酸化などの修飾を受ける。筆者らは,ニューロン系培養細胞およびマウス初代培養ニューロンに酸化ストレスを負荷するとALS患者で見られるのと同様なTDP-43の局在異常や病的修飾を誘導すること,およびTDP-43の量的低下によりニューロン機能が低下することを見出した。また,運動ニューロン特異的にTDP-43の発現を抑制したマウスでは加齢依存性の運動ニューロン変性が生じ,ALSに類似した運動ニューロンの病理学的変化が認められた。これらの結果は,TDP-43の機能低下が,ALSにおける運動ニューロン変性の病態に深く関与していることを示唆している。
  • 笹邊 俊和, 岡澤 均
    2013 年 24 巻 4 号 p. 191-199
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    DNA損傷修復機能は他の細胞機能と同様に,老化に伴って低下していくが,変性疾患においてはより早く修復機能の低下が起こっている。私たちはこのことが老化によって変性が進行する分子基盤の1つではないかと考えている。特に,神経細胞は細胞分裂を行わないため,このような修復機能の低下によるDNA損傷の蓄積の影響を受けやすく,様々な神経変性疾患の原因となっている。私たちの研究室では,網羅的プロテオーム解析を用いて,ポリグルタミン病の原因タンパク質によってDNA高次構造調節タンパク質であるHMGB1/2が阻害され,それによりDNA二重鎖切断が増加することを見出した。さらに,インタラクトーム解析から,DNA二重鎖切断修復を担うKu70 と VCP もポリグルタミンタンパク質によって機能阻害されることを報告している。その他にも,毛細血管拡張性運動失調症,眼球運動失行・低アルブミン血症を伴う早期型失調症,色素性乾皮症,コケイン症候群などの神経変性疾患はDNA損傷修復遺伝子の変異によって発症することがわかっている。このように,DNA損傷は様々な神経変性疾患の共通病態であり,その修復を改善することで疾患のみならず老化の制御も可能になるかもしれない。
  • 渡辺 恭良
    2013 年 24 巻 4 号 p. 200-210
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は主に脳機能・分子イメージング手法を用いて,疲労および慢性疲労の分子神経メカニズムについて研究してきた。疲労の分子メカニズムについては,定量的・客観的な疲労バイオマーカーの開発により,研究が進化した。疲労度に応じて,①副交感神経系の機能低下,②酸化の進行と抗酸化能の低下,③修復エネルギー産生の低下,④免疫サイトカインの亢進とサイトカインによる炎症と神経伝達機能抑制,が疲労の分子メカニズムであり,慢性疲労に至るメカニズムでもある。また,疲労・慢性疲労の脳科学研究により,1)MRI morphometryにより日常生活に厳しい支障を来す慢性疲労症候群患者の前頭葉に萎縮が認められ,2)fMRI研究により,慢性疲労症候群患者の脳の一部のタスクによる脳全体の活動性低下が示唆された。3)脳磁図(MEG)を用いた研究では,活動回路の共振現象が見られること,疲労にもミラー現象や条件付けが起こることを明らかにした。一方,4) PET研究からは,急性疲労の疲労感を感じている部位や,慢性疲労症候群患者における前帯状回や前頭前野のアセチルカルニチン代謝低下や前帯状回のセロトニントランスポーターの密度低下が判明した。さらに最近,5)慢性疲労症候群患者脳の複数部位に神経炎症が発見された。一方,6)複数の疲労動物モデルを用いた研究からも,モノアミン神経系の変化や脳へのグルコース取り込み低下が判明した。これらの知見を有効に活かし,また,疲労度の定量的・客観的バイオマーカーを用いて,我々の生活を取り巻く様々な疲労・慢性疲労の軽減・回復法,過労予防法を展開してきた。
  • 片岡 洋祐
    2013 年 24 巻 4 号 p. 211-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    疲労は脳で感じ,また,疲労によるパフォーマンスの低下にも脳が深く関わっている。ここでは,過剰な中枢神経活動をラットに負荷した中枢疲労モデルと,ウイルスの擬似感染モデルラットを用いた感染・免疫疲労モデルを取り上げ,中枢疲労時の睡眠誘導や脳内神経炎症による疲労・抑うつ行動の誘発に関わる分子・神経メカニズムについて紹介する。過剰な中枢神経活動はニューロンでのCOX2発現を惹起し,プロスタグランディンの産生亢進によって徐波睡眠を誘導すること,さらに,神経・グリア前駆細胞の増殖・分化調節によって組織再編を促進することがわかってきた。一方,ウイルス感染時には脳内でIL-1βが産生され,疲労・抑うつ行動が発現すること,さらに脳内IL-1 受容体アンタゴニスト産生が疲労・抑うつ行動からの回復に重要であることがわかってきた。
  • 近藤 一博
    2013 年 24 巻 4 号 p. 218-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    現代はストレス時代と言われ,ストレスの蓄積状態である「疲労」による,うつ病や自殺が増加している。このような状況を打開するためには,疲労を客観的に測定して予防することが必要となる。 我々はこの目的のために,人の意志では変化しない疲労のバイオマーカーを検索し,唾液中に放出されるヒトヘルペスウイルス(HHV-)6による疲労測定法を開発した。HHV-6は突発性発疹の原因ウイルスで,100%の人の体内でマクロファージとアストロサイトに潜伏感染している。マクロファ ージで潜伏感染しているHHV-6は,1週間程度の疲労の蓄積に反応して再活性化し,唾液中に放出される。このため,唾液中のHHV-6の量を測定することによって中長期の疲労の蓄積を知ることができた。 さらに我々は,HHV-6の再活性化の分子機構を研究することにより,疲労因子(FF)と疲労回復因子(FR)の同定に成功した。FF と FRは末梢血検体で測定可能で,被験者の疲労の定量だけでなく,回復力の評価も可能であることが明らかになってきた。 HHV-6は,ほぼ 100%のヒトで脳の前頭葉や側頭葉のアストロサイトに潜伏感染を生じている。この潜伏感染HHV-6も,ストレス・疲労によって再活性化が誘導されると考えられる。 我々は,脳での再活性化時に特異的に産生される,HHV-6潜伏感染遺伝子タンパクSITH-1 を見出した。SITH-1発現は,血液中の抗体産生に反映され,血中抗SITH-1抗体を測定することによって,脳へのストレスと疾患との関係を検討することが可能であった。抗 SITH-1抗体陽性者は,主としてうつ病患者に特異的にみられ,抗 SITH-1抗体がうつ病のバイオマーカーとなることが示唆された。 さらに,SITH-1タンパクを,ウイルスベクターを用いてマウスのアストロサイト特異的に発現させたところ,マウスはうつ症状を呈することがわかった。これらのことより,脳へのストレス・疲労負荷は,潜伏感染HHV-6の再活性化を誘導することによって,潜伏感染タンパクSITH-1を発現させ,うつ病の発症の危険性を増加させるというメカニズムが示唆された。
  • 倉恒 弘彦
    2013 年 24 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    最近,慢性疲労症候群(CFS)と機能性身体症候群(FSS)との関連について取り上げられる機会が増えてきた。CFS は 1988年に米国疾病対策センター(CDC)が発表した病名であり,長期にわたって原因不明の激しい疲労とともに体中の痛みや思考力低下,抑うつ,睡眠障害などがみられるために日常生活や社会生活に支障をきたす病態の病因を明らかにするために作成された疾病概念である。一方,FSSは明らかな器質的原因によって説明できない身体的訴えがあり,それを苦痛として感じて日常生活に支障をきたす病態を1つの症候群としてとらえたものであり,CFSの概念が発表される以前より報告されてきた。1999 年,Wessely らは FSSに含まれるCFSや過敏性腸症候群などを調べてみると,これらには診断基準や症状,患者の特徴,治療に対する反応性などの点において共通性が多く,それぞれの病名にこだわるより,全体を1つの概念でとらえて分類するほうが建設的であると提唱している。そこで,本稿ではCFS と FSSとの関連を説明するとともに,最近明らかになってきた CFSの脳・神経系異常や病態生理について紹介する。
  • 高橋 秀俊, 中鉢 貴行, 森脇 愛子, 武井 麗子, 飯田 悠佳子, 荻野 和雄, 神尾 陽子
    2013 年 24 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症スペクトラム障害(ASD)では,知覚処理の非定型性について知られており,低次の知覚処理機能と高次の機能との関連の脳内基盤の発達的変化を明らかにすることは,ASDの病態形成メカニズムを理解する手がかりとなりうると考えられる。聴覚性驚愕反射(ASR)は,精神医学領域におけるトランスレーショナル・リサーチにおいて,国内外で広く研究されている。今回我々は, ASD 児 10名とそうでない児童34名を対象に,ASR検査を実施した。聴覚刺激として,65 ~ 110dB まで 5dBきざみで10段階の音圧の聴覚刺激を提示した。さらに,対人応答性尺度で評価された定量的自閉症特性との関連も検討した。ASD 児では,ASRの潜時が延長しており,微弱な刺激に対するASR が亢進しており,これら ASR の指標は,いくつかの自閉症特性と相関した。ASR の指標が, ASDの病態解明に関して有用である可能性が示唆された。
  • 中土井 芳弘, 渡部 幸奈, 細川 麻衣, 住谷 さつき, 大森 哲郎
    2013 年 24 巻 4 号 p. 235-240
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    広汎性発達障害(pervasive developmental disorders ; PDD)における社会的相互関係の障害を代表するものとして,顔認識や表情処理の障害があげられる。 我々のグループでは,これまでに健常者を対象に,感情価の異なる表情刺激を呈示した際の前頭前野活動性を近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy ; NIRS)を用いて調べ,恐怖表情では喜びの表情と比べ酸素化ヘモグロビン変化量の増加が大きいことを示した。また,恐怖表情における血流量変化と自閉症傾向を示す自閉症スペクトラム指数との間で有意な負の相関が認めることを見いだした。 ついで我々は PDD 14名と年齢,性別の一致した健常対照群14名を対象とし,恐怖表情処理過程における前頭前野活動性を検討し,酸素化ヘモグロビン変化量は健常対照群と比べPDD群で有意に小さいことを示した。 NIRSは非侵襲性と簡便性を併せもち,心理的および身体的負担が少ないことから,発達障害の病態研究において有用なツールになりうると考えられる。
  • 石井 良平, 池田 俊一郎, 青木 保典, 畑 真弘, 補永 栄子, 岩瀬 真生, 武田 雅俊
    2013 年 24 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder ; ASD)患者の運動実行時・運動観察時のβ帯域(15-30Hz)の運動後β帯域リバウンド(Post-movement beta rebound : PMBR)を求め,健常被験者のそれと比較検討することで,ASD患者におけるミラーニューロンに関連した生理学的変化を解明し,ASD患者のMNSに関連する障害について検討した。ASD患者7名と健常被験者10 名を対象とし,右手指の運動観察時と安静時,運動実行時と安静時の脳磁図を測定し,それぞれの課題と安静時の間でのβ帯域(15-30Hz)活動の電流源密度分布をBESAで解析後,BrainVoyager QX にて各群におけるPMBRの平均分布と群間比較(両側T検定,p < 0.05)を行った結果,両群において運動実行時,運動観察時ともに,後頭部(視覚野)やローランド領域にてPMBRの最大値が見られた。運動実行時には両群間で差は認めなかったが,運動観察時には両群間で対側感覚運動野,同側運動前野,中側頭葉,前帯状回(ACC)で PMBRに有意差を認めた。ASD患者群における運動観察時での PMBRの有意な減少は,ASDでは運動観察時に健常被験者とミラーニューロンを中心とした脳活動が異なることが示唆された。
  • 菊知 充
    2013 年 24 巻 4 号 p. 246-251
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    最近の脳画像研究により,広汎性発達障害において,脳の側性化が定型発達者に比して乏しいことが報告されている。これらの所見は,脳の構造画像,脳血流の反応などにより報告されてきた。しかし,就学前の広汎性発達障害児童の覚醒状態脳機能の側性化については,これまでほとんど検討されていない。近年我々は,未就学の広汎性発達障害児と,定型発達児を対象に幼児用脳磁計(MEG)をもちいた脳機能測定を進めてきた。その結果,広汎性発達障害に特徴的ないくつかの所見が得られつつある。今回用いた幼児用MEGにおいては,従来の成人用MEGを幼児に行う場合に困難であった左右半球の脳機能測定を容易に行うことが可能となった。磁場の物理的性質から,半球間の機能の比較などを評価する点において,脳波に比べて妥当な方法で,さらに,MEGは電極の装着などの煩雑さがなく,母親の傍らで簡便に行うことが可能である点で,幼児には理想的な方法である。
  • 岩永 竜一郎
    2013 年 24 巻 4 号 p. 252-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder ; ASD)児者には,社会コミュニケーシ ョンの障害,想像性の障害などに加え,運動面や感覚面の問題が見られることが多い。ASD の感覚や運動の問題を引き起こす神経学的メカニズムはまだ解明されておらず,治療法も確立されていない。感覚や運動の問題が生活上の適応困難を引き起こすことがあるため,その神経学的背景の解明,それらの改善に向けた治療や生活支援方法の確立が必要である。本稿では,現在明らかになっているASD児者の感覚処理や運動の問題に関する知見,およびそれらに対するリハビリテーションアプロ ーチや支援について紹介する。
  • 風祭 元
    2013 年 24 巻 4 号 p. 257
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 山口 成良
    2013 年 24 巻 4 号 p. 258
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 倉知 正佳
    2013 年 24 巻 4 号 p. 259
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
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