1966年9月10日,最大成長時と考えられる時期に採収した諏訪湖の優占高等値物7種について,化学成分のうち湖水の栄養性に関係する全窒素,全燐酸,全炭素の分析を行つた。
諏訪湖の水生植物の窒素の含量はびわ湖産植物のそれよりかなり高く,水田の水草なみの含量である。
小泉らによる諏訪湖の水生植物現存量から計算すると,全植物の窒素,燐酸,炭素の全量は,それぞれ6,076kg,1,338kg,83,511kgの莫大量に達する。
諏訪湖の沈水および浮葉植物の炭素率(全炭素/全窒素×100)は,レンゲソウより低く,挺水植物のそれはイネやコムギの藁よりかなり低く,ともに湖内での分解が速やかなことを想像させる。
これらの成分は,植物の生育時に湖水,底泥あるいは空気中から体内に吸収保留され,湖外には流亡することはなく,枯死した後再び湖水に返還され,富栄養化に大きな役割りを果たす。
故に水草に関連しての湖水の富栄養化防止には,水草の湖外搬出,草魚その他の方法による除草の対策を講ずる必要がある。
抄録全体を表示