小児思春期双極性障害が米国で急増している。小児期に発症する双極 I 型障害がまれながら存在することは確かであろう。しかし,最近増えてきたケースは,激しい易怒性,攻撃性を示すが,長期に続く気分の障害ではなく,双極 I 型あるいは双極 II 型の診断基準を満たさない。こうした場合,成人型の双極性障害に進展するかどうかは不明である。このように,米国では過剰診断が懸念されており,DSM-5 ドラフトで提案された Temper Dysregulation Disorder with Dysphoria(TDDD)は,この過剰診断を防ぐ目的で導入された診断基準である。今後,この診断基準を元に研究を進め,こうした情動障害の背景に,双極性障害の家族歴,AD/HD,精神刺激薬治療などがどのように関わっているのか,そしてこうした症例のどれだけが成人型の双極性障害を発症するのか,明らかにしていく必要がある。
若年周期精神病は,初経前後の女児に多く認められ,周期的な気分変動,行動抑制,精神病性の体験,夢幻様体験などの多彩な精神症状を伴う病態である。その病態を,前思春期に発症した気分障害ととらえ,非定型精神病の一型と見なす見方がある一方で,生理的未発達の段階にある若年女性の症状精神病とも捉える考え方もあり,なお結論が得られていない。周期性の精神病性疾患の病態をとらえるためには,trait と state を反映する生物学的指標を確立する必要があり,意識障害に対応した脳波所見の重要性が示唆される。本稿では,若年周期精神病の臨床像と病態,治療について概説したうえで,本疾患の病態を反映する生物学的指標を確立することが,精神病性障害,とりわけ非定型精神病の周期性を理解するうえでモデルとなる可能性について述べた。