患者脳の解析に始まり,遺伝学・生化学から,アミロイドβタンパク(amyloid -βpeptide ; Aβ)はアルツハイマー病(Alzheimer disease ;AD)の発症に深く関与することが示されつつある。 β, γセクレターゼは,それぞれAβの産生量および凝集性を決定する酵素である。そのためセクレターゼ活性制御による脳内Aβ量の制御は,発症機序に基づいたdisease-modifying therapy となることが期待され,重要な創薬標的分子と考えられてきた。これらセクレターゼの分子的な実態が明らかとなり,その酵素学的な解析と相まって,様々な抗Aβ療法が治療薬候補として開発され始め,その問題点も徐々に明らかとなりつつある。特に,近年の大規模臨床観察研究と治験の結果から,抗Aβ療法は予防的介入法すなわち先制医療として有効である可能性が考えられている。またゲノム解析技術の進歩により,様々なAD発症リスク因子が同定され始めている。本稿においては,ADに対する先制医療法の開発と最近の知見を述べる。
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