横隔膜ヘルニア修復のパッチグラフト素材を検討するため, グルタール処理犬心膜 (グルタール心膜) , デナコール処理犬心膜 (デナコール心膜) , キチン・ポリエステル不織布複合体 (キチンシート) , ポリエステル不織布を用いた。ネコの横隔膜に3×3cmのヘルニア欠損孔を実験的に作成し, それぞれのパッチグラフトをポリプロピレン縫合糸で結節縫合した。その後グルタール心膜とデナコール心膜 (バイオグラフト) は1ヶ月, 2ヶ月, 3ヶ月および1年後に, キチンシートは1ヶ月, 1年および2年後に, またポリエステル不織布は1ヶ月および1年後にそれぞれ開胸し, パッチグラフト縫合部を肉眼的ならびに組織学的に検索した。バイオグラフトは両者とも操作性がよく, 肉眼的には術後1ヶ月の時点で隣接横隔膜とよく癒合し, さらに組織学的には1年後には移植片に対する炎症は終息し, 生体組織と良く接合していたことからパッチグラフト素材として適していると思われた。キチンシートおよびポリエステル不織布は操作性や臨床経過に問題はなく, 肉眼所見でも周囲組織とよく癒合していたが, 2年あるいは1年後の組織学的所見で炎症の継続がみられた。
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