ハロタン麻酔下の卵巣子宮全摘出手術が犬好中球の機能に及ぼす影響について明らかにするため, 臨床的に健康な雌犬13頭を用いてキシラジンおよびチオペンタールを投与後, OF麻酔下で手術を行い, 手術前後における犬好中球のNitro-blue Tetrazolium (NBT) 還元能を検索した。その結果, 好中球数は, 手術前の7, 700±2, 800/μlから有意に増加して手術後1日目には18, 100±4, 900/μ1となった (p<0.001) 。一方, 非刺激 (resting) NBT還元試験の陽性率は, 手術前の49.8±23.4%から有意に減少して手術終了直後には26.5±17.5% (p<0.01) となり, 手術後1日目には26.3±17.7% (P<0.Ol) となった。また, エンドトキシソを用いた刺激 (stimulated) NBT還元試験の陽性率も手術前の74.4±19.5%から有意に減少して手術終了直後には39.8±19.0% (p<0.001) , 手術後1日目には39.3±21.7% (p<0.001) となった。さらに, stimulated NBT還元試験とresting NBT還元試験の陽性率の差も手術前の24.6±7.6%から手術終了直後と手術後1日目に有意に縮小してそれぞれ13.4±8.3%, 13.0±8.5%となった (それぞれp<0.Ol) 。これらの減少ないしは縮小したNBT還元試験の陽性率および陽性率の差は, 手術後7日目には手術前の値に回復した。
以上のことから, 犬好中球のNBT還元能はハロタン麻酔下の卵巣子宮全摘出術により低下することが示唆された。
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